大好きなひと。



それから一週間入院したら、なんとか退院することができた。




『ありがとう、ももか。』





「ううん、無理だけはしたらあかんで?」



『分かってるって、大丈夫。』




自分だけの身体ではないと、痛感して…
命の重さを身に沁みて感じてる。




『仕事は来週から行こうかなって思ってる。』




「いや、休んだ方がええちゃう?」



『でも…』




言おうとしたけど、やっぱりやめた方が良いかな…




さすがに仕事したいって言ったら怒る?





「気持ちは分かる、でも、ほんまに心配やねん。」




『無理はしないって約束する。今度はぜったい。』




「ほんまにか?」



『うん!ゆびきりや!』



「んー、分かった。」




本当に百花と子どもみたいにゆびきりげんまんをした。


本気で大切に思ってくれてるんや…ありがたい。






それからやっぱり妊娠してる実感もなく、1週間を終えて仕事復帰をした。






案外余裕かも?とか…思ってた。















「彩さあ、赤ちゃんどっちが良いとか話しするん?」



『んー、してへんなぁ。』



「百花とさ、どういう話をするん?」



『どういう話しかぁ…んー、何の話してんやろ。』




「えっ、会話してへんの?」



『してるしてる、全然してんねんけど、覚えてないな。』




思い返してみると、全然思い出せなかった。


それほど実のある話しはしてない。



だから良いんだよな、一緒にいて…本当に安心できる心から。




「ふふっなんやねんそれ。」



『笑えるやろ?どうでも良いことしか話してへんねん。あ!でも…』



「なになに」



『腕枕は毎日してって、お願いしたな。』


「え、いつ?」



『昨日やで?落ち着くねん。』



「してくれるん?」



『してくれるよ、寒かったら抱きしめて寝てもらうし。』




「まぁ、ラブラブなことで。百花に言ったら怒られるで。」



『怒らんやろ、怒られたことないし。』



「恥ずかしいやろ。」



『ま、恥ずかしがり屋だからね。』



そんな山田に言われて、そういやそんな話もしてへんなぁって思ってた。





数週間が過ぎて、少しずつお腹も膨らんでる?って感じてた。



でも、大きさでいうと便秘時くらいかな。


そんなに変わらない。











いつも通り仕事をしてた。




『ふぅ、、』



なんか疲れをこの日は感じた、少し無理したかなって。




「どうしたん?大丈夫?」



『うん、、大丈夫。』



「顔色悪いで、少し休みや?」



『うん…そうする。』



とりあえずパソコンの手を止めた。


こんなことなかったのに、なんか変や。

少し休んでも。

作業をやめたのに冷や汗が出てくるし…





「彩?あんたほんまに大丈夫?」



『う、うん…』




「顔色悪いで。」




『なんか、ちょっと気分悪いかも…』



「大丈夫?水買ってこようか?」



『ううん、あるから…ちょっと休んだら大丈夫やろう。』



そうわ言ったものの、、

だんだんと気持ち悪くなってく。




車酔いが酷いみたいな。




『はぁ…ふぅ、、落ち着け…』




このままやと、前みたいに倒れちゃうかも。



「医務室で横になる?」




『ううん、ちょっとトイレ行ってくるわ…』




「あ、うん。」



トイレが近づくと、走った…





『ゔぅっ、、、げほっ、げぼぉ…』




見事に昼食べたものを全て吐き、良くなるどころか吐き気は止まらない。



これが悪阻か…






約1時間が過ぎて、やっとオフィスに帰れた。




「あ、大丈夫?長いから今行こうとしててん。」




『うん、、大丈夫…』



「やっぱり顔色悪いで、早退したら?」



『気持ち悪い…吐き気止まらんくて、頭もクラクラする…でも、まだ仕事残ってんねん。』



「悪阻やな?そんなんみんなで割り振ったら大丈夫やで。」




『ほんまごめん、ちょっと…帰らせてもらうわ。』




「ううん、送って帰るで。」



『いや、大丈夫やって。』



「あかんよ、百花に頼まれてんねんから。」



『ももかに?』



「うん、彩は調子悪くてもすぐ我慢するからなんか様子が違ったら声かけてやってって。それで帰るように言ってって。」



『そうなんや、ももか…』




いつもぶっきらぼうで、口数もそんな多くないのに…いつの間にそんなことお願いしたんやろ。



嬉しくて思わず泣きそうになった…







それから山田に送ってもらい、家に帰ってもしばらくトイレを離れられなかった。




ちょっと舐めてたな…



まだ悪阻とかの域に入ってなかっただけで、全然やったんや。




トイレにいても吐き気は治らないと少し気づいて、フラフラしながらリビングのソファーに横になった。





『あぁ、気持ち悪い…』



目もあけてられないくらいで、目を瞑ってるとそのまま寝てしまった。










ーーー




がちゃっ。




「ただいま〜?」




ドアを開けると部屋の中は真っ暗で




彩が早退したって聞いたから、早めに帰るつもりだったけど結局いつも通りになった。



でも部屋の中は真っ暗で、彩は本当に帰ってる?




カチッ





「あ、こんなところで寝てるやん。」



悪阻が始まったみたいやって聞いたから、どんな感じかなって思ったけど…今は落ち着いてる?




「彩?帰ったで、大丈夫か?」



寝てる彩にそっと声をかけた。


毛布もなにも掛けずに寝てる、妊婦っていう実感がまだないねんな…そうやなくても風邪引きやすいのに。




『ん…ももか?』



「風邪引くで?」



『気持ち悪いねん…動けへんかってん、帰ってからも。』



「ごめんな、早く帰って来れんで…」


『ううん、仕事やもん。仕方ないやん。』


いつもより顔色が悪い彩は、でも俺の顔を見ると嬉しそうに笑ってくれた。




ぎゅっ。




『おかえり、ももか。』



「どうした?ただいま。」




抱きついてきたから、思わず聞いた。


『ううん、ちょっとだけな心細かってん…』



「そっか、よしよし。」




子どもができたら、俺たちの生活の中心はその子になる。



それは当たり前やけど、やっぱり彩が一番大切で俺にとってのたからもの。
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