はちみつれもん
それから私は夢莉に会えなくなってしまった。
どんな顔して会えばいいか分からなくて、連絡きても返してない。
家に着いたよってLINEだけは送った。
そのあとは電話も出てない。
「最近さ、ゆーりくんは?」
『え?んーと、どうやろう。』
あれから音沙汰なくて、ご飯も食べに来てない話にも出てこない。
休みの日は夢乃と山田と出掛けてる…
だから夢莉とは全くで、2週間経とうとした日曜日に…とうとう山田に聞かれた。
聞かれなかったらこのままで行こうと思ってた。
無理やのにね。
「ずっと来てないやろ?電話とかはしてるん?」
『してへんで。』
「ゆーりくん忙しいん?」
『しらん。』
「え?」
もちろんそうなるよな。
「先週も会ってなかったよな?」
『そういやぁ、そうやな。』
「あんたらまた喧嘩でもしたん?」
『ううん、してないよ。』
「なんでそんな急に会わんの?今日夜ご飯誘う?」
『ううん、誘わんでいい。』
「なんで?なにがあったん?」
『やから、なにもないって。』
「なんもないわけないやん、そんなん。」
『……ええやん、別に。』
「ええわけないやろ?夢乃の誕生日も約束したんやから!」
「にぃに?いくー!」
『行かんって、もうこの話しやめよう。』
「ちょっと彩っ!」
がちゃん。
私はこの話しが嫌で、リビングを出た。
だって夢莉は気にしてないって言っても、私が気にしてるから…どんな顔で会えばいいか分からない。
ぎこちなくされても嫌やし、気まずい雰囲気も嫌だ…
傷つきたくないから、会いたくない。
ーーー
「ほんまに、困った子や。」
忙しくて普通に過ごしてたけど、それでもよく夢莉くんは夜ごはん食べに行きたり彩が家に連れて来たり電話してるところ見たりするのに…
この2週間全く名前すら聞いてない。
違和感覚えて聞いたらこの反応やし…
何かあったに違いないな。
あんなに想いあってやっと再会して付き合い始めたのに…同じこと繰り返すつもり?
「ご飯食べに来た日以来やな。」
確か、私の記憶が正しかったら夢乃の誕生日のことを計画して…彩が見送り行った日からや。
あの時、2人きりになった時に何かあったんやろう。
(はい、もしもし。)
「あ、ゆーりくん?久しぶり〜」
(あっ、菜々さん?お久しぶりです。)
「最近全然会ってないけど、元気?」
(まあまあです。)
「え?まあまあなん?」
(彩さん…元気にしてますか?)
「なんで連絡せんの?私に聞かんでも連絡したらええやん。」
こういうことするから彩に怒られるんやけど、もう無理や。
(あ、そうですね…あはは。)
「ん?連絡してるん?」
(え、あ…まぁ…)
「もしかして、彩が無視してるん?」
(いや、どうやろう…忙しいんやないですかね。)
「もう、なんで。また連絡するわ。」
(えっ、菜々さん?!)
ぶちっ。
私はそのまま勢いよく彩の部屋に行った。
がちゃん。
「彩?なにがあったん?ゆーりくんと。」
『やから、なにもないって。』
「なにもないのにゆーりくんの連絡無視せんやろ?」
『……電話したん?』
「え、っと…まぁ。ゆーりくんはそれでも彩が無視したって言わんかったけどな。」
『………』
「もう、なんで?なんでなん?」
私は彩を感情のまま責めた。
『分かってる、から!!』
「え?」
『分かってんねん、でも…今は無理やねん。』
「彩…」
『私の中でどうしたらいいか分からんで、、』
「なんかあったん?」
『分からんねん、、これでもいっぱいいっぱいで、、どうしたらいいか分からん。でも、、』
「彩?」
『ゆーりのこと、、大好きやけど、夢乃が大切やから…山田とだって離れたくないって思っちゃうねん、、』
彩は泣きながら私に言った。
大体これだけで何があったか予想はついた。
「ごめんな、責めてしもうて。」
『ごめんっ、、ほんまに…分からんねん。』
ぎゅっ。
「彩の中で、答えが出るまで考えたらええと思う。ごめんな?事情知らんのに…」
『やまだぁ、、、』
抱きしめるとそのまま彩は押し殺そうとしてるけど声が出るほど泣いてた。
でも案外しばらくすると、落ち着いた。
『ごめん、服濡れちゃった…』
「ええよ、このくらい。夢乃はもっと汚すしな?」
『うん…』
「無理に答えを出そうとしてるからしんどくなっちゃうんやないん?ゆーりくんが待ってくれるって言ってるならいまの関係のままで、考えていったらええやん。」
『そうなんやけど…』
「ん?まぁ、すぐ応えられるなら応えてあげたいよな?でも心の準備も必要やもん。」
『うん、時間かかっても良いよな?』
「当たり前やん、かかってもええよ。どれだけかかるかも人それぞれやしな?大丈夫やって、ゆーりくんは彩のことそんなことで嫌いになったりしないし予想範疇やと思う。」
『そっか…』
泣き止んで改めて話すと、彩もちゃんと考えられてる気がして安心した。
「うん、大丈夫やって。」
『ありがとう、山田…ゆーりのこと、絶対に山田に聞かれるやろうなって思ってててん。』
「うん、隠そうとする方が無理やんな?あははっ。」
『ふふっ、ほんまやな。』
「まぁ、無理会えとは言わんからさ。せめてラインは返してあげや?」
『うん、分かった。』
そのあとも彩は普通に話して笑ってたから大丈夫かなって思った。
彩の中で何もしてないように見えても、頭の中で自分の中で永遠にぐるぐると考えて誰にも私にも相談できなくて苦しかったやろうなって…
泣かせてしまって、すごく後悔した。
本当にごめんね。
ーーー
『じゃあ行って来ます。』
「いってらっしゃい!気をつけてな?」
『うん、ありがとう〜』
それから夢莉とはやっぱり会ってなくて、LINEのはきてるのには返した。
でも、全部素っ気なくなった。
もしプロポーズを断ったら、私たちは別れてしまう気がしてそう思うともうどう接したら良いか分からないし会うのが怖い。
大好きでも愛してても…また私たちの関係が悪化するのが怖くて怖くて。
ぴろんっ。
『ゆーりや…』
返してからはあまりの素っ気なさに引いたのか夢莉から返事がなかったのに、久しぶりに来た。
流石に嫌われたかなって…思ってたんやけど。
(水族館どうする?)
