四章
夢小説設定
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翌朝、偽物人皮の判別方法を探すために江渡貝邸へと向かう。
蛍は最初キロランケに着いて行こうと思ったが尾形に「お前も来い」と言われたためキロランケたちと炭鉱へは行けなかった。
「どうだ?見つかったか?」
「あ、いえ、なにも……」
土方にそう声をかけられ首を横に振り何も無いと答える蛍
「そうか……ん?」
「どうかしましたか?」
「どこかに引っ掛けでもしたのかな?」
「え?」
左手を優しく掴まれほら、と言われる。
そこを見ると確かに何かに引っ掛けたような傷跡があった。
「あれ?いつの間に……」
痛くなかったのに怪我に気づけば途端に痛くなる。
血が滴り落ちるということは無いにしろ、ぷつりと滲み出てはいる。
傷口を抑えようとする蛍を土方が止め、持っていた布で左手を縛った。
「キツくないか?」
「はい。大丈夫です。ありがとうございます」
「後で切り傷に効く軟膏を塗ってやろう」
「いいんですか?助かります」
一つお礼を言ってまた部屋を探るとのそのそと猫が歩いてくるように尾形が蛍の元へとくる。
「尾形さん?」
「……怪我」
そう言われ反射的に尾形に左手を見せる。キツく縛ったからかほんの少しだけ血が滲んでいた。
「思ったより傷深かったんですかね、布に滲んじゃってる……」
はわわと慌てる勇作を背後に尾形は蛍の左手をとった。
その時、ガシャンと派手な音を立てて窓から何かが放り込まれる。
勢いよく燃えていく江渡貝邸を見て、蛍は咄嗟に動くことができなかった。
「チッ、やられた」
パッと離された手に舌打ち、それを聞いて新しい電池を入れてもらったおもちゃのように動き始める。
「家永さんっ!外に出たら撃たれます!出ないでください!」
「今外にチラッと軍服が見えた。数名に囲まれているようだ」
「贋物製作に繋がる証拠を隠滅しにきたか。蛍、家永を頼む」
そう言って尾形は二階へ、土方は玄関にウィンチェスターを向け、数発撃った。
「家永さん、向こうへ行きましょう」
「え、ええ」
煙を吸わないよう、口元を押さえながら移動する。
部屋に入ると家永はすぐに窓を開ける。
「軍人はいないですか?」
「いない……待ってください。軍帽が見えます」
蛍がチラリと緊張感と警戒心を持ちながら窓の外を覗く。
そしてふっと息を吐いた。
「杉元くんです」
そしてのしのしと牛山が近寄り、鉄格子をベリッと剥がした。
「牛山様っ!」
「どいてろ家永、蛍」
一歩後退ると杉元が弾丸の如く家の中に入る。
「杉元くん!二階に尾形さんがいるの!」
「尾形を助けてこいってか」
「……お願い」
「はぁ、わかったからそんな顔しないでくれ」
「ありがとう杉元くん」
「蛍、こっちに来い」
「う、うん」
牛山に抱えられ江渡貝邸を脱出する。
蛍を抱えた牛山がぎょっと驚く。
「えっ、なに?」
「嬢ちゃん軽すぎやしないか?」
「……えっ?」
「確かに、小鳥遊様は少々細めだと思います。まさか食事を抜いていらしているのですか?若い女性にはよくあることです」
「いえそんなっ!むしろいっぱい食べてます!ね、アシㇼパちゃん!」
「そうだな、蛍は燃費が悪いからって言ってよく食べるぞ。飯を抜いているのは見たことがない。しかも魚になると杉元とほとんど変わらない量を」
そこまで言って蛍は慌ててアシㇼパの口を塞ぐ。
自分から食べている、とは言ったものの軍人上がりの男とほとんど同じ量を食べていると言われて恥ずかしくなったのだろう。
耳がほんのりと赤くなっていた。
「あ、アシㇼパちゃん!そこまで言わなくていいかな!?」
