すき。

がちゃっ。




『ももか…?』



まるで夢から目が覚めて、現実に引き戻されたような感覚でぼーっと天井を眺めてたら…



いつもの音がした。




この音に一時期はすごく苦しめられた。







「大丈夫か?」




なんともない顔してるけど、これは彼の中でも心配してる顔やねん。



私だけが知ってる。




『ううん。』



「大丈夫やないんかい。」



『しんどい…』



「言うこと聞かんくてなったのに、素直に言うなや。」



『いっつも我慢すんなって言うくせに。』



「あほ。」




『ゆーり、帰ったん?』



「うん、流石に外暗いから車で送った。」



『ありがとう。』



忙しいのに、仕事に戻らなあかんのに…


今日はたぶんずっと一緒に居てくれようとすると思う。





『帰ってな…』




「明けやから寝ていく。」



『自分の家があるんやから、そっちに帰りや。』



「俺の勝手や。」



『そんな時だけ勝手つかわんで。』



「うるせ、ほら寝ろ。」



ばさっ、




都合が悪くなったから、私の顔まで布団を被せてきた。




『ゆーり…嫌いになったかな。』



ぼそっと呟いた。




「なってへん。」




『分からんやん。』



「なってへんって、なる理由がないやろ。」




『あるから言ってねん、嬉しくて…振り回しちゃったかな。』



「大丈夫や、友達になったんやろ?」



『うん…私だけかも思ってるの。』



「そんなことない、ええから寝ろ。おやすみ。」



『強引やねん。』



「また、しんどくなるで。」



『ならんもん。』



「なったやろ、ほら気になるならまた明日考えたらええ。」




『うん、それもそうやな…おやすみ。』



「おやすみ、寝たら点滴替えとくからな。」



『ありがとう…』





私が点滴の針の抜き差しされるのが苦手やから、百花は気遣ってくれる。



そこだけは隠さない。



他は全部さりげないのに…




やから、いつまで経ってもこのままやねんで?私ら…







ーーー





夜勤明けでまさか帰ろうとした時に彩が病院に運ばれてきて焦った…



帰ってなくて良かったって。





本当はずっとそばにいたいけど、仕事柄もやけどそうもできひんくて…彩の寝顔を見ながら申し訳なく感じる。




憎まれ口ばっかり言うけど、ただ寂しいだけと俺を家に帰らせなあかんって心情から無理して2回発作起こして…



2回目はタバコの煙とか空気が悪いところにいたからかなり焦ったな。




もう家なんて捨ててここにずっと居たいけど、仕事が関係してくるし…どうしたらええんやろって分からなくなる。






「ん〜、ふぁあ…」



俺が起きてもまだ彩は寝てて、よっぽど疲れたんやろうな。



でも、楽しかったんやろう…携帯を握りしめて寝てる姿を見ると愛おしくなる。




点滴が終わったから、外して朝ごはんを作ってた。






『ももか…?』




「ん、起きた?」



『まだおったん?帰らんとあかんやん。』




「帰らんよ、俺の家やもんここが。」



『違うやろ…私はもう大丈夫やから早く帰って。』




「朝ごはんできたで?食べるやろ?」




『…話しそらさんで。』


「ええねんって、ほら冷めるで。」




机に朝ご飯を運んでも、彩の顔は真顔だった。




「怖いねん顔が。」



『ほんまに、あかんって…ももか、、仕事にも影響でたら、、どうすんねん…』




彩は泣きながら言い始めた。




「お前がそんな気にせんでええんやって、別になんとでも理由は言えるんやし。」




『嫌や…またももか、が、、』



「大丈夫や、殴られそうになったら殴ってやるから!」




頭を撫でながら彩の涙を拭った。



なんだかんだ彩の俺に対する態度は心配してくれてるから。



俺のため思っての態度なんだ。


でも、やからって自分を犠牲にするのは違う。




『そういうことちゃうやん、、私らはもう…別れたんや。』




「それは彩が勝手に言ってることやろ、知らんで俺は…ほら飯食え。」




『…………』






ピンポーン!





