眠りの森
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4. ほとりの二人
私たちは川のほとりで薪に火を起こし、二人並んで座っていた。
炎に照らされた彼の横顔は不機嫌そうだ。
「まず、君の正体を教えてもらおうか。僕に嘘をついてまで隠し通していた”本当の君”をね。」
高圧的な物言いの彼に対して、私はおどけた口ぶりで
「嘘をついていたことは謝ります。でも、そんな怖い顔しないでくださいよぅ。」
と言ったが、彼は横目で私をじろりと睨みつけた。
眉間の皺がより深く刻まれる。
…どう頑張っても和やかな雰囲気にはならなさそうだ。
私はため息をつく。
「…正体も何も、リーバル様がお探しの人が私だっただけの話です。魔物の討伐を生業としている狩人、それが私です。」
彼は腕組をする。じっと何か考え込んでいる様子だ。
「私からもお聞きしますけど、リーバル様はなぜ私のことを探していたんですか?」
「君、ルピーに困ってるんだよね?」
質問返しにさらに質問返しされる。
「え?まあ…ルピーが必要なので、この仕事をしてはいますけど。」
「じゃあ好都合。君、ハイラル王家に仕えなよ。姫が直々に君をご指名だ。」
ハイラル王家に仕える?姫が私をご指名??
突拍子のない話に頭が追い付かない。どういうことだろう。
「いくら君でも、厄災ガノンの復活が差し迫っていることくらいは知っているだろう?いつか来たる対ガノンに向けて、姫は人員を一人でも多く募りたいと考えている。」
厄災ガノンー
一万年前の伝説について、私もよく両親から聞かされたものだ。
現在ハイラル王国が国を挙げてガノン討伐に向けた準備を整えていることも、もちろん知っている。
でもまさか、私にその一員になれだなんて。
「国に仕えれば生活は保障される。無謀に魔物を片端から倒して素材を集めて売るより、安定したルピーが多く供給されるだろう。どうだい?断る理由が無いように思うけど。」
リーバル様が私を探していた理由は、姫様から私を王家にスカウトするよう頼まれていたからだったのか。
なるほど、これで話の辻褄があった。
でも、
「…せっかくのお話ですけど、私はやっぱり今の仕事をやめるわけにはいかないです。」
決まり切っていた答えだったが、はっきり面と向かって断ると申し訳ない気持ちになった。
「もったいないことするねぇ。僕が直々にスカウトしてやったのに断るなんてさ。」
「わかってます。リーバル様から直接気にかけて貰えているのに、お断りしてしまうなんて…」
「悪いけど、君のことなんて微塵たりとも気にかけていないよ。」
ピシャリ、と言われたので、肩をすくめる。
「ま、君にも君の事情があるんだろう。今回の件は諦めるよう、姫に伝えるよ。」
彼はそう言うと、ゆっくり立ち上がった。
やけにすんなりと引き下がるんだな、と思った。
きっと彼自身は、姫様の提案にそこまで乗り気ではなかったのだろう。
「引き留めたりして悪かった。最後に家まで送ろう。」
「えっ。そんな、大丈夫ですよ。今夜は野宿の予定でしたし。」
私がそう言うと、彼は口を開けて呆れ果てたように首を横に振った。
「君さぁ、もうちょっと自分が女性であることを自覚しなよ。いくら強いからって、こんなところに寝っ転がってたら風邪を引くだろうし、魔物じゃなくても見知らぬヤツに寝込みを襲われでもしたら…ったく、腕っぷしだけ強くても、そういうことにまで考えが及ばないようじゃ、いつ野垂れ死んでもおかしくないよね。」
…私、お説教されてる?
