短篇
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
可愛い捕虜様
完全に不覚。
1時間ほど前まで、のん気にバナナ食べてて…それで…
やたらバナナが落ちてる道が続くなぁとは思ったんだけど…
まさか罠とは、思わなかった。
「いや、完全に罠だろ。気付けよ。」
「わっ、喋りかけてきた。」
ここは、イーガ団アジトの監獄。
私が閉じ込められている牢屋には、ガタイの良いイーガ団隊員が一名付きっ切りで私を監視中。
「英傑リーバルと聞いていたが…こんな馬鹿でも英傑になれるものなのか。」
「いや、私リーバルじゃないし。ルナだし。」
「嘘をついても無駄だ。そう簡単にイーガ団の目を欺くことが出来るわけないだろう。」
「え~、信じてくれないの?」
どうやら私、リーバルと勘違いされて捕まったらしい。
確かにリーバルとは恋人同士だからよく一緒にいるけど、普通間違えるかなぁ。
イーガ団の人達って、そんなに頭良くないのかな。
「ちゃんと確認して捕まえたの?もし私がリーバルじゃなかったら、あんたがこうやって監視してるのも、全部無駄な時間になるよ?」
「うるさいぞ。お前が英傑リーバルであることは一目瞭然。確認も何も要るまい。」
「違うってば~。もう、こんなの絶対おかしいって!私は英傑でもなんでもないただの一般人なのに~!」
「口喧しい女だな。イーガ団に楯突く者は皆処刑に値する。仮に人違いだとしても、口答えするなら貴様の命は無いぞ。」
うわぁ、それはまずい。
こんなところで死ぬのは御免だ。
リーバル、早く助けに来て…。
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽
―ゲルドの街 正門―
「誰かと思えば、珍しい来客だね。リーバル。」
「この街は君と同僚の僕でさえ入れてくれないんだね。」
全く面倒な事だ。
わざわざゲルド地方まで向かい、ウルボザまで呼び出してまで、
ルナの捜索をしなくちゃならないんだからね。
「すまないね。誰であろうとヴォーイは立ち入り禁止なんだ。それはそうと、どういった用件だい?」
「ああ、いや、野暮用さ。ルナが今どこにいるか知らないか?」
「ルナっていうと…嗚呼、アンタの可愛いヴァーイのことかい。さあ?私は今日一度も会ってないからねぇ。」
「そうなのか。おかしいな、ゲルドの街に行くって言ったはずだけど。道に迷ったかな。」
「アッハッハ!意外とアンタも心配性だねぇ。ルナだっていい歳なんだから、迷子って事は…ありえるね、うん、あの子ならありえるね。」
…自分の彼女でありながら、この信頼性。
情けなくなる。
「心配性とは失礼だな。帰ると言われた時刻から軽く6時間は経ってるんだ。何かあったとしか思えないだろ?」
「そうだねぇ。でも、アンタにはご自慢のその翼が付いてるんだから、上空から探してみたら良いじゃないか。」
「散々飛び回って探したよ。けど一向に見つからないからわざわざ君を呼び出したんだろ?」
「それもそうだねぇ。うーん、悪いけど、私は力になれそうにないね。」
ウルボザも駄目、となると…
やっぱり自分でどうにかするしかないのか。
時間が過ぎ行くにつれ、不吉な事ばかり考えてしまう。
もしルナに何かあったらと思うと、気が気でない。
焦っても無駄だが、不安は募り、焦りも出てくる。
「あの…ウルボザ様。」
正門前で警備をしているゲルド族が話しかける。
「昼間に警備を担当していた者が、この正門前で怪しげなやり取りを聞いたらしいのです。」
「怪しげなやり取りって?」
「それが、正門を通り抜けようとしたヴァーイに対して、ヴォーイが『お嬢さん、あっちに大量につるぎバナナが落ちていましたから、行ってみたら良いですよ。』と言って引き止めたんです。」
「それで?」
「ヴァーイはヴォーイの指差す方向に一目散に駆けていきました。そうですね、確か、あの方向…。」
警備員のゲルド族が指差した方角には
「…イーガ団のアジトがあるじゃないか!!!」
「それじゃあ、ルナはイーガ団に囚われたのか?!」
「そうとしか考えられないね。悪いけど、私は少しの間街を離れるよ!王家の者に伝えとくれ!」
「すまないね、君にここまで世話になって。」
「なぁに、これ位気にしないよ。それより、アンタの可愛いヴァーイ、早く助け出してやんな。」
本当に手の掛かる恋人だ。
しかし、僕にしては珍しく冷静でいられない。
ルナは必ず僕が助け出す。それまでどうか、無事でいてくれよ…!
