あなたに贈る花とダンス
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――とある男の心中
任務の帰り道。其の日は車ではなく、徒歩で帰っていた。
「コホ、ゴホッ」
口元を押さえ、咳き込む。
前方から足音が聞こえ、顔を少し上げる。書類のようなものを見てブツブツと何かを呟きながら歩いていた。
どんっ。
避けようとして前方を歩いていた人間とぶつかる。自分が思っているより体が疲弊しているのだろうか。
「すみません、お怪我は……」
声を聞くに、ぶつかった人間は女であった。中性的な見た目が故、それに気づかなかった。
薄藍色の瞳が僕 を捉え、そして揺れる。
「あ、あく……たがわ……?」
「ゴホッ、僕を知っているのか」
震えた声で出した言葉は僕 の名前だった。一歩、二歩と後退る。
そして足に力が入らなくなったのか、そのままその場に座り込む。何故だろう。宝石の如く光り揺れる薄藍色の瞳から目が離せない。
気づけば僕 は女に対して手を差し伸べていた。
「やっ、やめ」
女は反射的に目を瞑る。だが何もされないことを不思議がったのか、もう一度目を開けた。
「何なの……?」
「腰が抜けたのだろう」
そう云って手を近づけると、恐る恐る僕 の手を掴んだ。それを引っ張ってやると思ったよりも女が力を抜いていたため、僕 に寄り掛かる形になった。
ドクン。
寄り掛かられ、心臓が膨らむ。
「ッ、ご、ごめんなさい」
「大丈夫だ」
暖かな体温、微かに香る香水の匂い。そのどれもが僕 の心臓の鼓動を速めた。こんなことは初めてだった。
「名前は」
「……は?」
「貴女の名前が聞きたい」
「…………は?」
ポート・マフィアの人間が此れを聞けばきっと嗤うだろう。
女は何かを考えるようにしてから声を出した。
「恩田陸、です」
名前を聞いて、その名前がとても愛しいもののように感じる。
「また」そう言葉を残して帰ることにした。あのままあの女、恩田陸といては心臓が可笑しくなる。
「ゴホッ」
――嗚呼、痛い。
任務の帰り道。其の日は車ではなく、徒歩で帰っていた。
「コホ、ゴホッ」
口元を押さえ、咳き込む。
前方から足音が聞こえ、顔を少し上げる。書類のようなものを見てブツブツと何かを呟きながら歩いていた。
どんっ。
避けようとして前方を歩いていた人間とぶつかる。自分が思っているより体が疲弊しているのだろうか。
「すみません、お怪我は……」
声を聞くに、ぶつかった人間は女であった。中性的な見た目が故、それに気づかなかった。
薄藍色の瞳が
「あ、あく……たがわ……?」
「ゴホッ、僕を知っているのか」
震えた声で出した言葉は
そして足に力が入らなくなったのか、そのままその場に座り込む。何故だろう。宝石の如く光り揺れる薄藍色の瞳から目が離せない。
気づけば
「やっ、やめ」
女は反射的に目を瞑る。だが何もされないことを不思議がったのか、もう一度目を開けた。
「何なの……?」
「腰が抜けたのだろう」
そう云って手を近づけると、恐る恐る
ドクン。
寄り掛かられ、心臓が膨らむ。
「ッ、ご、ごめんなさい」
「大丈夫だ」
暖かな体温、微かに香る香水の匂い。そのどれもが
「名前は」
「……は?」
「貴女の名前が聞きたい」
「…………は?」
ポート・マフィアの人間が此れを聞けばきっと嗤うだろう。
女は何かを考えるようにしてから声を出した。
「恩田陸、です」
名前を聞いて、その名前がとても愛しいもののように感じる。
「また」そう言葉を残して帰ることにした。あのままあの女、恩田陸といては心臓が可笑しくなる。
「ゴホッ」
――嗚呼、痛い。