二章
夢小説設定
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「海?」
白石の半纏のほつれた部分を直し終えたナマエが首を傾げる。
ナマエが白石に半纏を返すとお礼の飴を渡しながらナマエの頭を撫でた。
「そう。辺見和雄っていう囚人が海にいるらしいんだ」
「海なら俺も行くぜ」
「コンルさんも行くんですか?」
「ああ、アシㇼパの叔父に呼ばれてんのよ」
「そうなんですね」
「よしっ、話も決まったし行こう!クジラを食べに!!」
「アシㇼパさん?」
「まさかアシㇼパちゃんクジラを食べたいだけなんじゃ……」
杉元とナマエが小さくため息をついたがアシㇼパを止める気はさらさらなかった。
海へ向かう途中、白石が辺見和雄について話した。
辺見はごく普通の男だったらしい。礼儀正しく人当たりが良くて、だから白石はすぐに打ち解けた。
だからこそ白石は看守から辺見の正体を聞いたときに震えた。
辺見にとって人殺しは息をするのと一緒だというのだ。
「一度聞いたことがある。どうしてそんなに殺したのか……奴は最初、自分でもわからないみたいで困っていたが、そのうちきっかけみたいなものを話してくれた」
辺見の弟が大きなイノシシに食い殺されたとき、辺見は絶望していく弟の目を思い出すたびに誰でもいいからぶっ殺したくなるのだと言う。
なんて恐ろしい男だとナマエは思った。そんな凶悪な囚人が他にもいると思うと自然と体がふるりと震えたが、自分も全くの非力ではない。少なくとも自分の倍以上の体のゴロツキを退治したことから、相手が相当の手練れでない限りどうにかできると思っていた。
だからといって高を括るような真似はしない、常に警戒していないと次はこっちがやられるとちゃんとわかっていたから。
「飲んだくれてるただのブタだと思った白石が金塊の手掛かりを持ってくるとはな。私の中で白石の地位はグッと上がってリュウのちょっと下だ」
「うれしいね」
ミャアミャアとウミネコが鳴いていた。
コンルを除く四人は海に着くなり揃ってジャンプをした。
「子供みたいにはしゃいでしまった…」
「楽しむことは悪い事じゃないぞ~小鳥遊~」
恥ずかしそうに顔を隠すナマエをアシㇼパが茶化す。
「沿岸に沿って行けば大規模なニシン漁場が点在している。陸揚げしたニシンをその場で加工するから漁師以外にも働いている人間が沢山いるはずだ」
「じゃあ辺見和雄はその人たちに紛れて働いてるかもしれないってわけか」
「アシㇼパ!コンル!」
「アチャポ(叔父さん)」
「お前たち良い時に来てくれた!早くこっちへ」
「え?」
全員がクジラを獲りに急いで舟に乗る。
コンルは白石の方に、ナマエは杉元の方の舟に乗り込んだ。
「急げ急げもっと漕ぐんだ杉元!」
「何で俺たちが……」
「あの船だ、間に合った」
「クジラは?」
「フンペ(クジラ)は潜ってる。でもそのうち息をするために上がってくる。姿を見せたらこのキテ(銛)を投げ飛ばす。二本あるから杉元が投げてみろ」
銛を渡された時、大きなクジラが顔を出した。
男たちが一斉に銛を投げる、杉元の投げた銛が刺さったクジラはグングンとすごい勢いで引っ張る。
「振り落とされるな!この時期の海でも死ぬには十分な冷たさだぞ!」
ナマエも振り落とされないよう舟の縁をしっかりと掴む。
クジラはそのまま漁船の方へと進んでいってしまった。
「ああやばいッ、クジラがあの漁船たちに向かってる。オーイ!突っ込むぞ、気をつけろ!」
注意をしても漁師たちには声が上手く届かず、結局漁船の方へと突っ込んでしまい、船から一人の漁師が落ちた。
「漁師が落ちた!」
「助けよう!あっちの舟はデカいから岸まで戻るのに時間がかかる」
「早く火に当てて温めないと低体温症で死んじゃう」
「わかった、綱を切る」
「白石!頼んだぞ、クジラの分け前をしっかり貰ってこい!」
「えええええっ」
「コンルさんもいるし大丈夫だと思います!頑張ってください!」
そして縄を切った後落ちた漁師を引っ張り上げる。
引っ張り上げた後杉元と蛍で全力で舟を漕ぐ。
「急げ!岸の漁場にはニシン加工用の焚火があるはずだ」
「ありがとう……ありがとう……海に落ちて死ぬなんて、こんな死に方絶対イヤだ。こんなつまらない死に方……」
ナマエの背筋に嫌な汗が伝う。
助かってよかったとは思うけれど、男の言ったことに疑問を覚えたからだ。
海に落ちて死ぬのはつまらないからイヤだって…?
