はちみつれもん



それから夜に本当に夢莉に電話をしてしまった。




でも、すぐに出てくれた。




(もしもし?)



『ごめん、すぐ電話しちゃった。』



(ううん、僕もしようかなって思ってたんだ。)


『うん…』



(彩さん?)



『水族館も行こうね。』



(良いの?)



『いいよ、もちろん。』



(行かないって言われた時さ、僕…もう死んじゃいそうやった。)



『あははっ、ごめんね。笑い事やないけど…』



夢莉が私の限界に気付いてくれるタイミングが流石すぎて…2人の時間を作ってくれたから私の心はすっかり軽くなった。



あんなに笑えなかったのに、人ごとみたいに笑っちゃって…どうしようもないや。




(ううん、彩さんの笑い声…久しぶりに聞いた)



『私も久しぶりに笑ったかも。ありがとう、ゆーり。』



(僕は何もしてないよ、あっもうこんな時間やから寝よっか?朝早いよね?)



『私は大丈夫やけど…ゆーりも疲れてるやろうし寝よっか。』



(だから、大丈夫やないって…彩さんが1番疲れてるはずだよ?ちゃんと休んでね。)



『うん、ありがとう。おやすみゆーり。』



(おやすみ、彩さん。)



電話を切るとすぐに隣でぐっすり寝てる夢乃に寄り添って眠った。



夢莉が言ってた通り、少し疲れてたかも…












「まぁま?おはおう?」


『んぅ…』



がちゃっ。




「彩?起きてへんの?」



夢乃に身体を揺らされて、目が開くとすぐに山田の声が聞こえた。




それと同時にものすごい身体の重さというか倦怠感と頭痛がした。




『ゔっ、、うん…』



「大丈夫?」



体は起こそうとしても起きないくらいだった。




「具合悪い?」



山田が声を掛けてくれるけど、なんかぼーっとしてるのか、なかなか応えられなかった。




「彩?」



『うん…大丈夫…』



「全然起きんやん…?」



そう言って、山田が部屋に入ってきた。




「ん?あっついな、熱あるやん。」



『あるんかな…』



「あるやろ、めっちゃ熱いで。それになんかぼーっとしてるな?」



『うん…』


「まぁま、おねちゅ?」


ピピピッ…



「うん、みたいやね。夢乃、静かにしてあげてな?」



「あい!」



「あ〜、39.5度もあるで。そりゃぼーっとするわな。」




『でも、仕事行かないと…』



「なにいってるんよ、話し聞いてた?熱あるから休まなあかんよ!」



『うん…そんな、怒らんで、、、よ、、』



「泣かんでもええやん、別に怒ってないんやから。とりあえず、氷枕とか持ってくるわ。」



山田は医者やからさすが手際が良すぎて、高熱の私の頭はもう最初っからついていかない。


泣くところやないのに涙が出るし…自分でもわけわからん。


ーーーー




「んー、でも休めへんねんなぁ…」



氷を入れながら1人悩んだ。


夢乃は保育園に連れて行っても、あの彩を1人にするのはさすがに心配や。

熱がある時はいっつもすぐ泣くから慣れっこになっちゃって、泣いてるのほっといて氷枕とかを取りに来ちゃった。

私が休めるなら、夢乃も一緒に私といたらええんやけど…今日は大事な仕事があって休めない。


きっと、今ごろ夢乃に慰めてもらってるやろう…


「あー、もう電話しちゃえ。」





プルルル…プルルル…




(もしもし?)



「ごめん、夢莉くんさ…今日仕事やんな?」



(休みですよ?)



「えっ、嘘やん。」




拍子抜けした。





(今日は公休だったんですよ。朝、気付いちゃって…別に予定ないから夜はそちらにお邪魔しようかな〜なんてぼーっと。)





やっぱり彩と夢莉くんって運命すぎる運命共同体や。




「じゃあさ、彩の看病お願いしてもええかな?」



(えっ!?彩さん体調悪いんですか?!) 



「あ、うん…たぶん夢莉くんとのことが自分の中で整理できたから全ての力が抜けて疲れが出たんやろ。本当に手が掛かる子やわ〜」









なんとなく言ったけど絶対夢莉くんは気にするやろうなって最後まで本当に悩んだけど、これしかもう出てこなかった…ごめんな。って何回も心の中で謝った。








(僕が早く帰らせてあげてたら…すみません、本当に。僕の責任です。)



「やから違うって。」



(彩さんがこんなになるまで思い悩んでたのも僕の気遣いがたらなかったんです。)



「違うよ?夢莉くん。」



(でも…!)


「違う。」




やっぱり自分を責めまくり始めた。

いや、夢莉くんの反省大会の始まりやな…

この2人、本当に似てるな。


(………)




「今回のことは夢莉くんのせいとかそんなことやないねん。彩自身の問題や、あの子がこれからどうして行ったらええか夢乃もいる中で1人の女性としての幸せと母親としての責任を考えてたんよ。やから、夢莉くんの問題やないからね。」



(菜々さん…ありがとうございます。)



「うん、まぁ…そういうことやから休みなら彩のことお願いねん?」



(もちろんです、すぐに行きますね。)



「ありがとう〜!」




夢莉くんには本当に自分のことを責めないで欲しかった。


今回のことは2人にとって、いや…彩と夢莉くん、夢乃にとって大切なことやったから。


体調崩して可哀想やけど、それほど悩むくらい大切な人ってことが改めて分かったはず。



決心もついたんやろうしな。








ピンポーン!





