ep.3 始まり
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「……えぇ、こんなまとまらないことある?」
咲月が頭を抱えながらホワイトボードの前に立っている。
ホワイトボードに無数の楽曲名が並ぶがどれもこれも確かに選ぶのが難しい。
歴史があればあるだけもちろんいい楽曲は多くなるし、みんな各々思い入れのある曲ができるし期別とかでも無い限りできない楽曲だってある。
そう思うとみんなあれよあれよと出し始めた案が膨らんで膨らんで気づけば一面黒で埋まっている。
「確定する曲だけ決めよっか……。」
頭を抱えながらも一つだけ全員の共通意見として上がっていた曲の名前だけは真ん中に書いてある。
「絶望の1秒前は確定でいいよね。」
「そうやね……それはしたほうがええと思う。」
咲月の一言に茉央が頷き、全員が続いて頷く。
初めてもらった5期生楽曲はもちろんやりたいというのが共通認識だったのは一つ安心する。
それと同時にセンターを務めてるのが自分なのがまた少し緊張感をつれてくる。
そんな中で話し合いは続く。
この曲をやりたい。あの曲はこの曲と順番入れ替えたほうが良く無いか?ここでMCをするなら次の楽曲はこういう曲の方が良いんじゃ無いか?
初の期別ライブに心が沸き立っているのだろうか、みんな各々真剣に考えている。
だから咲月もしっかり聞きながら何度も頷いて消しては書いて、書いては消してを繰り返しはや1時間半が過ぎた。
『コンコンコンコン』
「え?誰だろ……はーい。」
1番扉に近かった姫奈がノックの音に振り向いてドアを開けにいく。
不思議そうにしながら開いたドアの先には彼が立っていた。
「差し入れです、みんな頑張ってるの聞こえたからさ。」
そう言って両手に持ったドーナツの箱を見てみんなが歓喜の声をあげる。
テーブルの真ん中に置かれたドーナツへ群がりながらみんな幸せそうに食べ始めるが、ちょっと今はそんな気分にはなれない。
セットリストの案をじっと眺めながら色々と考えてしまう。
MCは誰がやるべき?
この楽曲は本当にここでいい?
アンコールまで考えての流れにしてるけど、そもそもアンコールなんてしてくれるの?
ここ、連続して出番がある子がいるけど体力的にキツくない?
歌割り的にもここでメインパート連続するけど大丈夫?
本当にこれで全員目立ててる?
ファンの人たちは楽しめるの?
今考えるべき事じゃ無い。
それはわかっててもどうしても悩んでしまうのが私のめんどくさい性格で、眉間に皺が寄ってしまう。
みんなの輪から少し離れた私の横に彼がしゃがみ込んだ。
「ほら、きなこ味。」
「……え?」
「あれ?和風系は嫌だった?」
「いえ!いただきます!」
渡されたドーナツをゆっくり食べながらまた思考が沼にハマっていく。
深く深く思考の沼に足を取られかけていたら隣の彼が前を向いたままゆっくりと話し始めた。
「いいね、あのリスト。」
「そうですか?」
「うん、俺は好きかなぁ。」
「順番がですか?それとも構成が?」
「どっちも。
横に書いてる名前がセンターやる子でしょ?」
「ですね。」
そう言って一つ一つ考えるようにじーっとリストを眺めたあと笑顔でこっちを見て頷く。
「大丈夫だと思いますよ、みんなが目立ててそれでいて無理に詰まってないと思いますよ。」
「……よかったぁ。」
別に私が気にしないでも良いのはわかってる。
それでも私は今回座長という立場をいただいている。
期別ライブで座長なんてポジションは正直必要ないかもしれないけれど、期のリーダーと座長に任命された2人でみんなをまとめていくいわばサブリーダーのような存在はちょっと私には荷が重い。
でも少し荷が降りた気がする。
同期と違って外の人の意見に近い彼が大丈夫って言えば大丈夫に感じる。
そう思いながらみんなを見ると楽しそうにドーナツを食べている。
その笑顔をもっともっとみんなに見てほしい。
私たち5期生はこんな子だよ
茉央の照れ笑い可愛いでしょ?
瑛紗のドヤ顔ちょっと腹立たない?
姫奈って真剣な顔もいいんだよ?
あーやは妹みたいなだけじゃ無いよ、頑張り屋さんだよ?
みっくのあざとさ癖になるよね?
いろはの綺麗なダンス見惚れるよね?
桜の表現力は先輩にも負けてないよね?
咲月って実は綺麗なんだよ?
奈央の煽りからの笑顔キュンとするよね?
アルノは凛々しいふりしてその中身はおっちょこちょいなんだよ?
