Innocent

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ミスター・サタン所有の山、独り滝の傍で瞑想をしていたピッコロは、小さな気が近付いて来るのがわかり、目を開けた。

その気配は、少し距離をおいて浮かんだまま、なかなか此方までやって来ない。
声をかけようとして、躊躇っているようだ。

栞音

振り返る事なく名を呼ぶと、少女はびくりと反応した後、緊張した面持ちで降り立つ。

「こ……こんにちは、ピッコロさん」

ピッコロは地に足を着けると、栞音を見下ろした。

「瞑想の邪魔をしてしまって、ごめんなさい」

「構わんが……どうした?」

気のコントロールを教えてほしい、と栞音は言った。
チチが過去に天下一武道会で着ていたようなデザイン、色違いの菫色の道着姿で。

「以前よりはマシになったようだが」

「飛ぶ事以外も、できるようになりたいんです」

「悟飯には舞空術しか教わらなかったのか」

「おにいちゃん、ビーデルさんにも教えてたし……。天下一武道会に備えて修業してた時だったから、邪魔しちゃいけないと思って……」

ピッコロの慧眼から逃れるように、伏し目がちに語る栞音
先程の様子もそうだが、この少女は何をそんなに遠慮する事があるのだろう。双子の悟天や同じ年頃のトランクスは、あんなにもやんちゃで好奇心旺盛だというのに。

「おとうさん達と同じように、戦いたいわけじゃないんです。ただ、わたしも半分はサイヤ人なのに、このままでいいのかな……って」


 5つの正しい心を持つサイヤ人が手を携え、もう一人の正しいサイヤ人に心を注ぎ込めば、サイヤ人の神となる――――


破壊神ビルスに地球を破壊されぬよう、悟空が超サイヤ人ゴッドになろうとした時、悟飯・悟天・ベジータ・トランクスの他にもう一人のサイヤ人が必要だった。


「一人足りねぇ?そうだ、栞音がいるじゃねぇか!」

「あの子供もサイヤ人だったのか?全くそんな感じしなかったけどなぁ」


パフスリーブの花柄ワンピースを着た栞音は、ビルスに注視されると、怯えた表情を見せた。祖父である牛魔王の巨体の陰に隠れ、弱々しく首を横に振って。

これまでの栞音の扱いは、地球人のそれと同じだった。こんな時だけサイヤ人だと言われても、戸惑った事だろう。

同時に、怖れていた。もし、悟空が超サイヤ人ゴッドになれなかったら、ビルスに地球を破壊されてしまう。

栞音では駄目だったんだ、栞音はサイヤ人じゃないと、失望されるのが怖かったのだ。

胎内に子を宿したビーデルが名乗り出た事で、栞音は安堵した。その反面、新たな恐怖の種が植え付けられた。

この世に生まれ出る前から、「正しい心を持つサイヤ人」である悟飯の子。
それに比べて、自分は……?

「わたしなんかが修業しても、たいして強くなれないのはわかってるんですけど……」

「おまえは確かに強くはないが、おまえなりのやり方で破壊神をもてなしただろう。土産を渡してな」

超サイヤ人ゴッドとなった悟空とビルスが闘っている間に、栞音は船の厨房を借りて、事の発端であるプリンを作っていた。

悟空に勝利し、地球を破壊しようとしたところで、突然眠ってしまったビルス。
寝言で「プリン……」と呟いた彼に、出来上がったプリンを持って行こうとした栞音だったが、ブルマが「プールいっぱい用意してあげる」と言っているのを聞き、逡巡した。

自分が手作りしたものより、ブルマが用意する高級なプリンの方が絶対においしいと。

しかし、栞音の小さな体では、両手で持った金魚鉢サイズの大きなプリンは隠しようがなく……。
気付いたウイスが、「もしかしてあなた、ビルス様のためにプリンを作ってくださったのですか?」と問いかけたので、頷いた。

実はビルスは起きており、自分の星へと帰る移動中にそのプリンを平らげていた事を、栞音は知らない。

「でも、ビルス様のお口に合ったかどうか」

「まずければ怒って地球を破壊しに来る筈だ」

来ないという事は、気に入られたと思っていい。
ピッコロは、栞音の前にしゃがみ、視線を合わせた。

「気というのは攻撃だけに使うものではない。気を集中する事で防御力を上げたり、他者の気を感じて場所や動きを察知したり、扱い方は様々だ。おまえは器用そうだから、気を練り上げて形を作ったりするのは向いているかもしれんな」

「わたし、器用ですか?」

「料理や、植物を使った工作……この髪も、自分で編んだんじゃないのか?」

栞音の頭に、ピッコロの手が乗せられる。

「あ……」

栞音の髪は、母親譲りの癖の無いロングヘアだ。
小さな頃はチチがいろんな髪型に結ってくれていたが、今では毎朝自分でしている。

今日は、編み込みおさげを低めに丸めたツインシニヨン。
動きの妨げにならないよう、きつく編んでまとめた鍛練用の髪型だ。

「例えば、そうだな……ゴテンクスは、気でゴーストだのドーナツだのを作り出して攻撃や拘束に使っていた」

所詮は子供の考えた技だが、子供ならではの柔軟な発想力で、多種多様な技が生まれるのだろう。
ピッコロは散々振り回された過去を思い出し、苦い顔をしながら立ち上がった。

「わたしにも、できるでしょうか……?」

「あいつらの真似をしろとは言わんがな。地球人でもクリリンなんかは、パワーはそれほどでもないが、気のコントロールが上手いから多彩な技がある」

「そっか……。クリリンさん、地球人だけどとっても強いですもんね!」

少し前向きになった栞音は、改めてピッコロに教えを乞う。

「お願いします、ピッコロさん。わたしに稽古をつけてください」

自分を見上げる無垢な瞳が、愛弟子の幼少期を思い起こさせ、ピッコロは口角を上げた。

「いいだろう。ただし、泣き言は許さんぞ」

「はいっ」



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