第二章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「そろそろお開きだ、子供は10時には寝ろ。」
打倒世宇子中の結束を固めたところで響木監督やOBの皆さんに促され、
今夜はこれで解散となりました。
我先にと校舎一階のシャワールームへと走り出す部員たちを見送って
軽く用具をひとまとめにしたら、あとのことは大人たちにお任せして
私たちマネージャーもたどりながら部活棟へと戻りました。
「奉、本当に構わないの?」
やっとの思いで屋敷から持ち込んできたバスタオルを抱えた夏未様の玉のお声が、
ドアの先に広がる四方のタイル壁に響いて耳をくすぐります。
「もちろんですとも!
乙女の秘密を盗み見ようとする不届きものが出ないように
私がここで目を光らせていなくてはなりません!
場寅の名にかけて水音一つだって耳に入れさせやしませんから!!」
できうる限り精悍に伸ばした眉にご納得いただけたのか
夏未様は軽く首を縦に振られてから、シャワー室へとお入りになりました。
女子シャワー室の内扉が閉まった音を聞き届けると、
顔の筋肉の緊張を解いて大きく息を吐きました。
いくら木野さんのご提案とはいえ、そろってシャワーだなんて、
女子中学生の距離感には困ったものです。
(後から聞いたのですが、夜の校舎の水場という状況が怖かったので
そばにいてほしかったということだそうです。かわいらしいお方ですこと。)
主人と身を清める時間をともにするというだけでも
心臓が飛び出しそうだというところですのに、
なにより、その、個室とも言い難いような薄い壁一枚でしか仕切られていない空間で
一糸まとわぬ姿でいるだなんてなんて恐れ多すぎます!
夏未様にはこんな邪な考えを悟られていないとよいのですが。
足元に並んだ保安灯のわずかな光にまどろんでいると
石鹸の優しい香りを弾かせてドアから出てきたのは木野さんでした。
「奉ちゃん、なにも心配いらなかったでしょう?」
「…っええ、その通りですね。」
昼間は額になでつけていた深緑の前髪の垣間から覗く思慮深い目に
下心まで見透かされているようで恥ずかしくなりました。
「うちの男子たちに限って、ですよ!
食べる、寝る、サッカーする、の3つしか頭にないですから!」
続いて、赤い眼鏡を用途通り目元に持ってきた音無さんが
血色のよくなった指を折って見せつけるように、廊下に出てこられました。
ということは、最後にこちらへいらっしゃるのは。
「いいじゃない、それくらい単純なほうが扱いやすいわ。」
夏未様はいつものシックなバスローブ姿ではなく、
フリルとリボンが要所にあしらわれた厚手のネグリジェ姿がとても新鮮で
かわいらしいことこの上ありません!
いつか纏っていただこうと一式をクローゼットに忍ばせておいた
あの日の私をほめちぎりたいです!
それにしても艶めく御髪を見るに、ケアはご自身でやってしまわれたのでしょうか。
邪心にとらわれて大切なご奉仕の時間を逃してしまうなんて私はなんと愚かなのでしょう!!
恥ずかしさと悔しさにいたたまれなくなり、逃げるようにドアの中へと駆け込みました。
「そそそそれでは私も身を清めさせていただきまする!!」
「なあに、『まする』って。」
「奉先輩ってば、おかしいんですから!」
「はあ……、そうね、水でも被ってきなさいな。」
「そんなご無体な~~~~~!!!」
自省の時間となったシャワーを終えて、寝床の稽古室に戻ると、
お三方はすっかり就寝の支度を済まされているようでした。
「奉、はやかったのね。
さあ、明日は朝食の準備もあることだし、もう休みなさい。」
「はい、お嬢様。」
主人の言葉にそそくさと自分の布団へ向かおうとしたところで、
音無さんがビデオカメラを片手に勢いよく立ち上がりました。
「ちょ~~~っと待った!です!」
「どうしたの、音無さん?」
「合宿といえば、がまだ残ってるじゃないですか!」
「枕投げならもうやっちゃだめよ。」
「そ、その節はすみませんでした。
ってそうじゃなくって、パジャマトークですよ!パジャマトーク!」
「トーク?」
音無さんの勢いにあっけにとられていた夏未様が首をかしげました。
「ええっと、お洋服とかお料理とかの話をするってことかな?」
木野さんが何かを察したように目線を宙に向けています。
「枕を寄せてするトークといえば恋の話、コイバナに決まってるじゃないですか!」
「恋の……」
「話……」
「コイバナ……」
音無さんの口から出た直接的な言葉に
私、夏未様、木野さんの三人の視線が交差したかと思うと、
互いの紅潮が鏡を見ているようでたまらず一斉に目を逸らしました。
恋といえば、夏未様の恋路は把握していますが、
木野さん、音無さんについては特にお聞きしたことがありません。
「はい!じゃあ奉先輩から!」
「ええっ私ですか!?」
「そうです!
