はちみつれもん
「彩さ、帰りに夢莉くん迎えに行ってあげたら?」
『え?そんな時間あるなら夢乃を迎えに行くやろ。』
「いやいや、夢乃は私が早く終わるからすぐ迎え行くし。18時は過ぎるやろ?」
『うーん、まぁ…?そうやな?』
「なら同じくらいやない?待っててもらって一緒に来たら?」
山田はこうやって私たちが2人になる時間をくれようとする。
でも、そんな無理矢理にしてくれようとしなくても良いのにって…思う反面少し嬉しい。
『じゃあまたゆーりに聞いてみる。』
「うん、それが良いな!」
それから仕事に行き、何回も電話するのもあれやし…LINEしておいた。
〝今日何時におわる?〟
それだけ送ってた。
昼休みに携帯をみると返ってきてた。
〝19時かなぁ、19時半なるかもしれない。〟
『あ、同じくらいや…』
そう思ってまた返事を打ってると。
プルルル…プルルル…
『電話きた…』
夢莉から電話が掛かってきた。
なんか電話って少し緊張するんだよね。
『もしもし?』
(彩さん?いま大丈夫?)
『うん、ちょうど昼休みやからね。』
(あのさ、近くの東公園わかる?)
『ん?分かるけど。』
(そこに今から行かない?散歩がてらに、彩さんの会社の近くに居るからさ。)
『そうなん!?行けるよ〜!』
(良かった、じゃあ待ってるね!)
『うん!』
私は食べてたサンドイッチを頬張ってすぐに会社を出た。
「あ、彩さん!」
『ゆーり…』
この間の土日に会ったばかりなのに、まだ3日しか経ってないのに…
なんでやろ、夢莉の顔を見るとホッとして、
なんか泣きそうなる。
こんなに大好きなのに、なんで突き放すようなことをしてたんやろ…
酷いこと言ってたんやろ。
「どうしたの?なんか、涙目だよ?」
『ううん…大丈夫、、』
我慢すればするほど、涙で視界がぼやける。
「泣いてる?ごめん、もしかして体調悪かった…?」
『ううん、、違うねん、、ゆーり…』
「彩さん?」
『ゆーりに、、会えたのが嬉しくて…』
ぎゅっ。
夢莉は急に私を強く抱きしめた。
「僕もだよ…彩さん。」
『ゆーりっ、、、』
「会いたいって…ずっと思ってた。朝にね、電話くれて声聴くともう会いたくて会いたくてたまらなくなっちゃったんだ。」
『私も、、、』
「声聴けたのもめちゃくちゃ嬉しかったんだよ。ほんとに…」
『ふふっ、、私たち、同じこと思ってたんやな?』
顔あげて、笑顔で言おうとするけど…やっぱり涙は止まらなかった。
「ふふっ、それにしても泣きすぎだよ?」
『ほんまやな?なんか、涙脆いねん。』
ーーーー
そうやって、必死に涙を拭うのに追いついてないくらい彩さんは泣き出してた。
すごく愛おしくて、たまらなくて、胸がギュッとする。
学生の時とだけど、本当にこの存在の愛おしく…大切にしたいとって心の底から思う。
もう2度と離さない。
「ここの公園までの道が、紅葉がすごく綺麗なんだよ。」
『うん、、、』
「彩さんとちょうど昼休みやし時間合えばって思ってさ、会う口実になるやん?」
『うんうん、、、』
まだまだ泣き止みそうにない彩さんは、僕の話しをそれでも笑顔でうなづいてくれる。
可愛いけど、ちょっと意地悪を言いたくなった。
「あははっ、そんな泣ける話ししてる?」
『うっさい、涙とまらんねん〜、、』
「可愛いな、ほんまに…ちょっと歩いてみようか?落ち着くかもしれないし。」
『そうやな、、』
手を繋いでゆっくり歩くと少しずつ彩さんは泣き止んできた。
「綺麗だね、葉っぱたくさん落ちてる。」
『うん、このイチョウの葉っぱとか可愛い…夢乃に見せてあげたいな。』
こんなに可愛くて愛おしいけど、しっかりと夢乃ちゃんのお母さんなんやもん。
僕とは違って彼女はもうとっくに大人になってる。
「休みの日に3人で来ようよ!公園もあるし喜ぶよ。」
『そうやな、そうしよう。』
「高校生の頃はさ、当たり前にこうやって一緒に居たんだよね。」
『うん…当たり前やったな、ずっとなにも変わらずこのままやって。別れるなんて思ってもなかった。』
「僕もだよ、別れたあとこの先どうやって生きていく?ってなった…」
『そうやったんや、私も…なんかどうやって過ごしたら良いか分からんかって大学も辞めちゃった。』
「ごめん、ほんまに…」
『もうそれはお互い様やね?どっちも悪い!って私が悪いねん1番。』
「あははっ、それを言い出したらきっと僕たちはキリがない言い合いになっちゃう。ちゃんと話しをするべきやったんや。」
