二章
夢小説設定
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長距離を走ったせいで痛んでしまった喉を押さえながらも逃げ続けた。
しばらく走っていると白石が見えた。
「白石だ!クジラが打ち上がったんだ。あの舟で逃げよう!がんばれッ!小鳥遊も大丈夫か?」
「大丈夫、まだ走れる」
「白石!第七師団が来るぞ、舟に乗れッ」
白石が走る二人に気づく。
すると表情をパッと変え叫んだ。
「杉元後ろーッ!そいつが辺見和雄だぞッ!」
玉切り包丁を振り上げた辺見の左腕に矢が刺さった。
杉元も一瞬にして態度を変え辺見を刺した。
「小鳥遊は先に白石のとこに行ってて」
「大丈夫なの!?」
「大丈夫だから、早く」
腑に落ちない顔のままナマエは走り出す。後ろで二人が殺しあう音を聞きながらも振り返るのが怖くて白石の方へと走った。
好奇心に似た何かに負けてちらっと後ろを振り返ると辺見がシャチに引きずり込まれていた。
「えーッ!?」
「なんだこりゃ!!」
「レプンカムイ、沖にいる神だ!」
「みんな舟に乗れ!入れ墨がシャチに喰われちまう」
四人は舟に乗りこんだ。アシㇼパが船頭に立っていた。
「辺見和雄を取り返すぞ」
「どうやって!」
「レプンカムイが人を襲うなんて、本当は鯨を追ってこの時期集まってくる」
「シャチが辺見をブン投げてる」
「なにやってるんだ?」
「ヒグマのリコシノッ(投げ上げ)と同じようなものかも」
「子供に狩りを教えるとか、獲物の抵抗を完全になくさせる、みたいな説があるから……多分今回の場合は後者かな。辺見が抵抗しないようにしているんだと思う」
「ッ第七師団だ!アイヌの舟を奪って追ってきた!」
「何のつもりにしてもシャチがすぐ食わねえってんなら、このスキに取り戻すしかねえ!」
杉元はおもむろに服を脱ぎ始める。
ナマエは思わず手で目を覆ったが、もう見てしまった。
「ちくしょう、このクソ冷たい海に飛び込むのかッ、オイ止まるなよ。俺の心臓ッ!アシㇼパさん見ないでッ!小鳥遊も!」
「言うの遅いよぉ……」
ドボンッと杉元は海に潜り辺見を救出する。
白石とナマエで二人を舟に上げる。
「アシㇼパちゃん?」
アシㇼパの投げた銛はシャチに刺さり、クジラの時のように勢いよく引っ張られた。
「引っ張られるぞっ!つかまれ!」
「このまま第七師団を撒いてやろうっ」
「お願いだから服着て……」
真っ赤な顔でずっと手で顔を覆うナマエに謝りながら杉元は服を着た。
しばらくして第七師団を撒いたころ白石が海を見る。
「この白く染まった海水、全部ニシンの精子だぜ」
「精子?」
「ニシンのメスが海草とかに卵を産み付けてオスが精子をかけるんだ」
「精子??」
「アシㇼパちゃん、しーっ」
「ん、いいものが流れてきたぞ。高級食材が」
「子持ち昆布だ」
お腹空いたな~と白石がぼやく。
ナマエも燃費が悪いため、お腹がくるる、と鳴った。
辺見の皮を握りしめる杉元を見て白石は第七師団よりもおっかない存在だと思った。
「舟が来る。他のコタンの人たちが私たちを見つけたんだ」
「……!コンルさんがいる!」
「よくわかったな」
「知人はシルエットでわかります」
岸に上がるとコンルはナマエの方に駆け寄ってきた。
「無事でよかった、杉元たちに着いていけと言ったのは俺だがこんな危ない目に遭うなら……いや、ナマエは強いからな」
「ありがとうコンルさん、心配させてごめんなさい」
「いいんだ。怪我一つしていないみたいだしな。やっぱり強い子だ」
にぱ、と笑うナマエの頭をいつものようにわしゃわしゃと雑に撫でるコンル
そして空腹を満たすためにクジラを揚げて食べることにした。
「クジラの竜田揚げだ」
「竜田揚げうま……」
「は、はふ、はふはふ……はちッ……はちいッ」
「猫舌……」
「うんうん、いけるぞこれ!」
「下味がうまくいったな!それに動物の油で揚げたから外がパリパリだ」
「ほっぺた落っこちそう」
「アシㇼパちゃん食べないの?」
「このシャチは人を殺した悪い神だから食べられない」
「アシㇼパさん、辺見和雄に致命傷を負わせたのは俺だ。俺が殺したんだ。だからそのシャチは」
「そうだな」
それを聞くなりアシㇼパはばくばくと竜田揚げを食べた。
食べ終わり、ナマエはコンルと別れなくてはならなくなった。
コンルと離れるのは寂しかったがコンルは出発するときにちゃんと伝えた。
「ナマエ、これやる」
コンルはナマエの首に襟巻、白いマフラーを巻いた。
その温かさがまるでコンル自身の温かさのように感じてじわりと目頭が熱くなる。
「お前の帰る場所は俺の家だと思っていいんだ。だからいつでも帰ってこい。俺の家はあそこだし、今はあの軍人さんが心配だからずっとあの家にいる」
「コンルさん……」
「だから行ってこい」
