ep.2 勘違いと誠実さ
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「……。」
「……。」
「……。」
映画館を出て近所のカフェに向かい、私と和が横に並んで向かいに彼が座る。
少し青ざめた顔の3人で顔を突き合わせながら重たい空気が流れるが、それもこれも急に掴むのが悪……いわけない、私が咄嗟に手が出たのが悪い。
「ごめんなさい梅さん……。」
「いや、私が悪いと思う……ごめんなさい龍馬さん、不審者扱いして。」
「いやまあ……うん、メンバー守るためだったと思えば普通……ですよ多分。」
別に責めるつもりの無さそうな声にむしろ罪悪感が増していく。
話の内容はようするに来月ある3・4・5期生連続ライブの差し入れを作るために欲しいものがあった和が私たちには内緒にするために買い物をしたかった。
でも、全部買って持って帰るとなると荷物が多いし複数回に分けるのはレッスン時間を削るから嫌。
それならまとめて休みの今日に買うために荷物持ちが欲しかった、それで最後の映画館も史緒里がポスターにいたから観て帰る?って話をしてただけ。
つまり全く罪はない……完全な私の空回りだ。
「ほんとごめんなさい……。」
「大丈夫ですよ、腰の入ったいい正拳突きでした……。」
笑いながらそう言ってコーヒーを飲む彼に申し訳ない気持ちと、和を疑ってしまって罪悪感で心が痛い。
そもそも責任感も強くて、真面目に前に立って5期生を引っ張っていく彼女を疑ったのが私の失態。
「そう言えば美波さん来たし2人で見てきたらどうです?
もう一本後の上映も19時とかですし、門限間に合うと思いますよ。」
「え、でも龍馬さんは?」
「俺はまあ荷物もありますし、その辺で時間潰して終わったら戻りますよ。」
そう言ってコーヒーを飲み干すと荷物を持って立ち去る彼の背中を見送る。
そんなことさせても良いのかとは思うが多分彼は彼なりに気を遣ってるんだろう。
和の荷物は他のメンバーにバレてはいけないし、先に届けることもできない。
かと言ってこれを持たせるのも違うってことでそういう意見になったんだろうけど、流石に映画が終わるまで待たせる気にもなれない。
「どうする和?」
「いやっ……流石に……。」
「だよねぇ……今度行こっか。」
「はい!梅さんとお出かけ楽しみです!」
「もー!可愛いんだから!」
隣でえへへと笑う彼女を撫でてそのまま会計札を探すが見当たらずにレジに向かうと「もう払われてますよ、追加ないのでそのままで大丈夫です。」と言われて苦笑いが出る。
完全に先回りして気を遣われてるのが申し訳ないというか、情けないというか……本当に彼は同い年なのだろうか?
考えても仕方ないので携帯を取り出して彼に電話をかける。
2コールほどなって電話に出たので取り敢えず要件を伝える。
「映画は来週にしましたので、帰りましょう。」
「そうなんです?」
「はい、ネットで席見たらいい感じの席空いてなかったので。」
「あー……ギリギリですもんね。」
「なので取り敢えず駅に向かいますので、そちらで合流しましょう。」
「はい、わかりました。
10分ほどで着きますので。」
そう言って電話を切ろうとする彼に慌てて話しかける。
「それと、ここの奢り分私が出すので後でお金渡しますから。」
「いや別にそれ「では!」」
彼が言い切る前にこっちが切って満足する。
多分これ以上問答は無駄だし何より堂々巡りの平行線になるだけ。
それにそもそも今回の件は私に非があるから奢ってもらうなんて言語道断。
駅に向かって和と歩きながら他愛のない話をする。
今度の期別ライブに向けて考えてること、悩み事、先輩たちはどうしてたか。
真剣な和に一つずつ答えながらふと懐かしくなる。
私もこうして初めての期別の前は玲香さんの取り巻きのごとくついて回って色々相談した。
セットリストの順番、先輩たちの曲をやる時のコツ、MCはどうしたらいいのか、合間のために準備しておいた方がいいもの。
全部が全部初体験になるから不安でそれと同時に高揚感がある。
普段なら先輩とやるからと一歩引いてた後輩たちが自分達で!と頑張る姿を見るとやっぱり嬉しくて、思わず今回も泣いてしまう気がする。
「梅さん、ありがとうございます。」
「ううん、和も無理しすぎないでよ?