『じゃあお互い様や!』
「そういうことにしておこうか、これからはずっと一緒にいる。だからもう全て良しなんだよ!」
本当は僕が1番悪いのに、彩さんはやっぱり優しいからこう言ってくれる。
『うん、遠回りしすぎたけどね。』
「だから、こうやって今も会いたいってなってすぐに会えるんだよ?」
『ほんとに、ゆーりに気づいた夢乃に感謝や。』
今から思っても本当に奇跡が重なってるとしか思えないな…
「いや、それは本当に…!」
『あははっ、しみじみといっちゃうな?』
「うん!」
それからも2人とも繋いだ手を強く握ってて、僕は当たり前にもう本当に離れたくないっていう想いが強かったけど…
彩さんも同じみたいだった。
『どうしよう…』
「ん?どうしたの?」
『もう離れたくなくなっちゃったや…』
僕と繋いだ手を見ながら彼女はまた泣きそうに言った。
「そうだね、僕もなんだよね…」
もう休憩時間が終わるし、帰らないといけない。
『どうしよう…』
「もう一層のこと早退しちゃう?」
そんなことしたらダメって分かってるけど、僕は彩さんとの時間の方が優先したかった。
『だめだめ、今日の夜は会うんやし。』
そう言って彩さんはやっぱり泣きそうやったのか、涙を拭いて気持ちを切り替えてた。
「そっか…」
『ふふっ、そんな悲しそうな顔せんで?』
「やって、ずっと一緒にいたいやん。」
『嬉しい…でも、私たちはもう大人やもんね?夢乃もおるしちゃんとせなあかん。』
「うん、そうだね。」
やっぱり彩さんは僕より大人やな、高校生の時もよく思ってたけどこうやってしっかりしてる。
『学生の時はまだ子供やったなぁって、なんか思うね。』
「ほんとに、ずっと一緒やったもん。大人の責任とかなかったなぁ…」
『あ、そうそう!夜さ、山田にゆーりを迎え行ってあげてって言われたんよ?何時に終わる?』
彩さんは急に思い出したみたいで話が変わった。
「19時半かなぁ、僕が迎えに行くよ?会社まで。」
『ほんとに?私もそれくらいに終わるからまた連絡するね。』
「うん、じゃあ帰ろっか。」
『うん!』
また手を繋いで、彩さんの会社の前まで戻った。
「じゃあ、またあとで」
『うん…』
「彩さん?」
返事したのに彩さんは手を離さなかった。
『なんでこんなに離れたくないんやろうな。』
少し困った顔で彩さんは言う…
「ふふっ、そういうの本当に反則やからね?」
『え?』
「可愛すぎる…」
『もう、そんな年齢やないからな?』
「そんなことないやん、まだまだ僕たちは若いよ?」
『そっか…じゃあ、』
ちゅっ、、、
「あっ…」
『じゃあまたあとでね、ゆーり。』
彩さんは僕に背伸びをして、キスをした。
顔を少し赤くして恥ずかしそうに、小走りで会社に戻って行った…
「だ、から…ダメやって。はぁ。」
僕は一瞬ショートしたみたいになった。
顔が爆発した。
付き合い始めて、すっごい久しぶりにキスをされて死ぬかと思った…
ーーー
こんなに久しぶりにキスして、めちゃくちゃ恥ずかしかった。
夢莉がどんな反応してるかも見れなかったな…
そう思いながらも、夢莉のことで頭いっぱいになりながら午後からはあんまり仕事にならなかった。
『よし…終わった。』
でも、なんとか仕事を終えて時計を見ると19時25分やった。
ブーブー…
すると、ポケットに入れてる携帯が鳴り始めた。
『ゆーりや。』
嬉しくてすぐに出てしまった。
「あ、もしもし?彩さん今どんな感じ?」
『今仕事終わったところやで?』
「そっか!じゃあもう着くからね〜」
『うん!ありがとう、前で待ってるね。』
「はーい!」
そうして、すぐに帰る準備をして会社を出た。
「彩さん〜」
出ると、すぐに前のところに車に乗って停まってる夢莉が窓を開けて手を振ってた。
なんやろ、ちょっと可愛いってなった。
『ふふっ、もしかして時間より前から待ってたんやろ?』
「え、なんで分かったの。」
『なんとなくや、ゆーりのことはだいたい分かるようになってんねん。』
「あはは、なんか嬉しいなぁ…」
そう言いながら、車の助手席に乗った。
家に着くまではいろんな話をした。
夢乃の話しから、保育園の話しとか…山田の面白い話しとか気づいたらいつも夢乃と山田のことばっかり話してる。
「夢乃ちゃん保育園、頑張ってるね。」
『うん、山田やったら行く時に泣かんみたいやねんけど…私やったら今だに離れる時に泣くねん。』
「あははっ、よく分かってるね。」
