序章
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容姿端麗、頭脳明晰、完全無欠!
この世すべての賛辞をもって余りある、
それが私のお仕えするお嬢様、雷門夏未様!
生まれてこのかた、夏未様に絶えずご奉仕できていることが
私の何よりの幸せです。
でもそれはついこの間までの話……
学校では仕おじいさまに夏未様のことは任せているから
安心だと思っていたのだけど、
最近は何か思い悩んだ様子でお帰りになられては
お部屋にこもりきりで、
お食事の時間にさえお顔を見せてくれません。
「夕食ならそこに置いておいてちょうだい。
あと、できれば簡単に口にできるものだと助かるわ。」
だなんて!
夏未様のご健康とお好みを考えに考え抜いて用意した
フランス料理のフルコースを
まとめておにぎりにする日が来るなんて夢にも思いませんでした。
悔しさで少ししょっぱくなってしまっても、
夏未様がいじわるするからなんですからね!
でも食べやすいように一口大の俵型でご用意いたしますから!
ああ、なんていじらしいの、私!
小一時間前の思い上がりは
器のカンバスの上でソースが描く曲線たちとともに
シンクの奈落へと消しておかなくてはいけません。反省。
めそめそしているよりも、夏未様のご様子のことを考えなくては。
せめてお休み前のお茶は
淹れたての温かいものを口にしてくださるといいのだけれど。
「奉」
扉越しで聞くくぐもったそれではなくて、
直接鼓膜をくすぐる凛としたお声に動揺して
心臓がドクリとしました。
取りこぼしてしまったお皿がかき消してくれていたのが
不幸中の幸いです。
「あら、邪魔をしてしまったかしら。」
「とんでもありません!それよりどうされたのですか?」
「これを返しに来ただけよ。」
夏未様の白梅のような手の中には米粒一つ残っていない器が。
「お嬢様!申し訳ございません!すぐ下げに参らなければいけないところを……」
「いいわよ、気にしないで。
それにあなたに聞きたいことがあったから。」
「私に…ですか?お答えできることであれば何なりと。」
「この、おにぎりのことなのだけど。
私の口に合うように小さく作ってくれていたでしょう?
それに具にあわせた塩加減も絶妙だった。見事だわ。
その、私が作った時は三角でもまだうまくまとめられなくって、
お塩だって言われたとおりに入れたはずなのにあのバカには不評だったのよ。
雷門家の人間として恥ずかしい話ね。」
耳を疑いました。
夏未様が作った?おにぎりを?手づから?
それにあのバカって誰のことですか。
夏未様の滑らかな指先でぎゅっとされたお米を
口に運んだ人間がこの世にいるということでしょうか。なんて怨め…羨ましい。
だめだめ、夏未様にお返事をしないと!
こんな話をしてくださったということは、
それほど私を信頼していただいているのだから!
「奉..?」
「お嬢様、おにぎりは愛情をお米にお籠めになるのが一番ですよ!
ほ~らコメコメ~っていうでしょう!」
………最悪です。夏未様がみたことのない苦笑いをされています。
私、お料理よりも空気をフリーズドライするほうがうまいのかもしれません。
「こほん、失礼いたしました。
それより、おにぎりだなんてどうされたのですか?
まさか、ご学友にお、想い人が…」
「ち、ちがいます!
サッカー部のバカたちにつくってやったのよ。
初めてだったけどそれなりにうまくできたと思っていたのに、
奉がつくってくれたものとなにが違うのかしらって。」
「お待ちください、マネージャーって夏未様がですか!?」
「あら、場寅から聞いてないの?
私、理事長代理として雷門サッカー部のマネージャーやってるのよ。」
おじいさま、いいえ仕おじいちゃん、
あなたは大人なのにホウレンソウのホの字もできないんでしょうか。
放心する私が最後に見たのは、夏未様の少し困った顔と
お茶のご用意を持って出ていかれる立派なマネージャー仕草でした。
この世すべての賛辞をもって余りある、
それが私のお仕えするお嬢様、雷門夏未様!
