ep.3 始まり
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翌朝、珍しく早く覚めた目を擦りながら用意を済ませて家を出る。
いつもは寝起きが悪いけれど、今日は朝焼けが眩しいくらいでも気にならないし澄んだ空気に心が躍る。
今日はいよいよ本番、あとはやるだけ!
そう思いながら歩いて心地よい緊張感と高揚感のバランスの中校内のステージに着く。
今日はここでやると思うとまだ早いのに俄然気合が湧いてくる。
「よし、頑張ろ!」
気合いを入れて楽屋に行こうとするとステージに彼が出てくる。
一つ一つステージに落ちたゴミを拾ったり、腰につけたテープを貼り直したり音響さんが流す音楽を確認しながらしっかりと入念にチェックしている。
別に隠れる意味もないのに見えない位置に移動してこっそり見る。
やましいことはなくても、なんもなく……見られたくないような気がして私は息を潜めた。
「私たちより真剣ですねぇ龍馬さん。」
「わっ!?」
「驚きすぎだよ和。」
「い、いつからいたの?」
「今さっきですよ、眠れなくて。」
突然後ろから声をかけられ驚くが幸いステージからここは少し遠いから聞こえてはいないだろう。
それにしても瑛紗が早いとは思ってもいなかった……
「多分失礼なこと考えてるけど、和の方が朝からテンション高いのおかしいよ。」
「え?」
「……『あ"……うん……はよっ。』とかじゃんいっつも。」
「……否定できないの悔しいなぁ。」
瑛紗のモノマネが似てるかどうかはさておきまあ否定はできない。
とりあえず荷物を持ち直して瑛紗と2人歩き始める。
時刻は7時46分。全体で準備運動しつつメイクを済ませて10時から通しのリハ、12時になったらお昼ご飯を食べて13時には本番。
楽屋に着くと2人横並びで慣れないメイクを始める。
いつもより少しだけ高いお気に入りのメイク道具を使いながら慎重に慎重にメイクをしながら瑛紗と話す。
「誰かが言ってたよね、顔に絵を描くのがメイクって。」
「あぁ、聞いたことありますね……私たち絵が得意な方ですけど、上手いかと言われると……ねぇ?」
「正直まだまだ難しいよね。」
筆を待って、ペンを持って、鉛筆を持って。
キャンパスに向かったり紙に向かったりするのはまあできなくもないし人より描ける方であると自負はしてるけれど、顔にするのは話が違うと思う。
なんて他愛のない話をしながらメイクをしていると続々とメンバーがやってくる。
「あれ?瑛紗と和が早い!?
どうしたの?何かあったの?」
「いやなんもないから。」
「嘘だー、だってインドア瑛紗に寝起き悪魔の和じゃん。」
「姫奈ー、私がインドアだとぉ?なぎはいいけど私の悪口はやめてもらおうかっ!」
「なんでよ!?私のも怒って!?」
次々メンバーが増えるたびに声が大きくなって楽屋の空気が明るく暖かくなる。
各々やることをやりながらもおしゃべりが止まらないのはJKの特徴なのだろう。
みんなでワイワイ話しながら少しずつ……少しずつみんながソワソワし始める。
リハーサルをあと一度やれば次は本番。やるだけのことはやっててもやっぱり怖い時は怖い!そんなことを思っていると楽屋の扉がゆっくり開か音がする。
慌てて顔を向けるとそこには梅さんと久保さんがいた。
「いやー、みんな緊張してるね!」
「梅も昔すごかったよ?
ほら落ち着かなくて楽屋ぐるぐる歩き回ってたじゃん?」
「あったねー。」
「だから大丈夫、歴史とか先輩がとか考えないでいいから!
みんなの1番可愛いところファンの人たちに見せに行こうね!」
「「はい!!!」」
大きな声に2人は笑いながら前にいた奈央に持ってきた差し入れを渡して楽屋から出ていく。
いよいよ通しのリハーサルが始まる。高鳴る胸の音を聞きながら私たちはステージに向かうのだった。
――――――――――――――――――――
Overtureが流れファンの皆さんの声援がどんどん大きくなっていく、うっすらと見えるその先には様々な色のペンライトがまるで絵のように広がっている。
私たちは何も言わず拍手を受けながらステージに立つと真ん中に輪になって集まる。
それは私たちがやりたかったことの一つ……というか憧れの一つというか……なんと言うべきなのかわからないけれど、これを一度本番でみんなでやってみたかった。
隣の咲月と美空と肩を組んでみんなと目を合わせる。
みんなが頷くと咲月が大きく大きく息を吐いてから思い切り吸い込む。
「さあみんないくよー!せーの!のー、ぎゅ、ぎゅ~!
せーーーの!!!
「「努力!感謝!笑顔!うちらは乃木坂上り坂46!!」」
「「わぁあああああ!!」」
歓声が客席から巻き起こると全身の毛が逆立つような感覚を覚える。
円陣から始まった私たちの5期生ライブは盛り上がってるけど正直裏でははちゃめちゃだ。
「小川さん、こっち!
