はちみつれもん




そして、山田はその次の日の夜から2泊3日の出張に行った。






『やばい…夢乃を迎えに行かなあかん』



山田が心配してたけど、計画通りしててもやっぱり仕事が自分の仕事が終わったのに追加されて遅くなってしまった。






『もしもし、山本夢乃の母です。』



(お母さん、19時きてしまったのですが…)



『すみません、、もうすぐ着きます!!』


(分かりました、お気をつけていらしてくださいね。)


『本当にすみません…!』




ダッシュで保育園に迎えに行き、延長保育の時間を5分超えたけどなんとか迎えにいけた。



「まぁまあ〜、、、!!」



着くと夢乃は先生と2人っきりで大泣きしてた。


『ごめん、夢乃!!』



ぎゅぅっ。


抱きしめる前に泣きながら抱きついてきて、本当に罪悪感しかなかった。



『本当にごめんね?帰ろうか?』



「あぃ、、、」



全力疾走したからか、抱っこで夢乃を連れて帰るのは本当にきつくて帰ったら息切れが止まらなかった。


がちゃっ。



『はぁっ、はぁっ、、きっついなぁ。』




「やぁや、だっこぉ!」



『はあっ、はぁっ、、ちょっと待ってな?』


「だっこぉ!」



『わかったわかった…』



寂しい思いをさせたから、応えてあげたいからすぐ抱っこしたけど…



ちょっとなんかいつもと身体が違う気がした。














「これやぁだあ!」



『もう、好き嫌いせんと食べなさい。はぁっ、はぁっ、…まだ治らへん…』



少し動くと動悸が打つから、休み休み夢乃のことをして寝る時はすぐ寝てくれたから助かった。





『明日の準備しないと…』




でも、やっぱりなんだかしんどくて横になった。




『少しだけ休もう…』
















「まぁま?」



『んぅ…夢乃?もうちょっと寝かせて……?!』




夢乃に頭を撫でられた感覚で目が覚めた。



『えっ!、、ちょっと待って!!寝てた?!』



ふと、時計を見ると朝の7時だった。




『や、やばい!!急がないと!!』



少し目を瞑っておくつもりが、寝てたみたいで大急ぎで夢乃を着替えさせてご飯作って食べさせた。



夢乃が食べている間に、私も軽く化粧と着替えをして全てがバタバタだった…




『よし、顔拭いて…いくよ!!』



「あい!!」




『走って行かないと…』



そう勢いよくドアを開けようとした。

夢乃はドアをあけて外に出てから抱っこしようと思ってた。






『あれ…はぁっ、、はぁっ、、』




ドアノブを持った瞬間にまた昨日の動悸が打ちはじめて、全身の力が抜けていく…




『ゔぅっ、、』




それと同時に吐き気もきて、玄関に倒れ込んでしまった…


『あかん、、行かないと…』



何回も身体を起こそうと力を入れようとしても、全く入らなくて…もしかして、倒れちゃう?