生まれてこのかた、夏未様に絶えずご奉仕できていることが
私の何よりの幸せです。
でもそれはついこの間までの話……
学校では仕おじいさまに夏未様のことは任せているから
安心だと思っていたのだけど、
最近は何か思い悩んだ様子でお帰りになられては
お部屋にこもりきりで、
お食事の時間にさえお顔を見せてくれません。
「夕食ならそこに置いておいてちょうだい。
あと、できれば簡単に口にできるものだと助かるわ。」
だなんて!
夏未様のご健康とお好みを考えに考え抜いて用意した
フランス料理のフルコースを
まとめておにぎりにする日が来るなんて夢にも思いませんでした。
悔しさで少ししょっぱくなってしまっても、
夏未様がいじわるするからなんですからね!
でも食べやすいように一口大の俵型でご用意いたしますから!
ああ、なんていじらしいの、私!
小一時間前の思い上がりは
器のカンバスの上でソースが描く曲線たちとともに
シンクの奈落へと消しておかなくてはいけません。反省。
めそめそしているよりも、夏未様のご様子のことを考えなくては。
せめてお休み前のお茶は
淹れたての温かいものを口にしてくださるといいのだけれど。
「奉」
扉越しで聞くくぐもったそれではなくて、
直接鼓膜をくすぐる凛としたお声に動揺して
心臓がドクリとしました。
取りこぼしてしまったお皿がかき消してくれていたのが
不幸中の幸いです。
「あら、邪魔をしてしまったかしら。」
「とんでもありません!それよりどうされたのですか?」
「これを返しに来ただけよ。」
夏未様の白梅のような手の中には米粒一つ残っていない器が。
「お嬢様!申し訳ございません!すぐ下げに参らなければいけないところを……」
「いいわよ、気にしないで。
それにあなたに聞きたいことがあったから。」
「私に…ですか?お答えできることであれば何なりと。」
「この、おにぎりのことなのだけど。
私の口に合うように小さく作ってくれていたでしょう?
それに具にあわせた塩加減も絶妙だった。見事だわ。
その、私が作った時は三角でもまだうまくまとめられなくって、
お塩だって言われたとおりに入れたはずなのにあのバカには不評だったのよ。
雷門家の人間として恥ずかしい話ね。」
耳を疑いました。
夏未様が作った?おにぎりを?手づから?
それにあのバカって誰のことですか。
夏未様の滑らかな指先でぎゅっとされたお米を
口に運んだ人間がこの世にいるということでしょうか。なんて怨め…羨ましい。
だめだめ、夏未様にお返事をしないと!
こんな話をしてくださったということは、
それほど私を信頼していただいているのだから!
「奉..?」
「お嬢様、おにぎりは愛情をお米にお籠めになるのが一番ですよ!
ほ~らコメコメ~っていうでしょう!」
………最悪です。夏未様がみたことのない苦笑いをされています。
私、お料理よりも空気をフリーズドライするほうがうまいのかもしれません。
「こほん、失礼いたしました。
それより、おにぎりだなんてどうされたのですか?
まさか、ご学友にお、想い人が…」
「ち、ちがいます!
サッカー部のバカたちにつくってやったのよ。
初めてだったけどそれなりにうまくできたと思っていたのに、
奉がつくってくれたものとなにが違うのかしらって。」
「お待ちください、マネージャーって夏未様がですか!?」
「あら、場寅から聞いてないの?
私、理事長代理として雷門サッカー部のマネージャーやってるのよ。」
おじいさま、いいえ仕おじいちゃん、
あなたは大人なのにホウレンソウのホの字もできないんでしょうか。
放心する私が最後に見たのは、夏未様の少し困った顔と
お茶のご用意を持って出ていかれる立派なマネージャー仕草でした。
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