ep.2 勘違いと誠実さ
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「稲葉さーん、あれとってください!」
「まだ食べるの!?」
「おやおや?ギブアップですかー?情けないですねぇ。」
「いや、あの……えぇ?どこに入ってるんだろそれ。」
想定外も想定外。
流石の瑛紗クオリティとでも言うべきか食事会が始まるとあっさり瑛紗は彼にガンガンいくようになった。
肉を焼いてくれる彼の隣に私、向かいには美空、瑛紗、茉央の順番で座っていて最初こそもじもじしていたがご飯が始まると「池田さんすごい食べるんだね。」の一言を皮切りに彼女は嬉しそうに話し始めた。
そして気づけばあれよあれよと打ち解けて2人で話しながらよく食べている。
そしてもう1人、茉央もきっかけを探していたのだが思わぬ2人の共通点に美空が気づいた。
「あれ?龍馬さんも左利きなんですか?」
「ん?そうだよ、基本左利き。」
「茉央もだよね!」
「え、うん……そうやね。」
「……ご飯の時の席、すごく気を遣うよね。」
「わ、わかります!それめっちゃ!」
「だよね!席狭いと当たるからさ……。」
「そうなんですよ!肘ぶつけたりするから、いつもこうシュンとなってしまうんです。」
「今日も対角線だもんね僕ら。」
そう左利き。
気づかなかったけど確かに私と遠い方の手を使ってて自然といつもより隣に気を遣わなくていいというか、やけに広く感じたのはそれが理由だったのか。
とまあこんな感じで話し始めると意外と2人も打ち解けてくれて私も満足だ。
そして程よく食事が落ち着いたとき聞きたかったことがあった。
それはたぶんほかの先輩たちも聞きたかったことで、もしかしたら梅澤さんなら何か聞いてるかもしれないが、はたして私たちが聞いてもいいのか……。
迷いながら烏龍茶を飲むと瑛紗はあっさりと言ってしまう。
「なんで、マネージャーなんです?」
「ん?どういう意味?」
「だって18歳ですよね、大学一年でマネージャーするために芸能科って変わってません?」
「そう?進路は決めてて普通じゃない?」
「……池田は再来年が怖くなってきました。」
初めて彼から明確に「これ以上は話す気はありませんよ」という意思を感じて背筋を伸ばす。
今までも「彼女いるんですか?」とか「今度遊びに行きましょう!」とかはやんわり躱していたけど、今回ばかりは明確に話しませんアピールをしている。
(これは聞けないなあ……。)
その後も他愛のない話をつづけながら席の時間ぎりぎりまで粘ってから店を出る。
「じゃあ送りますよ。」
「え?いいですいいです!」
会計も彼が出してくれたし申し訳なさでいっぱいのなのにそれに加えて送ってもらうなんてのはとてもじゃないが恐れ多い。
慌てて断る私を無視して美空は
「ありがとうございます!
暗くて怖いんですよ……。」
「いえいえ、入り口まで送りますから。」
なんて言って送る流れを確定させてる。
慌てて断るために前に出た私の肩を瑛紗が掴む。
「ダメですよ、送ってもらわないと。」
夕方は逃げてたくせにやけに真剣な顔で言う瑛紗に違和感を覚えるが、彼女は取り出した携帯画面を見せてくる。
「22時半回ってます、ここから寮まで30分弱……私たちだけじゃ補導対象です。」
「……しまった。」
思わず楽しくて忘れていたが現在時刻は22時47分。
電車を使って走ってもぎりぎりの時間でこれでは私たちだけで歩いて補導なんてされようものなら先輩たちにも迷惑がかかる。
「それに寮母さんに説明も必要ですから。」
「むぐぐ……。
失敗したぁ……。」
その声が聞こえたのか彼は振り返り美空を置いて後ろに来る。
「ほらお嬢さんたち前歩きましょう、後ろは見えないからね。」
そう言って私たちの後ろを歩く。
彼の言葉に従い瑛紗は少し前の茉央と美空と歩き始め、私は空いた彼の隣で歩く。
長い脚が小刻みにゆっくり踏み出され、私に合わせるように一歩一歩進む彼は前を向いたまま
「和さんはどうです?
