眠りの森
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
5. 眠りの森
サトリ山の中腹に、ポツンと灯る一軒家を見つける。
「あれが私の家です。」
背越しに伝わる彼女の体温を感じながら、僕は妙な違和感のようなものを感じる。
リトの村で出会った時のルナと、
ボコブリンの巣窟にたった一人で乗り込み全滅させたルナと、
今こうして僕の背に顔を埋めて安心しきっているルナに思いを巡らす。
この目ではっきりと確かめたはずなのに、どうにも信じ難い。
『リトの村で幸せそうに笑っていたルナ』と、『魔物専属の狩人』を結び付けて考えようとしても、上手くいかない。整合性が取れない、というか、それは全く当てはまらないパズルのピースのようだった。
彼女が何者でもなければ良いのに―
僕はリトの村を去るルナの後姿を見ながら、そう思った。
そう願いながら、夜の森の上空を駆け巡った。
結果的に、僕は彼女の"仕事現場"を目撃してしまったわけだ。
予想通りではあったけど、僕の願いは呆気なく千切られた。
「送ってくださり、ありがとうございました。」
家の前に降り立つと、彼女は僕の背からそっと離れた。
「別に。…それにしても、こんな辺鄙なところに住んでいるなんて、君って徹底した変わり者だね。」
サトリ山の中腹というだけあって、彼女の家の周りには家どころか人の気配すら無い。もちろん、山には彼女の家以外何も無い。
どこへ行こうにも不便だろうし、人が好き好んで住むような場所とは思えなかった。
「あはは…いろいろこれにも事情がありまして。」
「事情だらけだな。」
困ったようにルナは笑っていた。
その顔はどこか寂しそうだ。
「まあ、せいぜい僕の誘いを断ったこと後悔しなよ。」
ルナに背を向け、飛び去ろうとしたその瞬間
「ま、待って!」
彼女は僕の翼をしっかりと握り、引き留めた。
「…何だよ。」
「あ…えっと…。」
ルナは僕の翼を握ったままで、目を泳がせている。言葉を探しているようだ。
さっきまで上空にいた寒さで、鼻の頭が赤くなっていた。
「送っていただいたお礼に、ご馳走させてくださいっ!」
ルナはもう片方の翼も手に取り、両手でギュ、と僕の両翼を握った。
瞳を大きくさせて、僕の目を見つめて。
迫るような勢いと視線に戸惑い、思わず彼女から目を反らす。
「…見返りを求めてやったことではないけど、丁度腹が減っているしね。君の誘いにのってあげるよ。」
そう言ったとたん、彼女の顔がパァッと明るくなった。
「ありがとうございます。このままお別れは、ちょっと寂しかったので…。すぐに準備します!さあ、上がってください。」
嬉しそうに戸を開け、僕を招き入れる。
『このままお別れは、寂しかったので』?
彼女の台詞を反芻すると、僕はますますわからなくなった。
狩人の目をしたルナも知っているし、
今僕の両翼を握りまっすぐに見つめてきたルナも知っている。
…本当のルナが何者なのかは、まだ理解出来ない様だ。
有耶無耶な気持ちのまま、ルナの家へ上がり込む。
ふと目に入った表札には
『眠りの森』
と書かれてあった。
---to be continued---
サトリ山の中腹に、ポツンと灯る一軒家を見つける。
「あれが私の家です。」
背越しに伝わる彼女の体温を感じながら、僕は妙な違和感のようなものを感じる。
リトの村で出会った時のルナと、
ボコブリンの巣窟にたった一人で乗り込み全滅させたルナと、
今こうして僕の背に顔を埋めて安心しきっているルナに思いを巡らす。
この目ではっきりと確かめたはずなのに、どうにも信じ難い。
『リトの村で幸せそうに笑っていたルナ』と、『魔物専属の狩人』を結び付けて考えようとしても、上手くいかない。整合性が取れない、というか、それは全く当てはまらないパズルのピースのようだった。
彼女が何者でもなければ良いのに―
僕はリトの村を去るルナの後姿を見ながら、そう思った。
そう願いながら、夜の森の上空を駆け巡った。
結果的に、僕は彼女の"仕事現場"を目撃してしまったわけだ。
予想通りではあったけど、僕の願いは呆気なく千切られた。
「送ってくださり、ありがとうございました。」
家の前に降り立つと、彼女は僕の背からそっと離れた。
「別に。…それにしても、こんな辺鄙なところに住んでいるなんて、君って徹底した変わり者だね。」
サトリ山の中腹というだけあって、彼女の家の周りには家どころか人の気配すら無い。もちろん、山には彼女の家以外何も無い。
どこへ行こうにも不便だろうし、人が好き好んで住むような場所とは思えなかった。
「あはは…いろいろこれにも事情がありまして。」
「事情だらけだな。」
困ったようにルナは笑っていた。
その顔はどこか寂しそうだ。
「まあ、せいぜい僕の誘いを断ったこと後悔しなよ。」
ルナに背を向け、飛び去ろうとしたその瞬間
「ま、待って!」
彼女は僕の翼をしっかりと握り、引き留めた。
「…何だよ。」
「あ…えっと…。」
ルナは僕の翼を握ったままで、目を泳がせている。言葉を探しているようだ。
さっきまで上空にいた寒さで、鼻の頭が赤くなっていた。
「送っていただいたお礼に、ご馳走させてくださいっ!」
ルナはもう片方の翼も手に取り、両手でギュ、と僕の両翼を握った。
瞳を大きくさせて、僕の目を見つめて。
迫るような勢いと視線に戸惑い、思わず彼女から目を反らす。
「…見返りを求めてやったことではないけど、丁度腹が減っているしね。君の誘いにのってあげるよ。」
そう言ったとたん、彼女の顔がパァッと明るくなった。
「ありがとうございます。このままお別れは、ちょっと寂しかったので…。すぐに準備します!さあ、上がってください。」
嬉しそうに戸を開け、僕を招き入れる。
『このままお別れは、寂しかったので』?
彼女の台詞を反芻すると、僕はますますわからなくなった。
狩人の目をしたルナも知っているし、
今僕の両翼を握りまっすぐに見つめてきたルナも知っている。
…本当のルナが何者なのかは、まだ理解出来ない様だ。
有耶無耶な気持ちのまま、ルナの家へ上がり込む。
ふと目に入った表札には
『眠りの森』
と書かれてあった。
---to be continued---