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一章

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先ほどの会話の後、鶴見と月島は一度部屋から出ていってしまった。
ほっと息をついたのも束の間のこと、すぐに二人は戻ってくる。

ここでナマエはずっと鳴っていた警報の意味を知る。


「小鳥遊ナマエ、君をここ、第七師団で保護しよう」

「……え?まっ、待って」


あの夫婦に世話になっているからそれはいい。
そう言おうとしてやめる。自分はあの夫婦に世話にしかなっていない。ただ働いているだけならいいが、働いているうえにあそこに住まわせてもらっているのだ。
ならば、あの夫婦にこれ以上迷惑をかけるくらいならここに留まっていた方がいいのかもしれない、とも思った。


「どうしたのかな」

「な、なんでもないです」


何もできない無力なナマエは下唇を軽く噛んで下を向くしかなかった。
だがずっとここにいては目の前の鶴見によって自分自身が腐ってしまうことは本能的にわかっていた。


「月島、あの夫婦に説明しに行ってくれ」

「はい」

ナマエ、お前もついていくか?」

「いいえ、会ったら離れたくないと思ってしまいそうなので」

「そうか」


ニコリと笑う。
おかしい。ついさっきまで無害だった笑顔が今はこんなにも怖い。

ナマエはとある部屋に通される。
シンプルな部屋で窓もあるが、その窓には脱走対策のためか否か、鉄格子が嵌められていた。


「食事は俺たちが運ぶ、風呂の時は外に見張りをつける」

「はい」

「他にも何かあったら遠慮なく言ってくれ」

「ありがとうございます」


こんな状態でお礼を言うのはおかしい。
が、日本人の性かするりとお礼の言葉が喉元を過ぎて出る。


「……何も言わないのか?」

「何も、とは?」

「お前は半ば強制的にここに軟禁された様なものだ。抵抗するのが普通だろう」

「なんだかあの鶴見という人にはどんなに抵抗しても無駄な気がして」


ナマエはへらっと笑って月島の方を向いて話す。
その目はすっかり諦めているように月島には見えた。
それが哀れで、滑稽で、それでいてとても可哀想だった。


「相手が只の一般人なら私も逃げたりなんだりしたかもしれませんが、鶴見中尉からは簡単に逃げられそうに思えません。話してみて嫌というほどよくわかりました」


確かに、鶴見からは逃げられない。
それどころか彼に心酔し、信者のように彼を神の如く崇拝している人間すらいる。
本当に抵抗する気のない蛍を見てなんとも言えない気持ちになる月島。
けれどそんな彼女にかける言葉が見つからないためそのまま部屋を出た。


「……う、おえっ」


月島が部屋を出てすぐにその場に座り込み、得体の知れない気持ち悪さに吐きそうになる。
何でここにいるんだろう。どうして私なんだろう。
沢山の疑問に答えてくれる者はいない。ナマエはただ惨めに涙を流していた。
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