ダイヤモンド
『ゆーり…さ…』
「あ、彩ちゃん?どうしたん?」
仕事してると彩ちゃんがなんだかしんどそうにしながら呼んできた。
『ちょっと具合悪くて、…早退させてもらうことにしたから…先帰るね。』
「えっ、大丈夫?一緒に帰るよ。」
『ううん、大丈夫やって。まだ仕事あるやろ?帰って寝たらよくなるやろ。』
「でも、…」
『じゃあ先帰るね…』
話してるのもしんどいのか、彩ちゃんは話しを遮って帰って行った。
心配やけどとりあえず仕事を終わらすことに専念した。
明日休んで病院に連れて行った方が良いかもしれない…もしくは、今日?
そう思ったら仕事は捗っていつもより早く帰れた。
「ただいま、彩ちゃん?大丈夫?」
リビングにはもちろんいなくて、すぐに寝室を見に行った。
すると、眉間に皺を寄せて寝てる彩ちゃんがいた。
「熱かな…」
おでこを触ったけど、熱はなさそう?
『ゆーり…?おかえり。』
「あ、ごめんね?起こしたね。」
『ううん…』
「まだ具合悪い?熱測った?」
『測ったけど、ないねん。とにかくなんかしんどくてさ…』
「どうしたんやろうね?風邪かな…」
『分からんけど、治るまでちょっと家のことできひんと思うねん…ごめんな。』
「ううん、それは大丈夫だよ。とにかく休んでね、おかゆ作ってくる。」
『ありがとう…』
いつもなら無理して倒れるまで頑張るのに、そんな気力すらもう残ってないんだ。
すごく心配や…
おかゆを作っても一口二口が限界だったみたいで、仕方ないのにすごい謝られた。
その後もずっと寝てて、時々見に行ってるけど眉間に皺を寄せてしんどそうだった。
コンコン…
「彩ちゃん?どう?具合は。」
『んぅ…しんどい…』
「今からでも病院行く?夜間救急でも診てもらえるよ?」
『ううん…大丈夫…』
「でもなぁ…」
目を少し開けるのが精一杯みたいで、すぐに閉じてきつく瞑ってる。
「もしかして、熱上がってる?」
おでこを触るとさっきよりも断然熱かった。
「あっ、めっちゃ熱上がってるや。」
急いで体温計で測った。
ピピピ…
「うわぁ、39.8度…こんなに急激に上がるからしんどいわけや。」
『はぁ…はぁ…』
「彩ちゃん、とりあえず冷えピタと氷枕しようか。」
見てられないくらいしんどそうで、やっぱり病院行くべきかな。
「彩ちゃん病院行こうか?」
『ううん…だい、じょ、ぶ…』
動けないのか、行かないって言うし…どうしよう。
「でも、なぁ…病院行ったら少し良くなるかもしれないよ?寝れないやろ?」
『大丈夫…身体起こしたら、吐きそうやねん。』
「そっか…じゃあ明日にしようか。」
『ごめんな、迷惑かけちゃって…』
「ううん、迷惑なんかやないよ。私らは家族なんやから。」
『ありがとう…』
それから私はご飯食べてお風呂入った。
「彩ちゃん、市販の薬あるんやけどさ…アレルギーあるから怖いしやめておこうか。とにかく冷えピタと氷枕で今日は我慢や。」
『うん…ありがと…』
市販の薬を飲んたら少し楽になるかもしれないって寝室まで持ってきたけど、彩ちゃんは結構アレルギー体質やからやめておくことにした。
『ゆーり…?』
「ん?どうしたん。」
『一緒に寝たら移っちゃうから…私、あっちのソファーで寝るよ。』
そう言って、身体を起こそうとする彩ちゃんは自分が思いのほか身体が動かなかったのか少し身体を動かすだけできつく目を瞑ってた。
「あっ、大丈夫やって無理して動かないほうが良いよ!移っても良いから、一緒に寝よう?ね?心配で寝られないし。」
