夕張。赤毛の胆嚢を売っていると薬売りはナマエとアシㇼパを人のよさそうな青年とアイヌの子供、という認識をしていた。


「一匁これくらいで、こんなもんかな？……だめ？安いって？あのねえ嬢ちゃん方、こういうもんは普通顔なじみの猟師からしか買わねえよ？買い取ってもらえるだけでも感謝しなよ」

「……人の足元見て楽しいですか？」

「え？」

「楽しいですか？」


ナマエがもう一度圧をかけるように言うと薬売りは一歩たじろいだ。さらにそれを杉元らがゆする。
結果的に言うとヒグマの胆嚢は普通より少し高めに売れた。
ナマエもこれにはにっこりである。
川に移動し、アシㇼパと杉元はきゃっきゃと子供のように遊び、早々に役立たず扱いされた白石もそっちに混ざる。


「キロランケさん！取れました！けどかなり気持ち悪い……」


ナマエの獲ったカワヤツメ、ヤツメウナギの口はかなり気持ちが悪い。(興味本位で調べないことをお勧めする)
うぇーっと言いながらキロランケにヤツメウナギを渡した時白石がざぶんっと派手に転ぶ。


「白石さんだいじょう……頭にヤツメウナギついてる……」

「え～？うそ！？気持ち悪～い」

「お！白石も捕まえたか、じゃあそろそろ飯にしよう」


獲ったヤツメウナギをうな重にして食べる。


「美味しいなあ。やっぱり白米が一番だよね」

「そうだなぁ」

「軟骨がコリコリしてる」

「見た目はウナギに似てるけどヤツメは骨が全部軟骨なんだよな」

「アイヌの伝説にこういう話がある」


神様が獲ったクマを解体して石狩川を舟で運んでいたら転覆してしまい、流されたヒグマの腸がウクリペになった。


「だからヤツメウナギには骨がないんだって」

「白石も体の関節がぐにゃぐにゃなのはヒグマのチンポが白石になったからかもな！」

「やだあ！アシㇼパさん」

「女の子がそう軽々しく下ネタ言わないの……」

「食ったら情報収集にまた街に行こう」


キロランケがそう言って全員少しだけ食べるのを早めた。


「あ、たかな……ナマエ」

「んぐッ、けほっ、す、すぎ、え？」


急に名前を呼ばれたナマエは驚いて食べていたヤツメウナギが気管に入って咳き込んでしまった。


「え？ごめん」

「こっちこそ、ごめん……にしても何で急に名前呼び？」

「結構一緒にいるのにいつまでも名字呼びはなんだか他人行儀かなって」

「え、俺は？」

「白石は白石だろ」

「クーン……」

「で、だめだった？」

「だめじゃないよ、びっくりしただけ」


そう笑って残ったご飯を食べるナマエは全員の目に可愛らしく映った。


「私も名前で呼びたい！」

「アシㇼパちゃんも？いいよ」

「ナマエ！」

「なあに？」

「呼んだだけだ」


ふふふと笑いあうナマエとアシㇼパ


「杉元見て？ここすげぇホンワカする」

「え～かわいい～」

「こりゃ和むなぁ」


つかの間の休息である。