一章
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食事を食べ終えて少し経てば風呂が待っている。
来たばかりの時はこの時代の人間が毎日毎日風呂に入らないことを聞いて驚愕したナマエだったが第七師団に来てからは毎日入るということが叶っている点だけは助かっていた。
月島は仕事があるとのことで、見張りは二階堂という双子だった。
「忙しい中すみません」
「逃げられた方が面倒くさいからな、なあ洋平」
「ああ、そうだな浩平」
相も変わらず仲の良い双子を見て思わず笑みが零れる。
軍人という立場にいる二人だがこのまま二人が幸せでいてほしいなとさえ密かに心の中で願っていた。
頭を洗ってから体を洗う。そして湯船につかる。
お風呂にも人一人通れる程度の大きさの窓はあるが、服がない状態で逃げるのは倫理的にやばいと思い、踏みとどまっている。あくまで最終手段としてとってあるのだ。
良くて手拭い一枚で外に出るだなんてこと、出来れば一生したくないと蛍は思っている。
「本当にどうしよう」
大きなため息をつきながら用意した服に着替える。
今日はいつもより長く湯船につかっていたから逆上せたのだろうか。
「っ」
「大丈夫か?」
「長風呂も程々にしろよ」
「はい、すみません」
ふらつく足でどうにか戻ろうとするナマエを双子が両脇を支える。
それを見たナマエはまた蚊の鳴くような声ですみませんと謝るのだ。
早くここから逃げ出さなければ、精神がだいぶ参っている。
心の中で呪文のように逃げたい、逃げ出したい、と唱えているナマエの精神は本当にやばい状態であった。
数日胃がぐるぐるするような気色悪い感覚に悩まされながら部屋で一人静かにしていると兵舎がかなり騒がしかった。
その騒がしさがどうにも不気味に思えたナマエは扉から顔を出した。
「小鳥遊!」
「つ、月島さん、騒がしいようですが何かあったんですか?」
「ああ、ちょっとな。危ないから絶対に部屋から出るな、いいな?」
「わかりました」
凄む月島に押され、頷く。
騒ぎは日が落ちるにつれ静かになっていき、二階堂兄弟の片割れ、浩平の方が夕食を運びに来る。
「いつもは二人で来るのに、洋平さんはお仕事ですか?」
「そう、洋平は今別の奴の見張りをやってる」
「別の奴…昼間騒がしかったのはそのせいですか?」
「こっちまで響いてたのか?」
「え、ええ、まあ。割と聞こえてきましたよ」
「ふうん。あぁこれ、軍曹が小鳥遊が体調悪そうに見えたから勝手に雑炊にしたらしいんだけど、体調悪いの?」
「そう、ですね、少し胃の調子が悪いです」
「薬貰ってくるか?」
「そこまでじゃないから大丈夫ですよ」
野菜が多めの雑炊を口に運ぶ。
ふとナマエは浩平の方を向く。浩平はおかずの魚をつまんでいた。
「あの、前から気になっていたことを聞いてもいいですか?」
「内容による」
「軍とか全然関係ないです」
「ならいいよ」
「浩平さんと洋平さんってどっちが兄なんですか?」
「あー…俺の方がちょっと早く生まれた」
「ということは、浩平さんが兄?あ、あとに生まれた方が兄でしたっけ…?」
「そこんところ曖昧だから俺らはあんまり気にしてない」
「そういうものですか?」
「少なくとも俺らはそう」
こんな他愛もない話ができるほどの中になったのは、それだけナマエが第七師団の兵舎に囚われているということなのである。
月島軍曹を“月島さん”と呼ぶのに、二階堂兄弟をそれぞれ下の名前で呼ぶのはただ単に紛らわしいからである。
「食べ終わった?このまま風呂行く?」
「あ、そうします」
着替えを持って風呂場へと向かう途中の部屋に洋平が立っていた。
「洋平さんだ」
「浩平に小鳥遊、風呂か?」
「そう、今から連れていくとこ」
「洋平さん、手が少し腫れているように見えるけど大丈夫なんですか?」
「ん、ああ、大丈夫。大した傷じゃないから」
「そうですか、でもちゃんと手当はしてくださいね」
「わかってる」
謎にズキズキと痛む心臓を押さえながら風呂へと向かう。
ああ、ここにいなかったら今頃写真部のコンテストの写真を顧問と選んでいるところだったんだろうか。
お母さんのご飯が食べたい。見たいドラマもきっと沢山溜まっている。
