ミツナルワンライまとめ
冷たい風が吹き荒れ、肌をなぞる。ちらちらと舞う雪がニット帽に降りかかり、堪らずくしゃみをした。
みぬきを引き取ってから二度目のクリスマス。最初は成歩堂には余裕が無く、大したものをプレゼントできなかった。今年は少しはマトモなものを、と思ったが金欠に変わりはなく、食べたがっていた駄菓子を詰め合わせてやる事しかできなかった。自分の甲斐性の無さにどんよりと気分が沈み、寒さも相まって身を縮こませる。
誰かとすれ違う度に身体が強張り、隠れるように過ごす日々。もう慣れたと思ったが、ふとした時に後悔と悲しみが襲い掛かってくる。落ち込んでいる場合ではない。今はみぬきもいるし、真実を明らかにしなければ。そう自分を鼓舞し、少しずつでも前に進んでいく毎日。ただ今日は本当に寒く、成歩堂は心までも凍てつくようだった。
重い足取りで事務所へと戻ると、この雪の中で一人、紙袋をぶら下げ空を見上げて突っ立っている男……御剣がそこにいた。御剣の頭には雪が積もっており、いったいいつから事務所前にいたのだろうかともはや呆れてしまう。成歩堂は顔をしかめ、追い返してやろうと息を吸いこむと、冷たい空気が肺を満たした。その冷たさに一気に冷静になる。クリスマス。あの事件の日、だ。
(お父さんの事、思い出してんのかな)
ゆっくりと、息を吐き出した。吐く息の白さで気が付いたのだろう、御剣は成歩堂の方を見て、少しだけ表情を緩めた。
「おかえり、成歩堂」
「……何がおかえり、だよ。全く。雪が頭に乗ってるぞ」
子どもの頃のような笑みが放っておけなくて、成歩堂は御剣の頭の雪を優しく払ってやった。御剣はその手を掴み、ぎゅっと握り込む。
「待っている間、ずっと考えていた」
ああ、やはりお父さんの事を、と成歩堂は眉を下げる。普段ならそっけなくここでさよならしている所だが、今は自分より御剣の気持ちが大切だ。成歩堂は真剣に続きを待った。
「君に、どうやって恩を返そうかと」
「は?」
予想外の言葉に成歩堂は目を丸くする。御剣は両の手で成歩堂の手を包み込み、体温を分かち合うように身体を寄せる。
「君には有り余る恩がある。父の事件の真相を明かしてくれた事も、私に道を示してくれた事も……こうして、自分も辛いのに、私をいつも気にかけてくれる事も、だ」
いつも眉間の皺をこれでもかとつけている御剣だが、今は本当に優しく成歩堂を見つめている。その真剣な顔が気恥ずかしく、成歩堂は俯いた。頬や耳が赤いのは、寒さのせいだけでは無いだろう。
「……何度も言ってるだろ。気にする事なんて無いって。ジェット機で駆けつけてくれたじゃないか。今だって、寒いのにわざわざここまで来てさ」
そもそも恩があるのは自分の方なのだ、と成歩堂はふてくされたようにため息をつく。子どもの頃、御剣に助けてもらった記憶は未だ色褪せず、大切に心の中に仕舞われている。この恩をどうやって返そうかと、成歩堂だってずっと考えていたのだ。
「もう充分だよ、御剣。ぼくにはもう構う必要なんて無い」
なんだか泣きそうになりながら成歩堂はそう告げるが、御剣は首を横に振った。
「まだまだ足りないくらいだ。生きてるうちに返せるかどうか」
「何言ってんだよ、そんなの……」
「私は、君が傍にいてくれるだけで、救われているのだから」
御剣は更に強く、両手を握る。粉雪が舞う中、お互い寒さと込み上げる感情から涙を目に浮かべる。成歩堂だって、こうして御剣が自分を気にかけてくれて、会いに来てくれるだけで、救われている。今はまだ素直に言えないけれど、きっと伝わっているはずだ。成歩堂は鼻をすすり、締め付けられる胸を抑えて言葉を絞り出す。
「……寒いだろ、中入れよ」
「!いいのか?」
「それ、みぬきへのプレゼントだろ?ぼくのだけじゃ味気ないからさ。ありがとうな」
「フッ。構わない」
「……ふ。雪で白いし、服は赤いし、完全にサンタだな。お前」
ようやくいつものように明るく笑ってくれた成歩堂に、御剣は一層感激して胸がつかえる。誤魔化すように早く入ろうと急かす御剣に、成歩堂は肩を竦める。ただ、手だけはしっかりと繋いだまま、二人は事務所の中へと入っていった。