『あかんよ…はぁっはぁっ、、』
「ほら、寝て?しんどいんやろ?無理したらあかんって。移っても明日一緒に病院行く時に診てもらうえるし!」
『ほんま、ごめん…』
「やから大丈夫だって、寝ようか?」
『うん…』
弱々しい彩ちゃんを見てられないけど、
それでも不謹慎にも可愛いって常に思っちゃう私を殴りたい。
ベットに入っても彩ちゃんが心配でしばらく眺めてたら…
『ゆーり…』
「ん?」
移ったら行けないと思ったのか、反対に向いてたけどこっちを向いた彩ちゃん。
『寒い…抱きしめて…』
「えっ、あ、うん!!」
掛け布団を増やしてやなくて、私を求めてくる…
もうこっちが不謹慎って、分かってるけど、嬉しくておかしくなりそう。
ギュッ…
強く抱きしめる、いつも私より体温低いのに異常な熱さにさっきより熱が上がってるって分かる。
『あったかい…』
「彩ちゃん熱上がってる…ね、測り直そうか。」
『やだ…このままが良い…ゆーり…』
いつもこの時間は一日頑張った反動がくるのか、甘えん坊な彩ちゃんやけど…いつも以上に甘えたやなぁ。
弱ってるこんな時にも求めてもらえるのは、私はとても嬉しい。
「そんなこと言ったら、キスしちゃいそうやわ…」
『あほ…』
「あはは、ごめんなさい。」
調子に乗りすぎて、『あほ』って言われたけどニヤケが止まらなかった。
結局そのまま私も寝落ちた。
『げほっ、げほっ、、』
「彩ちゃん?大丈夫?」
夜中もずっとそのまま抱きしめてたら彩ちゃんが咳き込み始めた。
少し離れて顔を見る…
『げほっ、、げほっ…!!』
「熱上がってる?!」
寝る前よりもさらに顔は赤くてでもなんだか顔色悪くて少し焦った。
ピピピ…
『はぁ、はぁ…ゆーり…』
「ん?どうしたの、彩ちゃん。しんどい?」
『寒い…ぎゅっして…』
ピピピ…
「うん、分かったよ。すぐしてあげるからね。」
応えながらも体温計を外すしてみると。
「わぁ、40.3度…やっぱり夜間で病院行くべきかな。」
あまりにも高い熱に余計に焦る…
いつも熱出たらこれくらい彩ちゃんは熱出るけど、上がり方が異常な気がする。
もう最終手段は救急車かな…
『ゆーり…ぎゅっして、、』
「あ、うん…でも彩ちゃん病院行こうか?」
『いかない…明日でいい…』
「でも、、どうしよう…」
すごく困った…
『ゆーり、仕事休まなあかんけど…明日でええよ、高いのは多分夜やから余計にや。』
「そうなんかな、少しでもまたしんどさが変わって言えたら言うんやで?分かった?」
『うん…げほっ、げほっ…ゔぅ、、』
「あ、吐きそう!?」
『ゔっ…ん』
「ちょっとだけ待って!」
すぐに袋を持ってきた。
『げほっ…げほっ!!…ゔぅ…ぇ』
咳き込みすぎてなのか、彩ちゃんは吐いてしまってまた病院行くべきか悩んだ。
「しんどいね、…ほら落ち着いたら少しうがいしておこう。」
吐いたのは少しだけだったから、やっぱり朝まで様子を看ることにした。
『はぁ、はぁっ、、』
「しんどかったね、ぎゅっしようか?」
『うんっ…』
冷えピタと氷枕を変えた後に、また気持ち悪くなったり咳き込んだらダメやから、さっきより優しく抱きしめて私たちは眠った。
次の日…
「けほっ、けほっ…あれ?」
目が覚めると少し喉が痛くて咳が出た。
もしかして風邪うつったのかな?って思ったから、彩ちゃんは治ったかもって嬉しくなった。
『げほっ!!げほっ!!…』
あれ、昨日より悪化してる?