「かえりたい……」
その言葉が風呂場に虚しく響いた。
来たばかりの時はこの時代の人間が毎日毎日風呂に入らないことを聞いて驚愕したナマエだったが第七師団に来てからは毎日入るということが叶っている点だけは助かっていた。
月島は仕事があるとのことで、見張りは二階堂という双子だった。
「忙しい中すみません」
「逃げられた方が面倒くさいからな、なあ洋平」
「ああ、そうだな浩平」
相も変わらず仲の良い双子を見て思わず笑みが零れる。
軍人という立場にいる二人だがこのまま二人が幸せでいてほしいなとさえ密かに心の中で願っていた。
頭を洗ってから体を洗う。そして湯船につかる。
お風呂にも人一人通れる程度の大きさの窓はあるが、服がない状態で逃げるのは倫理的にやばいと思い、踏みとどまっている。あくまで最終手段としてとってあるのだ。
良くて手拭い一枚で外に出るだなんてこと、出来れば一生したくないと蛍は思っている。
「本当にどうしよう」
大きなため息をつきながら用意した服に着替える。
今日はいつもより長く湯船につかっていたから逆上せたのだろうか。
「っ」
「大丈夫か?」
「長風呂も程々にしろよ」
「はい、すみません」
ふらつく足でどうにか戻ろうとするナマエを双子が両脇を支える。
それを見たナマエはまた蚊の鳴くような声ですみませんと謝るのだ。
早くここから逃げ出さなければ、精神がだいぶ参っている。
心の中で呪文のように逃げたい、逃げ出したい、と唱えているナマエの精神は本当にやばい状態であった。
数日胃がぐるぐるするような気色悪い感覚に悩まされながら部屋で一人静かにしていると兵舎がかなり騒がしかった。
その騒がしさがどうにも不気味に思えたナマエは扉から顔を出した。
「小鳥遊!」
「つ、月島さん、騒がしいようですが何かあったんですか?」
「ああ、ちょっとな。危ないから絶対に部屋から出るな、いいな?」
「わかりました」
凄む月島に押され、頷く。
騒ぎは日が落ちるにつれ静かになっていき、二階堂兄弟の片割れ、浩平の方が夕食を運びに来る。
「いつもは二人で来るのに、洋平さんはお仕事ですか?」
「そう、洋平は今別の奴の見張りをやってる」
「別の奴…昼間騒がしかったのはそのせいですか?」
「こっちまで響いてたのか?」
「え、ええ、まあ。割と聞こえてきましたよ」
「ふうん。あぁこれ、軍曹が小鳥遊が体調悪そうに見えたから勝手に雑炊にしたらしいんだけど、体調悪いの?」
「そう、ですね、少し胃の調子が悪いです」
「薬貰ってくるか?」
「そこまでじゃないから大丈夫ですよ」
野菜が多めの雑炊を口に運ぶ。
ふとナマエは浩平の方を向く。浩平はおかずの魚をつまんでいた。
「あの、前から気になっていたことを聞いてもいいですか?」
「内容による」
「軍とか全然関係ないです」
「ならいいよ」
「浩平さんと洋平さんってどっちが兄なんですか?」
「あー…俺の方がちょっと早く生まれた」
「ということは、浩平さんが兄?あ、あとに生まれた方が兄でしたっけ…?」
「そこんところ曖昧だから俺らはあんまり気にしてない」
「そういうものですか?」
「少なくとも俺らはそう」
こんな他愛もない話ができるほどの中になったのは、それだけナマエが第七師団の兵舎に囚われているということなのである。
月島軍曹を“月島さん”と呼ぶのに、二階堂兄弟をそれぞれ下の名前で呼ぶのはただ単に紛らわしいからである。
「食べ終わった?このまま風呂行く?」
「あ、そうします」
着替えを持って風呂場へと向かう途中の部屋に洋平が立っていた。
「洋平さんだ」
「浩平に小鳥遊、風呂か?」
「そう、今から連れていくとこ」
「洋平さん、手が少し腫れているように見えるけど大丈夫なんですか?」
「ん、ああ、大丈夫。大した傷じゃないから」
「そうですか、でもちゃんと手当はしてくださいね」
「わかってる」
謎にズキズキと痛む心臓を押さえながら風呂へと向かう。
ああ、ここにいなかったら今頃写真部のコンテストの写真を顧問と選んでいるところだったんだろうか。
お母さんのご飯が食べたい。見たいドラマもきっと沢山溜まっている。
「かえりたい……」
その言葉が風呂場に虚しく響いた。