二章
夢小説設定
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アイヌは文字を持たなかったため、いろいろな口承文芸で歴史や精神を伝えた。
鮭に纏わる言い伝えである。
鮭は綺麗な水が好きだ。だから男たちが砂金を採るためだけに汚した水に鮭は登って帰ってこなくなってしまった。
そんなことが日高、釧路、白老……あちこちで起こった。
砂金は村の代表者が一か所に集めた。
鮭が獲れなくなって困ったアイヌたちは砂金を採るのをやめた。
争いのもとになってしまう砂金はそのまま隠され、その在処を話すことも禁じられたという。
その在処を知っていた年寄りものっぺらぼうに殺されてしまった。
「いやいや、ちょっと待て。それが例の埋蔵金ってことか?北海道各地から何年もかけて集められたって?」
「このウパㇱクマ(言い伝え)は私も初めて聞いた」
「ばあちゃんの言い伝えが本当なら俺たちが聞かされていた20貫(75㎏)より……もっと沢山あるんじゃねぇのか?」
「桁が違う」
アマッポという動物の罠にかかってしまった谷垣という男が言った。
「そのばあさんの言うように、埋蔵金の話はあちこちのアイヌの間でひそかに伝わっている。俺たちを率いている中尉は情報将校で情報収集や分析能力に長けている」
「鶴見中尉か……」
「鶴見中尉の推測では、囚人が聞かされていた量の千倍はある」
その数字に白石が後ろの柱に頭をごちんとぶつけた。
コンルは一足先に自分の家へと戻ったが、ナマエはそこに残っていた。
一応金塊のことを知っているから、という理由だった。
「少し席を外します」
「ん、ああ」
ナマエは一度コンルの元へと戻った。
「ただいま、コンルさん」
「おかえり。なぁナマエ」
「はい、なんでしょうか?」
「お前杉元ニㇱパ達について行ったらどうだ」
「えっ?」
突然コンルが言い出したことに驚きを隠せないでいた。
この金塊騒動に首を突っ込めばまた第七師団に会うかもしれないのに。
「確かにナマエ的にはここでのんびり暮らしている方が気が楽かもしれねぇ、でもお前は家に帰りたいんだろう?杉元ニㇱパたちと旅をすればもしかしたら帰る手掛かりがつかめるかもしれない」
「それは…そうかもしれませんけど…私がいては足手まといになると思います」
「何言ってんだ。知ってんだぞ、お前が街でゴロツキ3人を退治した話」
「あ……ああ〜、そんなことも、やりましたね」
「女とは思えないぐらいお前はたくましいだろうが。それに、あのメンバーで女がアシㇼパ一人だけっていうのもなんだか可哀想だ。お前が着いて行くと思うと俺も安心できる」
「……わかりました、杉元さんたちに交渉してきます」
「おう、行ってこい」
ナマエは杉元のいる家へと戻ると杉元は家の中じゃなくて外に立っていた。杉元は突然走って戻ってきたナマエに首を傾げた。
「杉元さん!……あれ、アシㇼパさんと白石さんは?」
「アシㇼパさんは今おばあちゃんと喋ってる。白石は知らん。あと無理にさん付けとか敬語で話さなくていいから」
「あ、うん。わかった」
「それで?どうしたんだ?」
「私も仲間に入れてほしくて」
「意味わかって言ってるの?」
「足手まといになるのは重々理解しているけど、それでも連れて行ってほしい」
「……それは金塊が欲しいから?」
「金塊なんてあっても帰る家すらない私には何も出来ないよ」
「帰る家がないって、コンルがいるだろ」
「あれは、私が居候させてもらってるだけ。本当の家はなくて、家族もいないの」
それを言うと杉元は途端に黙ってしまう。
自分と少し似ている、なんてことも思ったりした。
“帰る家がない”というのは酷く寂しいことである。ただいまもおかえりも言えない。
それに加えナマエは異世界に来てしまった身、余計孤独を感じていた。
「わかった。一緒に行こう」
「あっ、ありがとう!ありがとう杉元くん!」
ナマエが杉元の手をぎゅっと握る。
一瞬戸惑った杉元だったが、子供のように喜ぶナマエを見て思わず微笑んだ。
そしてナマエはコンルの元へと走って戻っていき、すぐに報告する。
「連れて行ってもらえることになりました!」
「よかったな」
「新たな門出にお前にこれをやろう」
「わあ、服、いいんですか?」
「ああ、俺は着ることがないしな。ほら立ってみろ」
言われた通り立つと白と紺色のアットゥシと呼ばれる服を丁寧に着せてやった。
「似合ってる」
「そうですか?ふふ、ありがとうございますコンルさん」
