ep.1 はじまり
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「いやぁ、稲葉さんって二輪の免許持ってるんですね!」
「ええ。父の影響でバイクが好きだったので。」
「他に趣味はあるんですか?」
「んー……そうですね、色々手を出してますよ。
本を読んだり、コーヒー淹れたり……料理も好きですから。」
「同じですね!私もコーヒーと料理好きなんですよ!」
「そうなんですね、料理は知ってましたけどコーヒーも好きなんですね。」
移動時間中話し始めたが案外彼は運転中に話しかけられるのは気にしないタイプらしく普通に話を進めながらハンドルを切る。
最初の硬い空気は何処へやら着くまで色々彼のことを聞きながらのんびりとリラックスする。
歳が同じなだけあって自然と話題は降って来て気付けば20分ほどの移動もあっという間に着いてしまう。
「では、行きましょうか。」
先に運転席から降りたあと私の乗る方のドアを開けてくれる、別にそこまでしてくれなくてもいいのだけれどやけに手慣れたように嫌味っぽさもない彼の仕草に思わず乗せられてまるでお姫様のような気分になる。
「今日は撮影だけと聞いてますので、僕は廊下で待ってます。
一応スタジオには同席する予定ですが今のうちに何か欲しい物等あれば撮影が始まれば買いに行きますよ?」
2人横並びでスタッフに挨拶しながら廊下を進む。
「えっと……いや、特に大丈夫です。」
「わかりました、何かあれば合間にでも呼んでくれれば大丈夫なので。」
ニコッと微笑む彼に撮影前の緊張が少し緩む。
なるほど、歳が上だと気が使うことも多いけれど、近いとなるとこう言うメリットもあるのかと思うと案外悪くはない。
楽屋に入りメイクさんに挨拶をしてメイクをしてもらいながらここ一週間を思い返してみると、彼は不自然なくらい誠実で気付けばメンバーに溶け込んでいる。
さくはまだ仕方ないにしろ他のメンバーとは一通り話したようで、時折休憩時間中に後輩たちは話しかけては勉強を教えてもらっている。
中でも5期生組には特に親しみやすいお兄ちゃんと言った感じの接され方をしていて、最初は警戒していた茉央も楽しそうに話している。
ただ、今のところ彼は聞かれない限り深くも多くも話すことはなく何かを隠しているような気もするけれど、別に聞かれたことに答えないわけではないのでまあ気のせいだろう。
講義は基本私たち3期生組と全部同じにしてあるのは全体が忙しい時期に終わりのタイミングが被るように、そしてテスト対策等も兼ねていると本人は言っていたため、一週間だけだけど遅刻する様子も欠席する様子もなく。
そして教授とも話していることは多く、講義終わりに質問に行ったり談笑に行ったりと怖いくらいに好青年といった感じがする。
3期生の中では理々杏と楓が特に話しかけに行ってて、祐希は我関せず、綾乃に麗乃、蓮加はあの日いなかったのも相待ってかあまり話しかけにはいかない。
史緒里はまあ……よくわからない、話しかけに行ったかと思えばすぐ戻って来たり、横並びで座ってみたりと不思議な動きをしていると言った感じ。
まあとにかく悪い人ではないと言うのが今の所の結論だ。
「美波ちゃん、今日のマネージャーさん若くない?」
メイクも終盤に入った頃、聞きづらそうに話しかけられる。
確かにアイドルのマネージャーとしては若いし、年代が近いのも珍しいと言うか……そもそも不安要素にしかならないだろう。
「そうですね、同い年でマネージャー見習いなんですよ。
日村コーチの甥っ子らしいですけど。」
「なら心配ないのかなぁ?」
「まあみんないい感じに仲良くなってるので大丈夫だと思いますよ!」
「そっか!」
不安に思うところがあるのはメイクさんだけじゃなく、おそらくファンの人もこれを知れば一抹の不安を覚えるだろう。
そう思うと案外私たちの方こそ距離感に気を配っていかないといけないのかもしれない。
少し気を引き締めメイクを終えると服に袖を通す。
いつだってこうやってオシャレなものを着ると身が引き締まる。
私の一挙手一投足が誰かに影響を与えて買う買わないが決まったりするかもしれない世界、モデルさんが沢山いる中でアイドル兼任の学生がこの大役をもらってる責任を服を通して感じる。
(今日も……しっかり。)
気を引き締め目に力を入れて表に出ると彼はスッと横に立ちそのままスタジオに入る。
「今日はよろしくお願いします。」
私の挨拶で現場の空気がピンっと引き締まるのを感じる、この緊張感はアイドルだけじゃ味わえない。
1人の仕事の時に来る誰かじゃない私だけの視線が少し重い。
それを感じ取ったのか彼が少し前に立つ。
「マネージャー見習いの稲葉龍馬です。
未熟者ゆえ至らぬところも多いですがどうかよろしくお願いします。」
しゃんと伸びた背を折り深くお辞儀をした瞬間私に注がれた視線が一度外れて彼に向く。
「見習い?大変だね!歳いくつだい!」
「今年19です!」
「若っ!おいお前ら大人の仕事しっかりしてるところ見せてやれよー!」
「「はーい!」」
カメラマンに声をかけられるとスタッフが返事をし空気がフッと軽くなる。
「これなら少しやりやすいです?」
「……ありがとう。」
全く。
見透かされてしまうほど顔に出てたとは反省すべきだろう。
だけれど正直助かる。
セットに立ってポーズを指定された通りにしてシャッター音が響く。
遠目に見える彼は他のスタッフに話しかけながらメモを取るようにしつつも、私が見えない位置には絶対に行かない。
不思議な動きをしているけれど多分何か彼なりの理由があるのだろうし、後で帰りの車で聞けばいい。