座長だからって全部自分が!じゃなくていいんだからね?」
「はい!!」
そう言って返事をする和と駅に着くと駅前で彼はすでに待っていて、私は駆け寄ると彼のカバンに2000円ほどねじ込む。
両手に荷物を持った彼はなす術なく入れられて私の顔を見て諦めたように「じゃあごちそうさまです。」と言って電車へと3人で向かう。
すぐに来た電車に揺られ最寄りに着くと和はまた私に聞きたかったことを聞きながら興味深そうに頷き、そして彼は後ろでそれを見守る。
そして4・5期生の寮に着くと和が頭を下げた。
「ありがとうございます龍馬さん!」
「いえいえ、成功すること願ってます。」
「はい!梅さんも相談に乗っていただきありがとうございます!」
「どういたしまして?
気をつけてね!」
門を越えて帰っていく和を見送って改めて2人で歩き始める。
別に何か話すわけでもない、今日のご飯何にしようかなとか、今日実は目的だった買い物をそっちのけでストーカーに費やしたこと……でもそれがちょっぴり楽しかったこと。
彼と一番付き合いがあるのは私だから当たり前だけれど本当思ったよりスムーズに仲良くなれた。
別にこんな他愛のない話誰としたって構わないようで、話す相手っていつも選んでしまう。
興味があることないこと、気になること気にしてないこと。
気を遣うようで気を遣われてたりとメンバーだからこそ話していいこと、話せないこと。
気を抜いていいところダメなところ。
たくさん増えてたくさん幸せをもらうと同時に気になることも少しだけ増えた今、なんだか不思議と話せる他愛のない話が楽で嬉しい。
「じゃ、美波さんここでしょ?」
「うん、ありがとう。」
気づけば着いたシェアハウスの前に立って彼とお別れをする。
別に名残惜しさはないけど、もう少し話したいような、それでいてずっといるのは気まずいような変な関係。
その不思議な感覚とお別れして家に帰ると眠そうに祐希が玄関に来る。
「お腹空いた……。」
「もー……私はお母さんか!」
「ママーご飯。」
「もう!」
背中を押しながらリビングに戻る。
明日も朝が早いし、今日話にもなった通り期別ライブが近いとなるとやることは多い。
少し気を引き締めながら私は台所へと向かうのだった。
--続く--
「……。」
「……。」
映画館を出て近所のカフェに向かい、私と和が横に並んで向かいに彼が座る。
少し青ざめた顔の3人で顔を突き合わせながら重たい空気が流れるが、それもこれも急に掴むのが悪……いわけない、私が咄嗟に手が出たのが悪い。
「ごめんなさい梅さん……。」
「いや、私が悪いと思う……ごめんなさい龍馬さん、不審者扱いして。」
「いやまあ……うん、メンバー守るためだったと思えば普通……ですよ多分。」
別に責めるつもりの無さそうな声にむしろ罪悪感が増していく。
話の内容はようするに来月ある3・4・5期生連続ライブの差し入れを作るために欲しいものがあった和が私たちには内緒にするために買い物をしたかった。
でも、全部買って持って帰るとなると荷物が多いし複数回に分けるのはレッスン時間を削るから嫌。
それならまとめて休みの今日に買うために荷物持ちが欲しかった、それで最後の映画館も史緒里がポスターにいたから観て帰る?って話をしてただけ。
つまり全く罪はない……完全な私の空回りだ。
「ほんとごめんなさい……。」
「大丈夫ですよ、腰の入ったいい正拳突きでした……。」
笑いながらそう言ってコーヒーを飲む彼に申し訳ない気持ちと、和を疑ってしまって罪悪感で心が痛い。
そもそも責任感も強くて、真面目に前に立って5期生を引っ張っていく彼女を疑ったのが私の失態。
「そう言えば美波さん来たし2人で見てきたらどうです?
もう一本後の上映も19時とかですし、門限間に合うと思いますよ。」
「え、でも龍馬さんは?」
「俺はまあ荷物もありますし、その辺で時間潰して終わったら戻りますよ。」
そう言ってコーヒーを飲み干すと荷物を持って立ち去る彼の背中を見送る。
そんなことさせても良いのかとは思うが多分彼は彼なりに気を遣ってるんだろう。
和の荷物は他のメンバーにバレてはいけないし、先に届けることもできない。
かと言ってこれを持たせるのも違うってことでそういう意見になったんだろうけど、流石に映画が終わるまで待たせる気にもなれない。
「どうする和?」
「いやっ……流石に……。」
「だよねぇ……今度行こっか。」
「はい!梅さんとお出かけ楽しみです!」
「もー!可愛いんだから!」
隣でえへへと笑う彼女を撫でてそのまま会計札を探すが見当たらずにレジに向かうと「もう払われてますよ、追加ないのでそのままで大丈夫です。」と言われて苦笑いが出る。
完全に先回りして気を遣われてるのが申し訳ないというか、情けないというか……本当に彼は同い年なのだろうか?