「ん?誰やろ、朝早くから。」



『朱里さんやないん…』



「この家知らんやん。」




『…………』




がちゃっ。





誰やろって出たら…




「あ、すみません…学校行くかわりに来ちゃって。」




「あ、夢莉?やっけ?」



「はい…」



「ん、ええよ。中入りや?」



この子が来たら俺はここにおらん方がええな…



『あ!ゆーり!』




夢莉ちゃんの顔を見ると彩は一気に笑顔になった。
友達の存在って大きいんやな…



「お、おはよう…彩。」



『来てくれたんや!昨日はごめんな?』



「ううん!!大丈夫?」



『うん、大丈夫や!もうピンピンしてる。』



でも、なんか空元気って感じもする。



「まだ安静にせなあかんで。」



『わ、分かってる…』




「じゃあ、俺は仕事行ってくるか。ごゆっくり。」




『あれ?ご飯は?』




「2人で食べたらええやん、俺はお腹空いてへん。」




『自分で作ったのに?』



「うん、彩に食べさせんとって思って作っただけや…じゃあな。なんかあったら電話するんやで。」



『ありがとう、ももか…』



「おう。」





がちゃん。





そのまま病院に休みやけど仕事をするのにまた向かった。





ーーーー





「百花さんって彩の彼氏?」



『ん?違うよ。』



「でもあの写真。」




夢莉が指差したのはあの写真だった。



『…前はね。』



「元彼ってこと?」



『まぁ、そんな感じかな。』



「そうなんや。」



これ以上聞いたらあかんって思ったのか、夢莉はたぶん聞きたい気持ちを抑えて黙った。



これからのことを思うと、ちゃんと言っておいた方がいいのかな…





『別れたのになんでここに来るか聞きたい?』




「え?」



『写真も飾ってるからね…』



「ううん。」



『ゆーりは、私の大切な友達や…ちゃんと私のこと話しても良い?知って欲しい。』



「彩…」



『昨日会ったばかりやのに、馴れ馴れしいかな?』



「私さ、友達おらんからそういうのも分からないねん…だけど彩のことちゃんと知りたいって思うよ。話してくれるならちゃんと受け止めたい。」




『ありがとう、ゆーり…大した話やないけどじゃあ話すね。』




「うん、ありがとう。」




それから心の準備をして、話し始めた。





『私はさ、昨日分かったと思うねんけど…心臓に病気を持っててもう長いことこの状態やねん。』



「うん…百花さんから少しだけ聞いたよ。」



『そっか…百花とは少し歳が離れてるんやけど、研修医の時かな?私が中学に入ったばかりの時に出会ってん。』



「そうやったんや。」




『うん、でも再会やで?実は幼馴染みやってん。』



「え?そうなの?!」



『近所のお兄ちゃんでよく遊んでもらってて百花の家は母子家庭やってんけど再婚して引っ越したから、また大きくなってたまたま病院で再会してん。』



「なんかロマンチックやね。」



『そうかな…ここからは全然ロマンチックやないで。』



「そうなん?」


『うん、なんでか付き合うことになって…百花は中学生と付き合うってことはロリコンやなぁってめっちゃからかった。』




「あははっ、なんか想像できる。」


『でも、私も本当に好きやったから…嬉しかったし百花と付き合えて病気でも毎日楽しかった。』



「うん…」


『でもな、私の母が再婚してん。その相手にも子供がおって…』



「うん?…」


『ももかやってん。』



「え!!」



『びっくりするよな、私たちもびっくりした。それで事情話したけど認めてもらえんくて、百花はお父さんにお見合い相手まで用意されて結婚しないといけなくなってん。百花のお母さん再婚したけど亡くなったみたいで…血の繋がってないお父さんやねん。』




「なんて複雑な…それにお見合い?」



『百花が働いている病院のための結婚らしくて、父親が院長してるねん。』




「そんな…でも、血が繋がってなくてもそんなことに息子を使うなんて。」



『百花とこの家で同棲しててんけど、将来のことを考えると私もいつまで生きられるか分かれへんし…病院も経営するのは生活にも関わってくるやろ?そう考えたら私たちは別れた方が良かってん。なのに、百花はずっとここに居座ってんねん。』



