あなたに贈る花とダンス
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あの日から二日、約束の日になった。
服装をどうするかと前日は寝る時間がいつもより一時間程遅くなったのだが、結果的にラフな格好で行くことにした。
鞄の中に必要なものだけを詰めて、小一時間程電車に揺られて武装探偵社があるビルへと向かった。
「何だか緊張する……」
ドアノブをゆっくりと回し、ドアを開ける。
扉の向こうにはソファに座る独歩さんとその他の社員であろう人がそれぞれの机に座っていた。
「来たか」
「は、はい」
「そんなに緊張するな」
「無茶言わないでください」
暫く普通の質問が私に投げられたのだが、何個目かの質問の途中、遮るかのように荒々しく事務所のドアが開いた。
思わずビクリと肩が跳ねてしまったのはどうか許してほしい。
聞くに、事務所からそう遠くないコンビニで立て籠もり事件が起こったらしい。
「陸、お前も来い」
「えっ⁉ わ、私まだ探偵社の社員でもないのにッ⁉」
「立て籠もりとなればお前の能力が役に立つ! だから来い!」
有無を言わせない独歩さんの気迫に押され立て籠もり犯がいるコンビニへ車で向かった。
道中、その立て籠もり犯の名前が割れていることを知った。
現場であるコンビニの周りには沢山の野次馬と警察がいた。そこにほいと雑にも投入される私。
私一人ですか⁉ なんて眼差しを独歩さんに向けたのだが早く行けという身振りをされる。
意を決して私はコンビニへと入った。
立て籠もり犯は人質の首にナイフを突き立てたまま、コンビニに入ってきた私に声を荒げて威嚇をする。
私は手を挙げて、無害だというのを表示するが、犯人が落ち着くことは無さそうだ。
いきなり入ってきた私に動揺しているのか、それとも外の警察に怯えているのか……。何にせよナイフを握る手が震えている。
――これは、先手必勝だろうか。
錯乱していようが私と目が合えば、私が相手の名前を知っていればいとも簡単に操ることが出来る。
犯人とはずっと目が合っている。ここに入ってきた異物として目を離さずにいられないからだろう。
「『川上光輝、ナイフを下ろせ』」
「誰がッ」
口では言うものの男はナイフを手放し、床にカランと無機質な音を立てて落ちる。
「『人質を解放し、両手を挙げろ』」
明らかな殺意を持った瞳で私を睨む。
対象との距離があったり、相手の精神が極端に乱れていると稀に意識だけ残るんだよね。まあ、命令に背くなんて例外はないから大丈夫だろう。
「今のうちにこちらへ」
人質を外に逃がした途端、警察がコンビニの中に突入し、男を確保した。
「……ッハァ、死ぬほど緊張した。心臓がバクバクいってる」
「よくやったな」
ポンと肩に手を置かれ独歩さんにそう言われた。
この後の処理は他の探偵社員がやってくれるらしい。
それから探偵社に戻ってからは、なんというか、事がポンポンと進んでいった。どうやら探偵社はあの時のコンビニでの事件で私がどう行動するかを入社試験として扱ったらしい。
「それで、合格と……? そんなものでいいんですか?」
「十分すぎるくらいだ。お前の異能力の優秀さが証明されたことだろう」
「優秀だなんて、そんなことないです」
「謙遜するな。俺もよくやったと思っているんだ。ああいった風に能力を使ったのは初めてだろう」
コクリと頷く。
今までは自分の身を最低限守る時に致し方がなく、という形で使っていたから本当に心臓の鼓動が早まったし、緊張で喉はカラカラになった。
「それなのにああも動けるのは正直すごいことだと俺は思う」
そんな風に褒めてもらって嬉しくならない人はいないだろう。褒められ慣れてない私は顔に徐々に集まってくる熱を冷やすようにぱたぱたと手で仰ぐ。
この後、諸々の話をして私は走って家に帰った。
「おばあちゃん! 私お仕事決まったよ!」
「あらそうなの? よかったわね」
祖母は私の頭を撫でた。
もうあと二年で二十歳になるのにこうも頭を撫でられると恥ずかしい、けど私はこの私の頭を撫でる祖母の手が好きだから一度たりとも拒んだことはない。
「それで社員寮に入ろうと思ってて、でもそんなに遠いところにあるわけじゃないから連休はこっちに帰ってくるよ」
「少し寂しくなるけど、久しぶりにおじいちゃんとゆっくり過ごすことにするわ」
「うん。何かあったらすぐに電話してね。どこにいたって駆け付けるから」
明日は軽く荷物をあっちに持っていかないとな。ある程度のものは揃っているって言っていたし服ぐらいでいいかな。他のものは後々揃えればいいだろうし……。
「バイトに辞める旨を伝えないといけないな」
比較的辞めやすそうな所を選んだけど、あそこは……大丈夫かなあ。さすがに就職するって言ったら辞めさせてくれるよね。
融通が利かないあの店長の顔を思い浮かべ、大きくため息をつく。
……これは結果のご報告なのだが、バイトをやめるのにひと悶着あった。
