一章
夢小説設定
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「あ、遠野さん」
「やあ蛍くん。噂のあれに会ったんだって?」
「そうなんです、大変でしたよ」
「みんなから聞いたよ。退治したんだってな、流石ナマエくんだなぁ」
「いえいえ、そんな大したことじゃないですよ。相手が油断してくれたから何とかなっただけです」
常連の遠野はいつもの様に和菓子を包んでいる間ナマエと話す。そして遠野が店を出てすぐに店に誰かが入ってきた。
「いらっしゃいませ」
たった今店に入ってきた男性らに不思議と目に留まる。
きっと理由は一歩前に出ている男性の白い額当てからはみ出している痛々しい傷痕だけではないだろう。
「あらあら将校様方がうちの店に来るだなんて、光栄なことですわ」
将校様、それを聞いてナマエははっとする。確か将校とは少尉以上の軍人を意味する言葉だったと。
隣で注文を受け取る奥さんに対し、ナマエの頭の中では何故か警報が鳴り響いていた。
「ナマエちゃん、緊張しているの?」
「は、はい。初めて、お目にかかったものですから……」
男らが注文した和菓子を緊張した手で丁寧に風呂敷に包む。
「お待たせしました」
「ありがとう。ところで、あなたの名前は?」
「小鳥遊ナマエといいます」
「いい名前だ。奥様、彼を借りても?」
「ナマエちゃんが何かしたのでしょうか……」
「いやいや、少しお話がしたいだけですよ。手荒な真似なんて致しません!」
額当ての軍人がそう言うと安心したのか奥さんはナマエの方に向いた。
「ナマエちゃん、粗相のないようにね」
「はい、行ってきます」
二人の軍人に続き、ナマエが歩く。
頭の中では未だ警報がガンガンと激しく鳴っていた。
だが目の前の二人を特別警戒していないため、途中で逃げるなんて考えが浮かばないナマエは第七師団の兵舎に連れられ、部屋に案内される。
「それで、私に何の御用でしょうか?…えっと」
目の前の人間の名前がわからず言葉が詰まるのを見るとすぐにすまなかったと一言謝り自己紹介をした。
「私の名前は鶴見篤四郎だ。さっきも言った通り私は少しお話がしたいだけなんだ、可愛らしいお嬢さん」
お嬢さん、の言葉にびくりとナマエの肩が跳ねた。
別に完璧な男装だとは言わないが、町民にはバレていなかったため、動揺が隠せなかった。
「やっぱりバレてしまいますか?」
「はは、そうだね。中性的な顔立ちに高身長ではあるがれっきとした女性だろう?」
「はい。仰る通り私は女性です。男装をしていたのはそちらの方が都合が良いかと思ったからです」
「都合とは?」
「やはりこのご時世、女性が軽く見られている節があります。ただでさえあの夫婦にお世話になっている身、迷惑はかけられません」
「そうかそうか」
鶴見はうんうんと頷き、そしてナマエに近づく。
「なんでしょうか…」
「本題だ、小鳥遊ナマエ」
つつー、と指でナマエの顎をなぞる。
妙な色気とカリスマ性にナマエは酔いそうになっていた。
「あなたは数週間程前からあの夫婦にお世話になっているそうだね」
「は、はい」
「調べるにあなたは"街中に突然現れた"そうじゃないか」
「そ、れは……」
どう説明しようか困っていると鶴見の顔がさらに近くなり、目が強引に奪われる。
「キサマはどこから来たんだ?」
声が少し低くなり鶴見とナマエの顔の距離がさらに近くなる。
まるで、お前のことなんて全てわかっているんだぞ、とでも言いたげな雰囲気にナマエは何をどう答えていいかわからなかった。
「わ、私は……」
拘束なんて何もされていないのに身体中を縛られているような錯覚に声が出なくなる。
だが、その緊張感を殺して口を開く。
「私は、ここではない別のところから来ました。未来というやつです」
後ろにいる月島からの視線が強くなる。
月島からすればこの期に及んでなんていう嘘をつくんだ、と思っていることだろう。
「嘘だと思われても仕方がありません。荒唐無稽な作り話だとも思われるでしょう。ですが本当なのです」
「…わかった、信じよう」
「中尉!」
「はは、我々を前にしてこの子は嘘をつけない。そうだろう?」
「そうですね、今にでも気を失ってしまいたいです」
引き攣った笑みでそう言うと鶴見は柔らかに笑う。
