序章
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次にナマエが目を覚ますと、そこは元いた住宅街ではなく、雪が降り積る別の街だった。
ナマエは現実を受け入れられず数回瞬きをする。
が、依然として自分の立っているのは見知らぬ雪の街だった。
「え……祠は?猫は?」
挙動不審のナマエを通行人は不思議そうに見ていた。
雪が降っているにも関わらず、薄い格好をしていれば、通行人たちの視線を集めてしまうのは致し方のないことかもしれない。
「はっ…くしゅんっ」
大きなくしゃみをしてぶるりと震える。
ここがどこなのか、ナマエにはさっぱり分からなかった。自分の住むところには雪があまり降らないのに、自分が今立っているところは雪がどさどさと積もっている。
確実に今さっきまでいた所ではない。
「もし、そこの人」
「はい……」
人の良さそうな和服の女性がナマエに話しかける。
「そんな寒そうな格好で何をしていらっしゃるの?もしかして家出、かしら」
「……そう、ではないですが」
話しかけられた時、いや、目を開けた瞬間からナマエは本能的に察していたのだろう。
ここに自分の家は無いのではないかということを。
その通りである。ここはナマエの住んでいたところとはてんで違う別の場所だ。
それどころか次元も違う。
ナマエはあの祠を入口に、トリップしてしまったのだ。
「家出じゃないのなら、この間火事になったところのお子さんかしら?」
「あ、えっと……」
「なにはともあれ、外で話をしていたらあなたが凍えてしまいますわ。どうぞ私の家に来てくださいな」
「いいんですか?」
「ええ、主人も快く迎えてくれるはずですわ」
和服の女性はにこりと優しく笑いナマエを自分の家に招いた。
少し遠慮気味のナマエだったが、凍え死んでしまっては元も子もないと思い大人しく女性の手に引かれることにした。
「ここです」
そう言って着いた家は和風な店舗がくっついた大きめの家だった。
ここまで来て入らないということはもはやできないだろう。大人しく家へと入る。
「あなた、今帰りましたよ」
依然としてナマエの手は女性の温かい手に引かれたままである。
「お帰り、そちらの人は?」
「外で呆然と立っていたからお連れしたの。放っておいたら凍えてしまうかと思って」
「そうかそうか、事情はなんにせよ寒かっただろう。こっちに来て温まりなさい」
火鉢の方へと案内され、ナマエは数分のうちに冷えてしまった体を温める。
「あの、温まったら私もう出ます。親切にしてくれてありがとうございます」
ナマエが深々と礼をすると夫婦は目を丸くして驚いた。
「そんな、あなたみたいな子供をまた外に放り出すなんて私には出来ませんわ」
「俺だって出来ないさ」
「あ、いや、でも」
もごもごと口ごもっていると女性は優しくナマエの頭を撫でた。
「行くところがないんでしょう?お金の心配はしなくていいですわ。だからしばらくここに泊まってくださいな」
「あ、ありがとう、ございます……」
ぽたりぽたりと涙が溢れ出てくるのをこらえることはできなかったが、それを咎める人間は今この場に誰もいなかった。
泣くナマエを夫婦は優しく抱きしめたのだった。
夫婦にとって見ず知らずの人間であるはずのナマエを優しく優しく迎え入れたのだった。
ナマエは現実を受け入れられず数回瞬きをする。
が、依然として自分の立っているのは見知らぬ雪の街だった。
「え……祠は?猫は?」
挙動不審のナマエを通行人は不思議そうに見ていた。
雪が降っているにも関わらず、薄い格好をしていれば、通行人たちの視線を集めてしまうのは致し方のないことかもしれない。
「はっ…くしゅんっ」
大きなくしゃみをしてぶるりと震える。
ここがどこなのか、ナマエにはさっぱり分からなかった。自分の住むところには雪があまり降らないのに、自分が今立っているところは雪がどさどさと積もっている。
確実に今さっきまでいた所ではない。
「もし、そこの人」
「はい……」
人の良さそうな和服の女性がナマエに話しかける。
「そんな寒そうな格好で何をしていらっしゃるの?もしかして家出、かしら」
「……そう、ではないですが」
話しかけられた時、いや、目を開けた瞬間からナマエは本能的に察していたのだろう。
ここに自分の家は無いのではないかということを。
その通りである。ここはナマエの住んでいたところとはてんで違う別の場所だ。
それどころか次元も違う。
ナマエはあの祠を入口に、トリップしてしまったのだ。
「家出じゃないのなら、この間火事になったところのお子さんかしら?」
「あ、えっと……」
「なにはともあれ、外で話をしていたらあなたが凍えてしまいますわ。どうぞ私の家に来てくださいな」
「いいんですか?」
「ええ、主人も快く迎えてくれるはずですわ」
和服の女性はにこりと優しく笑いナマエを自分の家に招いた。
少し遠慮気味のナマエだったが、凍え死んでしまっては元も子もないと思い大人しく女性の手に引かれることにした。
「ここです」
そう言って着いた家は和風な店舗がくっついた大きめの家だった。
ここまで来て入らないということはもはやできないだろう。大人しく家へと入る。
「あなた、今帰りましたよ」
依然としてナマエの手は女性の温かい手に引かれたままである。
「お帰り、そちらの人は?」
「外で呆然と立っていたからお連れしたの。放っておいたら凍えてしまうかと思って」
「そうかそうか、事情はなんにせよ寒かっただろう。こっちに来て温まりなさい」
火鉢の方へと案内され、ナマエは数分のうちに冷えてしまった体を温める。
「あの、温まったら私もう出ます。親切にしてくれてありがとうございます」
ナマエが深々と礼をすると夫婦は目を丸くして驚いた。
「そんな、あなたみたいな子供をまた外に放り出すなんて私には出来ませんわ」
「俺だって出来ないさ」
「あ、いや、でも」
もごもごと口ごもっていると女性は優しくナマエの頭を撫でた。
「行くところがないんでしょう?お金の心配はしなくていいですわ。だからしばらくここに泊まってくださいな」
「あ、ありがとう、ございます……」
ぽたりぽたりと涙が溢れ出てくるのをこらえることはできなかったが、それを咎める人間は今この場に誰もいなかった。
泣くナマエを夫婦は優しく抱きしめたのだった。
夫婦にとって見ず知らずの人間であるはずのナマエを優しく優しく迎え入れたのだった。