みぬきはプレゼントも嬉しかったが、御剣と一緒にいる成歩堂が嬉しそうなのが一番のプレゼントだったと後に語る。
みぬきを引き取ってから二度目のクリスマス。最初は成歩堂には余裕が無く、大したものをプレゼントできなかった。今年は少しはマトモなものを、と思ったが金欠に変わりはなく、食べたがっていた駄菓子を詰め合わせてやる事しかできなかった。自分の甲斐性の無さにどんよりと気分が沈み、寒さも相まって身を縮こませる。
誰かとすれ違う度に身体が強張り、隠れるように過ごす日々。もう慣れたと思ったが、ふとした時に後悔と悲しみが襲い掛かってくる。落ち込んでいる場合ではない。今はみぬきもいるし、真実を明らかにしなければ。そう自分を鼓舞し、少しずつでも前に進んでいく毎日。ただ今日は本当に寒く、成歩堂は心までも凍てつくようだった。
重い足取りで事務所へと戻ると、この雪の中で一人、紙袋をぶら下げ空を見上げて突っ立っている男……御剣がそこにいた。御剣の頭には雪が積もっており、いったいいつから事務所前にいたのだろうかともはや呆れてしまう。成歩堂は顔をしかめ、追い返してやろうと息を吸いこむと、冷たい空気が肺を満たした。その冷たさに一気に冷静になる。クリスマス。あの事件の日、だ。
(お父さんの事、思い出してんのかな)
ゆっくりと、息を吐き出した。吐く息の白さで気が付いたのだろう、御剣は成歩堂の方を見て、少しだけ表情を緩めた。
「おかえり、成歩堂」
「……何がおかえり、だよ。全く。雪が頭に乗ってるぞ」
子どもの頃のような笑みが放っておけなくて、成歩堂は御剣の頭の雪を優しく払ってやった。御剣はその手を掴み、ぎゅっと握り込む。
「待っている間、ずっと考えていた」
ああ、やはりお父さんの事を、と成歩堂は眉を下げる。普段ならそっけなくここでさよならしている所だが、今は自分より御剣の気持ちが大切だ。成歩堂は真剣に続きを待った。
「君に、どうやって恩を返そうかと」
「は?」
予想外の言葉に成歩堂は目を丸くする。御剣は両の手で成歩堂の手を包み込み、体温を分かち合うように身体を寄せる。
「君には有り余る恩がある。父の事件の真相を明かしてくれた事も、私に道を示してくれた事も……こうして、自分も辛いのに、私をいつも気にかけてくれる事も、だ」
いつも眉間の皺をこれでもかとつけている御剣だが、今は本当に優しく成歩堂を見つめている。その真剣な顔が気恥ずかしく、成歩堂は俯いた。頬や耳が赤いのは、寒さのせいだけでは無いだろう。
「……何度も言ってるだろ。気にする事なんて無いって。ジェット機で駆けつけてくれたじゃないか。今だって、寒いのにわざわざここまで来てさ」
そもそも恩があるのは自分の方なのだ、と成歩堂はふてくされたようにため息をつく。子どもの頃、御剣に助けてもらった記憶は未だ色褪せず、大切に心の中に仕舞われている。この恩をどうやって返そうかと、成歩堂だってずっと考えていたのだ。
「もう充分だよ、御剣。ぼくにはもう構う必要なんて無い」
なんだか泣きそうになりながら成歩堂はそう告げるが、御剣は首を横に振った。
「まだまだ足りないくらいだ。生きてるうちに返せるかどうか」
「何言ってんだよ、そんなの……」
「私は、君が傍にいてくれるだけで、救われているのだから」
御剣は更に強く、両手を握る。粉雪が舞う中、お互い寒さと込み上げる感情から涙を目に浮かべる。成歩堂だって、こうして御剣が自分を気にかけてくれて、会いに来てくれるだけで、救われている。今はまだ素直に言えないけれど、きっと伝わっているはずだ。成歩堂は鼻をすすり、締め付けられる胸を抑えて言葉を絞り出す。
「……寒いだろ、中入れよ」
「!いいのか?」
「それ、みぬきへのプレゼントだろ?ぼくのだけじゃ味気ないからさ。ありがとうな」
「フッ。構わない」
「……ふ。雪で白いし、服は赤いし、完全にサンタだな。お前」
ようやくいつものように明るく笑ってくれた成歩堂に、御剣は一層感激して胸がつかえる。誤魔化すように早く入ろうと急かす御剣に、成歩堂は肩を竦める。ただ、手だけはしっかりと繋いだまま、二人は事務所の中へと入っていった。
みぬきはプレゼントも嬉しかったが、御剣と一緒にいる成歩堂が嬉しそうなのが一番のプレゼントだったと後に語る。