最近何か困ったこととか。」
「そうですね……今度の瑛紗との撮影なんですけど、ちょっと初めての2人撮影で緊張してますね。」
「なるほど、それってもしかして週末の土曜日では?」
「え?あ、はいそうです!」
カバンをあさり手帳を確認すると、彼も同じように確認をして頷く。
「うん、その日僕が担当。」
「え!?ほんとですか!?」
「うん、送迎だね。」
「うわっ、緊張増したかも。」
「代わりましょうか?」
「嘘嘘!冗談です!」
少し申し訳なさそうな彼だけど、別に本心じゃない。
前を歩く3人も今日で打ち解けたし、多分これからみんなも打ち解けていってくれる。
別に居心地が悪いと思われたくないとか、そんな感情じゃなくて
ただみんなを支えてくれる人なんだから大切にしたいって感じ。
来年度になれば新しく6期生が編入して私たちもお姉さんメンバーの仲間入り。
その時にこの人は怖くないよー無害だよーって言えるくらいの仲にはなっておきたい。
「ねえ瑛紗、週末の撮影さ龍馬さんが送迎らしいよー。」
「なんですと。
ならまた焼肉連れてって!」
「なんでですか、君らの方が稼いでるでしょうが……。」
苦笑いする彼の横を歩く。
なんだかそんなに遠くない未来、みんなで笑ってる中に彼もいるのかと思うと不思議と感慨深くなる。
きっと私たちはこれからたくさん頼って、そしてたくさん迷惑をかけていく。
彼がかけることもあるかも知れないけどそんな数よりずっと多くなると思う。
そんなことを考えながら寮までの道を歩くのだった。
「まだ食べるの!?」
「おやおや?ギブアップですかー?情けないですねぇ。」
「いや、あの……えぇ?どこに入ってるんだろそれ。」
想定外も想定外。
流石の瑛紗クオリティとでも言うべきか食事会が始まるとあっさり瑛紗は彼にガンガンいくようになった。
肉を焼いてくれる彼の隣に私、向かいには美空、瑛紗、茉央の順番で座っていて最初こそもじもじしていたがご飯が始まると「池田さんすごい食べるんだね。」の一言を皮切りに彼女は嬉しそうに話し始めた。
そして気づけばあれよあれよと打ち解けて2人で話しながらよく食べている。
そしてもう1人、茉央もきっかけを探していたのだが思わぬ2人の共通点に美空が気づいた。
「あれ?龍馬さんも左利きなんですか?」
「ん?そうだよ、基本左利き。」
「茉央もだよね!」
「え、うん……そうやね。」
「……ご飯の時の席、すごく気を遣うよね。」
「わ、わかります!それめっちゃ!」
「だよね!席狭いと当たるからさ……。」
「そうなんですよ!肘ぶつけたりするから、いつもこうシュンとなってしまうんです。」
「今日も対角線だもんね僕ら。」
そう左利き。
気づかなかったけど確かに私と遠い方の手を使ってて自然といつもより隣に気を遣わなくていいというか、やけに広く感じたのはそれが理由だったのか。
とまあこんな感じで話し始めると意外と2人も打ち解けてくれて私も満足だ。
そして程よく食事が落ち着いたとき聞きたかったことがあった。
それはたぶんほかの先輩たちも聞きたかったことで、もしかしたら梅澤さんなら何か聞いてるかもしれないが、はたして私たちが聞いてもいいのか……。
迷いながら烏龍茶を飲むと瑛紗はあっさりと言ってしまう。
「なんで、マネージャーなんです?」
「ん?どういう意味?」
「だって18歳ですよね、大学一年でマネージャーするために芸能科って変わってません?」
「そう?進路は決めてて普通じゃない?」
「……池田は再来年が怖くなってきました。」
初めて彼から明確に「これ以上は話す気はありませんよ」という意思を感じて背筋を伸ばす。
今までも「彼女いるんですか?」とか「今度遊びに行きましょう!」とかはやんわり躱していたけど、今回ばかりは明確に話しませんアピールをしている。
(これは聞けないなあ……。)
その後も他愛のない話をつづけながら席の時間ぎりぎりまで粘ってから店を出る。
「じゃあ送りますよ。」
「え?いいですいいです!」
会計も彼が出してくれたし申し訳なさでいっぱいのなのにそれに加えて送ってもらうなんてのはとてもじゃないが恐れ多い。
慌てて断る私を無視して美空は
「ありがとうございます!
暗くて怖いんですよ……。」
「いえいえ、入り口まで送りますから。」
なんて言って送る流れを確定させてる。
慌てて断るために前に出た私の肩を瑛紗が掴む。
「ダメですよ、送ってもらわないと。」
夕方は逃げてたくせにやけに真剣な顔で言う瑛紗に違和感を覚えるが、彼女は取り出した携帯画面を見せてくる。
「22時半回ってます、ここから寮まで30分弱……私たちだけじゃ補導対象です。」
「……しまった。」
思わず楽しくて忘れていたが現在時刻は22時47分。
電車を使って走ってもぎりぎりの時間でこれでは私たちだけで歩いて補導なんてされようものなら先輩たちにも迷惑がかかる。
「それに寮母さんに説明も必要ですから。」
「むぐぐ……。
失敗したぁ……。」
その声が聞こえたのか彼は振り返り美空を置いて後ろに来る。
「ほらお嬢さんたち前歩きましょう、後ろは見えないからね。」
そう言って私たちの後ろを歩く。
彼の言葉に従い瑛紗は少し前の茉央と美空と歩き始め、私は空いた彼の隣で歩く。
長い脚が小刻みにゆっくり踏み出され、私に合わせるように一歩一歩進む彼は前を向いたまま
「和さんはどうです?
最近何か困ったこととか。」
「そうですね……今度の瑛紗との撮影なんですけど、ちょっと初めての2人撮影で緊張してますね。」
「なるほど、それってもしかして週末の土曜日では?」
「え?あ、はいそうです!」
カバンをあさり手帳を確認すると、彼も同じように確認をして頷く。
「うん、その日僕が担当。」
「え!?ほんとですか!?」
「うん、送迎だね。」
「うわっ、緊張増したかも。」
「代わりましょうか?」
「嘘嘘!冗談です!」
少し申し訳なさそうな彼だけど、別に本心じゃない。
前を歩く3人も今日で打ち解けたし、多分これからみんなも打ち解けていってくれる。
別に居心地が悪いと思われたくないとか、そんな感情じゃなくて
ただみんなを支えてくれる人なんだから大切にしたいって感じ。
来年度になれば新しく6期生が編入して私たちもお姉さんメンバーの仲間入り。
その時にこの人は怖くないよー無害だよーって言えるくらいの仲にはなっておきたい。
「ねえ瑛紗、週末の撮影さ龍馬さんが送迎らしいよー。」
「なんですと。
ならまた焼肉連れてって!」
「なんでですか、君らの方が稼いでるでしょうが……。」
苦笑いする彼の横を歩く。
なんだかそんなに遠くない未来、みんなで笑ってる中に彼もいるのかと思うと不思議と感慨深くなる。
きっと私たちはこれからたくさん頼って、そしてたくさん迷惑をかけていく。
彼がかけることもあるかも知れないけどそんな数よりずっと多くなると思う。
そんなことを考えながら寮までの道を歩くのだった。