「うふふ、そういうことなら安心ですわね。でもどうしてこんなに細いんでしょうか?」
「体質なのでは?母もそうでしたし」
「まあお母様も?」
「はい」
確かに蛍の記憶の中の母の腕は細かった。ふと母を思い出して蛍は顔をしかめてしまった。
江渡貝邸から離れ、安全な場所に移動する。
「蛍?」
「どうしたの?アシㇼパちゃん」
「……蛍、お前はいつもなにを見てなにを思っているんだ?」
「どういうこと?」
「いや、なんでもない。なんでもないけど、一つ約束してくれ」
「なあに」
「私たちを置いてどこかに行かないでくれ」
「やだな、置いていくにも私はどこにも行けないよ。むしろアシㇼパちゃんたちに置いていかれないように必死です」
「私たちが置いていくわけないだろう!」
「うん。そうだね、ごめんね。アシㇼパちゃん」
まだどこか府に落ちないアシㇼパだったが、これ以上なにを言っても蛍はのらりくらりと交わすのだろうと思い、もうなにも言わなかった。
二階に上がる杉元は人を殴る音が聞こえてその走る足を速めた。
階段を上がり切った部屋の中には押し倒されている尾形に殴る兵士がいた。
杉元は尾形を殴っていた兵士の後頭部を持っていた銃で思い切り殴る。
「なんだよ。お礼を言ってほしいのか?」
「お前が好きで助けたわけじゃねえよ、コウモリ野郎。蛍に頼まれたからだ」
「……蛍?」
蛍の名前を呟いたことに対して杉元は更に苛立った。
杉元は足早にその部屋を去り、土方を探すことにした。
一方残された尾形は一人疑問を抱えていた。
どうしてあいつは杉元に俺を助けるよう言ったんだ?
別に俺とあいつ、蛍とはこの間初めて会って面識がないはずだ。
なのに……なのにどうして……
ーーパアンッ
「っ……」
何考えこんでいるんだ。速く逃げないと。
「逃げるなら今しかない!!急げ!」
焼けた家の臭いに生臭い血の臭い。
それに顔をしかめながら尾形は外に逃げる。
蛍は最初キロランケに着いて行こうと思ったが尾形に「お前も来い」と言われたためキロランケたちと炭鉱へは行けなかった。
「どうだ?見つかったか?」
「あ、いえ、なにも……」
土方にそう声をかけられ首を横に振り何も無いと答える蛍
「そうか……ん?」
「どうかしましたか?」
「どこかに引っ掛けでもしたのかな?」
「え?」
左手を優しく掴まれほら、と言われる。
そこを見ると確かに何かに引っ掛けたような傷跡があった。
「あれ?いつの間に……」
痛くなかったのに怪我に気づけば途端に痛くなる。
血が滴り落ちるということは無いにしろ、ぷつりと滲み出てはいる。
傷口を抑えようとする蛍を土方が止め、持っていた布で左手を縛った。
「キツくないか?」
「はい。大丈夫です。ありがとうございます」
「後で切り傷に効く軟膏を塗ってやろう」
「いいんですか?助かります」
一つお礼を言ってまた部屋を探るとのそのそと猫が歩いてくるように尾形が蛍の元へとくる。
「尾形さん?」
「……怪我」
そう言われ反射的に尾形に左手を見せる。キツく縛ったからかほんの少しだけ血が滲んでいた。
「思ったより傷深かったんですかね、布に滲んじゃってる……」
はわわと慌てる勇作を背後に尾形は蛍の左手をとった。
その時、ガシャンと派手な音を立てて窓から何かが放り込まれる。
勢いよく燃えていく江渡貝邸を見て、蛍は咄嗟に動くことができなかった。
「チッ、やられた」
パッと離された手に舌打ち、それを聞いて新しい電池を入れてもらったおもちゃのように動き始める。
「家永さんっ!外に出たら撃たれます!出ないでください!」
「今外にチラッと軍服が見えた。数名に囲まれているようだ」
「贋物製作に繋がる証拠を隠滅しにきたか。蛍、家永を頼む」