でも、、夢乃が…







ーーーー




「これ、夢乃ちゃんにあげたいな…」



知り合いから何故かアンパンマンのぬいぐるみを貰った僕の親が誰かにあげてと、僕に送ってきた。





これをみたら思い出すのは夢乃ちゃんと彩さん。





夢乃ちゃんが笑うといくら怒ってても彩さんが笑顔になってるあの優しくて温かい空間が大好きやな…





今日は休みかな?いや、仕事かな…


菜々さんにメールして、ポストに入れておこうかなって。

気づいたら彩さんたちのマンションに来てた。






「どこやったっけ?ここかな?」



階段を上って、たぶんこの階かなって行った。



「ん?」



でも、その部屋は少しドアが開いてて…駄目だけどただの閉め忘れだったら菜々に電話しておこうって思って勇気を出して開けた。






「にぃたん?」



「夢乃ちゃんって、彩さん!?…ど、どうしたの!!大丈夫!?」




少しドアを開けると夢乃ちゃんが立ってるのが見えてどうしたんやろって、思ってたら玄関で彩さんが倒れてた。




「彩さん!!しっかり!!」




『…はぁ、はぁ、、おく…れ、る。』




「仕事?そんなこと言ってる場合やないよ!」

顔をよく見ると真っ青で息が荒く感じた…


救急車を呼ぼうか迷ったけど、また少し違う気がしてとにかくソファーに横にならせた。









「にぃたん?まぁま?」



「夢乃ちゃん、大丈夫だからね?あ…そうだった、これプレゼントだよ。遊んでね。」



「アンパンマン〜!!」




「喜んでくれて良かった…」




彩さんは心配やけど、夢乃ちゃんは落ち着いてて状況が理解できないのもあるけど…そこはまだホッとした。





ーーーー







「まぁま、あしょーぼ〜」



「あ、夢乃ちゃん…」





夢乃の聞こえて、目をそっと開けた…




『あれ…仕事…?』



「あ、目が覚めた?大丈夫?」





そこにはよくわからない光景があって、何故が夢乃と夢莉がこっちを見てる。



なんだか頭がクラクラするけど、そっと顔を上げると私はリビングのソファーに寝かされてた。

額には冷えピタも貼られてる。




『なんで…?ゆーり?』



「ごめん、夢乃ちゃんにあげたい物があってせめてポストに入れておこうって思って来たら…少しドアが開いてて…覗いたら彩さんが倒れてたから。」



夢莉は私がもう会わないって言ったのを気にしてたみたいで、申し訳なさそうに言った。






『私、倒れたん…?』





「うん、覚えてない?」



『なんとなく…覚えてる、かも?』



「なら良かった…とにかく目が覚めて良かった。」


ホッと一息ついてる夢莉がまたちょっと幻みたいに思ってしまう、頭がぼーっとしてるんかな。



「大丈夫?」




『うん、大丈夫やで…ごめんな?迷惑かけちゃって。』



「ううん、ぐっすり寝てたし、夜あまり眠れてなかったの?」



『そんなことないよ。』



「そっか、じゃあお昼ご飯でも作るね!夢乃ちゃんお腹すいたみたいやから。」




『あ、いいよ!私作るから、ゆーりは帰って?ごめんな。』



そう言って立ちあがろうとした。



「だめだって!彩さん寝てる時、少しやけど熱あったんやし。」




『熱?』



「少ししたらすぐ下がってたけど、体調悪いのには変わらないんやから…せめて菜々さん帰ってくるまでは僕の言うこと聞いて。」



少し怒られて思わず動きを止めたし、夢莉って、こんなに男らしかったっけ?とか思っちゃった。



その前に疑問に思うところはあるはずなのに…





プルルル…プルルル…




「あ、菜々さんや。」



『え?なんでゆーりが山田の電話番号知ってるん?』




「え、えっと…前に教えてもらったんです。もしもし。」




(もしもし?彩の具体はどう?)



「さっき目が覚めて、今のところは大丈夫そうです。仕事中に電話してすみませんでした。」



(よかったぁ、明日できるだけ早く帰るから何かあったらまた連絡くれる?)



