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ミツナルワンライまとめ

 部下が美味しいと噂していたケーキ屋で、成歩堂が食べたがっていたケーキを買った。ティーカップとソーサーも新調し、彼が好きだと言っていた紅茶を用意する。執務室はいつも糸鋸刑事が念入りに掃除をしている為、いつ彼が訪れてもなんの問題も無い。
 ソファに座り、瞑想していると二度ノックの音が聞こえ……同時に扉が開く。
「や、邪魔するよ」
「返事を待たずに開けるな。ノックの意味がまるで無いではないか」
「いいだろ、ぼくとお前の仲なんだし、大目に見てよ」
 ヘラヘラ笑う成歩堂は愛らしいと思うが、同時に小憎たらしくもある。眉間に皺を寄せ睨みをきかせると、成歩堂はごめんごめんと言いながら私の隣へどっかり腰をかけた。
「そんなに睨むなよ。早くぼくに会いたかったくせに」
 からかうようにそう言う成歩堂だったが、その耳が少し赤らんでいるのを見逃す私では無い。ふんぞり返って鼻で笑った。
「そうだ。キミに早く会いたくて仕方がなかった。待っていたぞ成歩堂」
 そう告げると成歩堂は途端にびしりと固まり、顔はどんどん羞恥に染まっていった。とはいえ私の頬も随分赤いと思うが、成歩堂を照れさせる事に成功して悪くない気分だった。
「お前なぁ、自分で言って照れるなよ。ぼくまで恥ずかしいだろ」
「先に言ったのはキサマではないか」
 軽口を叩き合いながら、ポットから紅茶を注ぐ。フルーティーな香りが部屋に広がり、成歩堂が感嘆の声を上げた。
「おお……いい匂いだな」
「入れ方にコツがあるのだよ」
 自慢げに笑うと成歩堂もそうなのか、と楽しそうに笑った。この穏やかな時間が、私は何よりも好きだった。
 月に一度行われるこの茶会は成歩堂が言い出したものである。紅茶に疎い彼に色々語っていると、「そんなに言うならお前の入れた紅茶を飲ませろよ。あ、もちろんそれに合うおやつ付きでさ」などと図々しい事を言い放つので、それならばとこうして紅茶と菓子を振舞っているのだ。
 最初は成歩堂の鼻を明かしてやろうと息巻いていたが、私の隣で嬉しそうに紅茶を飲んで談笑する彼を見て、段々自分の好きなものを知ってほしい、成歩堂にも好きになってほしいという思いに変わっていった。
 今なら理解できる。あの時成歩堂が紅茶を飲ませろと言った理由が。
 私とこうして、暖かで幸せな時間を過ごしたかったのだと。

 新調したばかりの青い飾りが入ったティーカップをじっくり眺め、彼の好きなアップルティーをゆっくりと口に運び、笑みを零した。

「な、なんだよ、急に笑って」
「ふ、いや。この紅茶とケーキが美味くてな」
「それは確かに。ええと、なんだっけこれ。名前忘れちゃったよ。なんか"タルタルソース"みたいな……」
「"タルトタンタン"だろう?」
「……それも違う気がするけど」
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