夢乃の誕生日のことだった。
(ごめん、行かないや。)
迷わずそう打ってしまった。
私たちはやっぱりもうダメなのかな?
やっと再会できたのに?もうダメなの?
(なんで?)
すぐに帰ってきたのは、珍しい雰囲氣だった。
もしかして怒ってる?
それ以上は送れなくて、また既読スルーした。
『ごめん、、ゆーり…』
涙が止まらなくて、仕事帰りしばらく家までそんなに遠くないのに過ぎてしばらく歩いてたら。
ブーブーッ
サイレントにしてる携帯がなってるから見ると、やっぱり夢莉やった。
出たくない
けど、声が聞きたいって思ってしまった。
『……』
(もしもし?彩さん?)
『うん、、、』
(泣いてるの?)
『ゆーりっ、、、会いたいよっ、、』
(どこにいる?)
『わからんねんっ、、、』
(家の近く?)
『たぶんっ、、』
(分かった。)
すると電話は切れた。
何が分かったんやろ?
って思いながら止まらない涙を拭いながら私はもうどこか分からない街を歩いてた。
「彩さんっ!!!」
しばらくすると、まさかの声に思わず振り向いた。
『ゆーりっ、、、?!』
「やっと、見つけた…」
『なんで、、、なんで、、分かったん?』
「電話の声聞いて、慌てて仕事場から家の道を探したんだよ…?でも、いなくて焦った。」
ーーーー
久しぶりに声を聞いたら、完全に泣いてて…どこか切羽詰まってて。
これはもう限界を超えてる声やって分かったから、会いたくないって言われても会いに行った。
やないと、僕たちは本当に同じことを繰り返してしまう。
こんなにも愛してる人はこの世にいないのに…
『ゆーりっ、、、』
「彩さんっ…」
ぎゅぅっ。
僕は強く彼女を抱きしめた。
寒い中ずっと歩いてたんやろう、体は冷え切ってる。
「なんで泣いてるの?なんでこんな寒いのに歩いてるの?」
『ゆーり…に、、会いたくて、、忘れたくて、、』
「気を紛らわせてたの?」
『うん、、、』
「本当に彩さんは…あほやなぁ、、そんなので僕たちが離れられるわけないやん。」
『うん、、、分かってる、、、でも、無理やねん…』
「僕は無理って言われても諦めないよ。もう別れたり離れたり絶対にしない。」
『ゆーり…』
「僕だって、めちゃくちゃ会いたかったよ…彩さん。」
そう言って自分の気持ちを言葉にすると、抱きしめる力は強くなった。
『ゆーりっ、、、もう離さないでね…ほんまに約束やからね?』
「うんっ、当たり前だよ…絶対に離さないよ。」
嫌がるどころか、彩さんの力いっぱいで抱きしめ返してくれた。
それが嬉しくて愛おしくてたまらなかった。
しばらく抱き合うと、僕たちはキスをした。
『ふふっ、ゆーり…』
「ん?どうしたの?」
『ううん、呼びたいだけ。返事してくれるだけで嬉しい…』
キスをして離れると、照れたように下を向いたけど少し笑いながら僕をよぶ。
「あははっ、僕も嬉しいよ。」
彼女の変化をあとは少しで見逃すところだった。
もともと返事は早くないし、返ってこないこともあったけど何回か送ったら返してくれてた。
でも、電話は完全に出てくれなくて…
これはもしかして、僕を避けてる?って思った。
あの本当の想いを伝えたことが彼女にとって、どれだけの負担になったか…
会えない日々が続いて気付かされた。
本当に辛くて限界やった。
このまま連絡取れないのかなって…
でも、それじゃだめだって。
繰り返してしまうって、夢の中で3人で遊ぶ風景を思い出して目覚めると泣いてて…どんな形でも良いから絶対にもう手放してはダメやって。
その日の朝に誓った。
そして、連絡を取っての今日やった。
我慢の限界で電話をしたら、彩さんも限界やった。
彼女の涙はいつ見ても胸が酷く痛くなるけど、でも泣き顔を見ると胸が痛いほど愛おしい。
「帰ろっか。」
『うん、車どこに停めたん?』
「彩さんのマンションの駐車場だよ。」
『え?遠くない?』
「なに言ってるの、彩さんが最初にここまで歩いてたんだよ。もっとに行こうとしてたやろ?」
『うん、気付いたらこんな遠く歩いてた。』