「本当に良いの?それで。」



『良いも何も…こうするしかないやん、だから私たちはもう恋人関係やないねん。』




「彩…」



『百花は婚約してんねん、やから帰ってくるのもここは違うってこと。それでの私の百花へのあの態度がやっとやねん…』




「なんで、、、なんで…本当にお互いに大好きやのにそんな、ことせんとあかんねん、、」



『ふふっ、なんでゆーりが泣くねん、、』




私の話しを聞いて夢莉が泣き出した。



こんな普通に話してるけど、百花と別れる決意をした時は私も毎日泣いて…精神的にもボロボロやった。





今も立ち直ったわけやないから、百花が来るとしんどい…




自分の気持ち殺すのって本当に辛いことやってわかった。





「だって、、、彩も百花さんも、、辛いのに…」




『もう泣かんの、ほらティッシュ。』




ーーー





私にティッシュを渡したけど、彩もつられてか思い出してかティッシュを目に当ててた。



『ありがとう、ゆーり。』



「なんでお礼?、どうにかならないんかな?」


『ならないよ、私は百花が大切やから…頑張って医者になったのに家族と揉めて職失って欲しくないし、幸せな家庭きづいてほしいって心から思ってる。』



「彩…」



『私のことはこれで終わり、ゆーりの話しも良かったら聞きたいな。』






彩の話しを聞くと私の話なんてまるでなくて、話を聞いてからしんどくなってきた。



耐えられないよ、こんなの…彩と百花さんが可哀想すぎる。





「私の話なんてないよ…」



『なんで保健室登校なん?』




「あ、それは…」




全くないことはないか…



興味を持ってくれてると思うと嬉しい。



「私はただ単にいじめられてだよ。昔からさ、いじめられやすくて…小学校からだから。」



『いじめか…お母さんは?何もしてくれないなの?』



「私のことはとっくに見離してるの、再婚した相手も連れ子が居てね…同い年で女の子だからそっちの方が頭もいいし可愛くてなんでも出来るから弟も新しく生まれて私なんて居ないようなもん。」



『そんなことないやろ、ゆーりがそう思ってるだけちゃうん?』


「ううん、そんなことないよ…みんなのご飯はあるけど私だけ作ってないし。保健室登校でなんも良いところない私はもういらないって言われたよ。だから、本当は帰りたくないよ…ここにずっと彩といたい。」




『じゃあ、一緒にいおう、、?』



「彩…泣いてる?」



『うぅ、、やって、、』



彩はボロボロ泣き出してた。



「なんで?そんな泣くような話やないよ?」



『だって、、ゆーりの気持ち考えたら辛いよ。』



「ふふっ、私たちお互いのことで泣くんだね。」



『うん、、、辛いのがどっちか分からなくなってくるね。』




「ありがとう、彩…」



『ゆーりっ、、、』




しばらく私たちは抱き合って泣いた…



今まで、辛いとか思ったこと感じないようにしてたし…自分が悪いって思ってたから、こうやって初めて自分のことで泣いてくれる人が居ると涙が止まらなかった。















しばらくすると、泣き疲れたのか私たちはそのまま横になって寝てしまった。




「んぅ…寝ちゃってた。」



横を見ると彩もまだ寝てた。




「彩?」



寝てると思ってた、けど…なんか息が荒い?気がした。




『ゔぅっ、、』



「彩、大丈夫?!」



『ゆーり…そこの、薬とって、、』



手を伸ばす方を見ると吸入器?みたいな箱があった。




「う、うん!」



『すぅ…はぁ…すぅはぁあ!』



「大丈夫?ど、どうしよう…百花さん呼ばないと。」



『大丈夫や、、げほっ、、』



「本当に?私はどうしたらいい?…何かできることあったら言ってね。ゆっくりでいいから。」



すると、彩は少しずつ呼吸を落ち着かせようとしてた…



『はぁあっ…はあっ、、!!はぁ…』


「彩…」



今すぐ救急車を呼ぶべきなのかとも思いながら彩の大丈夫を信じてた。



『ベットに、、』



「横になる?うん、分かった。」



少し身体を起こそうとしたから、支えてあげてそのまま横にならせてあげた。



『はあっ、、はあ!!…はあっ、、』


私は自然に背中をさすってた、楽になるかは分からないけど何もせずにはいられなくて。



『はあ…はあ…ごめん、、百花に、、連絡したいから、携帯…』



「あ、うんっ…」



すぐに渡したら辛そうに目を閉じながらも、連絡してた。




『少し…もうちょっと、、寝るね。』



「分かった、布団かける?」



『布団は…いいかな…』



息が荒いのも少しずつ治ってたけど、目を瞑っても普通よりはまだ辛そうだった。



これも発作なのかな、運動してなくても起こるものなの?…






心配で、眠ってる彩をずっとそばで見守るしかできなかった。












がちゃん!!