ズバリ!雷門サッカー部にやってきてビビッと来た男子はいますか?」
音無さんの右手のカメラがぐいぐい近づいてきて私をにらみつけました。
木野さん!両手で抑えていても黄色い声が漏れ出ています!
夏未様!そんな興味ありげな目線を向けないでください!
昼時の下世話な番組で見かける芸能人のように
この場を乗り切るため、なんとか口を開きました。
「そ、そうですね、ええと男子…、ああ!あの男!土門さん!
あの方には面をくらわされました……。
まさかお嬢様のことを『ちゃん』付で呼ぶ男がいるなんて……衝撃です!!!」
「奉、そういうビビッとじゃないと思うわ。」
「そこからLOVEのほうにも発展しちゃったりします?」
「ありません!!!私はお嬢様一筋なので!!!!」
口から思わず出た言葉に自分が一番驚いてしまったので、
茹った顔を枕に埋めて夏未様の視線から逃れました。
「もう、奉ったら、私のことじゃなくて、
自分のことを一番に考えなさいよ。」
一世一代の告白でしたのに全然本気にされていません!
こんなその場の勢いでの玉砕にならなくて安心する反面、
さらっと流されたことへの悲しみが積もります。
「土門くん、とってもいい人なのに。」
「土門先輩といえば、木野先輩は土門先輩と一ノ瀬先輩と、
それにキャプテンの誰が本命なんですか?」
「「え、円堂くん!?」」
木野さんと夏未様の顔が同時に赤くなり、
まるで瑞々しい一対のさくらんぼのようでした。
音無さん、そのビデオのデータあとで譲ってくださいまし。
「そ、そんな、三人とも大切な仲間だし。
第一私が選べる立場じゃないわ。」
カメラレンズの圧に耐え切れなかったのでしょうか、
木野さんは布団の殻にこもってしまいました。
「なるほど、祈りの乙女は優柔不断っと……。」
「音無さん、そのくらいにしておいてあげて。」
羽毛の殻に向けられたカメラの目線を夏未様の右手が遮りました。
「そういう先輩はどうなんですか?」
「私は、あ、あのバカたちのことなんて、
お子様過ぎてその、そういう対象にしたことはありません!」
「ほんとですか~?
わたしのデータベースでは先輩が敬語になるのは
照れ隠しするときなんですよね~。」
今度はレンズが芍薬をほころばせた夏未様のお顔を捉えました。
音無さんそれ以上は!
「もう!ありませんったら!あったとしたって教えません!」
「ところで!先ほどから聞いてばかりおられますが、
音無さんはどうなのでしょうか?
同級生も先輩もいて選り取り見取りではないですか!?」
主人のピンチに無理やり会話に割って入りましたがどうやらうまくいったようで
音無さんはカメラを下げて、代わりにメガネの縁を誇らしげに上げて見せました。
「奉先輩、よくぞ聞いてくれました!