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽
「そんでね、リーバルったら酷いんだよ?いっつも私に意地悪ばっかり言ってきてさー。」
「でも、そういう素直じゃないところも好きなんだろ?」
「それ言ったらさぁ…ま、そうなんだけどねー!」
「キャー!もう、貴様、いい恋しすぎだぞ~!」
監獄に閉じ込められて約3時間半が経過した。
イーガ団の監視員と恋バナに華が咲いて、約2時間。
これが案外聞き上手な奴で、ちょっとだけ、いや、かなり話し込んでしまった。
「それで、そのリーバルとは、どこまでいったんだ?」
「えっ!それ聞いちゃう?実は~…やっぱ恥ずかしいから秘密~っ!」
「何だよ、教えろよ~……ムッ?!怪しげな音!」
「そういえば、さっきから上の階が騒がしいね。」
「侵入者か?」
「もしかして、リーバルが助けに来てくれたのかな?」
「ハハ、いくら貴様の素敵な恋人でも、イーガ団隊員は倒せまい。」
そう言った矢先、ズドンと鈍く重い音がして天井の一部が崩れ落ちた。
鉄格子にしがみつき外を除くと、そこには
「リーバル!ウルボザ!」
「ルナ!無事かい?!」
「…全部筒抜けだったよ、君たちのお喋り。」
感動の再開も束の間、リーバルはご立腹の様子であった。
「えっ、マジ?聞かれてたらしいよ、監視員さん。」
「う、うるさいっ!とにかく、こいつを返して欲しければ、俺を倒してから…」
彼が言い終える暇も与えず、ウルボザが彼の額に剣を突きつける
「命が惜しくなけりゃ…この娘を離してやんな!」
「はっ、はいっ。」
こうして、3時間半に渡る私の捕虜生活は無事終了。
「また恋バナしようね~。」
「も、もう沢山だァッ!」
さっきまで仲良くしてた彼は、一瞬でドロンと消えていった。
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽
「ほんっとに君って奴は、馬鹿で間抜けでドジでアホでとんちんかんで恥知らずだな!」
「いっ、いひゃい、いひゃい!ひゃなして、リーバルっ!」
アジトを抜けてからもリーバルの怒りは静まらず、私は両頬をつねられ説教されている。
「まあまあ、良いじゃないか。無傷で何よりだよ。」
そう言ってウルボザはリーバルをなだめているが、横目で面白そうに私達を見つめている。
「君だってこいつに散々迷惑かけられたんだから、何か言ってやりなよ。」
「ルナ、今度からはイーガ団じゃなくて、私が恋バナの聞き役になってやるからね。」
「そうじゃないだろっ!」
「アハハハ!」
高らかにウルボザは笑った。
…私、ちゃんと帰ってこれたんだ。
月夜に照らされた二人の後姿を見ていると、安心感で胸がいっぱいになった。
なんだかんだ言って、とても怖かったのだ。
「リーバル、心配した?」
「わざわざ私の元を尋ねてくるくらい心配してたよ。ねぇ?」
ウルボザがからかう様にリーバルに言う。
「う、うるさいな。…当たり前だろ。死ぬほど心配したんだ。この借りは絶対に返して貰うからね。」
そっぽを向いたリーバルの横顔は、少しだけ、紅潮していた。
「ごめんね、もう、捕まらないようにする。」
「当たり前だ。僕の部屋にもルナ専用の監獄を作っておいた方が良いかもな。」
「もう牢屋はこりごりだって~!」
ウルボザはそんな私たちを見て、愉快そうに笑う。
「馬鹿だな、冗談さ。それより…」
リーバルは私のほうを向き、両翼を広げた。
ウルボザの顔を伺うと、微笑んで私の背中を押してくれた。
私は笑顔で頷くと、リーバルの胸いっぱいに飛び込んだ!
