はちみつれもん
ずっと一緒にいると、いくら好きでも愛し合ってても喧嘩になることもある。
それは相手が嫌いだからではない。
理由はただ一つで、大好きだから…愛してるから。
人間の嫉妬という感情は本当に煩わしい…
これがなかったら、喧嘩で別れることも少なくなるだろうな。
彩さんは秋になると、大学の説明会が僕たちの学校で行われるのに参加し始めた。
『ゆーり、今日は先帰って大丈夫やからね?遅くなると思うし。』
「うん、でも待っておくよ?図書室でも行って。」
『だめだめ、そんなの悪いから今日は帰ってね。』
「えぇ、分かった…」
とは言いつつも、1人で帰るのが久しぶりすぎて考えられなくて勝手に待ってた。
驚かしたら喜ぶかなって、少し肌寒い中待ってた。
別に友達と帰るって言われても、良いやって思いながら。
「あ、彩さんや。」
出てきたと思って、行こうとした…
(じゃあさ、これはこうなるわけ?)
『そうそう!これはこうやねん。』
(なるほど、さすが頭ええな?)
『ふふっ、そんなことないよ。』
見たことがない男と彩さんが嬉しそうに話しながら出てきた。
「なんやねん。」
見た瞬間にすぐにその場から立ち去った。
待たなくて良いって、これがあるから?
見られたくなかったんかな。
そうとしか、思えなくて…
次の日…
『ゆーりっ!おはよう!』
「……おはよ。」
僕は彩さんにそっけなくしてしまった。
ただ悔しかって、態度で表すなんて最低やと思ってても…これでしか伝えられなかった。
『どうしたん?元気ない?』
「…別に。」
『え?だって普通やないやん。』
「ごめん、先行くね。」
そう言って僕はこれ以上、会話もしたくなくて…先に行くことにした。
『ちょっと待ってや!』
「………」
『なんで無視するん?何に怒ってるんよ。』
「別に怒ってないよ。」
『怒ってるやん、いつもと全然違う!』
「………」
『昨日一緒に帰れんかったこと?それに怒ってるん?』
「別に、怒ってないって。」
『怒ってないのに、そんなの違うやん!!』
「もうほっといて。」
『っ、…ゆーり。』
「…………」
『あっそ!!ほんじゃあこっちやって知らんから、あほゆーり!!』
そう言って、彩さんは泣きながら走って行ってしまった。
「はぁ、何してんやろ…」
やっぱり僕は情けない。
「なんで普通に言えんねん」
嫉妬したんだって、言えば良いのにそれがどうしても言えなかった。悔しくて…
その日は一度も彩さんに会うこともなく終わった。
こんなにも1日が長いのは久しぶりやし、昨日もやけど…もう2度と一緒に帰ることができないと思うと、1人の寂しさに潰されそうやった。
3日が経ち、自分からしてるから謝るように謝れない…このままもうダメになっちゃうんかな。
そんな放課後やった。
下駄箱に行こうと、廊下を歩いてたら前から彩さんが友達と来てた。その時は女友達。
すれ違ってもお互いに目も合わせなかった…
どうしよう…
このままにしたら、もう本当に終わっちゃう気がする。
思い切って振り返った。
もう行ってると思うけど…
『ゆーりっ、、』
「彩さん…」
そしたら彩さんも振り返って止まってた。
「なんで…」
『やって、納得いかんねん。もうしがみついてでも理由を聞き出してやろうって思ってた。』
「ごめんね…ほんまに。」
『ゆーり…?』
「彩さんが男友達と話してるのを見て、嫉妬してたんだ。」
『えっ、もしかして説明会の帰り?』
「うん…」
『あの日、、待ってくれてたん?』
「ごめん、1人で帰るのが寂しすぎたんだ。卒業したら当たり前に1人やのにね。」
ぎゅっ、、、
『ごめんね、ゆーり…全然知らんかった。待ってくれてたんや。ありがとう…』
怒るどころか彩さんは泣きながら抱きついた。
「なんで、僕は情けないくらい酷いことしたのに…」
『だって、嫉妬やろ?私やって悪いやん…』
「勉強教えてただけやん…」
『ふふっ、そうやって分かってくれてるのに嫉妬したん?』
「うん…なんか、さ…僕の彩さんなのにって。ごめんなさい。」
『ううん、なんか嬉しい…でももう無視はやめてな?悲しすぎるから。』
「ごめんね、ちゃんと言葉にして言えるように頑張る。」
『うんっ!なら良しとしよう。』
「ありがとう、本当にごめん。」
僕たちは抱き合って、仲直りのキスをした。
彩さんやから僕の気持ちもわかって寄り添ってくれて…改めて自分の情けなさに反省できた。
絶対大切にしたいって思ってるのに、泣かせてしまって大反省をした。
それからまたいつも通りの2人に戻れた。
彩さんを待つのなんて、僕には苦やないから…待たなくて良いって言わなくなった。。
「彩さん…?」
『ん?どうしたん。』
「もしかして、頭痛い?」
『え?』
冬になって受験も近づいてきた。
彩さんは勉強を根詰めで、頑張ってて…放課後もほぼ毎日図書館で勉強してる。
だから僕も一緒に勉強してる。
だけど、帰っても朝もたぶん彼女は勉強を頑張ってて疲れが出てる気がした。
「彩さんってさ、頭痛いと僕と手を繋いでない方の手をぐっと握ってるんだ。」
『えっ、ほんまや!』
「無意識でしてるんだよ、てか…大丈夫?」
『うん、このくらい大丈夫やで?』
「薬持ってる?保健室ついていこうか?」
『ふふっ、大丈夫やってありがとう。』
「無理しないようにね。」
『うん、』
心配しながらも学校に着くと、各クラスに分かれるから…昼休みまで様子がわからないから心配してた。
そんな嫌な予感は当たる。
(なんかさ、3年の体育中に倒れた人いるらしいよ。)
(あっ、知ってる知ってる…先生に担がれて保健室に運ばれたんだってね。)
(やっぱり受験生って大変なんやろうなぁ…怖いなぁ。)
(緊張も不安もあるもんね。)
その話しが聞こえてきて、僕は居ても立っても居られなかった。
すぐに立ち上がって保健室に向かった。
ガラガラ…!!
先生はいなくて、とりあえずベットの方へ行った。
「彩さん…やっぱり。」
『ゆーり?』
「大丈夫?倒れた?」
『あー…ごめんな、ちょっとフラッとしたと思ったらそのまま倒れてしもうてん。』
「やっぱり朝から体調悪かったんやって。」
『貧血やと思う、ふふっ…寝不足や。あかんね。』
「ほんまに、心配したんやから…今日は早退する?」
『ううん、もう少し休んだら戻るよ。貧血やから大丈夫。大したことないよ。』
「無理したら絶対にダメやからね?それで今日は僕とまっすぐ家に帰るんだよ。良いね?」
『わかった、心配してくれてありがとうね。』
そう言って笑う、彼女に安心しつつもホッとした。
この先ずっと一緒にいる日々を重ねていくと、今日のことだって今のこの瞬間だって彼女との大切な思い出になるんだ…