そう思いながら私はカメラのレンズに集中するのだった。
「ええ。父の影響でバイクが好きだったので。」
「他に趣味はあるんですか?」
「んー……そうですね、色々手を出してますよ。
本を読んだり、コーヒー淹れたり……料理も好きですから。」
「同じですね!私もコーヒーと料理好きなんですよ!」
「そうなんですね、料理は知ってましたけどコーヒーも好きなんですね。」
移動時間中話し始めたが案外彼は運転中に話しかけられるのは気にしないタイプらしく普通に話を進めながらハンドルを切る。
最初の硬い空気は何処へやら着くまで色々彼のことを聞きながらのんびりとリラックスする。
歳が同じなだけあって自然と話題は降って来て気付けば20分ほどの移動もあっという間に着いてしまう。
「では、行きましょうか。」
先に運転席から降りたあと私の乗る方のドアを開けてくれる、別にそこまでしてくれなくてもいいのだけれどやけに手慣れたように嫌味っぽさもない彼の仕草に思わず乗せられてまるでお姫様のような気分になる。
「今日は撮影だけと聞いてますので、僕は廊下で待ってます。
一応スタジオには同席する予定ですが今のうちに何か欲しい物等あれば撮影が始まれば買いに行きますよ?」
2人横並びでスタッフに挨拶しながら廊下を進む。
「えっと……いや、特に大丈夫です。」
「わかりました、何かあれば合間にでも呼んでくれれば大丈夫なので。」
ニコッと微笑む彼に撮影前の緊張が少し緩む。
なるほど、歳が上だと気が使うことも多いけれど、近いとなるとこう言うメリットもあるのかと思うと案外悪くはない。
楽屋に入りメイクさんに挨拶をしてメイクをしてもらいながらここ一週間を思い返してみると、彼は不自然なくらい誠実で気付けばメンバーに溶け込んでいる。
さくはまだ仕方ないにしろ他のメンバーとは一通り話したようで、時折休憩時間中に後輩たちは話しかけては勉強を教えてもらっている。
中でも5期生組には特に親しみやすいお兄ちゃんと言った感じの接され方をしていて、最初は警戒していた茉央も楽しそうに話している。
ただ、今のところ彼は聞かれない限り深くも多くも話すことはなく何かを隠しているような気もするけれど、別に聞かれたことに答えないわけではないのでまあ気のせいだろう。
講義は基本私たち3期生組と全部同じにしてあるのは全体が忙しい時期に終わりのタイミングが被るように、そしてテスト対策等も兼ねていると本人は言っていたため、一週間だけだけど遅刻する様子も欠席する様子もなく。
そして教授とも話していることは多く、講義終わりに質問に行ったり談笑に行ったりと怖いくらいに好青年といった感じがする。
3期生の中では理々杏と楓が特に話しかけに行ってて、祐希は我関せず、綾乃に麗乃、蓮加はあの日いなかったのも相待ってかあまり話しかけにはいかない。
史緒里はまあ……よくわからない、話しかけに行ったかと思えばすぐ戻って来たり、横並びで座ってみたりと不思議な動きをしていると言った感じ。
まあとにかく悪い人ではないと言うのが今の所の結論だ。
「美波ちゃん、今日のマネージャーさん若くない?」
メイクも終盤に入った頃、聞きづらそうに話しかけられる。
確かにアイドルのマネージャーとしては若いし、年代が近いのも珍しいと言うか……そもそも不安要素にしかならないだろう。
「そうですね、同い年でマネージャー見習いなんですよ。
日村コーチの甥っ子らしいですけど。」
「なら心配ないのかなぁ?」
「まあみんないい感じに仲良くなってるので大丈夫だと思いますよ!」
「そっか!」
不安に思うところがあるのはメイクさんだけじゃなく、おそらくファンの人もこれを知れば一抹の不安を覚えるだろう。
そう思うと案外私たちの方こそ距離感に気を配っていかないといけないのかもしれない。
少し気を引き締めメイクを終えると服に袖を通す。
いつだってこうやってオシャレなものを着ると身が引き締まる。
私の一挙手一投足が誰かに影響を与えて買う買わないが決まったりするかもしれない世界、モデルさんが沢山いる中でアイドル兼任の学生がこの大役をもらってる責任を服を通して感じる。
(今日も……しっかり。)
気を引き締め目に力を入れて表に出ると彼はスッと横に立ちそのままスタジオに入る。
「今日はよろしくお願いします。」
私の挨拶で現場の空気がピンっと引き締まるのを感じる、この緊張感はアイドルだけじゃ味わえない。
1人の仕事の時に来る誰かじゃない私だけの視線が少し重い。
それを感じ取ったのか彼が少し前に立つ。
「マネージャー見習いの稲葉龍馬です。
未熟者ゆえ至らぬところも多いですがどうかよろしくお願いします。」
しゃんと伸びた背を折り深くお辞儀をした瞬間私に注がれた視線が一度外れて彼に向く。
「見習い?大変だね!歳いくつだい!」
「今年19です!」
「若っ!おいお前ら大人の仕事しっかりしてるところ見せてやれよー!」
「「はーい!」」
カメラマンに声をかけられるとスタッフが返事をし空気がフッと軽くなる。
「これなら少しやりやすいです?」
「……ありがとう。」
全く。
見透かされてしまうほど顔に出てたとは反省すべきだろう。
だけれど正直助かる。
セットに立ってポーズを指定された通りにしてシャッター音が響く。
遠目に見える彼は他のスタッフに話しかけながらメモを取るようにしつつも、私が見えない位置には絶対に行かない。
不思議な動きをしているけれど多分何か彼なりの理由があるのだろうし、後で帰りの車で聞けばいい。
そう思いながら私はカメラのレンズに集中するのだった。