六つ子
昔々のお話。これは俺達の物語。
まだ六つ子が小さかったころ。彼らは、あ
る研究所に閉じ込められていた。その組織の
名前は今も分からない。そして、その組織に
より六つ子は五つ子になった。
五つ子は、もうひとりの兄弟を捜して旅を
する。小さい頃に生き別れた兄弟を捜して。
これはそんな五つ子のお話。
兄弟が小さい頃は、いつも一緒でいること
があたりまえ。もはや自分の分身が兄弟であ
ると、自負できるほどである。まだまだ1人で
トイレにも行けない小さいとき、六つ子は捕
らえられた。実験のためだ。
一卵性の六つ子ともなると貴重なサンプル
であるため、組織は丁寧に扱った。この実験
は、バレてはならない。人間界における重罪
であるからだ。ただでさえこの研究には、す
でに何人犠牲になったか分からない。成功すればまさしく、血と涙の結晶であることは間
違いない。そのくらい大変なものだった。
六つ子を調べるうちにあることが分かっ
た。それは実験への適性だ。一卵性の六つ子
とはいえ、人並みにバラバラの個性があるよ
うだ(まだ見えてはいないが)。調べた結
果、1人だけずば抜けて適性が高かった。組織
はひとりにある取引を持ちかけた。
「なぁ、取引しないか?」
「取引?」
「そうさ。お前達を開放してやろう」
兄弟のひとりはとても喜んだ。研究所に連れ
てこられて2年。毎日毎日体を弄られてきた
兄弟にとって、その話は神のような話だっ
た。
「ほんとに!?」
「あぁ。だがお前さんは残るという条件だが
な」
「え?」
「今我らがやっている実験の適性がお前だけと
てつもなく高かったのだ。お前がここに残る
というのなら、ほかの兄弟は開放してやろう」
兄弟のひとりはとても悩んだ。兄弟が開放さ
れるのはとても嬉しい。だが自分ひとりここ
に残りあの日々をずっと過ごすとなると、と
ても怖かった。ひとりは悩んだ末に
「……分かった。僕はどうなってもいいから他
の兄弟を開放してよ」
「フッ。取引成立だな」
こうして六つ子は1人の兄弟を研究所に残
し、五つ子となった。
五つ子はその後、別々の里親に引き取られ
幸せに暮らした。
……とここまでならきっと五つ子にとってはハ
ッピーエンドだったのだろう。だが五つ子
は、自分の幸せよりも血塗られた道を歩むこ
とを決めた。
哀しいかな。ひとりは兄弟皆の幸せを願って
一人残ることを決めたのに…。
五つ子は、赤塚という名字の日本人のもと
に引き取られ5年の月日を過ごした。だが、
やはり兄弟のことをあきらめられない5人
は、日本のあるマフィアに15歳になったら集
合しようと決めた。5年後また会おうと。そ
れぞれは自分の得意分野を見つけ、マフィア
で鍛えることとした。
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