『分かってる?』
「たぶん、菜々さんは困らせたらダメやって思ってるんだろうな。」
『うん…めっちゃ甘やかしてもらえるから、そこで満足してるんかもね。私は厳しく言っちゃう時もあるからさ離れる時は先生たち見てるし泣いてやろうって思うんかも。』
「彩さんも離れたくないって気持ち強いでしょ?」
『そうやけど、仕方ないやん?』
「分かってるんだって、泣いたら彩さんも仕事に行きづらくなるやろうって。夢乃ちゃん、愛おしいなぁ…」
『なんでそんな分かるん?』
「だって、僕と離れる時も眠たいからすぐ寝るけど一通り泣いて暴れるやん?おんぶしたらすぐに泣き止むけど。」
『うん?』
「それがね、菜々さんと僕やったらね…菜々さんの抱っこですぐに寝るんだ。」
『ええええ!そうなん!?』
私が休日出勤の時でも、夢莉は家に来て山田も一緒に公園に行ってくれるんやけど…母が居なかったらグズらないらしい。
「夢乃ちゃん、彩さんに思い切り甘えてるんだね。可愛いな…僕もそういう存在になれたらいいなぁ。」
『ふふっ、すぐなれるよ。』
夢乃の甘えん坊の度合いがすごくて、ちょっと悩んでたけど夢莉の言葉でなんだか嬉しくなった。
がちゃっ。
『ただいま〜』
「おじゃましまーす!」
家に帰ると、ご飯の良い匂いがした。
ーーー
「まぁま〜!!」
ぎゅっ。
『夢乃、帰ったよ〜!』
彩さんたちの家に入ると、夢乃ちゃんが一目散に走って彩さんに抱きついてた。
本当に可愛い2人だな。
『ふふっ、夢乃の話ししてたんやで〜』
「ちゅっちゅ。」
『かわいい、よしよし〜』
抱っこしてもらってる夢乃ちゃんは彩さんにたくさんキスをしてて、彩さんもたくさん返してた。
「あはは、いつも夢莉くんにしか行かへんのにやっぱり仕事から帰ってきたらママが1番なんやな。」
「そりゃそうですよ、ママが1番ですよ。」
『そうなん?夢乃。』
「まぁま〜」
たくさん怒られるけど、やっぱりママが良いに決まってる。
彩さんもしっかりと応えてあげてて、夢乃ちゃんが可愛いのは愛情を目一杯に与えてもらってるからなんやろうなって思う。
『夢乃、寝ちゃったや。』
「ご飯食べたらな、眠たそうにしてたけど我慢しててん。」
『そうやったんや、ごめんな…』
抱かれたまま眠っちゃった夢乃ちゃんを彩さんはずっと撫でてた。
「ほら、夢乃もらうからご飯食べや?」
『ううん、このまま食べるから大丈夫やで。明日も山田に送り迎えしてもらわなあかんのやし。』
「それはええんやで?私も夢乃の母としてお世話してるんやから。」
『そういうことやなくて、夢乃との時間が少ないからさ…本当は仕事なんかせずにずっと一緒に居たいけど、不自由なく暮らすには頑張って働かないとね。』
「まぁ、私が養ってご飯食べさせるのはちょっと苦しいもんなぁ。」
『良いの良いの、これくらいがさ怒らないからちょうどええねん。ふふっ。』
「あんためっちゃ怒るもんな。」
『やって、ダメなことはダメやって教えてあげないといけないやろ?って山田の時は夢乃さ、グスらんのんやな?』
「あ、夢莉くんから聞いたん?」
「え、言ったらだめでした?」
「だめなことないよ?でも、びっくりするやろうなって。」
『びっくりしたよ、ほんまに。でも聞いて良かったわ、ちゃんと使い分けてるんなら。』
「まぁ、私は怒らんからなぁ。すぐに満たしちゃうからさ。」
『山田はそれでええねん、できるんやから。私は怒ったらダメって分かってても怒っちゃうからな…』
「バランスが取れてるってことだね。」
『うん、そうやね。』
それから菜々さんの作ってくれたご飯を食べた。
「そうだ、彩さん。」
『ん?』
「今週さ、お泊まりにくる?」
『お泊まり?』
「夢乃ちゃんと僕の家に泊まりくる?」
『え、良いの?でも…夢乃さ、まだ時々になったけど夜泣きするねん。』
「彩がおらんと寝られんねんな。」
「僕は全然良いよ、夜泣きしても。」
『んー…』
本当は行きたいけど、夢莉に迷惑かけたくないしな。
「行っておいで、夢莉くんがせっかく言ってくれてるんやから。」
『じゃあ、お泊まり行こうかな。』
「そしたら夢乃もクズらんのやない?夢莉くんと離れたくなくていつも暴れるんやから。」
『まぁ、そうやな。じゃあ今週お泊まりで!』
「よしっ、部屋をしっかり掃除しておくね。」
『そんな気を遣わんでな?』
「うん!つかってないって!」
初めてのお泊まりの約束ができて、僕はまた今週の後半を頑張れる目標ができた。