「あ、きたきた。」



「おはようございます。」



「おはよう、いきなりごめんな?」


「いやいや、反対に僕を頼ってもらえて嬉しかったです。」



「私はとっくに夢莉くんのこと認めてるからな?あとは彩のタイミングを待ってあげてな。」



「ありがとうございます。もちろんです、こんなに悩ませるつもりやなかったんです。いつかは…こうなれたらって、それが何年先でも無くても一緒にいられたら僕は幸せやから。」




「でも、彩の中では考えてないこともないし…たぶん一緒になりたいって気持ちがあるからこんなに悩んだんやと思うよ。」



「そうですかね?でも、そうだと信じてます。」


「ふふっ、また男らしくなったな?じゃあ彩のこと頼んだ!」



「はい!って、夢乃ちゃんは?」



「保育園やで。」



「休ませてあげてください!僕がみます!」



「えぇ、見れる?大変やで〜。」


「見れます!!」





張り切った顔で言う夢莉くんが面白くて、ちょっとからかいたくなったけど…そんな時間もなく夢乃もお願いすることにした。





『あれ…ゆーり…?』



「彩さん、大丈夫?」



「私が仕事休めへんから、代わりに来てくれてん。夢乃も見てくれるっていうからお願いすることにしたからな!」



『えっ…?なんでよ、私は1人で大丈夫やで。』




「そんなに熱があってすぐ泣くし1人にはできんねんって!じゃあ行ってきまーす!夢莉くんお願いね。」



「はい!気をつけて!」



ーーーー





菜々さんは仕事へ行き、3人になった。




『ごめんな…』



「大丈夫だよ、僕ね今日仕事が公休やったの朝気づいたんだよ!あはは!」



『あほやな。』



「ほんまに!そうなんだよ、自分で呆れた…彩さんのことでずっと頭いっぱいで上司に言われてたの忘れてたんだ。」



『ふふっ…』




身体がしんどくて、あまり長く話せないけど、夢莉が来てくれたから…なんか安心する。


1人で良いなんて、強がりしかないんや…




「熱、まだ高いね。」



『うん…気が抜けたんやって山田に言われた。』



「菜々さんは僕のせいやないって言うけど、責任感じてるよ。」




そう言って、私の手を握りながら申し訳なさそうにする。



なんでそうなるねん、昨日…夢莉が来てくれて私はどれだけ救われたか。




『違うよ、山田があってる。』



「彩さんを追い詰めるために言ったんやないんだよ…いつか、こうなったら良いなって。」




『…私は、追い詰められてないよ、ただ向き合わないといけない時期が来たんやって。ゆーりと生半可な気持ちで付き合ってないってこと…昨日…それを身に…沁みて思ったよ…』



頑張って、夢莉が落ち込まないように本当の気持ちを話したけど…やっぱりしんどくなって最後は声が小さくなった。



「彩さん…」



『うん、ちょっとだけ寝るね…』



良いところで限界が来てしまった…でも、夢莉がそばにいてくれてこんなにも安心して眠れたら良くなりそうや。



「あっごめん、もちろん。」



ーーー



熱が高いのに無理して喋らせてしまった。


少し話すと彩さんはぐっすりと眠って、その寝顔は幼い子供みたいやった。



でも、どこか儚くて綺麗で…眠り姫みたいに思ってしまって何度も寝息を確かめてた。





「にーたん!」



「あ、夢乃ちゃん…ごめん。」



彩さんばっかりで夢乃ちゃんに全然かまってなかったら怒った顔して僕の服を引っ張ってた。




この顔も、彩さんにそっくりや…



「ふふっ、ママにそっくりやな。」



「これ、にーたんの。」



「お人形遊びかな?」



「あい!」



すると、小さな手で僕の手を持っておもちゃのところへ連れて行った。





「いっぱいあるね。」



「これは〜、まぁま。これは〜、なーたん。」



「夢乃ちゃんおしゃべり上手になったね!」


「えへへっ。」



お気に入りのお人形さんなんやろう、大好きな人をそれに当てはめてるところも愛おしい。



「ふふっ、可愛いなぁ。」


「ゆのぉ、にちゃい。」



「2歳になるんだよね、大きくなったね!」



「あい!」



『お誕生日、なにが欲しいかな?』



可愛くて可愛くて終始僕はデレデレやった。



『ゆーり…?』



「あ、起きた?どうした?」 



『ちょっと、トイレ行きたくて…』



「あ、うん!」



『手、貸してくれる…?』



「もちろん!夢乃ちゃん、ちょっと待っててね。」


「あーい!」

すぐにベットのところへ行った。



「大丈夫?起きれる?」



『うん…頭がフラフラすんねん、、』



少し動くのもしんどそうで、ゆっくりゆっくりと起き上がってた。





「おんぶしようか?」



『うん…ごめん、、』



「全然いいよ。」



おんぶして、トイレに連れて行ってあげたけどフラフラするみたいで入るまで支えた。



心配でドアから少し離れたところで待ってた。





がちゃ。



『ゆーり…?』



「いるよ、大丈夫?動ける?」



『無理や…』



「あっ、」



少し立ち上がるのも無理みたいでドアを開けると倒れるようにすぐにしゃがみ込んだ。



『ごめん…ほんまに、、しんどい。』



「大丈夫だよ、ベットに行こう。」



そのまま今度はお姫様抱っこして寝室にいった。




「わぁ、まぁま、おひめちゃま〜」



「あははっ、そうだね!お姫様みたいだね。」



『もぉ。』




彩さんは恥ずかしかったのか、少し怒りながらも笑ってた。




なんだか、少し3人で過ごしただけやのに…家族になったらこんな感じなのかなって思った。




その後は菜々さんが帰ってきて、みんなでご飯を食べて僕は家に帰った。



3人って言っても彩さんはほとんど寝てたけど…今日一日でも夢乃ちゃんとの絆もまた深まった気がした。



こんなに幸せなんやな…
14/19ページ
スキ