そう言って尾形は二階へ、土方は玄関にウィンチェスターを向け、数発撃った。
「家永さん、向こうへ行きましょう」
「え、ええ」
煙を吸わないよう、口元を押さえながら移動する。
部屋に入ると家永はすぐに窓を開ける。
「軍人はいないですか?」
「いない……待ってください。軍帽が見えます」
蛍がチラリと緊張感と警戒心を持ちながら窓の外を覗く。
そしてふっと息を吐いた。
「杉元くんです」
そしてのしのしと牛山が近寄り、鉄格子をベリッと剥がした。
「牛山様っ!」
「どいてろ家永、蛍」
一歩後退ると杉元が弾丸の如く家の中に入る。
「杉元くん!二階に尾形さんがいるの!」
「尾形を助けてこいってか」
「……お願い」
「はぁ、わかったからそんな顔しないでくれ」
「ありがとう杉元くん」
「蛍、こっちに来い」
「う、うん」
牛山に抱えられ江渡貝邸を脱出する。
蛍を抱えた牛山がぎょっと驚く。
「えっ、なに?」
「嬢ちゃん軽すぎやしないか?」
「……えっ?」
「確かに、小鳥遊様は少々細めだと思います。まさか食事を抜いていらしているのですか?若い女性にはよくあることです」
「いえそんなっ!むしろいっぱい食べてます!ね、アシㇼパちゃん!」
「そうだな、蛍は燃費が悪いからって言ってよく食べるぞ。飯を抜いているのは見たことがない。しかも魚になると杉元とほとんど変わらない量を」
そこまで言って蛍は慌ててアシㇼパの口を塞ぐ。
自分から食べている、とは言ったものの軍人上がりの男とほとんど同じ量を食べていると言われて恥ずかしくなったのだろう。
耳がほんのりと赤くなっていた。
「あ、アシㇼパちゃん!そこまで言わなくていいかな!?」
「うふふ、そういうことなら安心ですわね。でもどうしてこんなに細いんでしょうか?」
「体質なのでは?母もそうでしたし」
「まあお母様も?」
「はい」
確かに蛍の記憶の中の母の腕は細かった。ふと母を思い出して蛍は顔をしかめてしまった。
江渡貝邸から離れ、安全な場所に移動する。
「蛍?」
「どうしたの?アシㇼパちゃん」
「……蛍、お前はいつもなにを見てなにを思っているんだ?」
「どういうこと?」
「いや、なんでもない。なんでもないけど、一つ約束してくれ」
「なあに」
「私たちを置いてどこかに行かないでくれ」
「やだな、置いていくにも私はどこにも行けないよ。むしろアシㇼパちゃんたちに置いていかれないように必死です」
「私たちが置いていくわけないだろう!」
「うん。そうだね、ごめんね。アシㇼパちゃん」
まだどこか府に落ちないアシㇼパだったが、これ以上なにを言っても蛍はのらりくらりと交わすのだろうと思い、もうなにも言わなかった。
二階に上がる杉元は人を殴る音が聞こえてその走る足を速めた。
階段を上がり切った部屋の中には押し倒されている尾形に殴る兵士がいた。
杉元は尾形を殴っていた兵士の後頭部を持っていた銃で思い切り殴る。
「なんだよ。お礼を言ってほしいのか?」
「お前が好きで助けたわけじゃねえよ、コウモリ野郎。蛍に頼まれたからだ」
「……蛍?」
蛍の名前を呟いたことに対して杉元は更に苛立った。
杉元は足早にその部屋を去り、土方を探すことにした。
一方残された尾形は一人疑問を抱えていた。
どうしてあいつは杉元に俺を助けるよう言ったんだ?
別に俺とあいつ、蛍とはこの間初めて会って面識がないはずだ。
なのに……なのにどうして……
ーーパアンッ
「っ……」
何考えこんでいるんだ。速く逃げないと。
「逃げるなら今しかない!!急げ!」
焼けた家の臭いに生臭い血の臭い。
それに顔をしかめながら尾形は外に逃げる。
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