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眠りの森

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6. 灯りと食卓





「さあ、遠慮せずたくさん食べてください!」



小麦パン、サーモンリゾット、魚入りミルクスープ、それに野菜オムレツ。


テーブルに広げられた作り立ての料理たちの旨そうな香りと湯気で、部屋は充満していた。



「随分と豪勢だね。」



「ふふ、張り切っちゃいました。」



暖かいうちに、とルナは食事を勧めるが、
僕は警戒心を持っていた。


戦士として、素性の知らない他人が作った料理を何も考えず口に運ぶなんてことは…



「いっただっきまー…あちッ!」



訝しんでいる僕を他所に、ルナはさっさと先に食事を始めていた。



「なんだい、そそっかしいな。」



「このミルクスープ熱いですから、リーバル様も気を付けた方がいいです。あっ、パンを千切ってスープにつけて食べると美味しいんですよ!ほら、こうして…熱っ!」



やれやれと頭を振る。食事しているだけでこんなに危なっかしい奴もなかなかいない。


とりあえず、彼女が先に同じ料理を目の前で食べているのだから危険は無いだろう。
スープを一口掬い、口へ運ぶ。



「…へぇ、美味しいじゃないか。これ君が作ったんだよね。」



「美味しいですか?良かった。私、料理は結構好きなんです。おかわりもありますよ!足りなかったら、言ってくださいね。」



ルナの作る料理は、素朴で味わい深く、どれもとても美味しかった。
いつも軽食で済ませてしまうことを思うと、こんなちゃんとした食事を摂るのは久々だった。
こんな風に誰かと対面して食事を摂ること自体、久々だ。



「そうだ。君、武術はどこで会得したんだい?」



パンを千切りながら、ずっと気にかけていたことを彼女に尋ねる。



「立ち回りも完璧だったし、弓も剣も一通り使える様に見受けられた。日頃から特訓してるんだろうけど、それにしても常人ならざる戦闘能力だったからね。」



彼女は食器を置き、顎に手を添え考えた。



「うーん…武術は会得したわけでも特訓したわけでもないですね。実戦の積み重ね、かな。」



「天賦の才、ってわけ。」



恐ろしい奴もいたもんだ。
もし姫がルナと出会ったら、きっと今以上に自身の能力を嘆き悲しむことになっただろう。



「でも、剣や弓の使い方は両親が生きていた頃に教えてもらいました。何かあった時に自分の身を守れるのは自分しかいないから、って。それなりに厳しく指導されたので、武器の扱いには自信ありますよ。」



「それじゃ、君は今…」



「御覧の通り、この家に一人で暮らしています。ずっと。」



ルナは僕の顔を伺うと、慌ててわざと明るい声を出した。



「あっ、スープのお皿が空っぽですね!おかわりを注ぎましょうか。」



彼女の空元気に少し胸が痛んだ。
僕は一体、どんな顔をして彼女の話を聞いていたんだろう。



✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽





「ご馳走様。どれも旨かったよ。」



玄関先で、僕はルナに礼を言った。



「それなら良かったです。…リーバル様。せっかくのお話だったのに、お断りしてごめんなさい。」



「まだ気にしてたのか。別に構わないよ。おそらく君と姫の折り合いはあまり良くなさそうだし、断ってくれて良かったよ。」



夜も深い。サトリ山からリトの村までなかなかの距離だ。
いざ帰ろうという時に、ルナは目に見えてしゅんとしていた。



「あの…ええと…」



何かを言おうとしてはやめて、俯いて、まるで時間を稼いでいるよう―
堪えきれず、僕は笑ってしまう。



「僕が帰ってしまうのが寂しいんだろ?」



「えっ!ど、どうしてわかるんですか。」



「顔に書いてあるからね。もっとリーバル様と一緒にいたい、って。」



ルナはとっさに自分の顔を両手で覆い隠したが、真っ赤になっている耳までは隠しきれていなかった。
なんてからかい甲斐のある奴だろう。



「どうしても寂しくてたまらなくなったら、またリトの村へ来なよ。既に君の素性は知れているんだ。気兼ねはないだろ?」



「…そうします。」



ルナは顔を手で覆い隠したまま、指の隙間から僕のことを見つめていた。





外へ出ると三日月が浮かんでいた。
空へ飛び立ち、ルナの家を後にする。


さっき食べた料理で、腹部の真ん中あたりがやけに温かかった。





---to be continued---
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