El sol
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アンジュは、バーソロミュー・くまによって、シャボンディ諸島から、白ひげ海賊団の領海の島に飛ばされた。
そこで、エースの公開処刑を知り、愕然とする。
病状を取り留めていた医療器具を全て引きちぎった白ひげは、涙ながらに止める医療チームのナース達を船から降ろしていた。
死を覚悟して、戦場へと赴くのだ。
モビーディック号に乗る事はできない。
見付かれば、自分も船を降ろされるだろう。
白ひげ海賊団は、本隊だけでも大型船数隻……アンジュは、いつかスカルに聞いた話を参考に、その船団のうちの1隻に潜り込んだ。
――エース……死なないで……!!
リトルオーズJr.が引き上げた外輪船から、アンジュはマリンフォード 海軍本部オリス広場に降り立った。
「野郎共ォ!!エースを救い出し!!!海軍を滅ぼせェエェェェ!!!」
海軍が、ルフィや白ひげ、隊長達に気を取られている隙に暗躍し、エースのいる処刑台を目指す。
だが、そこは戦場。無事にとはいかなかった。
「エース……エース…っ」
絶対に死なせはしない。
死んで欲しくない。
その一心で、アンジュは戦場を駆け抜けて行った。
「撃てェーっ!!!」
囲まれた。
「リリメリア〝マインゴーシュ〟」
コルセットベルトから出したワイヤーを左手に集結させ、形作ったマインゴーシュで銃弾を弾く。
右手にはレイピアを形作り、発砲してくる海兵達を容赦なく突き刺した。
処刑台まで、あと少し。ここからなら……。
倒れた海兵から、銃を奪う。
ミハールの姿を思い描きながら、処刑台へと銃口を向け、照準を合わせた。
エースの脇に立つ、処刑人へと。
「――っ!!?」
弾丸は逸れ、剣は弾いたものの、致命傷を負わせる事はできなかった。
発砲する瞬間、アンジュの身体を、光線が貫いたからだ。
視線を動かすと、大将黄猿の姿が目に映る。
次に襲いかかるのは、大将青雉が放つ、氷の矛。
「
アンジュは瞬時にワイヤーを編み上げて防ぐが、みるみる凍結していく。
それが両手にまで及ぶ前に手を離し、身を躱した。
氷の切っ先が額の端を掠っていき、髪と共に鮮血を散らす。
「アンジュ!!!」
黄猿と交戦していたマルコが。
青雉と交戦していたジョズが。
近くまで来ていたルフィが。
そして、処刑台から見ていたエースが叫んだ。
「なんでッ……どうしておまえが、ここにいるんだ……!!?」
立ち上がり、自らの血を視界に入れながらも、アンジュは思った。
――行かなきゃ。
アンジュの瞳は、真っ直ぐに処刑台を見ていた。
攻撃してくる海兵達には、目もくれずに進む。
剣で襲いかかってくる者はレイピアで貫き払いのけたが、銃弾はいくつも通り抜けていく。
アンジュは、それでも止まらなかった。
「何なんだこの女は!!痛みを感じないのか!?」
どんなに傷つこうとも眉一つ動かさず、躊躇なく戦場を行くアンジュの異常さに、海兵達は狼狽していた。
振り下ろされた剣を、マインゴーシュで止める。
力で圧してくる剣を受け流すように、マインゴーシュをワイヤーに戻した。
手応えを無くしてよろけた海兵にそれを巻き付け、締め上げて……浴びせられる銃弾の盾にした。
海兵の身体を打ち捨て、また、前に進む。
痛みなんて、感じている暇は無い。
今あるのは、エースへの想いだけ。
白かったワンピースは、返り血とアンジュ自身の血で、真っ赤に染まっていた。
藍色のショートジャケットも、黒く滲んでいく。
「頼む……もう、やめてくれ……アンジュ……!!」
エースの意にそぐわない事をしているのは、わかっていた。
「おれはっ……こんな事させる為におまえを助けたわけじゃねェ…!おまえを、こんな目に遭わせたくねェから離れたってのに……!なのに、何で…ッ……なんでだよっ!!」
エースにとって、アンジュは守るべき妹だった。
そうでなくてはならなかった。
けれど……。
「ごめんなさい、エース」
怒られてもいい。嫌われたとしても構わない。
エースが、助かるのなら。
凍りかかっていたグローブが、指の先から崩れていく。
「……ッ、アンジュ!!」
エースが身を乗り出した。
アンジュの左手には、奴隷だった証が刻まれている。それを、海軍に見られるわけにはいかない。
しかし、砕け散ったグローブの下に、それは無かった。
「あなたに、生きていてほしいから!」
天駆ける竜の蹄を掻き消すように刻まれていたのは、スペード海賊団のマークだった。
「アンジュ!大丈夫か!?」
「ええ、ルフィ」
ルフィと合流し、二人で処刑台のエースを見上げた。
「必ず助ける!!」
エースがいれば辛くない。苦しくもない。
エースがいないと、困ってしまう。生きていけない。
エースに、生きていてほしい。
「お前は昔からそうさ、ルフィ!!!俺の言う事もろくに聞かねェで、無茶ばっかりしやがって!!!」
「エース~~!!!!」
そんな弟と妹の願いのとおり、一度は解放されたエース。
「しかも、今回はアンジュ!おまえまで!こんな…傷だらけになっちまって…!!」
アンジュの額から頬を穢す血を、その手で拭って。
「エース…!」
「おれの妹だ!手ェ出すなよ!!」
しかし――
弟を庇った彼の身体を、大将赤犬のマグマの拳が貫いた。
愛してくれて ありがとう――――
燃え尽きた、エースのビブルカード。
一部が焦げ、短くなったアンジュの髪。
抜け落ちた髪飾りの花を、マグマが飲み込み、燃やし尽くしていく。
精神が崩れたルフィは、気を失った。
アンジュは、糸の切れた人形のように、エースを見つめたまま動かなくなっていた。
マルコが、叫ぶ。
エースの弟を、必ず守り抜くと。
ルフィを抱えたジンベエに、赤犬の追撃が襲う。
動かなかったアンジュが、突然、赤犬に向かって行った。
ワイヤーを鋭く走らせ、攻撃を仕掛けるが、
その眼は暗く、完全に正気を失っている。
「よせ!アンジュ!!!」
マルコら隊長達の制止も、耳に届いていない。
アンジュの身体はボロボロだった。
このままでは赤犬に殺されてしまう。
その時、大きな手が、アンジュの身体を掴んだ。
白ひげだった。
「オヤジ……っ!!」
アンジュをマルコの方へと放り投げた瞬間、赤犬に、怒りの拳を叩き込んだ。
不死鳥の腕の中、光芒を失っていたアンジュの瞳が、閉ざされた―――