マイク交換しちゃうから!」
「すみません、さっきから音が少し飛んでて!」
「いろはさん大丈夫?」
「はい、つまづいただけです!」
「爪とか痛めてないならいいけど、最悪の場合振付無理しないで!」
裏で走り回るみんなと、その倍くらい走り回ってる龍馬さんの姿。
マイクの確認、戻ったメンバーの立ち位置を確認するための表を持ってきて渡しながら直前のことについて話しながらスタッフにインカムで共有しながら進めていく。
本番が始まると彼は一切足を止めることなくあっちこっち走り回りながらも足を止めてたまにモニターを眺めて頷いてくれてるのが嬉しい。
始まってしまえばあっという間の時間でどんどん進んでいくライブにみんなが飛び出して笑顔で戻ってきてハイタッチをしたり、逆に私が飛び出してみんなとハイタッチをして戻ったり。
もちろん完璧なんて程遠い、振り付けが少しズレたり音程が少しズレたりMCで詰まったり。
それでもみんなあの日約束した笑顔を絶やさないことだけは守れてる。
観客から笑いが起きたり歓声が響いたり助けられながら今私たちは最後のMCを迎えている。
美空は相変わらず平常心というかファンの人たちをうまく笑わせながらアルノと二人で話を進めて、終わると同時にいろはと桜、茉央、奈央が曲のために出ていく。
「みっく、MC良かったよ!」
「ほんとー?緊張したぁ……。」
いよいよ美空達ラストMCも終わってあと3曲になるけれど、なんとかここまでやってこれた。
楽しくも少し緊張で怖かった時間ももう終わる。
今日はアンコールはなし……ユニット曲が終わるのを見守りながら胸に手を当てて心に問いかける。
やりたいこと、やれたかな?
みんなのいいとこ見てもらえたかな?
そんなことを思いながら最後の歌が始まるからステージに上がる。
曲が流れる前にもう一度ステージの上でみんなで顔を合わせる。
疲労は強い、思ったよりも疲れたけれどそれよりもやりきれた感の強いみんなの顔が眩しい。
ここから私たちは始まっていく。
初めての期別ライブ。
いろんな思いがあったこのライブの終わりはちょっと切なくて終わりまでの時間が少しまで伸びてほしいと共に、早く次は先輩たちと歌って踊りたい。
少しは背中に近づけただろうか?
まだまだ遠い背中の朧げな輪郭が見えた気になる私たちは立ち位置についた。
「最後の曲は私たち5期生の曲です……聴いてください、絶望の1秒前。」
大きな拍手と歓声の中、私たちのライブは終わる。
ここから始まる一つの物語に背中を押されながら私たちはこれからの未来を楽しみにするのだった。
--続く--
いつもは寝起きが悪いけれど、今日は朝焼けが眩しいくらいでも気にならないし澄んだ空気に心が躍る。
今日はいよいよ本番、あとはやるだけ!
そう思いながら歩いて心地よい緊張感と高揚感のバランスの中校内のステージに着く。
今日はここでやると思うとまだ早いのに俄然気合が湧いてくる。
「よし、頑張ろ!」
気合いを入れて楽屋に行こうとするとステージに彼が出てくる。
一つ一つステージに落ちたゴミを拾ったり、腰につけたテープを貼り直したり音響さんが流す音楽を確認しながらしっかりと入念にチェックしている。
別に隠れる意味もないのに見えない位置に移動してこっそり見る。
やましいことはなくても、なんもなく……見られたくないような気がして私は息を潜めた。
「私たちより真剣ですねぇ龍馬さん。」
「わっ!?」
「驚きすぎだよ和。」
「い、いつからいたの?」
「今さっきですよ、眠れなくて。」
突然後ろから声をかけられ驚くが幸いステージからここは少し遠いから聞こえてはいないだろう。
それにしても瑛紗が早いとは思ってもいなかった……
「多分失礼なこと考えてるけど、和の方が朝からテンション高いのおかしいよ。」
「え?」
「……『あ"……うん……はよっ。』とかじゃんいっつも。」
「……否定できないの悔しいなぁ。」
瑛紗のモノマネが似てるかどうかはさておきまあ否定はできない。
とりあえず荷物を持ち直して瑛紗と2人歩き始める。
時刻は7時46分。全体で準備運動しつつメイクを済ませて10時から通しのリハ、12時になったらお昼ご飯を食べて13時には本番。
楽屋に着くと2人横並びで慣れないメイクを始める。
いつもより少しだけ高いお気に入りのメイク道具を使いながら慎重に慎重にメイクをしながら瑛紗と話す。
「誰かが言ってたよね、顔に絵を描くのがメイクって。」
「あぁ、聞いたことありますね……私たち絵が得意な方ですけど、上手いかと言われると……ねぇ?」
「正直まだまだ難しいよね。」
筆を待って、ペンを持って、鉛筆を持って。
キャンパスに向かったり紙に向かったりするのはまあできなくもないし人より描ける方であると自負はしてるけれど、顔にするのは話が違うと思う。
なんて他愛のない話をしながらメイクをしていると続々とメンバーがやってくる。
「あれ?瑛紗と和が早い!?