わたしはもう心に決めた男子が一人いるんです!」
「「誰?」」
布団に籠っていた木野さんも、そっぽを向いていた夏未様も
一斉に音無さんへ視線を注ぎました。
「それは鬼道有人先輩!お兄ちゃんです♡」
予想はしていたようなしていなかったような答えに三人とも脱力して、
昼時の呑気な番組で見かけるコメディアンのように
ずるりと布団へ倒れこんでしまいました。
「いや~お兄ちゃんよりかっこいい人じゃないとダメなんですよね。」
「一生現れないんじゃないかしら?」
「やっぱり恋って私たちにはまだ早いのよ。そうよね、夏未さん!」
「ええ、木野さんの言う通りよ!」
お二人は不自然なまでにで話を終わらせようと結束なさっているようで、
とすると、木野さんと夏未様は互いの恋路を把握されているのでしょうか。
これは、立ち入らないほうがよいとメイドのカンが告げています。
さて、お二人にこれ以上の被害が出ないように、
合宿で妙に高ぶっている音無さん劇場にはそろそろ帳をおろしていただきませんと。
「まったく、お二人そろってその姿勢じゃおばあちゃんになっちゃいますよ!
恋も青春のうちなんですからときめいていかないと!
奉さんもそう思いませんか?」
「はい、素敵な恋には憧れますが、
私は私が今一番したいのが夏未様の力になることなんです。
それは、雷門中に勝ってもらうこと、
あの影山の手から皆さんを守ることです。」
強欲で卑劣な男の名を聞くやいなや皆さんの顔は引き締まり、
先ほどまでの浮かれた雰囲気は水を打ったように張り詰めた空気に変わりました。
「私も。」
「私もよ。」
「わたしもです!」
「私たちはピッチに立てないけど、だからこそ、
彼らのためにできることは全部やるわ。」
決意のこもったお言葉とともに
夏未様が白梅の手の甲を上にして目線の先へ伸ばし出されたので、
その上に木野さん、音無さんに続いて手を重ね合わせました。
「一緒に闘いましょう!」
「「「「お〜!」」」」
掲げられた4つの星に、
降りかかる火の粉を白線の内側には入れさせまいと誓い合い、
決戦前々夜は更けてゆきました。
打倒世宇子中の結束を固めたところで響木監督やOBの皆さんに促され、
今夜はこれで解散となりました。
我先にと校舎一階のシャワールームへと走り出す部員たちを見送って
軽く用具をひとまとめにしたら、あとのことは大人たちにお任せして
私たちマネージャーもたどりながら部活棟へと戻りました。
「奉、本当に構わないの?」
やっとの思いで屋敷から持ち込んできたバスタオルを抱えた夏未様の玉のお声が、
ドアの先に広がる四方のタイル壁に響いて耳をくすぐります。
「もちろんですとも!
乙女の秘密を盗み見ようとする不届きものが出ないように
私がここで目を光らせていなくてはなりません!
場寅の名にかけて水音一つだって耳に入れさせやしませんから!!」
できうる限り精悍に伸ばした眉にご納得いただけたのか
夏未様は軽く首を縦に振られてから、シャワー室へとお入りになりました。
女子シャワー室の内扉が閉まった音を聞き届けると、
顔の筋肉の緊張を解いて大きく息を吐きました。
いくら木野さんのご提案とはいえ、そろってシャワーだなんて、
女子中学生の距離感には困ったものです。
(後から聞いたのですが、夜の校舎の水場という状況が怖かったので
そばにいてほしかったということだそうです。かわいらしいお方ですこと。)
主人と身を清める時間をともにするというだけでも
心臓が飛び出しそうだというところですのに、
なにより、その、個室とも言い難いような薄い壁一枚でしか仕切られていない空間で
一糸まとわぬ姿でいるだなんてなんて恐れ多すぎます!
夏未様にはこんな邪な考えを悟られていないとよいのですが。
足元に並んだ保安灯のわずかな光にまどろんでいると
石鹸の優しい香りを弾かせてドアから出てきたのは木野さんでした。
「奉ちゃん、なにも心配いらなかったでしょう?」
「…っええ、その通りですね。」
昼間は額になでつけていた深緑の前髪の垣間から覗く思慮深い目に
下心まで見透かされているようで恥ずかしくなりました。
「うちの男子たちに限って、ですよ!
