Tierra
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「誕生日会をやりたい?」
「おう!!」
にししっと笑いながら、ルフィは元気よく頷いた。
「放課後クラブの仲間を呼んで、宴がしたいんだ!!」
長年離れて生活していた兄弟が再び一緒に暮らし始めて、初めての誕生日だ。
今まで祝えなかった分も盛大に祝ってやりたいと、兄姉は弟の為にいろいろ考えていたのだが、ルフィは何人呼ぶか指折り数え始めていた。
「ゾロだろー、ナミだろー、ウソップだろー、サンジだろー」
名前が上がったのは、いずれも放課後クラブでルフィと仲良くしている友達だ。
今日は誰と何をして遊んだかなど、いつも帰宅後に楽しそうに話してくれる。
どうする?と顔を見合わせていたエースとサボに、アンジュは提案した。
「昼間はお友達を呼んでお誕生会してあげて、夜は私達でお祝いするのはどう?」
「そっか、それいいな!」
「友達との誕生日会も、おれ達からのプレゼントってわけだ」
ルフィの頭を撫で、「よかったね」と微笑むアンジュ。
「よし!ルフィと仲間達を全力で楽しませるぞ!!」
「ああ、最高の誕生日にしてやろう!!」
兄達はメラメラと闘志を燃やし、ルフィは「やったーッ!!」と弾むように飛び上がった。
誕生日当日、リビングはたくさんの風船やウォールステッカーなどで飾り付けられていた。
テーマは海賊、テーマカラーは赤だ。
ルフィは海賊マントを羽織り、海賊旗を持って仲間達を出迎えた。
「ルフィ、誕生日おめでとう!!!!」
「ありがとう!かんぱーい!!」
ジュースで乾杯し、宴が始まる。
「たくさん食えよ~!!」
ウッドデッキにバーベキューグリルを設置し、エースとサボが食材を焼く。
肉は猟師のダダン、魚介は海女のバンシー、野菜は近隣農家の提供だ。漁猟や収穫の手伝いなど、労働力を対価に分けて貰った。
テーブルには、アンジュが作ったおにぎりやサンドイッチ、フルーツポンチと、飲み物が並んでいる。
仲間達からのプレゼントは、ルフィが大好きなチョッパーマングッズだった。
ゾロからはバンダナ、ナミからはノートと鉛筆、ウソップからは水鉄砲、サンジからはフォークとスプーンのセット。
特に示し合わせたわけではなかったが、皆もチョッパーマンが好きなのだ。
『〝ランブルキャンディ〟でエネルギー補給だ……!元気回復!チョッパーマン!!』
トナカイで医者のヒーロー、チョッパーマン。
原作は、くれは&ヒルルク共著の絵本であり、テレビアニメも放送している、子供達に大人気のキャラクターだ。
困っている人や具合の悪い人がいないかパトロールし、桜の花弁型の絆創膏〝ロゼオエイド〟を届けるのを毎日の仕事としている。
「船長はおれだ!」
おいしくも騒がしい宴が進むと、放課後クラブの定番の遊び、海賊ごっこが始まった。
「おれは剣士!」
「わたし航海士~」
「おれは狙撃手!」
「アンジュお姉さん、片付け手伝うぜ」
「ありがとう。でも、クルーが一人足りないみたいよ?」
「サンジ~!!サンジはコックな!」
「戦うコックだ!ナミさんは、おれが守るからね~」
いつもならロビンやフランキーが敵役をしてくれて、戦いの後は主任支援員ブルックの伴奏でみんなで歌うのだが、本日の敵役はエースとサボだ。
庭での海賊ごっこは、大いに盛り上がった。
「降参だ!宝の在処を教えてやる」
「本当か!?」
「ほら、これが宝の地図だ」
事前に作っておいた宝の地図を渡し、今度は宝探しが始まる。
一番賢いナミが地図を手に謎を解き、男子達は彼女の指示通りに宝箱を探した。
小さな海賊団が戦っている間に、アンジュが地図通りの場所に隠しておいたのだ。
宝箱風ギフトボックスの中身は、チョッパーマンの缶バッジやシールセットだったり、綺麗なビー玉やビーズのアクセサリーだったりと、仲間達にもお土産だ。
見付けた時の驚きや歓喜の声が、次々に響いた。
地図が示す最後の場所は、ルフィの部屋である屋根裏だった。
そこには、これまでよりも大きな箱を持ったアンジュが待っていた。
「アンジュ!!」
「おめでとう。最後の宝物はこれよ」と、蓋を開ける。
『Happy Birthday!』と書かれた大きな〝9〟の形のドーナツを真ん中に、シンプルなものからチョコやクリーム、ベリーに抹茶など様々な種類のドーナツが並んでいた。