「彩っ!!」



少しすると百花さんがすごい勢いで帰ってきた。



「百花さん、、」



「あ、ごめん…驚かせたな?」


「彩、寝てるけどまだ辛そうで、、、」



「大丈夫や、よくなるねん。」




すごい剣幕で帰ってきたのに、私に気づくと笑顔で頭を撫でながら安心させようとしてくれた。





すると、昨日とはまた違った点滴を始めた。

血圧とかも測って真剣に…








「よし、大丈夫やで。血圧も安定してきた。」



「よかったぁ、、、」



「あー、怖かったよな…泣かない泣かない。」



しかもさっきの話しを聞いてたから安心して余計に泣いてしまった。



「とにかくお茶でも飲もうな。」



百花さんに座らされて、お茶を飲んだ。




ーーー




「2日連続で発作みたからな、大丈夫か?」



「はい…、彩が昨日より辛そうで怖くなっちゃって。」



「うん、さっきのはちょっといつもより酷い発作やったからな…」



「病院で治療しなくて大丈夫なんですか?」



「そりゃ、病院の方がええけど…彩が嫌がるねん。だからこうやって家でなるべくしてる。救急車で運ばれたら仕方ないけどな?」



「そうなんや、、」



「ここで話してたら発作起きた?」



「ううん…私たち気づいたら寝落ちてて、起きたら横で彩が苦しそうにしてて。」




「そうか…」




珍しく彩から連絡が来てかなり焦ってここに帰ってきた。



なによりすぐに気づけて良かった…



まぁ、緊急にしてるんやけどな。




『はぁっ、、はぁっ、、ゔぅ…』




「彩っ…大丈夫?」



『ゆー、り…ごめん、、びっくりしたよな。』



彩はしんどくてまだたぶん話す余裕はないはずなのに…夢莉を驚かせたことに罪悪感をもってるのか、返事してた。




『大丈夫やからね…』



「寝てなあかんで、喋ったらあかん。」



『もういい、よ…ももか…大丈夫や…』



「彩…」



夢莉は心配そうに彩の手を握ってて、俺はこの空間にいて良いのかって考えてしまうほど2人の絆は既にあった。





「大丈夫や、疲れるから夢莉も座ってお茶でも飲んだほうがええよ。」



彩を寝かせるためにも少し離すことにした。





「あ、はい…」




怖がられないようになるべく優しく言ってるけど、まだやっぱり怖がられてる気がするんだよな。






「はい、どうぞ。」



「ありがとうございます。」



「時間は大丈夫なんか?」



無理に帰れとも言えなくて、彩で慣れてるはずやのに、に年下の女の子はなんだか接しずらい。




「はい…」



『ゆーり、今日からうちにおるねん。』


寝てたはずの彩がぼそっと言った。





「はっ!?」



「す、すみません!!だ、ダメに決まってますよね!!帰ります!!」


つい驚いて大きい声を出したら怖がって帰ると言い始めてしまった。




『もぅ、ももか。』




「分かってるって…」




ここはまぁ、俺の借りてるアパートの一室やけど確かにもう彩のものだ。




「あ、ごめんな?ちょっもびっくりしてん…別にダメやないし、君が良いならええんやけどさ。」




「本当ですか?」



玄関まで走って行ったのを追いかけて一生懸命に優しく言った。




「でも、荷物とか大丈夫なんか?」




「あー、取りに行ってきます。」



「そうか、じゃあ車出そうか?」



「いえ、彩のところに居てください。心配なんで…」




「あー、まぁ…それもそうやな?まだ外明るいしでも気をつけてな?」



「はい!ありがとうございます!彩、ちょっと行ってくるね。」



『うん…気をつけてな。』




がちゃん。




「はぁ…疲れる…」



『ゆーりに気を遣いすぎや。』



「お前は寝てなあかんねん。」



『もう落ち着いたから、大丈夫やもん。』




「ほんまに、心配させやがって。」



ーーー




夢莉が泣き過ぎて寝落ちした後、私も寝ようと思ったら…急に軽く発作が来て一生懸命に少しやからって自分で深呼吸をして治そうとしてたら余計に酷くなってしまった。




百花をまた呼び出して、もうほんまに恥ずかしさしかない。





『ふふっ、でも心配してくれたんや?』




「いっつもや!」




『ごめんな。』




「はぁ、まあ仕方ないけどな。」



『うん、ありがとう。』




「あのさ、彩…」




『ん?』




「別に俺をさ…家に帰らせようとか一緒におったらあかんとか考えんでええからな。」




『なんで?』




「だって、俺は…彩だけやからさ。」



『ももか…』



「どうしようもないことはまぁ、親父の言うこと聞くとしても…そこが変わらない以上は俺の結婚は上手くいかないねん。やから親父が諦めるの待つし、いつかどうにかするから。」



『ふふっ、どうしようもないのに?』



「うん、なんていうか…納得いって聞けるところまでは聞くけど、やっぱり無理なところもあるねん。」



『意味わからんな。』



「なんやねん、真剣やねんで。」



『うん、分かったよ。おやすみ。』



「なんで寝るねん。」



『眠たくなった…おやすみ。』



「寝ろって言ったら寝んくせに、ほんまに…珍しく話し聞いてると思ったのに。」

















本当は眠たくなんかなかった。



百花の話しを真剣に聞いてしまうと、諦めてたのは私やのに泣きそうになったから…



なんだかんだ、まだ愛してて、好きで…それを百花もわかってるからこんな話してきてる。



泣いてるところは見せたくないから、その気にもなりたくないし…話しを遮った。



百花のこと信じちゃったら、あかんもんね…
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