少なくとも私は二度とあそこで働きたくないし、二度とあの店長の顔は拝みたくない。
服装をどうするかと前日は寝る時間がいつもより一時間程遅くなったのだが、結果的にラフな格好で行くことにした。
鞄の中に必要なものだけを詰めて、小一時間程電車に揺られて武装探偵社があるビルへと向かった。
「何だか緊張する……」
ドアノブをゆっくりと回し、ドアを開ける。
扉の向こうにはソファに座る独歩さんとその他の社員であろう人がそれぞれの机に座っていた。
「来たか」
「は、はい」
「そんなに緊張するな」
「無茶言わないでください」
暫く普通の質問が私に投げられたのだが、何個目かの質問の途中、遮るかのように荒々しく事務所のドアが開いた。
思わずビクリと肩が跳ねてしまったのはどうか許してほしい。
聞くに、事務所からそう遠くないコンビニで立て籠もり事件が起こったらしい。
「陸、お前も来い」
「えっ⁉ わ、私まだ探偵社の社員でもないのにッ⁉」
「立て籠もりとなればお前の能力が役に立つ! だから来い!」
有無を言わせない独歩さんの気迫に押され立て籠もり犯がいるコンビニへ車で向かった。
道中、その立て籠もり犯の名前が割れていることを知った。
現場であるコンビニの周りには沢山の野次馬と警察がいた。そこにほいと雑にも投入される私。
私一人ですか⁉ なんて眼差しを独歩さんに向けたのだが早く行けという身振りをされる。
意を決して私はコンビニへと入った。
立て籠もり犯は人質の首にナイフを突き立てたまま、コンビニに入ってきた私に声を荒げて威嚇をする。
私は手を挙げて、無害だというのを表示するが、犯人が落ち着くことは無さそうだ。
いきなり入ってきた私に動揺しているのか、それとも外の警察に怯えているのか……。何にせよナイフを握る手が震えている。
――これは、先手必勝だろうか。
錯乱していようが私と目が合えば、私が相手の名前を知っていればいとも簡単に操ることが出来る。
犯人とはずっと目が合っている。ここに入ってきた異物として目を離さずにいられないからだろう。
「『川上光輝、ナイフを下ろせ』」
「誰がッ」
口では言うものの男はナイフを手放し、床にカランと無機質な音を立てて落ちる。
「『人質を解放し、両手を挙げろ』」
明らかな殺意を持った瞳で私を睨む。
対象との距離があったり、相手の精神が極端に乱れていると稀に意識だけ残るんだよね。まあ、命令に背くなんて例外はないから大丈夫だろう。
「今のうちにこちらへ」
人質を外に逃がした途端、警察がコンビニの中に突入し、男を確保した。
「……ッハァ、死ぬほど緊張した。心臓がバクバクいってる」
「よくやったな」
ポンと肩に手を置かれ独歩さんにそう言われた。
この後の処理は他の探偵社員がやってくれるらしい。
それから探偵社に戻ってからは、なんというか、事がポンポンと進んでいった。どうやら探偵社はあの時のコンビニでの事件で私がどう行動するかを入社試験として扱ったらしい。
「それで、合格と……? そんなものでいいんですか?」
「十分すぎるくらいだ。お前の異能力の優秀さが証明されたことだろう」
「優秀だなんて、そんなことないです」
「謙遜するな。俺もよくやったと思っているんだ。ああいった風に能力を使ったのは初めてだろう」
コクリと頷く。
今までは自分の身を最低限守る時に致し方がなく、という形で使っていたから本当に心臓の鼓動が早まったし、緊張で喉はカラカラになった。
「それなのにああも動けるのは正直すごいことだと俺は思う」
そんな風に褒めてもらって嬉しくならない人はいないだろう。褒められ慣れてない私は顔に徐々に集まってくる熱を冷やすようにぱたぱたと手で仰ぐ。
この後、諸々の話をして私は走って家に帰った。
「おばあちゃん! 私お仕事決まったよ!」
「あらそうなの? よかったわね」
祖母は私の頭を撫でた。
もうあと二年で二十歳になるのにこうも頭を撫でられると恥ずかしい、けど私はこの私の頭を撫でる祖母の手が好きだから一度たりとも拒んだことはない。
「それで社員寮に入ろうと思ってて、でもそんなに遠いところにあるわけじゃないから連休はこっちに帰ってくるよ」
「少し寂しくなるけど、久しぶりにおじいちゃんとゆっくり過ごすことにするわ」
「うん。何かあったらすぐに電話してね。どこにいたって駆け付けるから」
明日は軽く荷物をあっちに持っていかないとな。ある程度のものは揃っているって言っていたし服ぐらいでいいかな。他のものは後々揃えればいいだろうし……。
「バイトに辞める旨を伝えないといけないな」
比較的辞めやすそうな所を選んだけど、あそこは……大丈夫かなあ。さすがに就職するって言ったら辞めさせてくれるよね。
融通が利かないあの店長の顔を思い浮かべ、大きくため息をつく。
……これは結果のご報告なのだが、バイトをやめるのにひと悶着あった。
少なくとも私は二度とあそこで働きたくないし、二度とあの店長の顔は拝みたくない。