「おお~!うまそ~っ!!」
「これ、メリエンダのドーナツね!」
ナミの反応通り、大手菓子メーカー〝ビッグ・マム〟の子会社、〝モチモチドーナツ Merienda〟のバースデードーナツである。
リビングに降りて紅茶を淹れ、皆で楽しくドーナツを食べた。
「ルフィ!担任の先生が来たぞ」
「トニー先生!?」
「何か渡したいもんがあるんだってよ!」
サボとエースに呼ばれ、ルフィは玄関に飛んできた。仲間達も続く。
「せんせ~!!」
「ルフィ、誕生日おめでとう!」
そう言って渡されたのは、バースデーカード。
「いつも誕生日の子には学校で渡すんだけど、今日は祝日だったから届けに来たんだ。みんなも来てたのか」
そして、チョッパーマンの絆創膏セットも。
児童が怪我をしたりすると、いつも先生が貼ってくれるものだ。
「ルフィは元気過ぎてあっちこっち擦りむいたりするからな。気を付けるんだぞ」
「ありがとう!!おれせんせー好きだ~!」
ルフィは破顔し、思いきり抱きついた。
「あっ!せんせーちょっと待っててくれ」
「へ?」
ルフィは急いで戻ると、チョコレートのかかったドーナツを一つ、皿に乗せて持って来た。
「誕生日のドーナツだ。トニー先生にもやる!」
「な、何言ってんだよ!お前の誕生日じゃねェか!何でおれが貰うんだっ」
「おれ、今日はみんなにいっぱい祝ってもらえて嬉しいんだ。せんせーにも祝ってもらって嬉しいから、せんせーにもドーナツ食べてほしい!」
「……いいのか?」
仲間達も、「ルフィがこう言ってんだ」「先生も食えよ」と後押しする。
「せんせーはチョッパーマンに似てるから、チョコのにした!」
チョッパーマンの好物は、わたあめとチョコレート、甘い物だ。
「お、おおおおれはチョッパーマンじゃねェからな!人間だし教師なんだからな!」
「? 知ってるぞ?」
実は、チョッパーマンのモデルは彼である。作者は養親だ。
子供達には秘密にしている。
「じゃあ、貰ってく。ありがとうな」
先生ばいば~い、と教え子達に見送られ、帰って行くトニー先生。
照れ笑いを浮かべ、ドーナツにかぶりついた。
「うまっ!」
後日、彼は生徒達から「チョッパー先生」と呼ばれるようになった。
「ルフィ、誕生日おめでとう」
「うわ!ありがとう!!」
夜は、家族でお祝いだ。
プレゼントは、チョッパーマンのTシャツやリュック、ぬいぐるみ。
ガープからは、変形するロボット型目覚まし時計が届いた。ルフィが目を輝かせていたのは言うまでもない。
バースデーケーキは三人の手作りで、エースとサボが、ふうしゃ食堂でマキノに教わりながらスポンジを焼き、アンジュがデコレーションを担当した。
メインのカレーライスは、ルフィも一緒にやりたいと言うので皆で作った。
尤も、ルフィの担当はニンジンやジャガイモの型抜きだったり、それを鍋に投入したりという簡単な作業だったが。
「今日な、すっげェ嬉しくて楽しかったぞ!エース、サボ、アンジュ、ありがとう!!!」
満面の笑みの弟が、「大好きだ!!」と言う。
頑張った甲斐があったというものだ。
ルフィが眠った後、三人は各々を労っていた。
「風船、めちゃくちゃ膨らませたよな」
「ああ、あれだけの量は大変だった」
「海賊マント、アンジュが縫ってくれたんだよな。ルフィ喜んでたぞ」
「エースも、海賊旗を作ってくれたでしょう。サボは、宝の地図を作ってくれた」
「宝もなー、女の子も来るって言うから、どんなのがいいのか悩んだんだよ」
「ビーズのアクセサリーは、アンジュの手作りだろ」
「うん。気に入ってもらえてよかった」
「バーベキューの時も、肉以外にもそれぞれが好きそうなもん用意してな。シーフード、おにぎり、果物……」
「ケーキは夜に回して、メリエンダのドーナツにして正解だったみてェだ。みんな好みの味選べたし」
「先生にもあげられたしね」
「みんな笑ってた」
「楽しそうにな」
「本当、よかった」
早くに両親を亡くし、家族で過ごした時間が一番少ない末っ子のルフィ。
彼の幸せそうな笑顔を見ると、自分達まで幸せになる。
「アンジュの誕生日も、おれ達で目一杯祝ってやるからな!」
「楽しみにしてろ!」
「エース、サボ……」
交互に頭を撫でられて、アンジュは面映ゆげに微笑んだ。