男が口走った言葉を杉元に伝えようとしたが、それが何故だか恐ろしいことに感じて、開きかけた口を閉じて黙って舟を漕ぐことに集中した。
白石の半纏のほつれた部分を直し終えたナマエが首を傾げる。
ナマエが白石に半纏を返すとお礼の飴を渡しながらナマエの頭を撫でた。
「そう。辺見和雄っていう囚人が海にいるらしいんだ」
「海なら俺も行くぜ」
「コンルさんも行くんですか?」
「ああ、アシㇼパの叔父に呼ばれてんのよ」
「そうなんですね」
「よしっ、話も決まったし行こう!クジラを食べに!!」
「アシㇼパさん?」
「まさかアシㇼパちゃんクジラを食べたいだけなんじゃ……」
杉元とナマエが小さくため息をついたがアシㇼパを止める気はさらさらなかった。
海へ向かう途中、白石が辺見和雄について話した。
辺見はごく普通の男だったらしい。礼儀正しく人当たりが良くて、だから白石はすぐに打ち解けた。
だからこそ白石は看守から辺見の正体を聞いたときに震えた。
辺見にとって人殺しは息をするのと一緒だというのだ。
「一度聞いたことがある。どうしてそんなに殺したのか……奴は最初、自分でもわからないみたいで困っていたが、そのうちきっかけみたいなものを話してくれた」
辺見の弟が大きなイノシシに食い殺されたとき、辺見は絶望していく弟の目を思い出すたびに誰でもいいからぶっ殺したくなるのだと言う。
なんて恐ろしい男だとナマエは思った。そんな凶悪な囚人が他にもいると思うと自然と体がふるりと震えたが、自分も全くの非力ではない。少なくとも自分の倍以上の体のゴロツキを退治したことから、相手が相当の手練れでない限りどうにかできると思っていた。
だからといって高を括るような真似はしない、常に警戒していないと次はこっちがやられるとちゃんとわかっていたから。
「飲んだくれてるただのブタだと思った白石が金塊の手掛かりを持ってくるとはな。私の中で白石の地位はグッと上がってリュウのちょっと下だ」
「うれしいね」
ミャアミャアとウミネコが鳴いていた。
コンルを除く四人は海に着くなり揃ってジャンプをした。
「子供みたいにはしゃいでしまった…」
「楽しむことは悪い事じゃないぞ~小鳥遊~」
恥ずかしそうに顔を隠すナマエをアシㇼパが茶化す。
「沿岸に沿って行けば大規模なニシン漁場が点在している。陸揚げしたニシンをその場で加工するから漁師以外にも働いている人間が沢山いるはずだ」
「じゃあ辺見和雄はその人たちに紛れて働いてるかもしれないってわけか」
「アシㇼパ!コンル!」
「アチャポ(叔父さん)」
「お前たち良い時に来てくれた!早くこっちへ」
「え?」
全員がクジラを獲りに急いで舟に乗る。
コンルは白石の方に、ナマエは杉元の方の舟に乗り込んだ。
「急げ急げもっと漕ぐんだ杉元!」
「何で俺たちが……」
「あの船だ、間に合った」
「クジラは?」
「フンペ(クジラ)は潜ってる。でもそのうち息をするために上がってくる。姿を見せたらこのキテ(銛)を投げ飛ばす。二本あるから杉元が投げてみろ」
銛を渡された時、大きなクジラが顔を出した。
男たちが一斉に銛を投げる、杉元の投げた銛が刺さったクジラはグングンとすごい勢いで引っ張る。
「振り落とされるな!この時期の海でも死ぬには十分な冷たさだぞ!」
ナマエも振り落とされないよう舟の縁をしっかりと掴む。
クジラはそのまま漁船の方へと進んでいってしまった。
「ああやばいッ、クジラがあの漁船たちに向かってる。オーイ!突っ込むぞ、気をつけろ!」
注意をしても漁師たちには声が上手く届かず、結局漁船の方へと突っ込んでしまい、船から一人の漁師が落ちた。
「漁師が落ちた!」
「助けよう!あっちの舟はデカいから岸まで戻るのに時間がかかる」
「早く火に当てて温めないと低体温症で死んじゃう」
「わかった、綱を切る」
「白石!頼んだぞ、クジラの分け前をしっかり貰ってこい!」
「えええええっ」
「コンルさんもいるし大丈夫だと思います!頑張ってください!」
そして縄を切った後落ちた漁師を引っ張り上げる。
引っ張り上げた後杉元と蛍で全力で舟を漕ぐ。
「急げ!岸の漁場にはニシン加工用の焚火があるはずだ」
「ありがとう……ありがとう……海に落ちて死ぬなんて、こんな死に方絶対イヤだ。こんなつまらない死に方……」
ナマエの背筋に嫌な汗が伝う。
助かってよかったとは思うけれど、男の言ったことに疑問を覚えたからだ。
海に落ちて死ぬのはつまらないからイヤだって…?
男が口走った言葉を杉元に伝えようとしたが、それが何故だか恐ろしいことに感じて、開きかけた口を閉じて黙って舟を漕ぐことに集中した。