「彩ちゃん、おはよう…」
そう言って、おでこを触った。
「んー、」
まだ全然熱かった。
ピピピ…
「あー、38.9度…朝はやっぱり少しだけ下がるんだね。」
『うん…』
「まだ寒い?」
『寒い…』
風邪移しても治らないのか、、
そして、自分も測ってみた。
ピピピ…
『ゆーり…?具合悪い?』
「ううん!そんなことないよ。」
『何度…?』
「えーっと、37.3度。」
『微熱や…ごめん、、移しちゃったかな。』
「こんなの微熱に入らないって、それに言ったやん一緒に病院行くから診てもらうって。」
『そういうわけやないやん…』
「大丈夫だって、ほら冷えピタと氷枕持ってくるね。」
確かに少し身体も重く感じた、でも…なんか違う気がするんだよなぁ。
喉もそんな痛く無くなってきた。
「よし、病院に行こう!」
やっぱり朝のは気のせいだったのか、元気になってきた。
でも、まぁせっかく病院行くし診てもらっておこう。
「彩ちゃん、病院行こうか。」
『うん…ちょっと、まってな…』
まだ少し動いては、目を強く瞑ってを繰り返しててすごくしんどそうな姿が可哀想で代わってあげたいって強く思うのに…
私は風邪じゃなかったみたいなのが悔しい。
「ゆっくりで大丈夫やからね。」
そう言って、10分くらいでやっとベットに座れた。
「おんぶで大丈夫?」
『うん…ごめんな、、』
「お姫様抱っこにしようか?」
『あほ…』
あほって言われても、昨日からずっと笑顔が見られてない彩ちゃんが少し微笑んでくれるから嬉しかった。
外までおんぶで行って、タクシーを呼んでたから車に乗ったら私にずっと寄りかかって彩ちゃんは寝ていた。
病院について症状を言うと彩ちゃんはすぐに点滴室に倒された。
歩けないから病院内は車椅子やったけど、座ってもしんどいみたいで手すりに寄りかかってる感じ…
病院に来たから、少し良くなると信じてる。
(はい、じゃあ喉をみますね。)
「あー」
(喉も特に腫れていませんね。熱はどうかな。)
ピピピ…
「あ、36.5度や。やっぱり朝だけだったんや。」
(お姉さんの方は喉も腫れてて血液検査も白血球の数が多くなっているので疲れから…なにかしらのウィルスに感染したのでしょう。あなたの場合は免疫力があるから体に広がらなかったのですね、とにかくゆっくり休んで体力を戻すしかないです。薬も出すんで、様子をみてあげてください。)
「お姉さんや、ないけど…わかりました。ありがとうございました。」
まぁ、確かに誰がみても姉妹に見えるのは仕方ないのかな…
ボソッと言うのが精一杯やった。
「彩ちゃん、点滴終わったみたいやから帰ろうか?疲れから免疫落ちててなった風邪みたいだよ。」
『そうなんや…』
まだしんどいみたいで、少ししか話さない。
疲れが溜まってるって、彩ちゃんどれだけしんどい思いしてたんやろう…
それって仕事でだよね。
やっぱりまだあんまり動かなくて、車椅子に座ったけどやっと座ってる感じやった。
帰ってからも着替えて、ずっと横になってた。
「彩ちゃん、大丈夫?」
『うん…ほんの少しだけ、さっきよりは楽になったかな。』
「ほんと?無理したらだめやで。」
『うん…ありがとう。』
結局、その日も熱は39度から上がることもなかったけど下がらなかった。
次の日…
『げほっ…げほっ…』
「大丈夫?お水飲む?」
『うん…』
咳もまだしてて、熱もやっぱり下がらない。
少し肩をを上げてあげてお水を飲ませてあげた。
「彩ちゃん…ごめんね、疲れてるのに気づいてあげられなくて、、、」
辛そうな彩ちゃんをみてるのがしんどくて、涙が止まらなくなった。
近くにいるのに何もしてあげられない。