こんな私たちだからよろしくお願いします!
って伝えられるといいなって今から思う。
「心技体揃って初めてベストパフォーマンスになるんだよ。
背負う前にみんなで作るんだからね。」
「……はい。」
しゃがみ込んでいた彼が立って「では、用事があるので失礼します!」と言って去っていく。
その背中にみんなで感謝を告げ、ドーナツ休憩を挟んでいると少し離れたところにいたはずの瑛紗がニュッと現れる。
「和は龍馬さんのお気に入りですねぇ。」
「はい!?」
ニヤニヤ手を口に当て笑う瑛紗に思わず目を見開くけど彼女は気にすることなくニヤニヤと笑っている。
別にお気に入りも何も気を遣われてるだけなんだけれど、それをそのまま伝えてもからかわれるだけ。
むしろヒートアップして周りが寄ってくる方がめんどくさい事になるからと大人しく冷静に返す。
「輪から外れてるから心配されただけだよ。」
「あぁ、確かに……また考え込んでたでしょ?」
「まあ……ね。」
「ダメだよ和、責任感と自分に厳しいは違うんだから。」
いつもネガティブサイドの瑛紗だからこそわかる事なのかもしれないけれど、どうしてもそういう考えにはなってしまう。
良くも悪くも私たち2人はネガティブなところがあるのは共通しているけれど
瑛紗はどこか最後に「まあ私なんで」って開き直れる強さがあるのに対して、私は普段強気に出れてもここぞという場面でネガティブが顔を出して足を引っ張られる。
意外と正反対な気もする私たちの間を押し除けるように美空が間に挟まりにくる。
「恋の匂いがしたぞぉ〜!」
「何バカなこと言ってんのみっく……。」
「だって甘い甘い匂いがしたんだもん。」
呆れたようにおでこを叩くとぷーっと頬を膨らませる美空だが相変わらず誰がいなくともあざとい感じを止める気がないのに本気を感じる。
実際ファンの人たちからも人気は高いし先輩からも可愛がられてることが増えてる……まあ、最近愛が重いって言われ始めてるけど、主にあーやとかから。
まあこれをいうとあーやがまたウザ絡みされちゃうから内緒なんだけどね。
「恋だなんだより……私は半月しかないライブの成功が大事だよ。」
「ほーんと真面目ちゃんなんですからぁ……まあ実際難しいよねぇ。」
しゃがんだままの瑛紗がポケットのペンを取り出し指先に乗せて遊びながら話を続ける。
「先輩たちが作ってきたものって、それはそれは偉大で素晴らしいもので、ファンの方たちがいっぱいいてモデルさんのお仕事したり、私たちの得意な分野のお仕事をいただいたり、してるわけですよ。」
落としたペンを拾いながら今度は床に立てて倒さないようにどこからか取り出した2本目のペンを積み上げる。
正直全く何がしたいかわからないけれど……。
「でもそれと同時に思うわけです。
池田たちのゴールってなんなんですかねぇ。」
「……。」
やけに真剣な顔つきになりながらしていたペンが倒れる音だけが聞こえる。
瑛紗ってたまに怖い。
ふわふわゆるゆる笑ってたかと思えば、突然こうやって核心に迫ってみたり哲学的な感じで話し始めたりする。
腐っても5期生イチの頭脳派はダテじゃない。
「ま、考えるだけ無駄ですねぇ……私が言いたいのは
考えすぎたら禿げ和になるよ?」
「う"っ……。」
「それに恋だなんだ答え出すには色々足りませんって。
憧れの人もお兄ちゃんも先輩も家族も近所の猫も道端の花も、どれもこれも好きって答えは出てもなんの好きかなんてすぐ出ないもんですよ。」
ペンを拾って立ち上がると欠伸をしながら背中を伸ばした彼女がいう。
というかなんで私が恋してる前提で話が進んでるのか全くわからないんだけど、まあそれを除けば考え方としては割と大事な事を教えられた気がする。
「ちなみに池田は好きです龍馬さん。」
「え!?」
思わぬ一言に大きな声を出してしまって全員がこっちを向く。
これはまずいと思いあたふたしながら言い訳を考えていると瑛紗はニヤリと笑った。
「だって焼肉奢ってくれますし!」
「え!?なに?和焼肉奢ってくれるの?
