眠りの森
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17. 綴り、向き合い、想う
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心変わりしたんだ。
ルナの正体を知って、仕事を手伝うようになって、
共に過ごす時間が増えるほど、ルナのことが見えてきた。
ひたむきで、自分をなおざりにしてまでも他人のために尽くし、
強くて、優しくて、寂しがりで―
ある時ふと、そんなルナの姿がハイラルの姫巫女と重なって見えた。
ルナと姫は、性格だって容姿だってまるで違う。
しかし、彼女たちには通ずるところがいくつかあると思う。
過去を乗り越え、前を向いて生きている様は、境遇は違えど二人に共通して言えることだ。
そこで、僕の中で一つの疑問が浮かんだ。
僕は姫にルナの存在を隠しているが、果たしてそれは両者にとって本当に良いことなのだろうか。
何をやっても能力の目覚めぬ姫がルナと出会えば、きっと落ち込むだろうと僕は思っていた。
本当にそうだろうか?
ルナは凄いヤツだ。一人で生計を立て仕事をやりくりする賢さと、どんなに強い魔物だって薙ぎ倒すほどの強さと、誰にも頼らず一人で戦う勇気を持ち合わせている。
ルナと出会い、ルナを知れば知るほど、彼女の人柄や才には底知れぬ原動力 のようなものがあると感じる。
ルナが頑張っているなら、ここで自分がへこたれるわけにはいかない。ルナが誰かの助けになっているなら、自分に出来ることをしよう…少なくとも、僕はそう思うようになった。
ルナと出会って、姫が劣等感に苛まれたとしても。
それ以上に、ルナという人を知ることに価値を見出すことだろう。
姫に限った話ではない。多くの人がルナから学ぶことはありあまるほどあるはずだ。
ルナは長い間一人で生きてきた。
たった僕一人でさえ、他者との繋がりが出来たことを心から喜んでいた。
姫と出会えば、否が応でも多くの人間と関係が築かれることだろう。
ルナの世界は広がり、多くの人に愛される。
それを望んでやらない理由なんてない。
明日、僕は姫に本当のことを話そうと思う。
今までついてきた嘘のこと。
魔物専属の狩人の正体。
眠りの森のこと。
ルナのことを。
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―日記を閉じ、僕は深呼吸する。
カンテラの炎が手元を照らす。過去の日記を見返しただけで、結局今日のページは手付かずのまま真っ白だ。
本当の気持ちは、書き綴れなかった。
ルナと姫は、うまく出会えただろうか。
何の説明もなく姫と会わせたことを怒っているだろうか。
待ち合わせ場所に現れなかった僕に、失望しただろうか。
それで構わなかった。
日に日に、会う回数を追うごとに、僕はルナを独占したいと思うようになった。
ルナが慕うのは僕だけでいい。
ずっと誰にも見つからなければいい。
僕だけに笑いかけてくれたらいい。
不健全な感情に歯止めが利かなくなっていることは、薄々感じ始めていた。
やろうと思えば、僕の望む様に仕向けることは容易かった。
密な関係を続け、僕らだけの世界を―
そう、あの日張られた狭いテントほどの広さしかない世界で過ごすことだって出来た。
あの日、リンバービーチを眺めながら、僕はルナの肩を抱いた。
彼女の小さな体が、雨に濡れ冷えていたことに苛ついたのだ。
ルナの心臓の音が伝わってきたとき、僕はとても満たされた気持ちになった。
雨が止まなければ、ずっとこうしていられるのに。
しかし雨は去り、太陽は現れた。
僕らはずっと、二人ぼっちでいるわけにはいかない。
眠れない夜は久々だった。
どう過ごしてよいかもわからず、僕は日記を再び開く。
”ルナには、幸せになってほしい。”
ようやく出てきた自分の気持ちを書き起こし、僕は自嘲気味に笑う。
ルナに、今すぐ会いたかった。
---to be continued---
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心変わりしたんだ。
ルナの正体を知って、仕事を手伝うようになって、
共に過ごす時間が増えるほど、ルナのことが見えてきた。
ひたむきで、自分をなおざりにしてまでも他人のために尽くし、
強くて、優しくて、寂しがりで―
ある時ふと、そんなルナの姿がハイラルの姫巫女と重なって見えた。
ルナと姫は、性格だって容姿だってまるで違う。
しかし、彼女たちには通ずるところがいくつかあると思う。
過去を乗り越え、前を向いて生きている様は、境遇は違えど二人に共通して言えることだ。
そこで、僕の中で一つの疑問が浮かんだ。
僕は姫にルナの存在を隠しているが、果たしてそれは両者にとって本当に良いことなのだろうか。
何をやっても能力の目覚めぬ姫がルナと出会えば、きっと落ち込むだろうと僕は思っていた。
本当にそうだろうか?
ルナは凄いヤツだ。一人で生計を立て仕事をやりくりする賢さと、どんなに強い魔物だって薙ぎ倒すほどの強さと、誰にも頼らず一人で戦う勇気を持ち合わせている。
ルナと出会い、ルナを知れば知るほど、彼女の人柄や才には底知れぬ
ルナが頑張っているなら、ここで自分がへこたれるわけにはいかない。ルナが誰かの助けになっているなら、自分に出来ることをしよう…少なくとも、僕はそう思うようになった。
ルナと出会って、姫が劣等感に苛まれたとしても。
それ以上に、ルナという人を知ることに価値を見出すことだろう。
姫に限った話ではない。多くの人がルナから学ぶことはありあまるほどあるはずだ。
ルナは長い間一人で生きてきた。
たった僕一人でさえ、他者との繋がりが出来たことを心から喜んでいた。
姫と出会えば、否が応でも多くの人間と関係が築かれることだろう。
ルナの世界は広がり、多くの人に愛される。
それを望んでやらない理由なんてない。
明日、僕は姫に本当のことを話そうと思う。
今までついてきた嘘のこと。
魔物専属の狩人の正体。
眠りの森のこと。
ルナのことを。
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―日記を閉じ、僕は深呼吸する。
カンテラの炎が手元を照らす。過去の日記を見返しただけで、結局今日のページは手付かずのまま真っ白だ。
本当の気持ちは、書き綴れなかった。
ルナと姫は、うまく出会えただろうか。
何の説明もなく姫と会わせたことを怒っているだろうか。
待ち合わせ場所に現れなかった僕に、失望しただろうか。
それで構わなかった。
日に日に、会う回数を追うごとに、僕はルナを独占したいと思うようになった。
ルナが慕うのは僕だけでいい。
ずっと誰にも見つからなければいい。
僕だけに笑いかけてくれたらいい。
不健全な感情に歯止めが利かなくなっていることは、薄々感じ始めていた。
やろうと思えば、僕の望む様に仕向けることは容易かった。
密な関係を続け、僕らだけの世界を―
そう、あの日張られた狭いテントほどの広さしかない世界で過ごすことだって出来た。
あの日、リンバービーチを眺めながら、僕はルナの肩を抱いた。
彼女の小さな体が、雨に濡れ冷えていたことに苛ついたのだ。
ルナの心臓の音が伝わってきたとき、僕はとても満たされた気持ちになった。
雨が止まなければ、ずっとこうしていられるのに。
しかし雨は去り、太陽は現れた。
僕らはずっと、二人ぼっちでいるわけにはいかない。
眠れない夜は久々だった。
どう過ごしてよいかもわからず、僕は日記を再び開く。
”ルナには、幸せになってほしい。”
ようやく出てきた自分の気持ちを書き起こし、僕は自嘲気味に笑う。
ルナに、今すぐ会いたかった。
---to be continued---