ミツナル短編集
地面に倒れ込むと同時に頭を強く打ち付けてしまった。何だか顔面も痛い。何が起こったのかよく分からないまま、痛がりながらゆっくり目を開けると、赤い服を着た御剣のこれまた赤い顔が視界いっぱいに飛び込んできた。
「いてぇ~…うう…おい、いつまでぼくの上にいるんだよ、重いしどけよ」
「…あ、ああ…すまない、本当に」
未だチカチカする頭で状況を確認する。ええと…検事局に書類提出に来たら、御剣が階段で降りてくるのが見えて、下から声をかけたらものすごく驚いた様子で足を踏み外して…そうだ、コイツ、そのままぼくの上に落っこちてきたんだ…
幸い、御剣はぼくがクッションになったようで外傷は無いようだった。怪我が無くてよかったとホッとする。だが口を手の甲で抑え、伏し目がちに起き上がる御剣は、ソワソワと落ち着かない様子だった。
「その、だ、大丈夫か…?」
「え…まあ、大丈夫といえば大丈夫だけど…いっ!口が切れてる…」
「!!す、すまない!」
慌ててハンカチを差し出してくる御剣に怪訝な顔を向けてしまう。ハンカチはありがたく受け取り、口元を抑えた。御剣は顔を赤くさせたり青くさせたりと忙しなく、頭を抱える仕草も見られた。
「そんなに慌ててるお前も珍しいな。確かに重かったけど、そこまで思い詰めなくても…」
「その…キミは、初めてか…?」
「は?」
初めて?何が?怪我をするのがか?そんなの日常茶飯事だって事、コイツが知らないわけないし…ガタイのいい成人男性に上からのしかかられる経験の事か?流石にそれは無いけど…
「まあ、初めてだよ」
「!そ、そうか…実は、私もなのだ」
「?ふーん…」
普段から人にのしかかる経験のある検事なんて嫌すぎるもんな…あ、でも、そういう意味でのしかかってるって事もあるか…御剣、初めてなのか、ふーん…
何だか心が弾むようで、満面の笑みを浮かべて御剣を安心させようと肩を叩く。
「ま、良かったんじゃないか?相手がぼくでさ。可愛いお嬢さんとかなら責任取らなきゃだろうけど、ぼくら友達だし、男同士だし、人より頑丈だからこのくらい舐めときゃ治るし!」
「責任…舐める…」
明るい表情のぼくとは反対に、俯きながらブツブツと考え込み出した御剣は、それじゃ…と帰ろうとするぼくの腕を掴み引き止めた。
「ま、待て!成歩堂。責任を取らせてくれ」
「はぁ?ぼくの話聞いてたか?」
呆れながら腕を振りほどくと今度は両手をそっと包まれ、しっかりと目が合わせられる。
「お互い初めてだったのだ。やり直しを提案したい」
「…やりなおし?」
それはつまり、も、もう一度ぼくにのしかかって…って事か!?そ、そんなの!事故じゃなくて故意でやったら、もうそういう意味としか…!
みるみる顔に熱が集まるのが分かる。コイツ、こんな昼間からなんて事を…!
「異議あり!そ、そんな、ぼくたちそういう関係じゃ…」
「こんな時に言うことでは無いかもしれないが、いや、言わせてくれ。成歩堂、好きだ」
「!?」
握られた手に更に力を込められ、先程よりも顔を近づけられる。その真剣な眼差しに何だかポーっとなってしまい、頭にもやがかかったように考えがまとまらず、鼓動が早まるのを感じた。
「キミも、私を悪しからず思っているのではと感じていた。その反応を見るに、この考察が間違いでは無いと思うのだが…如何だろうか?」
自信ありげなセリフとは裏腹に、捨てられた子犬のように目をうるませ懇願する御剣に胸がキュッと狭くなる。
「ぼく…ぼくも、御剣の事…好き、だと思う…」
「!ほ、本当か!ならば、私とさっきのやり直しをしてくれるか?」
「あ…うぅ…でも、そんな、こんな明るくて、こんな場所で…」
「た、確かにそうだな…よし、今晩空いているか?」
「え、うん…」
「私の家に来たまえ」
「えっ!?」
こ、今晩!?展開が早くないか?こういうのって、もっと段階を踏んで…いやでも、もうぼくたちいい歳した大人だし、仲だってどんなカップルより深くて良好だと思ってるし、でも、でも…!