どうしたの?何かあったの?」
「いやなんもないから。」
「嘘だー、だってインドア瑛紗に寝起き悪魔の和じゃん。」
「姫奈ー、私がインドアだとぉ?なぎはいいけど私の悪口はやめてもらおうかっ!」
「なんでよ!?私のも怒って!?」
次々メンバーが増えるたびに声が大きくなって楽屋の空気が明るく暖かくなる。
各々やることをやりながらもおしゃべりが止まらないのはJKの特徴なのだろう。
みんなでワイワイ話しながら少しずつ……少しずつみんながソワソワし始める。
リハーサルをあと一度やれば次は本番。やるだけのことはやっててもやっぱり怖い時は怖い!そんなことを思っていると楽屋の扉がゆっくり開か音がする。
慌てて顔を向けるとそこには梅さんと久保さんがいた。
「いやー、みんな緊張してるね!」
「梅も昔すごかったよ?
ほら落ち着かなくて楽屋ぐるぐる歩き回ってたじゃん?」
「あったねー。」
「だから大丈夫、歴史とか先輩がとか考えないでいいから!
みんなの1番可愛いところファンの人たちに見せに行こうね!」
「「はい!!!」」
大きな声に2人は笑いながら前にいた奈央に持ってきた差し入れを渡して楽屋から出ていく。
いよいよ通しのリハーサルが始まる。高鳴る胸の音を聞きながら私たちはステージに向かうのだった。
――――――――――――――――――――
Overtureが流れファンの皆さんの声援がどんどん大きくなっていく、うっすらと見えるその先には様々な色のペンライトがまるで絵のように広がっている。
私たちは何も言わず拍手を受けながらステージに立つと真ん中に輪になって集まる。
それは私たちがやりたかったことの一つ……というか憧れの一つというか……なんと言うべきなのかわからないけれど、これを一度本番でみんなでやってみたかった。
隣の咲月と美空と肩を組んでみんなと目を合わせる。
みんなが頷くと咲月が大きく大きく息を吐いてから思い切り吸い込む。
「さあみんないくよー!せーの!のー、ぎゅ、ぎゅ~!
せーーーの!!!
「「努力!感謝!笑顔!うちらは乃木坂上り坂46!!」」
「「わぁあああああ!!」」
歓声が客席から巻き起こると全身の毛が逆立つような感覚を覚える。
円陣から始まった私たちの5期生ライブは盛り上がってるけど正直裏でははちゃめちゃだ。
「小川さん、こっち!
マイク交換しちゃうから!」
「すみません、さっきから音が少し飛んでて!」
「いろはさん大丈夫?」
「はい、つまづいただけです!」
「爪とか痛めてないならいいけど、最悪の場合振付無理しないで!」
裏で走り回るみんなと、その倍くらい走り回ってる龍馬さんの姿。
マイクの確認、戻ったメンバーの立ち位置を確認するための表を持ってきて渡しながら直前のことについて話しながらスタッフにインカムで共有しながら進めていく。
本番が始まると彼は一切足を止めることなくあっちこっち走り回りながらも足を止めてたまにモニターを眺めて頷いてくれてるのが嬉しい。
始まってしまえばあっという間の時間でどんどん進んでいくライブにみんなが飛び出して笑顔で戻ってきてハイタッチをしたり、逆に私が飛び出してみんなとハイタッチをして戻ったり。
もちろん完璧なんて程遠い、振り付けが少しズレたり音程が少しズレたりMCで詰まったり。
それでもみんなあの日約束した笑顔を絶やさないことだけは守れてる。
観客から笑いが起きたり歓声が響いたり助けられながら今私たちは最後のMCを迎えている。
美空は相変わらず平常心というかファンの人たちをうまく笑わせながらアルノと二人で話を進めて、終わると同時にいろはと桜、茉央、奈央が曲のために出ていく。
「みっく、MC良かったよ!」
「ほんとー?緊張したぁ……。」
いよいよ美空達ラストMCも終わってあと3曲になるけれど、なんとかここまでやってこれた。
楽しくも少し緊張で怖かった時間ももう終わる。
今日はアンコールはなし……ユニット曲が終わるのを見守りながら胸に手を当てて心に問いかける。
やりたいこと、やれたかな?
みんなのいいとこ見てもらえたかな?
そんなことを思いながら最後の歌が始まるからステージに上がる。
曲が流れる前にもう一度ステージの上でみんなで顔を合わせる。
疲労は強い、思ったよりも疲れたけれどそれよりもやりきれた感の強いみんなの顔が眩しい。
ここから私たちは始まっていく。
初めての期別ライブ。
いろんな思いがあったこのライブの終わりはちょっと切なくて終わりまでの時間が少しまで伸びてほしいと共に、早く次は先輩たちと歌って踊りたい。
少しは背中に近づけただろうか?
まだまだ遠い背中の朧げな輪郭が見えた気になる私たちは立ち位置についた。
「最後の曲は私たち5期生の曲です……聴いてください、絶望の1秒前。」
大きな拍手と歓声の中、私たちのライブは終わる。
ここから始まる一つの物語に背中を押されながら私たちはこれからの未来を楽しみにするのだった。
--続く--