風邪やって、私に移してでも良いのに…
『ゆーり…違うよ、先週くらい仕事けっこう詰めてたから限界突破してるのに自分でも気づいてへんかってん。あはは…』
「ごめん、、ほんとにっ…」
『なんでや、なんで泣くんや…?ゆーり?』
我慢の限界で、解き放たれたように泣く私に彩ちゃんは心配して起きて顔を覗き込んだ。
「私、、結局は彩ちゃんの妹にしかみられへんし…」
『あっ、もしかして病院で妹って言われた?』
あんだけしんどそうやったのに、よっぽど心配させてるのか彩ちゃんが起きて話してる…
「彩ちゃん、寝てないと、、しんどくなるよ。」
『ううん、大丈夫や…ゆーりのが私の身体なんかより何よりも大切やから。これくらい我慢できる。』
「でもっ、、、」
『はぁ…ほんまに、ごめんね?嫌な思いしたんやね。』
ギュッ…
彩ちゃんは優しく抱きしめてくれた。
いつもよりやっぱり身体が熱く感じる…
「ううん、そんなに…頼りなく見えるんやって悔しかったぁ。」
『ふふっ、強がりなんか?…いや負けず嫌いか。』
「彩ちゃん…」
『大丈夫や、ゆーりは本当に頼り甲斐あるんやで、高熱でめちゃくちゃしんどくてさ心細かったのに…仕事から早く帰ってきてくれて優しく看病してくれて、病院行かなくてもゆーりが抱きしめてくれてたから何にも怖くなったもん。めちゃくちゃ心強かったよ。』
「彩ちゃん、、、」
『妹なんて思ったことないよ。』
『やから、泣かんの、な?』
「うんっ、ヒック…」
ギュゥ…
しばらく彩ちゃんは抱きしめてくれた。
本当に嬉しかったけど…
「彩ちゃん?大丈夫?…」
『ごめん…動けへん…』
いつの間にか動かなくて、こっちにもたれてる?ってなった。
「ごめん、私が無理させた…」
ゆっくり横にならせてあげたらまた、ぐっすりと眠った…
熱は1週間かけて、ゆっくりと下がって行った。
「どう?彩ちゃん…」
『うん、昨日より楽になったかな。』
「良かった、もう本当に無理したらだめだから!」
『でも、自分でも気づかへんからな…』
「倒れるまでする時もあるのに今回はどんな感じやったん?」
熱もまだ38度くらいあるけど、最初の時よりは全然元気になってきた。
『なんか、頭痛と倦怠感がすごかってん。体が重すぎて起きてられへんってなったし目眩か頭痛が分からんってなった時もあったから…しんどかった。』
「今は?大丈夫?」
『うん、さすがに3日経ったら楽になってきたよ。這ってトイレ行かんでも歩けるから。』
「歩けへんかったもんね。」
『うん、まだでもしんどいからこの際ちゃんと治すよ。ありがとうね、ゆーり。』
「ううん、彩ちゃんを抱きしめる時にキス責めしそうで我慢するの大変だった…」
『病人にしたら死んじゃうやん。』
「やから、我慢しててん。でも彩ちゃんのためならいくらでも我慢するよ。」
『治ったら私も我慢せんからね。』
「ふふっ、早く元気になってな?」
『うん、ゆーり…?』
「ん?」
『だいすきっ、愛してる。』
ギュッ
「私も愛してるよ。」
『姉妹なんてなに言われても気にしなくてええんやで、私は太田夢莉を愛してるんやから…他の人が言うことなんて流せば良い。誰よりも頼りにしてるんやからね。』
「うんっ!彩ちゃんを守るのは私の使命やから!」
『使命って、なんかそれも…んー、まあ良いか。なんでも良いけど、ありがとう。愛してるよ。』
何より元気なことが1番やって、
誰よりも大切な彩ちゃんが苦しんでるのが1番辛いって改めて痛感した期間やった。
姉妹やって言われてもなに言われても、彩ちゃんを愛するそれが私の使命やって思えるようになった。
これからもずっと一緒にいおうね、愛してるよ。
1/1ページ