「とにかく、こんなところに女性を一人置いていくのは僕の気が済まない。家を知られるのが嫌なら、近くの馬宿にでも送り届けるけど。」
「…じゃあ、お言葉に甘えて。私の家までよろしくお願いします。」
彼は私に背を向け、かがんでくれた。
私を背負って、送り届けてくれるということだろうか。
ドギマギしてたじろいでいると、
「遅い。もたもたしないでくれる。」
と睨まれてしまった。
私はおずおずと彼の背中に身を預ける。
柔らかくて、暖かくて、そして優しい。
ふわっと足元から重力が失われ、空中へ浮かび上がる。
「君の家はどの辺だい?」
「サトリ山の中腹です、お願いします。」
気にかけていないなんて、嘘だ。と思った。
彼の思いやりや優しさがじんわりと胸を温める。
こんな気持ちになったのは、いつ振りだろう。
私は気付かれないよう、そっと背の羽毛に頬をうずめた。
---To be continued---
私たちは川のほとりで薪に火を起こし、二人並んで座っていた。
炎に照らされた彼の横顔は不機嫌そうだ。
「まず、君の正体を教えてもらおうか。僕に嘘をついてまで隠し通していた”本当の君”をね。」
高圧的な物言いの彼に対して、私はおどけた口ぶりで
「嘘をついていたことは謝ります。でも、そんな怖い顔しないでくださいよぅ。」
と言ったが、彼は横目で私をじろりと睨みつけた。
眉間の皺がより深く刻まれる。
…どう頑張っても和やかな雰囲気にはならなさそうだ。
私はため息をつく。
「…正体も何も、リーバル様がお探しの人が私だっただけの話です。魔物の討伐を生業としている狩人、それが私です。」
彼は腕組をする。じっと何か考え込んでいる様子だ。
「私からもお聞きしますけど、リーバル様はなぜ私のことを探していたんですか?」
「君、ルピーに困ってるんだよね?」
質問返しにさらに質問返しされる。
「え?まあ…ルピーが必要なので、この仕事をしてはいますけど。」
「じゃあ好都合。君、ハイラル王家に仕えなよ。姫が直々に君をご指名だ。」
ハイラル王家に仕える?姫が私をご指名??
突拍子のない話に頭が追い付かない。どういうことだろう。
「いくら君でも、厄災ガノンの復活が差し迫っていることくらいは知っているだろう?いつか来たる対ガノンに向けて、姫は人員を一人でも多く募りたいと考えている。」
厄災ガノンー
一万年前の伝説について、私もよく両親から聞かされたものだ。
現在ハイラル王国が国を挙げてガノン討伐に向けた準備を整えていることも、もちろん知っている。
でもまさか、私にその一員になれだなんて。
「国に仕えれば生活は保障される。無謀に魔物を片端から倒して素材を集めて売るより、安定したルピーが多く供給されるだろう。どうだい?断る理由が無いように思うけど。」
リーバル様が私を探していた理由は、姫様から私を王家にスカウトするよう頼まれていたからだったのか。
なるほど、これで話の辻褄があった。
でも、
「…せっかくのお話ですけど、私はやっぱり今の仕事をやめるわけにはいかないです。」
決まり切っていた答えだったが、はっきり面と向かって断ると申し訳ない気持ちになった。
「もったいないことするねぇ。僕が直々にスカウトしてやったのに断るなんてさ。」
「わかってます。リーバル様から直接気にかけて貰えているのに、お断りしてしまうなんて…」
「悪いけど、君のことなんて微塵たりとも気にかけていないよ。」
ピシャリ、と言われたので、肩をすくめる。
「ま、君にも君の事情があるんだろう。今回の件は諦めるよう、姫に伝えるよ。」
彼はそう言うと、ゆっくり立ち上がった。
やけにすんなりと引き下がるんだな、と思った。
きっと彼自身は、姫様の提案にそこまで乗り気ではなかったのだろう。
「引き留めたりして悪かった。最後に家まで送ろう。」
「えっ。そんな、大丈夫ですよ。今夜は野宿の予定でしたし。」
私がそう言うと、彼は口を開けて呆れ果てたように首を横に振った。
「君さぁ、もうちょっと自分が女性であることを自覚しなよ。いくら強いからって、こんなところに寝っ転がってたら風邪を引くだろうし、魔物じゃなくても見知らぬヤツに寝込みを襲われでもしたら…ったく、腕っぷしだけ強くても、そういうことにまで考えが及ばないようじゃ、いつ野垂れ死んでもおかしくないよね。」
…私、お説教されてる?
「とにかく、こんなところに女性を一人置いていくのは僕の気が済まない。家を知られるのが嫌なら、近くの馬宿にでも送り届けるけど。」
「…じゃあ、お言葉に甘えて。私の家までよろしくお願いします。」
彼は私に背を向け、かがんでくれた。
私を背負って、送り届けてくれるということだろうか。
ドギマギしてたじろいでいると、
「遅い。もたもたしないでくれる。」
と睨まれてしまった。
私はおずおずと彼の背中に身を預ける。
柔らかくて、暖かくて、そして優しい。
ふわっと足元から重力が失われ、空中へ浮かび上がる。
「君の家はどの辺だい?」
「サトリ山の中腹です、お願いします。」
気にかけていないなんて、嘘だ。と思った。
彼の思いやりや優しさがじんわりと胸を温める。
こんな気持ちになったのは、いつ振りだろう。
私は気付かれないよう、そっと背の羽毛に頬をうずめた。
---To be continued---