日村コーチくらい太っ腹だねぇ。」
「言ってないよね!?」
悪ノリするように笑う姫奈に返しながら私は瑛紗の横に並ぶ。
「ねー、瑛紗!」
「おーほほほほっ。」
変な高笑いをする瑛紗にみんなの笑みが溢れる。
でも本当の話だ。
今はこのみんな11人でいいものを作りたい。
それ以外は正直考えられないのだから。
咲月が頭を抱えながらホワイトボードの前に立っている。
ホワイトボードに無数の楽曲名が並ぶがどれもこれも確かに選ぶのが難しい。
歴史があればあるだけもちろんいい楽曲は多くなるし、みんな各々思い入れのある曲ができるし期別とかでも無い限りできない楽曲だってある。
そう思うとみんなあれよあれよと出し始めた案が膨らんで膨らんで気づけば一面黒で埋まっている。
「確定する曲だけ決めよっか……。」
頭を抱えながらも一つだけ全員の共通意見として上がっていた曲の名前だけは真ん中に書いてある。
「絶望の1秒前は確定でいいよね。」
「そうやね……それはしたほうがええと思う。」
咲月の一言に茉央が頷き、全員が続いて頷く。
初めてもらった5期生楽曲はもちろんやりたいというのが共通認識だったのは一つ安心する。
それと同時にセンターを務めてるのが自分なのがまた少し緊張感をつれてくる。
そんな中で話し合いは続く。
この曲をやりたい。あの曲はこの曲と順番入れ替えたほうが良く無いか?ここでMCをするなら次の楽曲はこういう曲の方が良いんじゃ無いか?
初の期別ライブに心が沸き立っているのだろうか、みんな各々真剣に考えている。
だから咲月もしっかり聞きながら何度も頷いて消しては書いて、書いては消してを繰り返しはや1時間半が過ぎた。
『コンコンコンコン』
「え?誰だろ……はーい。」
1番扉に近かった姫奈がノックの音に振り向いてドアを開けにいく。
不思議そうにしながら開いたドアの先には彼が立っていた。
「差し入れです、みんな頑張ってるの聞こえたからさ。」
そう言って両手に持ったドーナツの箱を見てみんなが歓喜の声をあげる。
テーブルの真ん中に置かれたドーナツへ群がりながらみんな幸せそうに食べ始めるが、ちょっと今はそんな気分にはなれない。
セットリストの案をじっと眺めながら色々と考えてしまう。
MCは誰がやるべき?
この楽曲は本当にここでいい?
アンコールまで考えての流れにしてるけど、そもそもアンコールなんてしてくれるの?
ここ、連続して出番がある子がいるけど体力的にキツくない?
歌割り的にもここでメインパート連続するけど大丈夫?
本当にこれで全員目立ててる?
ファンの人たちは楽しめるの?
今考えるべき事じゃ無い。
それはわかっててもどうしても悩んでしまうのが私のめんどくさい性格で、眉間に皺が寄ってしまう。
みんなの輪から少し離れた私の横に彼がしゃがみ込んだ。
「ほら、きなこ味。」
「……え?」
「あれ?和風系は嫌だった?」
「いえ!いただきます!」
渡されたドーナツをゆっくり食べながらまた思考が沼にハマっていく。
深く深く思考の沼に足を取られかけていたら隣の彼が前を向いたままゆっくりと話し始めた。
「いいね、あのリスト。」
「そうですか?」
「うん、俺は好きかなぁ。」
「順番がですか?それとも構成が?」
「どっちも。
横に書いてる名前がセンターやる子でしょ?」
「ですね。」
そう言って一つ一つ考えるようにじーっとリストを眺めたあと笑顔でこっちを見て頷く。
「大丈夫だと思いますよ、みんなが目立ててそれでいて無理に詰まってないと思いますよ。」
「……よかったぁ。」
別に私が気にしないでも良いのはわかってる。
それでも私は今回座長という立場をいただいている。
期別ライブで座長なんてポジションは正直必要ないかもしれないけれど、期のリーダーと座長に任命された2人でみんなをまとめていくいわばサブリーダーのような存在はちょっと私には荷が重い。
でも少し荷が降りた気がする。
同期と違って外の人の意見に近い彼が大丈夫って言えば大丈夫に感じる。
そう思いながらみんなを見ると楽しそうにドーナツを食べている。
その笑顔をもっともっとみんなに見てほしい。
私たち5期生はこんな子だよ
茉央の照れ笑い可愛いでしょ?
瑛紗のドヤ顔ちょっと腹立たない?
姫奈って真剣な顔もいいんだよ?
あーやは妹みたいなだけじゃ無いよ、頑張り屋さんだよ?
みっくのあざとさ癖になるよね?
いろはの綺麗なダンス見惚れるよね?
桜の表現力は先輩にも負けてないよね?
咲月って実は綺麗なんだよ?
奈央の煽りからの笑顔キュンとするよね?
アルノは凛々しいふりしてその中身はおっちょこちょいなんだよ?
こんな私たちだからよろしくお願いします!