「ただいま、リーバル!」
---fin---
完全に不覚。
1時間ほど前まで、のん気にバナナ食べてて…それで…
やたらバナナが落ちてる道が続くなぁとは思ったんだけど…
まさか罠とは、思わなかった。
「いや、完全に罠だろ。気付けよ。」
「わっ、喋りかけてきた。」
ここは、イーガ団アジトの監獄。
私が閉じ込められている牢屋には、ガタイの良いイーガ団隊員が一名付きっ切りで私を監視中。
「英傑リーバルと聞いていたが…こんな馬鹿でも英傑になれるものなのか。」
「いや、私リーバルじゃないし。ルナだし。」
「嘘をついても無駄だ。そう簡単にイーガ団の目を欺くことが出来るわけないだろう。」
「え~、信じてくれないの?」
どうやら私、リーバルと勘違いされて捕まったらしい。
確かにリーバルとは恋人同士だからよく一緒にいるけど、普通間違えるかなぁ。
イーガ団の人達って、そんなに頭良くないのかな。
「ちゃんと確認して捕まえたの?もし私がリーバルじゃなかったら、あんたがこうやって監視してるのも、全部無駄な時間になるよ?」
「うるさいぞ。お前が英傑リーバルであることは一目瞭然。確認も何も要るまい。」
「違うってば~。もう、こんなの絶対おかしいって!私は英傑でもなんでもないただの一般人なのに~!」
「口喧しい女だな。イーガ団に楯突く者は皆処刑に値する。仮に人違いだとしても、口答えするなら貴様の命は無いぞ。」
うわぁ、それはまずい。
こんなところで死ぬのは御免だ。
リーバル、早く助けに来て…。
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽
―ゲルドの街 正門―
「誰かと思えば、珍しい来客だね。リーバル。」
「この街は君と同僚の僕でさえ入れてくれないんだね。」
全く面倒な事だ。
わざわざゲルド地方まで向かい、ウルボザまで呼び出してまで、
ルナの捜索をしなくちゃならないんだからね。
「すまないね。誰であろうとヴォーイは立ち入り禁止なんだ。それはそうと、どういった用件だい?」
「ああ、いや、野暮用さ。ルナが今どこにいるか知らないか?」
「ルナっていうと…嗚呼、アンタの可愛いヴァーイのことかい。さあ?私は今日一度も会ってないからねぇ。」
「そうなのか。おかしいな、ゲルドの街に行くって言ったはずだけど。道に迷ったかな。」
「アッハッハ!意外とアンタも心配性だねぇ。ルナだっていい歳なんだから、迷子って事は…ありえるね、うん、あの子ならありえるね。」
…自分の彼女でありながら、この信頼性。
情けなくなる。
「心配性とは失礼だな。帰ると言われた時刻から軽く6時間は経ってるんだ。何かあったとしか思えないだろ?」
「そうだねぇ。でも、アンタにはご自慢のその翼が付いてるんだから、上空から探してみたら良いじゃないか。」
「散々飛び回って探したよ。けど一向に見つからないからわざわざ君を呼び出したんだろ?」
「それもそうだねぇ。うーん、悪いけど、私は力になれそうにないね。」
ウルボザも駄目、となると…
やっぱり自分でどうにかするしかないのか。
時間が過ぎ行くにつれ、不吉な事ばかり考えてしまう。
もしルナに何かあったらと思うと、気が気でない。
焦っても無駄だが、不安は募り、焦りも出てくる。
「あの…ウルボザ様。」
正門前で警備をしているゲルド族が話しかける。
「昼間に警備を担当していた者が、この正門前で怪しげなやり取りを聞いたらしいのです。」
「怪しげなやり取りって?」
「それが、正門を通り抜けようとしたヴァーイに対して、ヴォーイが『お嬢さん、あっちに大量につるぎバナナが落ちていましたから、行ってみたら良いですよ。』と言って引き止めたんです。」
「それで?」
「ヴァーイはヴォーイの指差す方向に一目散に駆けていきました。そうですね、確か、あの方向…。」
警備員のゲルド族が指差した方角には
「…イーガ団のアジトがあるじゃないか!!!」
「それじゃあ、ルナはイーガ団に囚われたのか?!」
「そうとしか考えられないね。悪いけど、私は少しの間街を離れるよ!王家の者に伝えとくれ!」
「すまないね、君にここまで世話になって。」
「なぁに、これ位気にしないよ。それより、アンタの可愛いヴァーイ、早く助け出してやんな。」
本当に手の掛かる恋人だ。
しかし、僕にしては珍しく冷静でいられない。
ルナは必ず僕が助け出す。それまでどうか、無事でいてくれよ…!
