はちみつれもん
ずっとずっと一緒に居られると思ってた。
でも、私自身…夢莉に甘えすぎてたからこんなことになってしまった。
「まあ、元気だしなって…男なんていくらでもいるよ?」
『ゆーり…は、その辺の男と違うねん。』
「ふーん、会ったことないから分からんけど。」
親友の山田菜々は、落ち込んでる私を励まそうとしてくれたのに…またこんなことを言ってしまった。
夢莉と別れてから、私はこうやって攻撃的なことを言ってしまう。
「でも、仕方ないやんな…バイトで稼いで学費払ってるんやからさ。」
『それは言い訳にしかならんねん、ゆーりはそれを知らんから。』
「なんで言わんねん?大変な時こそ助け合うんやないん普通さ。」
『心配かけたくないやろ、ゆーり…優しいから本気で心配してくれるからそんな余計なこと考えさせたくなかってん。来年は受験やねんで。』
「それで別れることになって、ほんまに良かったん?」
『……もうこうなってしまったことやし、仕方ないんやって。』
分かってる、分かってるけど…元気が出なかった。
この先、どうやって私は頑張っていけば良いのか分からなかった。
夢莉という存在が私を支えてくれてたのに、心にぽっかり穴が空いて。
何もする気にならない…
いっそのこと、大学も辞めてしまおうと思った。
だって、もう苦しい…必死に学費を稼ぐことが無理やった。
辞めてしまい、就職して…かなりヤケになってた時に山田に誘われた合コンに行って、出会った人と付き合うことになった。
いろんな人と付き合って、別れてを繰り返した…
(彩さんは趣味とかあるの?)
『んー、なんやろ。』
話しは全然弾まないし、私は全然楽しくないもん。
でも別れて5年経った頃に、付き合った人とすぐに身体の関係を持って、私は妊娠して結婚することになった。
まさかの展開やったけど、
やっぱり相手より夢莉のことがまだ好きやって愛してるって思う自分がいて。
赤ちゃんの父親を心から愛すことができなかったから、籍を入れる前に確執ができて別れてしまった。
「どうするんよ、お腹の子は。」
『産むよ…だってこの子には罪ないから。』
「あんたが何考えてるんか、分からんねんけど。」
『1人で頑張って育てるから、大丈夫や。山田には迷惑かけへんから…』
そうやって、心配してくれてるのに…強がって誰にも助けを求めなかった。
もう誰にも頼ることができなかった…
心配させるのも嫌だし、言わないと離れていくのも嫌だから。
産むギリギリまで、働いて…
1人で子供を産んだ。
『ゔぅっ、、はぁっ、、…』
(あと少しで頭が見えるからね!頑張って!)
痛くて苦しくて苦しくて…
こんなに痛い思いしたことないから、本当に辛かったけど、、、
一瞬、夢莉の笑顔を思い出した。
『ゆーりっ、、!!…ゔぅ、、あぁ、、』
おぎゃあ…おぎゃぁ…おぎゃぁ…
(おめでとうございます、可愛い女の赤ちゃんですよ。)
『かわいいっ、、、』
1人で苦しくて痛くて辛かったのに、この子の顔を見た瞬間に全てが吹き飛んでいった。
この子には私しか居ないんや、守っていかないとって。
名前は夢乃にした。
夢莉みたいな素直で優しい人になって欲しくて、一文字もらってしまった。
家に帰ってからは2人きりやったけど、夢乃が私の支えで必死だった。
そんなある日の朝…
『あれ…夢乃?どうしたん、夢乃!!』
急に体を震わせて、顔色もすごく悪かった。
でも泣かないしで、普通ではないって一目で分かったから救急車を呼んだ。
『やまだ、、どうしようっ…夢乃になんかあったら、私っ、、』
さすがに1人ではもう耐えきれなくて、あんなに強がりなことを言ったのに山田に電話したらすぐに駆けつけてくれた。
「大丈夫やって、しっかりしなさい。あんたは夢乃の母親やろ?」
『うんっ、、、』
「赤ちゃんには良くある、熱性けいれんやから…大丈夫や。」
『うんっ、、』
そう言いながらもずっと泣いてる私を抱きしめて、頭を撫でてくれた。
「彩さ、ずっと言えんかったんやけど…もし1人で不安なんやったら一緒暮らす?私も一緒に夢乃のお母さんになるよ。」
『えっ、ほんまに…?』
「もちろん、彩がええんならね?」
『そんなの良いに決まってる…嫌なんて言ったら罰が当たる…』
「じゃあ、多分うちの家が広いからおいで?」
『うんっ、、ありがとう山田。』
「やから、もう泣かんのよ?」
『うんっ!』
すごく嬉しかった、1人で育てるって踏ん張ってたけど…心の支えがいないのって本当にしんどかった。
山田、ありがとう…