「遠いけど、一緒に歩いて帰ろっか。」
『うん。』
僕が差し出した手を優しく握ってくれて、握り返す力は少し強くなった。
『ふふっ。』
「どうしたの?」
『あったかいな、ゆーりの手。』
「そう?彩さんが冷え過ぎたんだよ。」
『そっか、それはあるかもね。』
僕たちは歩き出して、会えなかった日々を埋めるように話しをたくさんした。
だから、けっこう距離があったのに家まではあと少しでまた寂しさを感じた。
がちゃ。
「あっ、おかえり〜。良かった、今探しに行こうかと思っててん。」
『え?』
「ゆーりくんもおるやん!どうしたん。」
彩さんが鍵を開けると、菜々さんが夢乃ちゃんを連れてどこかへ行こうとしてた。
「あ、えっと…仲直りしたんです。」
『喧嘩はしてないけどね。』
「そっか、良かった…いくら電話しても出んし帰ってこんし。今日はいつも以上に様子が朝からおかしかったから心配しててんで。」
『そうなん?そんなつもりなかったけどな…』
「菜々さんと僕には分かるんだよ。彩さんは隠せてるつもりでもね。」
『そっか…本当にごめんな?心配かけて。』
「ううん、ゆーりくんも一緒でホッとした。」
「話しもちゃんとできたんで、もう大丈夫なはずです。」
『うん、もう大丈夫や。ありがとうな、山田。』
「それなら良かった。」
(にぃたん〜!)
「あ、夢乃ちゃん!久しぶりだね!よしよし。」
玄関でもおもちゃで遊んでた夢乃ちゃんは僕にやっと気付いたみたいで、嬉しそうに手を振ってくれた。
忘れられたかと思ってたら、遊びに夢中なだけだったんだね。
「また一緒に遊ぼうね。水族館も行こうね。」
「あい!!」
久しぶりに見た夢乃ちゃんはまた少しお姉さんになってて、子供の成長は早いんやなぁって思った。
ーーー
「ほらほら、2人とも早く入り?あったかい物作ってあげるから。」
『うん、そうやな?』
「あ、僕はもう帰りますよ。」
『なんで?』
「そうやで?なんでよ、せっかく仲直りしたのに。」
「またゆっくり時間がある日に来ます。」
『ええやん、少しだけでもさ…?夢乃も喜んでるんやし。』
「夜遅いし、寒い中たくさん歩いたから彩さんは早く身体を休めて欲しいんだよ。だから今日は帰ってまたすぐ来るよ。ね?」
僕の手を離そうとしない彼女が愛おしくて、気持ちを伝えて頭を撫でたけど…まだ離そうとはしなかった。
『でも…私はそんな疲れてないよ。』
「疲れてるよ、あんなに歩いたんやし。また疲れが出たらダメやから今日はゆっくり休んでね。」
長距離を往復して、たくさん泣いて…疲れてないはずがないのにそんなこと言って僕は子供みたいに拗ねる彩さんが可愛くてダメやけど少しにやけてしまった。
自分のほっぺたを叩きたい。
ーーー
『ゆーり…』
私のわがままで、夢莉を付き合わせたからせめて温まっていって欲しいのは本音やけど。
久しぶりに会うと、離れたくない気持ちが強くなってしまった。
こんなにやっぱり愛おしくて特別な存在なんやってこの期間に思い知らされた。
「明日でも明後日でも良いし、僕は彩さんたちが呼んでくれたらすぐに飛んでくるからね。まぁ呼ばれなくても来るけど…あははっ。」
「やって、彩。」
『うん…』
「ほら、手を離してあげんとゆーりくん帰れんやんか。」
『分かった…じゃあまた。電話するね。』
「そうだね、電話しよっか?」
『うん。』
「ふふっ、でも寝て欲しいんやけどなぁ…まあいっか。じゃあまたあとでね。」
『うん、またねあとで。』
「菜々さん、夢乃ちゃんおやすみなさい。」
「おやすみ〜、夢乃あっち行っちゃったわ。」
「あははっ、良いですよ。夢乃ちゃん可愛いなぁ〜癒された。じゃあまた来ますね。」
「うん、またね〜」
帰って行く夢莉を見てるとまた泣きそうになったけど、そこはグッと我慢して。
何回も振り返って手を振ってくれる愛おしい夢莉を困らせてごめんって…思いながら見えなくなるまで私も手を振った。
これからはずっと一緒に居られるんやもん。
今日は我慢するね、ありがとう…ゆーり。