食べる、寝る、サッカーする、の3つしか頭にないですから!」
続いて、赤い眼鏡を用途通り目元に持ってきた音無さんが
血色のよくなった指を折って見せつけるように、廊下に出てこられました。
ということは、最後にこちらへいらっしゃるのは。
「いいじゃない、それくらい単純なほうが扱いやすいわ。」
夏未様はいつものシックなバスローブ姿ではなく、
フリルとリボンが要所にあしらわれた厚手のネグリジェ姿がとても新鮮で
かわいらしいことこの上ありません!
いつか纏っていただこうと一式をクローゼットに忍ばせておいた
あの日の私をほめちぎりたいです!
それにしても艶めく御髪を見るに、ケアはご自身でやってしまわれたのでしょうか。
邪心にとらわれて大切なご奉仕の時間を逃してしまうなんて私はなんと愚かなのでしょう!!
恥ずかしさと悔しさにいたたまれなくなり、逃げるようにドアの中へと駆け込みました。
「そそそそれでは私も身を清めさせていただきまする!!」
「なあに、『まする』って。」
「奉先輩ってば、おかしいんですから!」
「はあ……、そうね、水でも被ってきなさいな。」
「そんなご無体な~~~~~!!!」
自省の時間となったシャワーを終えて、寝床の稽古室に戻ると、
お三方はすっかり就寝の支度を済まされているようでした。
「奉、はやかったのね。
さあ、明日は朝食の準備もあることだし、もう休みなさい。」
「はい、お嬢様。」
主人の言葉にそそくさと自分の布団へ向かおうとしたところで、
音無さんがビデオカメラを片手に勢いよく立ち上がりました。
「ちょ~~~っと待った!です!」
「どうしたの、音無さん?」
「合宿といえば、がまだ残ってるじゃないですか!」
「枕投げならもうやっちゃだめよ。」
「そ、その節はすみませんでした。
ってそうじゃなくって、パジャマトークですよ!パジャマトーク!」
「トーク?」
音無さんの勢いにあっけにとられていた夏未様が首をかしげました。
「ええっと、お洋服とかお料理とかの話をするってことかな?」
木野さんが何かを察したように目線を宙に向けています。
「枕を寄せてするトークといえば恋の話、コイバナに決まってるじゃないですか!」
「恋の……」
「話……」
「コイバナ……」
音無さんの口から出た直接的な言葉に
私、夏未様、木野さんの三人の視線が交差したかと思うと、
互いの紅潮が鏡を見ているようでたまらず一斉に目を逸らしました。
恋といえば、夏未様の恋路は把握していますが、
木野さん、音無さんについては特にお聞きしたことがありません。
「はい!じゃあ奉先輩から!」
「ええっ私ですか!?」
「そうです!
ズバリ!雷門サッカー部にやってきてビビッと来た男子はいますか?」
音無さんの右手のカメラがぐいぐい近づいてきて私をにらみつけました。
木野さん!両手で抑えていても黄色い声が漏れ出ています!
夏未様!そんな興味ありげな目線を向けないでください!
昼時の下世話な番組で見かける芸能人のように
この場を乗り切るため、なんとか口を開きました。
「そ、そうですね、ええと男子…、ああ!あの男!土門さん!
あの方には面をくらわされました……。
まさかお嬢様のことを『ちゃん』付で呼ぶ男がいるなんて……衝撃です!!!」
「奉、そういうビビッとじゃないと思うわ。」
「そこからLOVEのほうにも発展しちゃったりします?」
「ありません!!!私はお嬢様一筋なので!!!!」
口から思わず出た言葉に自分が一番驚いてしまったので、
茹った顔を枕に埋めて夏未様の視線から逃れました。
「もう、奉ったら、私のことじゃなくて、
自分のことを一番に考えなさいよ。」
一世一代の告白でしたのに全然本気にされていません!