そんな二人を見るもうひとりの軍人、月島は小さなため息をついた。
「やあ蛍くん。噂のあれに会ったんだって?」
「そうなんです、大変でしたよ」
「みんなから聞いたよ。退治したんだってな、流石ナマエくんだなぁ」
「いえいえ、そんな大したことじゃないですよ。相手が油断してくれたから何とかなっただけです」
常連の遠野はいつもの様に和菓子を包んでいる間ナマエと話す。そして遠野が店を出てすぐに店に誰かが入ってきた。
「いらっしゃいませ」
たった今店に入ってきた男性らに不思議と目に留まる。
きっと理由は一歩前に出ている男性の白い額当てからはみ出している痛々しい傷痕だけではないだろう。
「あらあら将校様方がうちの店に来るだなんて、光栄なことですわ」
将校様、それを聞いてナマエははっとする。確か将校とは少尉以上の軍人を意味する言葉だったと。
隣で注文を受け取る奥さんに対し、ナマエの頭の中では何故か警報が鳴り響いていた。
「ナマエちゃん、緊張しているの?」
「は、はい。初めて、お目にかかったものですから……」
男らが注文した和菓子を緊張した手で丁寧に風呂敷に包む。
「お待たせしました」
「ありがとう。ところで、あなたの名前は?」
「小鳥遊ナマエといいます」
「いい名前だ。奥様、彼を借りても?」
「ナマエちゃんが何かしたのでしょうか……」
「いやいや、少しお話がしたいだけですよ。手荒な真似なんて致しません!」
額当ての軍人がそう言うと安心したのか奥さんはナマエの方に向いた。
「ナマエちゃん、粗相のないようにね」
「はい、行ってきます」
二人の軍人に続き、ナマエが歩く。
頭の中では未だ警報がガンガンと激しく鳴っていた。
だが目の前の二人を特別警戒していないため、途中で逃げるなんて考えが浮かばないナマエは第七師団の兵舎に連れられ、部屋に案内される。
「それで、私に何の御用でしょうか?…えっと」
目の前の人間の名前がわからず言葉が詰まるのを見るとすぐにすまなかったと一言謝り自己紹介をした。
「私の名前は鶴見篤四郎だ。さっきも言った通り私は少しお話がしたいだけなんだ、可愛らしいお嬢さん」
お嬢さん、の言葉にびくりとナマエの肩が跳ねた。
別に完璧な男装だとは言わないが、町民にはバレていなかったため、動揺が隠せなかった。
「やっぱりバレてしまいますか?」
「はは、そうだね。中性的な顔立ちに高身長ではあるがれっきとした女性だろう?」
「はい。仰る通り私は女性です。男装をしていたのはそちらの方が都合が良いかと思ったからです」
「都合とは?」
「やはりこのご時世、女性が軽く見られている節があります。ただでさえあの夫婦にお世話になっている身、迷惑はかけられません」
「そうかそうか」
鶴見はうんうんと頷き、そしてナマエに近づく。
「なんでしょうか…」
「本題だ、小鳥遊ナマエ」
つつー、と指でナマエの顎をなぞる。
妙な色気とカリスマ性にナマエは酔いそうになっていた。
「あなたは数週間程前からあの夫婦にお世話になっているそうだね」
「は、はい」
「調べるにあなたは"街中に突然現れた"そうじゃないか」
「そ、れは……」
どう説明しようか困っていると鶴見の顔がさらに近くなり、目が強引に奪われる。
「キサマはどこから来たんだ?」
声が少し低くなり鶴見とナマエの顔の距離がさらに近くなる。
まるで、お前のことなんて全てわかっているんだぞ、とでも言いたげな雰囲気にナマエは何をどう答えていいかわからなかった。
「わ、私は……」
拘束なんて何もされていないのに身体中を縛られているような錯覚に声が出なくなる。
だが、その緊張感を殺して口を開く。
「私は、ここではない別のところから来ました。未来というやつです」
後ろにいる月島からの視線が強くなる。
月島からすればこの期に及んでなんていう嘘をつくんだ、と思っていることだろう。
「嘘だと思われても仕方がありません。荒唐無稽な作り話だとも思われるでしょう。ですが本当なのです」
「…わかった、信じよう」
「中尉!」
「はは、我々を前にしてこの子は嘘をつけない。そうだろう?」
「そうですね、今にでも気を失ってしまいたいです」
引き攣った笑みでそう言うと鶴見は柔らかに笑う。
そんな二人を見るもうひとりの軍人、月島は小さなため息をついた。