一章
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ホームシックに浸るナマエの目の下には薄らと隈ができてしまっていた。
「朝食だぞ……小鳥遊、お前寝てないのか?」
「はい、なんだか昨日は寝付けなくて……」
「そうか。飯は食べられそうか?」
「はい、食べられると思います」
ちまちまと食べるナマエに月島は熱でもあるんじゃないかと心配したが、顔は赤くないし、試しに額を触っても特に熱さは感じられなかった。
「悩みでもあるのか?……ってあるに決まってるよな。こっちはお前を軟禁しているわけなんだから」
「あ、その、昨日の騒ぎがどうしても気になってしまっただけなんです」
ナマエのそれが明らかな口から出まかせだということは月島も何となくわかっていたが、深堀するつもりは毛頭なかった。
「金塊の手掛かりを持つ奴を捕らえたんだ」
「金塊?」
「……中尉に聞かされていなかったのか?」
「金塊……あ、アイヌのやつ、ですか?」
「そうだ」
「私てっきり作り話か何かかと、あれって存在するんですか?」
大量の金塊、それが存在すると知った時顔はさあっと青ざめる。
「不安にさせるつもりはなかった」
「大丈夫です」
さっき自分で言っておいてなんだが、月島は頭の上にはてなを浮かべる。
何故鶴見は小鳥遊を傍に置いておくのだろうか。ただ未来から来たという馬鹿らしい話を万が一に信じているとしてもこの女は金塊の手掛かりなんて一ミリも知らない。
まさか惹かれた…?いやいや、それは天と地が引っくり返ったとてないだろう。
小さな手で小さな口に食事を運ぶナマエを見ながら月島は悶々と考える。
「今日も美味しかったです。ご馳走様でした」
彼女は具合が悪いと言いつつも食事を残したことはない。
彼女曰く出されたものは必ず食べる主義だとか。
…具合が悪いのなら寝ていればいいのに。どうしてこんな幼い少女が気を使っているんだろう。
「すまん、小鳥遊」
「え?」
「あ、ああ、いや、なんでもない。何かあったらすぐに呼んでくれて構わないからな」
「はい」
二人分の食器が乗った盆を持って月島は部屋を出た。
そんなやり取りの数時間後、大きな音でナマエは軽い睡眠から起きて慌てて部屋の外に出た。
もしかしたら逃げられるかもしれない。そんな淡い期待を抱きながら。
「月島さん?誰か、誰かいませんか……?」
「!、何外出てやがる!」
「お、大きな音に驚いてしまって、逃げるつもりじゃなかったんです」
「ならいいんだけどよ、音の正体は今何人かが見に行った」
「そうですか……」
「危ねぇから部屋にいろ」
兵士にそう言われこくこくと首を縦に振って大人しく部屋に戻る。
少しして別の兵士がナマエの部屋に入ってきた。
「どうかしましたか?」
「何かあっては困ると鶴見中尉殿のいる部屋に移動しろとのことだ」
鶴見の近くに移動するということは確実に逃げられないということじゃないか。
ナマエは震えたため息を吐いた。
兵士に案内された部屋には鶴見がいて、ナマエは鶴見の向かいに座らされた。
鶴見の視界内にいるとどうも落ち着かない。何度も手を組みなおす。
「コーヒーは嫌いかな?」
「嫌いじゃないです。いただきます……」
熱いコーヒーをふうふうと冷ましながらゆっくりと飲む。
「苦っ」
その声を聞いて鶴見は微笑みながらナマエのコーヒーにミルクを入れる。
お礼を言って再度飲むとまろやかになったコーヒーはさっきよりずっと飲みやすくなっていた。
「月島軍曹から聞いた、寝不足らしいな。小鳥遊」
「ええ、昨日の騒動が少し気になっていて、もしかしてさっきの音は捕まえた人が暴れているんですか?」
「多分な。私も随分厄介な男を捕まえてしまったという自覚はあるんだがね。でもあれも重要な手がかりだ。逃がしはしない」
返事の言葉がわからないナマエは苦し紛れにコーヒーを飲む。
――ヒヒィン
「馬の鳴き声ですね」
「野犬か何かに目をつけられてしまったか?」
「そうかもしれませんね」
しばらく鶴見とナマエは二人きりで話していた。鶴見の穏やかな話口調に自然と緊張はゆるゆると解かれていた。
ナマエのカップのコーヒーが丁度無くなった時部屋に慌てて兵士が入ってくる。
もちろんナマエも着いてくるよう鶴見に言われる。
「扉を開けた時にはすでに中はあの有様で」
二階堂洋平が死んだ。
近くにいる捕らえられた傷だらけの男も腸がずるりと出てきていてまさに瀕死状態だった。その場にいる人間がみんな思ったことだろう。
「まさに風口の蝋燭だな、杉元……」
