ミツナルワンライまとめ
毎年恒例となった検事局と成歩堂法律事務所のお花見はそれは愉快だったが、あまり二人きりにはなれなかったと言う事で、御剣と成歩堂は二人で二度目の花見をしに穴場だと言われている山へと訪れていた。
くねくねと曲がる山道に咲き誇る満開の桜に目を奪われつつ、成歩堂はヒヤヒヤしていた。
「お前の車でこんな山道入るの、なんか……あれだな、ドキドキするな」
窓の外を眺めながら成歩堂はそう呟いた。真っ赤な高級車が土や泥で汚れたりしないだろうかという意味だったが、御剣は別の意味で捉えたようで、頬を染めて咳払いをした。
「ど、ドライブなら何度もしているだろう。普段とは違うシチュエーションに、キミも浮かれていると言う事か」
「は?ま、まあ、楽しいのはそうだけど……ていうか、キミもって事は、お前浮かれてるのか」
「ぐっ……そ、そうだが」
意外に素直だな、と成歩堂は目を丸くする。ちら、と御剣の方に視線をやって、赤い頬と鼻を見てにまりと笑った。
「照れて耳まで赤いのは分かるけど、鼻まで赤いってあんまり聞いたことないぞ」
「か、花粉のせいだ!」
「はは。そんなになってるのにまた花見に行きたいなんて、よっぽどぼくと桜が見たかったんだな」
「キサマ……」
これ以上からかってコイツの手が滑ってもいけないな、と成歩堂ははぐらかすようにまた窓の外へと顔を向けた。その耳が赤かったのを見逃す御剣では無く、傾きかけた機嫌は上昇して、安全運転で山道を登って行った。
「うはぁ~……穴場なだけあって人もいないし、キレイだなぁ桜」
「……あれは桃ではないか?」
「え、そうなのか。まあ似たようなもんだろ?ピンクだし、春に咲くし」
「キミはもう少し花へ興味をだな……ハックション!」
この辺でいいだろうと脇道に車を停め、降りた所で二人は道沿いに咲く桃色の木々を眺める。
咲き誇る花を見上げながら微笑む成歩堂に、御剣はぼうっと見とれていたがどうにも鼻がむず痒く、何度もくしゃみをしてしまう。
「クシュン!……成歩堂、ちょっと歩かないか」
真っ赤な鼻をずび、とすすりながら、御剣は成歩堂へと手を差し出した。成歩堂は大きな目を瞬いて、少し頬を染めながらその手を取る。桜の下で手を差し伸べるその様子はまるで絵本の王子様のようだったが、花粉が辛くてしかめっ面、涙目に鼻声の王子様なんていないな、と成歩堂は笑う。
「何がおかしい」
「いやぁこんな花粉症の王子様がいたら、女の子はゲンメツしちゃうかもなって」
ゆっくりと歩きながら成歩堂はそう話す。御剣は益々眉間に皺を寄せるが、耐えきれず再びくしゃみを一つ。それに成歩堂はくすくす笑って大丈夫か?と懐からティッシュを取り出そうとしたが、その手すらも絡め取られてしまった。両手を御剣に占拠され、ドクンと心臓が音を立てた。
「……ゲンメツしたのか?」
御剣は仏頂面を崩さず静かに尋ねた。完璧な天才検事と謳われる男が、一人の男から幻滅される事を怖がっている。涙目なのも相まって、全くかわいいヤツだなと成歩堂は肩をすくめた。
「だとしたら、お前の手を取ったりしないよ」
成歩堂は安心させるように、優しく微笑んで握られた両手に力を込める。柔らかな風が吹き、桜の花びらが二人を包み込む。まるで見つめ合う二人を祝福するかのようだった。
きゅうと胸が締め付けられ、込み上げる愛おしさを抑えきれず御剣は成歩堂をぐいっと引き寄せその腕の中に閉じ込めた。成歩堂は焦ったが、耳元で聞こえる鼻をすする音に大層驚いた。
「え、な、泣いてるのか!?」
「花粉だ!!」
「そ、そうか……?」
あやすように成歩堂は御剣の背中をぽんぽんと軽く叩く。この涙は花粉のせいでもあるが、成歩堂が自分の手を取ってくれる事への感動が一番の理由だ。それを伝えるにはまだ羞恥が勝って、誤魔化す為に、そして愛を伝える為に、御剣は抱きしめる腕に力を込めた。