って伝えられるといいなって今から思う。
「心技体揃って初めてベストパフォーマンスになるんだよ。
背負う前にみんなで作るんだからね。」
「……はい。」
しゃがみ込んでいた彼が立って「では、用事があるので失礼します!」と言って去っていく。
その背中にみんなで感謝を告げ、ドーナツ休憩を挟んでいると少し離れたところにいたはずの瑛紗がニュッと現れる。
「和は龍馬さんのお気に入りですねぇ。」
「はい!?」
ニヤニヤ手を口に当て笑う瑛紗に思わず目を見開くけど彼女は気にすることなくニヤニヤと笑っている。
別にお気に入りも何も気を遣われてるだけなんだけれど、それをそのまま伝えてもからかわれるだけ。
むしろヒートアップして周りが寄ってくる方がめんどくさい事になるからと大人しく冷静に返す。
「輪から外れてるから心配されただけだよ。」
「あぁ、確かに……また考え込んでたでしょ?」
「まあ……ね。」
「ダメだよ和、責任感と自分に厳しいは違うんだから。」
いつもネガティブサイドの瑛紗だからこそわかる事なのかもしれないけれど、どうしてもそういう考えにはなってしまう。
良くも悪くも私たち2人はネガティブなところがあるのは共通しているけれど
瑛紗はどこか最後に「まあ私なんで」って開き直れる強さがあるのに対して、私は普段強気に出れてもここぞという場面でネガティブが顔を出して足を引っ張られる。
意外と正反対な気もする私たちの間を押し除けるように美空が間に挟まりにくる。
「恋の匂いがしたぞぉ〜!」
「何バカなこと言ってんのみっく……。」
「だって甘い甘い匂いがしたんだもん。」
呆れたようにおでこを叩くとぷーっと頬を膨らませる美空だが相変わらず誰がいなくともあざとい感じを止める気がないのに本気を感じる。
実際ファンの人たちからも人気は高いし先輩からも可愛がられてることが増えてる……まあ、最近愛が重いって言われ始めてるけど、主にあーやとかから。
まあこれをいうとあーやがまたウザ絡みされちゃうから内緒なんだけどね。
「恋だなんだより……私は半月しかないライブの成功が大事だよ。」
「ほーんと真面目ちゃんなんですからぁ……まあ実際難しいよねぇ。」
しゃがんだままの瑛紗がポケットのペンを取り出し指先に乗せて遊びながら話を続ける。
「先輩たちが作ってきたものって、それはそれは偉大で素晴らしいもので、ファンの方たちがいっぱいいてモデルさんのお仕事したり、私たちの得意な分野のお仕事をいただいたり、してるわけですよ。」
落としたペンを拾いながら今度は床に立てて倒さないようにどこからか取り出した2本目のペンを積み上げる。
正直全く何がしたいかわからないけれど……。
「でもそれと同時に思うわけです。
池田たちのゴールってなんなんですかねぇ。」
「……。」
やけに真剣な顔つきになりながらしていたペンが倒れる音だけが聞こえる。
瑛紗ってたまに怖い。
ふわふわゆるゆる笑ってたかと思えば、突然こうやって核心に迫ってみたり哲学的な感じで話し始めたりする。
腐っても5期生イチの頭脳派はダテじゃない。
「ま、考えるだけ無駄ですねぇ……私が言いたいのは
考えすぎたら禿げ和になるよ?」
「う"っ……。」
「それに恋だなんだ答え出すには色々足りませんって。
憧れの人もお兄ちゃんも先輩も家族も近所の猫も道端の花も、どれもこれも好きって答えは出てもなんの好きかなんてすぐ出ないもんですよ。」
ペンを拾って立ち上がると欠伸をしながら背中を伸ばした彼女がいう。
というかなんで私が恋してる前提で話が進んでるのか全くわからないんだけど、まあそれを除けば考え方としては割と大事な事を教えられた気がする。
「ちなみに池田は好きです龍馬さん。」
「え!?」
思わぬ一言に大きな声を出してしまって全員がこっちを向く。
これはまずいと思いあたふたしながら言い訳を考えていると瑛紗はニヤリと笑った。
「だって焼肉奢ってくれますし!」
「え!?なに?和焼肉奢ってくれるの?
日村コーチくらい太っ腹だねぇ。」
「言ってないよね!?」
悪ノリするように笑う姫奈に返しながら私は瑛紗の横に並ぶ。
「ねー、瑛紗!」
「おーほほほほっ。」
変な高笑いをする瑛紗にみんなの笑みが溢れる。
でも本当の話だ。
今はこのみんな11人でいいものを作りたい。
それ以外は正直考えられないのだから。