考えても仕方ないので携帯を取り出して彼に電話をかける。
2コールほどなって電話に出たので取り敢えず要件を伝える。
「映画は来週にしましたので、帰りましょう。」
「そうなんです?」
「はい、ネットで席見たらいい感じの席空いてなかったので。」
「あー……ギリギリですもんね。」
「なので取り敢えず駅に向かいますので、そちらで合流しましょう。」
「はい、わかりました。
10分ほどで着きますので。」
そう言って電話を切ろうとする彼に慌てて話しかける。
「それと、ここの奢り分私が出すので後でお金渡しますから。」
「いや別にそれ「では!」」
彼が言い切る前にこっちが切って満足する。
多分これ以上問答は無駄だし何より堂々巡りの平行線になるだけ。
それにそもそも今回の件は私に非があるから奢ってもらうなんて言語道断。
駅に向かって和と歩きながら他愛のない話をする。
今度の期別ライブに向けて考えてること、悩み事、先輩たちはどうしてたか。
真剣な和に一つずつ答えながらふと懐かしくなる。
私もこうして初めての期別の前は玲香さんの取り巻きのごとくついて回って色々相談した。
セットリストの順番、先輩たちの曲をやる時のコツ、MCはどうしたらいいのか、合間のために準備しておいた方がいいもの。
全部が全部初体験になるから不安でそれと同時に高揚感がある。
普段なら先輩とやるからと一歩引いてた後輩たちが自分達で!と頑張る姿を見るとやっぱり嬉しくて、思わず今回も泣いてしまう気がする。
「梅さん、ありがとうございます。」
「ううん、和も無理しすぎないでよ?
座長だからって全部自分が!じゃなくていいんだからね?」
「はい!!」
そう言って返事をする和と駅に着くと駅前で彼はすでに待っていて、私は駆け寄ると彼のカバンに2000円ほどねじ込む。
両手に荷物を持った彼はなす術なく入れられて私の顔を見て諦めたように「じゃあごちそうさまです。」と言って電車へと3人で向かう。
すぐに来た電車に揺られ最寄りに着くと和はまた私に聞きたかったことを聞きながら興味深そうに頷き、そして彼は後ろでそれを見守る。
そして4・5期生の寮に着くと和が頭を下げた。
「ありがとうございます龍馬さん!」
「いえいえ、成功すること願ってます。」
「はい!梅さんも相談に乗っていただきありがとうございます!」
「どういたしまして?
気をつけてね!」
門を越えて帰っていく和を見送って改めて2人で歩き始める。
別に何か話すわけでもない、今日のご飯何にしようかなとか、今日実は目的だった買い物をそっちのけでストーカーに費やしたこと……でもそれがちょっぴり楽しかったこと。
彼と一番付き合いがあるのは私だから当たり前だけれど本当思ったよりスムーズに仲良くなれた。
別にこんな他愛のない話誰としたって構わないようで、話す相手っていつも選んでしまう。
興味があることないこと、気になること気にしてないこと。
気を遣うようで気を遣われてたりとメンバーだからこそ話していいこと、話せないこと。
気を抜いていいところダメなところ。
たくさん増えてたくさん幸せをもらうと同時に気になることも少しだけ増えた今、なんだか不思議と話せる他愛のない話が楽で嬉しい。
「じゃ、美波さんここでしょ?」
「うん、ありがとう。」
気づけば着いたシェアハウスの前に立って彼とお別れをする。
別に名残惜しさはないけど、もう少し話したいような、それでいてずっといるのは気まずいような変な関係。
その不思議な感覚とお別れして家に帰ると眠そうに祐希が玄関に来る。
「お腹空いた……。」
「もー……私はお母さんか!」
「ママーご飯。」
「もう!」
背中を押しながらリビングに戻る。
明日も朝が早いし、今日話にもなった通り期別ライブが近いとなるとやることは多い。
少し気を引き締めながら私は台所へと向かうのだった。
--続く--