「夜、キミの事務所まで迎えに行く。仕切り直しと、改めてキミに告白がしたい。待っていてくれ」
「は、はい…」
頬をするりと撫でられ、王子様みたいな顔でフッと笑いかけられると脳も全身も甘く麻痺したように動かなくなる。それでは、と、先程までの混乱が嘘のようにご機嫌で去っていく御剣を見つめながら、しばらくその場に立ち尽くしていた。
ーえ、えっと、何かよく分からない内にぼくたち付き合うことになった…のか?それで、今晩アイツにまた、上から乗られて…そ、そういう事だよな!?…男同士のやり方なんて知らないけど、とりあえず調べておこうかな…
御剣に借りたハンカチで口元を抑えながら、覚束無い足取りで検事局を後にする。不器用なアイツに全部任せたら大変な事になりそうだから、帰ったらすぐ色々調べようと決意した。
(御剣、カッコよかったなぁ…慌ててるのは可愛かったし、ぼく、こんなにアイツのこと好きだったんだ…)
浮かれているのが自分でも分かり、恥ずかしくなって頭をブンブン振る。どんな事をされてしまうのかと、不安と期待が入り交じり、惚けてしまう。周りがよく見えておらず、この後電柱にぶつかってしまうなんて思いもしなかった…。
てんしの ように かわいく キスを して あいてを こんらんの じょうたいに する。
からだ ぜんたいで あいてに のしかかって こうげきする。 まひ じょうたいに することが ある。
「いてぇ~…うう…おい、いつまでぼくの上にいるんだよ、重いしどけよ」
「…あ、ああ…すまない、本当に」
未だチカチカする頭で状況を確認する。ええと…検事局に書類提出に来たら、御剣が階段で降りてくるのが見えて、下から声をかけたらものすごく驚いた様子で足を踏み外して…そうだ、コイツ、そのままぼくの上に落っこちてきたんだ…
幸い、御剣はぼくがクッションになったようで外傷は無いようだった。怪我が無くてよかったとホッとする。だが口を手の甲で抑え、伏し目がちに起き上がる御剣は、ソワソワと落ち着かない様子だった。
「その、だ、大丈夫か…?」
「え…まあ、大丈夫といえば大丈夫だけど…いっ!口が切れてる…」
「!!す、すまない!」
慌ててハンカチを差し出してくる御剣に怪訝な顔を向けてしまう。ハンカチはありがたく受け取り、口元を抑えた。御剣は顔を赤くさせたり青くさせたりと忙しなく、頭を抱える仕草も見られた。
「そんなに慌ててるお前も珍しいな。確かに重かったけど、そこまで思い詰めなくても…」
「その…キミは、初めてか…?」
「は?」
初めて?何が?怪我をするのがか?そんなの日常茶飯事だって事、コイツが知らないわけないし…ガタイのいい成人男性に上からのしかかられる経験の事か?流石にそれは無いけど…
「まあ、初めてだよ」
「!そ、そうか…実は、私もなのだ」
「?ふーん…」
普段から人にのしかかる経験のある検事なんて嫌すぎるもんな…あ、でも、そういう意味でのしかかってるって事もあるか…御剣、初めてなのか、ふーん…
何だか心が弾むようで、満面の笑みを浮かべて御剣を安心させようと肩を叩く。
「ま、良かったんじゃないか?相手がぼくでさ。可愛いお嬢さんとかなら責任取らなきゃだろうけど、ぼくら友達だし、男同士だし、人より頑丈だからこのくらい舐めときゃ治るし!」
「責任…舐める…」
明るい表情のぼくとは反対に、俯きながらブツブツと考え込み出した御剣は、それじゃ…と帰ろうとするぼくの腕を掴み引き止めた。
「ま、待て!成歩堂。責任を取らせてくれ」
「はぁ?ぼくの話聞いてたか?」
呆れながら腕を振りほどくと今度は両手をそっと包まれ、しっかりと目が合わせられる。
「お互い初めてだったのだ。やり直しを提案したい」
「…やりなおし?」
それはつまり、も、もう一度ぼくにのしかかって…って事か!?そ、そんなの!事故じゃなくて故意でやったら、もうそういう意味としか…!
みるみる顔に熱が集まるのが分かる。コイツ、こんな昼間からなんて事を…!
「異議あり!そ、そんな、ぼくたちそういう関係じゃ…」
「こんな時に言うことでは無いかもしれないが、いや、言わせてくれ。成歩堂、好きだ」
「!?」
握られた手に更に力を込められ、先程よりも顔を近づけられる。その真剣な眼差しに何だかポーっとなってしまい、頭にもやがかかったように考えがまとまらず、鼓動が早まるのを感じた。
「キミも、私を悪しからず思っているのではと感じていた。その反応を見るに、この考察が間違いでは無いと思うのだが…如何だろうか?」
自信ありげなセリフとは裏腹に、捨てられた子犬のように目をうるませ懇願する御剣に胸がキュッと狭くなる。
「ぼく…ぼくも、御剣の事…好き、だと思う…」
「!ほ、本当か!ならば、私とさっきのやり直しをしてくれるか?」
「あ…うぅ…でも、そんな、こんな明るくて、こんな場所で…」
「た、確かにそうだな…よし、今晩空いているか?」
「え、うん…」
「私の家に来たまえ」
「えっ!?」
こ、今晩!?展開が早くないか?こういうのって、もっと段階を踏んで…いやでも、もうぼくたちいい歳した大人だし、仲だってどんなカップルより深くて良好だと思ってるし、でも、でも…!
「夜、キミの事務所まで迎えに行く。仕切り直しと、改めてキミに告白がしたい。待っていてくれ」
「は、はい…」
頬をするりと撫でられ、王子様みたいな顔でフッと笑いかけられると脳も全身も甘く麻痺したように動かなくなる。それでは、と、先程までの混乱が嘘のようにご機嫌で去っていく御剣を見つめながら、しばらくその場に立ち尽くしていた。
ーえ、えっと、何かよく分からない内にぼくたち付き合うことになった…のか?それで、今晩アイツにまた、上から乗られて…そ、そういう事だよな!?…男同士のやり方なんて知らないけど、とりあえず調べておこうかな…
御剣に借りたハンカチで口元を抑えながら、覚束無い足取りで検事局を後にする。不器用なアイツに全部任せたら大変な事になりそうだから、帰ったらすぐ色々調べようと決意した。
(御剣、カッコよかったなぁ…慌ててるのは可愛かったし、ぼく、こんなにアイツのこと好きだったんだ…)
浮かれているのが自分でも分かり、恥ずかしくなって頭をブンブン振る。どんな事をされてしまうのかと、不安と期待が入り交じり、惚けてしまう。周りがよく見えておらず、この後電柱にぶつかってしまうなんて思いもしなかった…。
てんしの ように かわいく キスを して あいてを こんらんの じょうたいに する。
からだ ぜんたいで あいてに のしかかって こうげきする。 まひ じょうたいに することが ある。