アットゥシを着て嬉しそうにくるくると回るナマエをコンルは愛娘でも見るような優しい瞳で見ていた。
鮭に纏わる言い伝えである。
鮭は綺麗な水が好きだ。だから男たちが砂金を採るためだけに汚した水に鮭は登って帰ってこなくなってしまった。
そんなことが日高、釧路、白老……あちこちで起こった。
砂金は村の代表者が一か所に集めた。
鮭が獲れなくなって困ったアイヌたちは砂金を採るのをやめた。
争いのもとになってしまう砂金はそのまま隠され、その在処を話すことも禁じられたという。
その在処を知っていた年寄りものっぺらぼうに殺されてしまった。
「いやいや、ちょっと待て。それが例の埋蔵金ってことか?北海道各地から何年もかけて集められたって?」
「このウパㇱクマ(言い伝え)は私も初めて聞いた」
「ばあちゃんの言い伝えが本当なら俺たちが聞かされていた20貫(75㎏)より……もっと沢山あるんじゃねぇのか?」
「桁が違う」
アマッポという動物の罠にかかってしまった谷垣という男が言った。
「そのばあさんの言うように、埋蔵金の話はあちこちのアイヌの間でひそかに伝わっている。俺たちを率いている中尉は情報将校で情報収集や分析能力に長けている」
「鶴見中尉か……」
「鶴見中尉の推測では、囚人が聞かされていた量の千倍はある」
その数字に白石が後ろの柱に頭をごちんとぶつけた。
コンルは一足先に自分の家へと戻ったが、ナマエはそこに残っていた。
一応金塊のことを知っているから、という理由だった。
「少し席を外します」
「ん、ああ」
ナマエは一度コンルの元へと戻った。
「ただいま、コンルさん」
「おかえり。なぁナマエ」
「はい、なんでしょうか?」
「お前杉元ニㇱパ達について行ったらどうだ」
「えっ?」
突然コンルが言い出したことに驚きを隠せないでいた。
この金塊騒動に首を突っ込めばまた第七師団に会うかもしれないのに。
「確かにナマエ的にはここでのんびり暮らしている方が気が楽かもしれねぇ、でもお前は家に帰りたいんだろう?杉元ニㇱパたちと旅をすればもしかしたら帰る手掛かりがつかめるかもしれない」
「それは…そうかもしれませんけど…私がいては足手まといになると思います」
「何言ってんだ。知ってんだぞ、お前が街でゴロツキ3人を退治した話」
「あ……ああ〜、そんなことも、やりましたね」
「女とは思えないぐらいお前はたくましいだろうが。それに、あのメンバーで女がアシㇼパ一人だけっていうのもなんだか可哀想だ。お前が着いて行くと思うと俺も安心できる」
「……わかりました、杉元さんたちに交渉してきます」
「おう、行ってこい」
ナマエは杉元のいる家へと戻ると杉元は家の中じゃなくて外に立っていた。杉元は突然走って戻ってきたナマエに首を傾げた。
「杉元さん!……あれ、アシㇼパさんと白石さんは?」
「アシㇼパさんは今おばあちゃんと喋ってる。白石は知らん。あと無理にさん付けとか敬語で話さなくていいから」
「あ、うん。わかった」
「それで?どうしたんだ?」
「私も仲間に入れてほしくて」
「意味わかって言ってるの?」
「足手まといになるのは重々理解しているけど、それでも連れて行ってほしい」
「……それは金塊が欲しいから?」
「金塊なんてあっても帰る家すらない私には何も出来ないよ」
「帰る家がないって、コンルがいるだろ」
「あれは、私が居候させてもらってるだけ。本当の家はなくて、家族もいないの」
それを言うと杉元は途端に黙ってしまう。
自分と少し似ている、なんてことも思ったりした。
“帰る家がない”というのは酷く寂しいことである。ただいまもおかえりも言えない。
それに加えナマエは異世界に来てしまった身、余計孤独を感じていた。
「わかった。一緒に行こう」
「あっ、ありがとう!ありがとう杉元くん!」
ナマエが杉元の手をぎゅっと握る。
一瞬戸惑った杉元だったが、子供のように喜ぶナマエを見て思わず微笑んだ。
そしてナマエはコンルの元へと走って戻っていき、すぐに報告する。
「連れて行ってもらえることになりました!」
「よかったな」
「新たな門出にお前にこれをやろう」
「わあ、服、いいんですか?」
「ああ、俺は着ることがないしな。ほら立ってみろ」
言われた通り立つと白と紺色のアットゥシと呼ばれる服を丁寧に着せてやった。
「似合ってる」
「そうですか?ふふ、ありがとうございますコンルさん」
アットゥシを着て嬉しそうにくるくると回るナマエをコンルは愛娘でも見るような優しい瞳で見ていた。