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽
「そんでね、リーバルったら酷いんだよ?いっつも私に意地悪ばっかり言ってきてさー。」
「でも、そういう素直じゃないところも好きなんだろ?」
「それ言ったらさぁ…ま、そうなんだけどねー!」
「キャー!もう、貴様、いい恋しすぎだぞ~!」
監獄に閉じ込められて約3時間半が経過した。
イーガ団の監視員と恋バナに華が咲いて、約2時間。
これが案外聞き上手な奴で、ちょっとだけ、いや、かなり話し込んでしまった。
「それで、そのリーバルとは、どこまでいったんだ?」
「えっ!それ聞いちゃう?実は~…やっぱ恥ずかしいから秘密~っ!」
「何だよ、教えろよ~……ムッ?!怪しげな音!」
「そういえば、さっきから上の階が騒がしいね。」
「侵入者か?」
「もしかして、リーバルが助けに来てくれたのかな?」
「ハハ、いくら貴様の素敵な恋人でも、イーガ団隊員は倒せまい。」
そう言った矢先、ズドンと鈍く重い音がして天井の一部が崩れ落ちた。
鉄格子にしがみつき外を除くと、そこには
「リーバル!ウルボザ!」
「ルナ!無事かい?!」
「…全部筒抜けだったよ、君たちのお喋り。」
感動の再開も束の間、リーバルはご立腹の様子であった。
「えっ、マジ?聞かれてたらしいよ、監視員さん。」
「う、うるさいっ!とにかく、こいつを返して欲しければ、俺を倒してから…」
彼が言い終える暇も与えず、ウルボザが彼の額に剣を突きつける
「命が惜しくなけりゃ…この娘を離してやんな!」
「はっ、はいっ。」
こうして、3時間半に渡る私の捕虜生活は無事終了。
「また恋バナしようね~。」
「も、もう沢山だァッ!」
さっきまで仲良くしてた彼は、一瞬でドロンと消えていった。
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽
「ほんっとに君って奴は、馬鹿で間抜けでドジでアホでとんちんかんで恥知らずだな!」
「いっ、いひゃい、いひゃい!ひゃなして、リーバルっ!」
アジトを抜けてからもリーバルの怒りは静まらず、私は両頬をつねられ説教されている。
「まあまあ、良いじゃないか。無傷で何よりだよ。」
そう言ってウルボザはリーバルをなだめているが、横目で面白そうに私達を見つめている。
「君だってこいつに散々迷惑かけられたんだから、何か言ってやりなよ。」
「ルナ、今度からはイーガ団じゃなくて、私が恋バナの聞き役になってやるからね。」
「そうじゃないだろっ!」
「アハハハ!」
高らかにウルボザは笑った。
…私、ちゃんと帰ってこれたんだ。
月夜に照らされた二人の後姿を見ていると、安心感で胸がいっぱいになった。
なんだかんだ言って、とても怖かったのだ。
「リーバル、心配した?」
「わざわざ私の元を尋ねてくるくらい心配してたよ。ねぇ?」
ウルボザがからかう様にリーバルに言う。
「う、うるさいな。…当たり前だろ。死ぬほど心配したんだ。この借りは絶対に返して貰うからね。」
そっぽを向いたリーバルの横顔は、少しだけ、紅潮していた。
「ごめんね、もう、捕まらないようにする。」
「当たり前だ。僕の部屋にもルナ専用の監獄を作っておいた方が良いかもな。」
「もう牢屋はこりごりだって~!」
ウルボザはそんな私たちを見て、愉快そうに笑う。
「馬鹿だな、冗談さ。それより…」
リーバルは私のほうを向き、両翼を広げた。
ウルボザの顔を伺うと、微笑んで私の背中を押してくれた。
私は笑顔で頷くと、リーバルの胸いっぱいに飛び込んだ!
「ただいま、リーバル!」
---fin---