「助けろ、刺青人皮でも何でもくれてやる」
ナマエは鼻を押さえ、ひたすらに込み上げてくる吐き気を抑え込んでいた。
「朝食だぞ……小鳥遊、お前寝てないのか?」
「はい、なんだか昨日は寝付けなくて……」
「そうか。飯は食べられそうか?」
「はい、食べられると思います」
ちまちまと食べるナマエに月島は熱でもあるんじゃないかと心配したが、顔は赤くないし、試しに額を触っても特に熱さは感じられなかった。
「悩みでもあるのか?……ってあるに決まってるよな。こっちはお前を軟禁しているわけなんだから」
「あ、その、昨日の騒ぎがどうしても気になってしまっただけなんです」
ナマエのそれが明らかな口から出まかせだということは月島も何となくわかっていたが、深堀するつもりは毛頭なかった。
「金塊の手掛かりを持つ奴を捕らえたんだ」
「金塊?」
「……中尉に聞かされていなかったのか?」
「金塊……あ、アイヌのやつ、ですか?」
「そうだ」
「私てっきり作り話か何かかと、あれって存在するんですか?」
大量の金塊、それが存在すると知った時顔はさあっと青ざめる。
「不安にさせるつもりはなかった」
「大丈夫です」
さっき自分で言っておいてなんだが、月島は頭の上にはてなを浮かべる。
何故鶴見は小鳥遊を傍に置いておくのだろうか。ただ未来から来たという馬鹿らしい話を万が一に信じているとしてもこの女は金塊の手掛かりなんて一ミリも知らない。
まさか惹かれた…?いやいや、それは天と地が引っくり返ったとてないだろう。
小さな手で小さな口に食事を運ぶナマエを見ながら月島は悶々と考える。
「今日も美味しかったです。ご馳走様でした」
彼女は具合が悪いと言いつつも食事を残したことはない。
彼女曰く出されたものは必ず食べる主義だとか。
…具合が悪いのなら寝ていればいいのに。どうしてこんな幼い少女が気を使っているんだろう。
「すまん、小鳥遊」
「え?」
「あ、ああ、いや、なんでもない。何かあったらすぐに呼んでくれて構わないからな」
「はい」
二人分の食器が乗った盆を持って月島は部屋を出た。
そんなやり取りの数時間後、大きな音でナマエは軽い睡眠から起きて慌てて部屋の外に出た。
もしかしたら逃げられるかもしれない。そんな淡い期待を抱きながら。
「月島さん?誰か、誰かいませんか……?」
「!、何外出てやがる!」
「お、大きな音に驚いてしまって、逃げるつもりじゃなかったんです」
「ならいいんだけどよ、音の正体は今何人かが見に行った」
「そうですか……」
「危ねぇから部屋にいろ」
兵士にそう言われこくこくと首を縦に振って大人しく部屋に戻る。
少しして別の兵士がナマエの部屋に入ってきた。
「どうかしましたか?」
「何かあっては困ると鶴見中尉殿のいる部屋に移動しろとのことだ」
鶴見の近くに移動するということは確実に逃げられないということじゃないか。
ナマエは震えたため息を吐いた。
兵士に案内された部屋には鶴見がいて、ナマエは鶴見の向かいに座らされた。
鶴見の視界内にいるとどうも落ち着かない。何度も手を組みなおす。
「コーヒーは嫌いかな?」
「嫌いじゃないです。いただきます……」
熱いコーヒーをふうふうと冷ましながらゆっくりと飲む。
「苦っ」
その声を聞いて鶴見は微笑みながらナマエのコーヒーにミルクを入れる。
お礼を言って再度飲むとまろやかになったコーヒーはさっきよりずっと飲みやすくなっていた。
「月島軍曹から聞いた、寝不足らしいな。小鳥遊」
「ええ、昨日の騒動が少し気になっていて、もしかしてさっきの音は捕まえた人が暴れているんですか?」
「多分な。私も随分厄介な男を捕まえてしまったという自覚はあるんだがね。でもあれも重要な手がかりだ。逃がしはしない」
返事の言葉がわからないナマエは苦し紛れにコーヒーを飲む。
――ヒヒィン
「馬の鳴き声ですね」
「野犬か何かに目をつけられてしまったか?」
「そうかもしれませんね」
しばらく鶴見とナマエは二人きりで話していた。鶴見の穏やかな話口調に自然と緊張はゆるゆると解かれていた。
ナマエのカップのコーヒーが丁度無くなった時部屋に慌てて兵士が入ってくる。
もちろんナマエも着いてくるよう鶴見に言われる。
「扉を開けた時にはすでに中はあの有様で」
二階堂洋平が死んだ。
近くにいる捕らえられた傷だらけの男も腸がずるりと出てきていてまさに瀕死状態だった。その場にいる人間がみんな思ったことだろう。
「まさに風口の蝋燭だな、杉元……」
「助けろ、刺青人皮でも何でもくれてやる」
ナマエは鼻を押さえ、ひたすらに込み上げてくる吐き気を抑え込んでいた。