「分かりました!」




『あ、私も変わって欲しい!』




「ごめん切れちゃった。」



『てか、なんで山田?』



「彩さんが倒れてるの見つけた時に、救急車呼ぶべきなのかわからなくてさ…菜々さんお医者さんやから電話して聞いたんだ。」




『そうやったんや。』



「お腹すいたでしょ?そろそろお昼やから何か作るね。」



『いいよ、悪いし…ゆーり今日仕事は?』



「有休なんだよ、今日と明日。」



『なら、自分が好きな事に時間使いや?私が作るから大丈夫だよ。』



「ううん、好きなことに使ってるよ。好きなことっていうか…好きな人に使ってるから大丈夫だよ。」


『ゆーり…』



「僕は彩さんが好きなんだよ…大切やし。」


そう私の目をまっすぐと見る夢莉から目をそらせなかった。




「彩さんの気持ちは分かってるけど…僕はあの頃から何も変わってないんだ。」


『私やって…』




でも、夢乃を見ると言っていいのか分からなくなる。





「とにかくご飯作るね。」





この間、山田に言われたことがかなり自分の中に刺さってて…



夢乃を言い訳に自分の気持ちに嘘つくのも良くないし。


私と夢莉が気持ちに正直になったからって、夢乃が不幸になるなんて決まってない…





そんなの分かってるんやけど、正直怖いんだ。




あんなに大好きで愛してる人がいきなりいなくなった時の反動が…



本当はそれが1番なんだよ。







「はい、できたよ。」



「アンパンマンだぁ〜!」



「彩さんはお粥作ったよ。」




『ありがとう、夢乃のオムライスにアンパンマン描いてくれたんや?』



「うん!あんまり上手く描けなかったけど分かったみたいで良かったぁ。」



『ゆーり…本当にありがとう、、、』



「彩さん…」



『私も、、ほんとは…ゆーりがずっとずっと好きやってん、、』


夢乃への優しさと愛情を感じて涙と気持ちを堪えるのがもう無理になってしまった。



『でも、、、もう、、また会えなくなるのが怖くて…自分がゆーりを嫌いにならして…離れたら怖いから…』

「彩さんっ…」



途中から泣き出して自分がなに喋ってるのかも分からなくなった。


ぎゅっ。






「離れるわけないよ、もう2度と離す気なんてないよ。こんなにこんなにずっとずっと…愛してたんやから、そんなことするわけない。」




『ほんまに?、、』



「当たり前だよ、僕が彩さんのことを嫌いになることなんてない。もうそんなこと言ったら、いくら突き放されても離れないからね…」




『ゆーりっ、、、』




夢乃が横でオムライスに食らいついてる間に、私は夢莉に力一杯抱きしめてもらった。



ずっとずっと、我慢してたもの耐えてたもの全てが解けるとこんなに涙が出るんやって…




「いたぁい?」



『夢乃…』



ポンポンってされたと思ったら夢乃が私を心配そうに見つめてた。



子どもにこんな姿は見せたらいけないって思ってたけど、そんなこともないんだ…この子やって相手を思いやれる心も持ってる。



「あははっ、夢乃ちゃんお口真っ赤やで。」



夢乃の口を優しく拭いてくれる夢莉…




『オムライスが美味しいんやね。』



「おいちぃ!!」



「良かった!これからはいつでも作ってあげられるからね。」



『ふふっ、そうやな。もういつでも会えるよ。』



「彩さん…」



「やったぁ!!」




その後もオムライスを美味しそうに頬張ってあっという間になくなった。




『もう寝ちゃったや。』



「結構大きいオムライスやったからね、残ったら僕食べようかなって思ってたし…良く食べて本当に可愛いな。」




『そうやね。』



「あのさ…彩さん。」



『ん?』



2人で夢乃寝顔を眺めてると、真剣そうに名前を呼ばれた。




「…なんていうか、僕たちの間にあった氷が溶けたんだよね。すぐに付き合おうとか…言わないから、とにかく今は何もなしに会えること一緒に居られる喜びを噛みしめるだけでも僕は幸せなんだ。」




そう言われると、なんだか私は複雑になった。




『そうなんや…会えるだけで、一緒に居られるだけでええんやな。』




「え?違う…?」



『私はまた…あの頃に戻れるんかと思った。まぁ、夢乃はおるから2人きりは難しいけど。』




「えっ!!じゃあ僕とまた…付き合ってくれるの?」




『何回もは言いたくない…』




「か、かお…真っ赤だよ…」



『ゆ、ゆーりやって…』




「ううん!!彩さん、僕とまた付き合ってください。今度は夢乃ちゃんと彩さんとたっくさん笑い合いたいんだ。」




『ゆーり…本当に?』



「うん!!彩さんが嫌って言うかなって早いって…僕も臆病になってるんだよ。大好きやから。」




ぎゅっ。



『ありがとう…大好きやで、ゆーり。』




私はそんなに大切に思ってくれてることに嬉しくて嬉しくてまた涙ぐんでしまった。




もう2度と離れたくない、このままずっとずっと一緒に居たい。
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