くねくねと曲がる山道に咲き誇る満開の桜に目を奪われつつ、成歩堂はヒヤヒヤしていた。
「お前の車でこんな山道入るの、なんか……あれだな、ドキドキするな」
窓の外を眺めながら成歩堂はそう呟いた。真っ赤な高級車が土や泥で汚れたりしないだろうかという意味だったが、御剣は別の意味で捉えたようで、頬を染めて咳払いをした。
「ど、ドライブなら何度もしているだろう。普段とは違うシチュエーションに、キミも浮かれていると言う事か」
「は?ま、まあ、楽しいのはそうだけど……ていうか、キミもって事は、お前浮かれてるのか」
「ぐっ……そ、そうだが」
意外に素直だな、と成歩堂は目を丸くする。ちら、と御剣の方に視線をやって、赤い頬と鼻を見てにまりと笑った。
「照れて耳まで赤いのは分かるけど、鼻まで赤いってあんまり聞いたことないぞ」
「か、花粉のせいだ!」
「はは。そんなになってるのにまた花見に行きたいなんて、よっぽどぼくと桜が見たかったんだな」
「キサマ……」
これ以上からかってコイツの手が滑ってもいけないな、と成歩堂ははぐらかすようにまた窓の外へと顔を向けた。その耳が赤かったのを見逃す御剣では無く、傾きかけた機嫌は上昇して、安全運転で山道を登って行った。
「うはぁ~……穴場なだけあって人もいないし、キレイだなぁ桜」
「……あれは桃ではないか?」
「え、そうなのか。まあ似たようなもんだろ?ピンクだし、春に咲くし」
「キミはもう少し花へ興味をだな……ハックション!」
この辺でいいだろうと脇道に車を停め、降りた所で二人は道沿いに咲く桃色の木々を眺める。
咲き誇る花を見上げながら微笑む成歩堂に、御剣はぼうっと見とれていたがどうにも鼻がむず痒く、何度もくしゃみをしてしまう。
「クシュン!……成歩堂、ちょっと歩かないか」
真っ赤な鼻をずび、とすすりながら、御剣は成歩堂へと手を差し出した。成歩堂は大きな目を瞬いて、少し頬を染めながらその手を取る。桜の下で手を差し伸べるその様子はまるで絵本の王子様のようだったが、花粉が辛くてしかめっ面、涙目に鼻声の王子様なんていないな、と成歩堂は笑う。
「何がおかしい」
「いやぁこんな花粉症の王子様がいたら、女の子はゲンメツしちゃうかもなって」
ゆっくりと歩きながら成歩堂はそう話す。御剣は益々眉間に皺を寄せるが、耐えきれず再びくしゃみを一つ。それに成歩堂はくすくす笑って大丈夫か?と懐からティッシュを取り出そうとしたが、その手すらも絡め取られてしまった。両手を御剣に占拠され、ドクンと心臓が音を立てた。
「……ゲンメツしたのか?」
御剣は仏頂面を崩さず静かに尋ねた。完璧な天才検事と謳われる男が、一人の男から幻滅される事を怖がっている。涙目なのも相まって、全くかわいいヤツだなと成歩堂は肩をすくめた。
「だとしたら、お前の手を取ったりしないよ」
成歩堂は安心させるように、優しく微笑んで握られた両手に力を込める。柔らかな風が吹き、桜の花びらが二人を包み込む。まるで見つめ合う二人を祝福するかのようだった。
きゅうと胸が締め付けられ、込み上げる愛おしさを抑えきれず御剣は成歩堂をぐいっと引き寄せその腕の中に閉じ込めた。成歩堂は焦ったが、耳元で聞こえる鼻をすする音に大層驚いた。
「え、な、泣いてるのか!?」
「花粉だ!!」
「そ、そうか……?」
あやすように成歩堂は御剣の背中をぽんぽんと軽く叩く。この涙は花粉のせいでもあるが、成歩堂が自分の手を取ってくれる事への感動が一番の理由だ。それを伝えるにはまだ羞恥が勝って、誤魔化す為に、そして愛を伝える為に、御剣は抱きしめる腕に力を込めた。
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