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「陣くん、また授業サボったの?」
「あんなつまらねー授業聞いてられるか。だいたい、今更習わなくても全部頭に入ってる」
「もうお昼休みよ。ほら、お弁当食べましょう」
中庭で座り、実桜お手製のサンドイッチ弁当を食べる二人。
転校生の黒澤陣は、表向きには黒澤実桜の従弟……という事になっている。
海外生活が長い帰国子女で、日本の高校に馴染めず、一つ年上の従姉である実桜が面倒を見ている、と。
学ランに身を包む彼は、身長が175cm程度にまで縮み、深緑の瞳は変わらないが、顔付きや声は十代後半の少年。
長かった銀髪は、襟足が肩辺りと短くなっている。
「……酒が飲みてぇ」
「まだ未成年でしょう?残念だけど、ここじゃ飲めないの」
舌打ちをして睨み付ける陣に、実桜は穏やかに微笑み、微糖のカフェオレを渡す。これで我慢してね、と。
そんな光景を、中庭にいた女子生徒達が遠巻きに見ていた。
「あれって、転校生の黒澤くんでしょ?美形だけど雰囲気怖いって噂の」
「授業ほとんど出ないけど、超頭良いんだよね。本来なら飛び級で大学卒業できるレベルだって!」
「でも、やっぱ怖いよ。近寄りがたいっていうか……。実桜先輩、よく平気だよね。めちゃくちゃ睨まれてるじゃん」
「もし実桜先輩に乱暴したりしたら、私がやっつけてやるわ!」
そんな会話が聞こえたのか、陣が口角をつり上げた。
「実桜」
「なあに?陣くん」
返事をした実桜の、唇を奪う。
女子生徒達の悲鳴が上がった。
「これで我慢してやる」
「もう……陣くん」
実桜は面映ゆげに顔を逸らすが、それは拒否でも抵抗でもなかった。
そんな実桜の姿に、目撃した者達は動揺を隠せなかった。
「陣くん、どれにする?これなんか似合うと思うんだけれど」
「どうだっていい。任せる」
「じゃあ、これと……」
放課後、二人は杯戸百貨店にいた。
陣の服を買いに来たのだ。
黒のテーラードジャケット、紺のセーター、白のVネックカットソー、オリーブグリーンの細身のカーゴパンツ……etc。
体が縮んだ分、服のサイズも違ってくる。一通り買い込み、百貨店の外にあるベンチに座り、迎えを待っていた時だった。
「真さん、早く早く」
「待ってください園子さん」
一時帰国していた京極と、その彼女に出会した。
「あ、京極くん」
「どうも……」
園子と腕を組んでいた京極は、照れ臭そうに挨拶をする。
いや、彼がそんな反応したのは、それだけが原因ではない。
「うわ、イケメン!もしかして、実桜さんも放課後デート?」
実桜の膝を枕にして眠っている男がおり、実桜がその銀髪を梳くように撫でていたから。
「いえ、彼は従弟で……」
「あ、そっか。実桜さんが好きなのは、子供の頃から面倒を見てくれてた年上の人だっけ」
園子は、以前ポアロで話した事を覚えていたらしい。
「そうなんですか?」と訊ねる京極に、うんうんと頷く。
「年も離れてるし血は繋がってないけど、誰よりも大事なひと……って言ってたもの!」
「そいつなら、もう死んだぜ」
そう言って、陣が身体を起こした。
「そ、そうなの……?ごめんなさい、実桜さん」
「まぁ、俺がいるから問題はねーよ」
実桜の腰を抱き寄せ、髪に唇を寄せる陣は、高校生とは思えない大人びた雰囲気を漂わせており、園子を驚かせる。
一方京極は、本能的に警戒の姿勢を見せた。
この炯眼、この気配、この男は危険だと。
しかし、実桜自身は頬を染めながらも、彼に嫌悪など全く示していない。
寧ろ、前から彼のことを一途に想っていたかのように。
大事なひとを亡くした彼女の心の拠り所なのだろうかと考えると、無粋な真似はできず、京極は何も言えなかった。
「あ……陣くん、魚塚さんが来たみたい」
「遅え。待ちくたびれぜ」
「京極くん、園子さん。お迎えが来たので、これで……」
二人に挨拶をして、迎えに来たポルシェ・924の後部座席に乗り込む。
帽子は被っておらず、サングラスではなく眼鏡をかけているが、運転席にいるのはウォッカだ。
「こうして見ると、すっかり高校生カップルですねぇ」
学生服とセーラー服姿の二人を眺め、そう言った。
因みに、ジンの愛車だったポルシェ356Aと、ウォッカのポルシェ・914は、主人の代わりに
帰宅するなり、ジンは学ランを脱ぎ捨てた。
「学生ごっこは終わりだ。キルシュ」
「Yes,Sir.――ジン」
キルシュもカラーコンタクトを外し、髪を解くのだった。
※ジンはジンなりに高校生を演じていますが、本気で芝居する気はありません。
キルシュは、これまで通り女子高生の黒澤実桜を演じていました。
ウォッカはカタギに戻り、二人の保護者の魚塚三郎おじさん。
何故か正体がバレない御都合主義。