一週間程度の付き合いのはずなのに、この二人の関係性はとっくに知人なんて薄い関係ではなくなっていた。
まさに父と娘、完璧な親子だった。
しばらく走っていると白石が見えた。
「白石だ!クジラが打ち上がったんだ。あの舟で逃げよう!がんばれッ!小鳥遊も大丈夫か?」
「大丈夫、まだ走れる」
「白石!第七師団が来るぞ、舟に乗れッ」
白石が走る二人に気づく。
すると表情をパッと変え叫んだ。
「杉元後ろーッ!そいつが辺見和雄だぞッ!」
玉切り包丁を振り上げた辺見の左腕に矢が刺さった。
杉元も一瞬にして態度を変え辺見を刺した。
「小鳥遊は先に白石のとこに行ってて」
「大丈夫なの!?」
「大丈夫だから、早く」
腑に落ちない顔のままナマエは走り出す。後ろで二人が殺しあう音を聞きながらも振り返るのが怖くて白石の方へと走った。
好奇心に似た何かに負けてちらっと後ろを振り返ると辺見がシャチに引きずり込まれていた。
「えーッ!?」
「なんだこりゃ!!」
「レプンカムイ、沖にいる神だ!」
「みんな舟に乗れ!入れ墨がシャチに喰われちまう」
四人は舟に乗りこんだ。アシㇼパが船頭に立っていた。
「辺見和雄を取り返すぞ」
「どうやって!」
「レプンカムイが人を襲うなんて、本当は鯨を追ってこの時期集まってくる」
「シャチが辺見をブン投げてる」
「なにやってるんだ?」
「ヒグマのリコシノッ(投げ上げ)と同じようなものかも」
「子供に狩りを教えるとか、獲物の抵抗を完全になくさせる、みたいな説があるから……多分今回の場合は後者かな。辺見が抵抗しないようにしているんだと思う」
「ッ第七師団だ!アイヌの舟を奪って追ってきた!」
「何のつもりにしてもシャチがすぐ食わねえってんなら、このスキに取り戻すしかねえ!」
杉元はおもむろに服を脱ぎ始める。
ナマエは思わず手で目を覆ったが、もう見てしまった。
「ちくしょう、このクソ冷たい海に飛び込むのかッ、オイ止まるなよ。俺の心臓ッ!アシㇼパさん見ないでッ!小鳥遊も!」
「言うの遅いよぉ……」
ドボンッと杉元は海に潜り辺見を救出する。
白石とナマエで二人を舟に上げる。
「アシㇼパちゃん?」
アシㇼパの投げた銛はシャチに刺さり、クジラの時のように勢いよく引っ張られた。
「引っ張られるぞっ!つかまれ!」
「このまま第七師団を撒いてやろうっ」
「お願いだから服着て……」
真っ赤な顔でずっと手で顔を覆うナマエに謝りながら杉元は服を着た。
しばらくして第七師団を撒いたころ白石が海を見る。
「この白く染まった海水、全部ニシンの精子だぜ」
「精子?」
「ニシンのメスが海草とかに卵を産み付けてオスが精子をかけるんだ」
「精子??」
「アシㇼパちゃん、しーっ」
「ん、いいものが流れてきたぞ。高級食材が」
「子持ち昆布だ」
お腹空いたな~と白石がぼやく。
ナマエも燃費が悪いため、お腹がくるる、と鳴った。
辺見の皮を握りしめる杉元を見て白石は第七師団よりもおっかない存在だと思った。
「舟が来る。他のコタンの人たちが私たちを見つけたんだ」
「……!コンルさんがいる!」
「よくわかったな」
「知人はシルエットでわかります」
岸に上がるとコンルはナマエの方に駆け寄ってきた。
「無事でよかった、杉元たちに着いていけと言ったのは俺だがこんな危ない目に遭うなら……いや、ナマエは強いからな」
「ありがとうコンルさん、心配させてごめんなさい」
「いいんだ。怪我一つしていないみたいだしな。やっぱり強い子だ」
にぱ、と笑うナマエの頭をいつものようにわしゃわしゃと雑に撫でるコンル
そして空腹を満たすためにクジラを揚げて食べることにした。
「クジラの竜田揚げだ」
「竜田揚げうま……」
「は、はふ、はふはふ……はちッ……はちいッ」
「猫舌……」
「うんうん、いけるぞこれ!」
「下味がうまくいったな!それに動物の油で揚げたから外がパリパリだ」
「ほっぺた落っこちそう」
「アシㇼパちゃん食べないの?」
「このシャチは人を殺した悪い神だから食べられない」
「アシㇼパさん、辺見和雄に致命傷を負わせたのは俺だ。俺が殺したんだ。だからそのシャチは」
「そうだな」
それを聞くなりアシㇼパはばくばくと竜田揚げを食べた。
食べ終わり、ナマエはコンルと別れなくてはならなくなった。
コンルと離れるのは寂しかったがコンルは出発するときにちゃんと伝えた。
「ナマエ、これやる」
コンルはナマエの首に襟巻、白いマフラーを巻いた。
その温かさがまるでコンル自身の温かさのように感じてじわりと目頭が熱くなる。
「お前の帰る場所は俺の家だと思っていいんだ。だからいつでも帰ってこい。俺の家はあそこだし、今はあの軍人さんが心配だからずっとあの家にいる」
「コンルさん……」
「だから行ってこい」
一週間程度の付き合いのはずなのに、この二人の関係性はとっくに知人なんて薄い関係ではなくなっていた。
まさに父と娘、完璧な親子だった。