こんなその場の勢いでの玉砕にならなくて安心する反面、
さらっと流されたことへの悲しみが積もります。
「土門くん、とってもいい人なのに。」
「土門先輩といえば、木野先輩は土門先輩と一ノ瀬先輩と、
それにキャプテンの誰が本命なんですか?」
「「え、円堂くん!?」」
木野さんと夏未様の顔が同時に赤くなり、
まるで瑞々しい一対のさくらんぼのようでした。
音無さん、そのビデオのデータあとで譲ってくださいまし。
「そ、そんな、三人とも大切な仲間だし。
第一私が選べる立場じゃないわ。」
カメラレンズの圧に耐え切れなかったのでしょうか、
木野さんは布団の殻にこもってしまいました。
「なるほど、祈りの乙女は優柔不断っと……。」
「音無さん、そのくらいにしておいてあげて。」
羽毛の殻に向けられたカメラの目線を夏未様の右手が遮りました。
「そういう先輩はどうなんですか?」
「私は、あ、あのバカたちのことなんて、
お子様過ぎてその、そういう対象にしたことはありません!」
「ほんとですか~?
わたしのデータベースでは先輩が敬語になるのは
照れ隠しするときなんですよね~。」
今度はレンズが芍薬をほころばせた夏未様のお顔を捉えました。
音無さんそれ以上は!
「もう!ありませんったら!あったとしたって教えません!」
「ところで!先ほどから聞いてばかりおられますが、
音無さんはどうなのでしょうか?
同級生も先輩もいて選り取り見取りではないですか!?」
主人のピンチに無理やり会話に割って入りましたがどうやらうまくいったようで
音無さんはカメラを下げて、代わりにメガネの縁を誇らしげに上げて見せました。
「奉先輩、よくぞ聞いてくれました!
わたしはもう心に決めた男子が一人いるんです!」
「「誰?」」
布団に籠っていた木野さんも、そっぽを向いていた夏未様も
一斉に音無さんへ視線を注ぎました。
「それは鬼道有人先輩!お兄ちゃんです♡」
予想はしていたようなしていなかったような答えに三人とも脱力して、
昼時の呑気な番組で見かけるコメディアンのように
ずるりと布団へ倒れこんでしまいました。
「いや~お兄ちゃんよりかっこいい人じゃないとダメなんですよね。」
「一生現れないんじゃないかしら?」
「やっぱり恋って私たちにはまだ早いのよ。そうよね、夏未さん!」
「ええ、木野さんの言う通りよ!」
お二人は不自然なまでにで話を終わらせようと結束なさっているようで、
とすると、木野さんと夏未様は互いの恋路を把握されているのでしょうか。
これは、立ち入らないほうがよいとメイドのカンが告げています。
さて、お二人にこれ以上の被害が出ないように、
合宿で妙に高ぶっている音無さん劇場にはそろそろ帳をおろしていただきませんと。
「まったく、お二人そろってその姿勢じゃおばあちゃんになっちゃいますよ!
恋も青春のうちなんですからときめいていかないと!
奉さんもそう思いませんか?」
「はい、素敵な恋には憧れますが、
私は私が今一番したいのが夏未様の力になることなんです。
それは、雷門中に勝ってもらうこと、
あの影山の手から皆さんを守ることです。」
強欲で卑劣な男の名を聞くやいなや皆さんの顔は引き締まり、
先ほどまでの浮かれた雰囲気は水を打ったように張り詰めた空気に変わりました。
「私も。」
「私もよ。」
「わたしもです!」
「私たちはピッチに立てないけど、だからこそ、
彼らのためにできることは全部やるわ。」
決意のこもったお言葉とともに
夏未様が白梅の手の甲を上にして目線の先へ伸ばし出されたので、
その上に木野さん、音無さんに続いて手を重ね合わせました。
「一緒に闘いましょう!」
「「「「お〜!」」」」
掲げられた4つの星に、
降りかかる火の粉を白線の内側には入れさせまいと誓い合い、
決戦前々夜は更けてゆきました。