Relieved
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この俺が…ッ
使い魔…だと…ッ!?
「カルエゴ卿……」
寝込んでしまった主の容態を心配そうに見守るのは、撫子色の髪を三つ編みアップスタイルにまとめ、紫紺のベストに黒いズボンの執事服を着用した悪魔、セーレ・ルィエ。
生真面目で厳粛なカルエゴを敬愛しており、優秀な成績で卒業した後は、行儀見習いも兼ねナベリウス家で働き、現在は側近としてカルエゴに仕えている。
理事長の孫の特待生の話は聞いていたが、まさかカルエゴを使い魔として召喚するなど、前代未聞だ。
無理に契約を解除すると死ぬと聞かされたらしく、相当なショックだったのが窺える。
カルエゴ曰く、〝喧しく節度がなくマイペースという三大嫌悪を凝縮した阿呆理事長〟――サリバンには気まぐれで給料を減らされたり、自作の説明セットを押し付けられたり、入学式の進行をめちゃくちゃにされたり……といった仕打ちを受けている事もあり、その孫の使い魔なんて屈辱でしかないだろう。
「あんのアホ理事長め……使い魔なんぞ……よりによってあんな姿に……ッ」ブツブツ
「カルエゴ卿、そろそろ何か召し上がりませんか?体に優しいお料理と、香りの良い薬草をブレンドした魔茶をお持ち致しましたので」
「要らん!………な、くはない……」
重苦しそうにしながらも、身体を起こすカルエゴ。
ルィエは在学中、魔植物
少しでもカルエゴの気分が安らぐようにと、様々な工夫をして食事を用意する。(カルエゴも自炊はするが、忙しかったり疲れていたりすると食事も儘ならなくなるのだ。)
「くっ……アホ理事長の孫だか特待生だか知らないが、入学式で禁忌呪文を唱える!初日から首席と決闘!とんでもない奴だ…ッ!!今度の新入生は問題のある輩ばかりか!」
温かな魔茶をいれたカップを受け取り、カルエゴが口にした。
「生徒が皆…お前のような奴ばかりなら、私も苦労しないのだがな」
「お誉めにあずかり光栄です」
柔和に微笑み、胸に手を当て一礼した後、ルィエは粛々と仕事をこなす。
しかし、カルエゴは見逃さなかった。
頭部にぴょこっと出現した、魔犬のような耳、そして尾が、ルィエの感情を代弁するかの如く立ち上がり、揺れているのを……。
ルィエは、在学中からカルエゴを心から尊敬し、彼の言う事をよく聞き、他の教師達の担当教科の勉強や実習も怠らず、常に模範的な態度で過ごしていた。
課題を増やされても文句一つ言わずにやり遂げ、めきめきと成長していく姿は、厳し過ぎると名高いカルエゴから見ても自慢の生徒となった。
周囲からは生徒会に入るのを期待された事もあったが、ルィエ自身の気質と魔生物や魔植物が好きな事を見抜き、ストラス・スージーの魔植物師団の方が向いているとカルエゴに背中を押された事も、ルィエが師団を選んだ理由であり、彼への敬愛の念を更に深めた出来事でもある。
カルエゴの前では、優秀な教え子であり、粛然とした執事で有り続ける事。
それが、ルィエにとっての最優先事項なのだ。
故に、普段は収納している耳と尾。
それが、喜悦を禁じ得ない時にだけ、無意識に出てきてしまう事がある。
「……!」
気が付いたルィエはすぐに収納し直し、カルエゴに見られてはいないかとこっそり様子を窺うのだが、カルエゴはいつも知らぬふりをしていた。
密かに口角を引き上げながら。
「カルエゴ卿、もしまた使い魔として召喚されてしまったら、私をお呼びください。カルエゴ卿の危機には、何をおいても駆けつける所存です」
そんな事は知らないルィエは、何事も無かったかのように言葉を紡いだ。
「いや……あのような姿を晒すのはもう御免だ」
眉間に皺を寄せながらも、ルィエが給仕したスープを口に運ぶカルエゴ。
彼の好みや体調を考慮し、素材の味を活かした優しい味付けを心掛けた料理は、どうやら口に合ったようだ。
ただでさえ普段から少食な主が、漸くまともに食事をとってくれて、ルィエは胸を撫で下ろした。
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