あなたに贈る花とダンス
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――ある日、両親がいなくなった。
私が中学生の時のことだ。突然、本当に突然、何の前触れもなくいなくなったのだ。あの時の私は気が動転していて冷静になるなんてことはなかった。
いなくなった理由を頭の中でぐるぐると考えながら両親に電話をかける。
「お掛けになった電話は、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていない為、掛かりません」
無機質な音声が電話から流れる。
頭がどんどん真っ白になっていくのがわかった。血の気が引いていく。
震える手で両親どちらともにメールを送ることにした。留守番電話も残すことにした。
次に私は祖父母に電話をかけた。数回のコール音のあと、優し気な声音の祖母が電話に出た。
両親が家に帰ってきていないことを告げると祖母は驚いた様に、それでいて困ったような声で行方は分からないと云った。 そっか と思わず落胆の声が洩れ、私は電話を切った。
深夜になっても帰ってこない両親。二人は一体全体どこに行ったのだろう。無事なのだろうか。どうして私に何も言わずに行ってしまったんだろうか。私が何かしてしまったんだろうか。
考えても明確な答えなんて出てこないし、知る術もなかった。
程なくして私は祖父母に引き取られることになった。中学では私の失踪した両親がうわさとして広がっていったが、構っている時間は、というより、そんな噂の鎮火が出来るほど私の心に余裕なんてものはなかった。
中学を卒業した。けれど両親は帰ってこない。メールの返事もない。
高校に入学した。やはり両親は帰ってこない。もう一度メールを送ることにした。
高校を卒業した。両親は帰ってこない。……時が経つのはこんなにも早かっただろうか。
そのうち両親のことを意図的に考えるのをやめるようにした。いっそ忘れてしまいたいとさえ思った。
だってどこにいるんだろうかと考えれば考えるほど一人になった自分がとても惨めに、そして小さく見えてしまうから。
でも、どんなに考えるのをやめたいと思っても忘れることはできなかった。
記憶というものは忘れようと思って忘れられるほど簡単なものではない。
私が中学生の時のことだ。突然、本当に突然、何の前触れもなくいなくなったのだ。あの時の私は気が動転していて冷静になるなんてことはなかった。
いなくなった理由を頭の中でぐるぐると考えながら両親に電話をかける。
「お掛けになった電話は、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていない為、掛かりません」
無機質な音声が電話から流れる。
頭がどんどん真っ白になっていくのがわかった。血の気が引いていく。
震える手で両親どちらともにメールを送ることにした。留守番電話も残すことにした。
次に私は祖父母に電話をかけた。数回のコール音のあと、優し気な声音の祖母が電話に出た。
両親が家に帰ってきていないことを告げると祖母は驚いた様に、それでいて困ったような声で行方は分からないと云った。 そっか と思わず落胆の声が洩れ、私は電話を切った。
深夜になっても帰ってこない両親。二人は一体全体どこに行ったのだろう。無事なのだろうか。どうして私に何も言わずに行ってしまったんだろうか。私が何かしてしまったんだろうか。
考えても明確な答えなんて出てこないし、知る術もなかった。
程なくして私は祖父母に引き取られることになった。中学では私の失踪した両親がうわさとして広がっていったが、構っている時間は、というより、そんな噂の鎮火が出来るほど私の心に余裕なんてものはなかった。
中学を卒業した。けれど両親は帰ってこない。メールの返事もない。
高校に入学した。やはり両親は帰ってこない。もう一度メールを送ることにした。
高校を卒業した。両親は帰ってこない。……時が経つのはこんなにも早かっただろうか。
そのうち両親のことを意図的に考えるのをやめるようにした。いっそ忘れてしまいたいとさえ思った。
だってどこにいるんだろうかと考えれば考えるほど一人になった自分がとても惨めに、そして小さく見えてしまうから。
でも、どんなに考えるのをやめたいと思っても忘れることはできなかった。
記憶というものは忘れようと思って忘れられるほど簡単なものではない。
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