短篇
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綺麗
綺麗な物なら何でも好きだ。
宝石や花は勿論、光り輝く蛍だって例外でない。
旅路の途中に美しいと思った物を、片端から集めていくのが趣味だった。
―思えば、ほとんど奇跡みたいなものだった。
雪道を歩いている最中、頭上に舞い降りた一枚の真っ青な美しい羽。
空を見上げると、羽と同じ色をした美しいリト族の青年―
「迷子かい?」
私の前に華麗に降り立った彼は開口一番、そう言った。
「いえ、リトの村に向かっている最中です。」
「ふぅん。ちなみに、リトの村は君の歩いている方向とは真逆だよ。」
私は驚いて地図を広げ見る。
複雑な山脈を超え、道沿いに歩いて行けば着くはずだったけど…。
「気の毒だけど、地図なんか読むの止めたほうがいいぜ。君、頭良くないだろ。」
初対面なのに、ズケズケした物言い。
怒りや失望を感じることよりもはるかに大きく驚き、改めて彼の顔をまじまじと見つめた。
だって―
「何?もしかして、怒ったのかい?」
「…綺麗。」
思わず、声を漏らしてしまう。
青い羽毛
涼しげな目元
凛々しい立ち姿
全てを、美しいと感じた。
「僕が綺麗って?当然だろ。いきなり褒めたりして、気持ち悪いな。」
狼狽するでもなく、変わらぬ素振りでそう言ってのける姿にも私は感心した。
「私、綺麗なものを集めてるんです。」
「へぇ。悪いけど、僕は易々と君の物にはならないよ。」
「わかってます。」
私は今まで集めてきた宝石や花やその他もろもろ美しい小物を、鞄から次々と取り出して見せた。
サファイア、ダイヤモンド、姫しずか、星のかけら…
「私が今まで集めてきた綺麗な物たちです。この宝物より、貴方はずっと綺麗。」
「…それで?」
「これ、全部、貴方にあげる。だから、私の物になってほしい。」
一世一代のプロポーズ。
初対面で、名前もまだ知らないのに。
これには流石の彼も狼狽するだろうと思っていた。
しかし彼は、私の宝物たちを一瞥すると
「君、本当に頭が悪いんだね。」
と言い放った。
「僕は自由だから綺麗なんだよ。それなのに君の所有物になってしまったら、僕の美しさが軽減されるだろ。」
…確かに、彼の言うとおり。
そもそも初対面で無茶苦茶なプロポーズをしている、ということ自体には、触れないでいてくれるんだな…とぼんやり考えていると、
「君が、僕の物になればいいんだよ。」
また、確かに彼の言うとおり…
「えっ?」
「何豆鉄砲食らったような顔してるんだよ。そういうことだろ?」
「…でも、いいんですか?そんな簡単に私のお願いを受け入れてくださって。」
「勘違いしないで欲しいんだけど、僕は君の願いを受け入れたわけじゃないよ。」
彼は私の頬に触れて言う。
「僕も、綺麗な物を手に入れる事が好きなんだ。」
綺麗な瞳の中に、私の姿が映る。
---Fin---
綺麗な物なら何でも好きだ。
宝石や花は勿論、光り輝く蛍だって例外でない。
旅路の途中に美しいと思った物を、片端から集めていくのが趣味だった。
―思えば、ほとんど奇跡みたいなものだった。
雪道を歩いている最中、頭上に舞い降りた一枚の真っ青な美しい羽。
空を見上げると、羽と同じ色をした美しいリト族の青年―
「迷子かい?」
私の前に華麗に降り立った彼は開口一番、そう言った。
「いえ、リトの村に向かっている最中です。」
「ふぅん。ちなみに、リトの村は君の歩いている方向とは真逆だよ。」
私は驚いて地図を広げ見る。
複雑な山脈を超え、道沿いに歩いて行けば着くはずだったけど…。
「気の毒だけど、地図なんか読むの止めたほうがいいぜ。君、頭良くないだろ。」
初対面なのに、ズケズケした物言い。
怒りや失望を感じることよりもはるかに大きく驚き、改めて彼の顔をまじまじと見つめた。
だって―
「何?もしかして、怒ったのかい?」
「…綺麗。」
思わず、声を漏らしてしまう。
青い羽毛
涼しげな目元
凛々しい立ち姿
全てを、美しいと感じた。
「僕が綺麗って?当然だろ。いきなり褒めたりして、気持ち悪いな。」
狼狽するでもなく、変わらぬ素振りでそう言ってのける姿にも私は感心した。
「私、綺麗なものを集めてるんです。」
「へぇ。悪いけど、僕は易々と君の物にはならないよ。」
「わかってます。」
私は今まで集めてきた宝石や花やその他もろもろ美しい小物を、鞄から次々と取り出して見せた。
サファイア、ダイヤモンド、姫しずか、星のかけら…
「私が今まで集めてきた綺麗な物たちです。この宝物より、貴方はずっと綺麗。」
「…それで?」
「これ、全部、貴方にあげる。だから、私の物になってほしい。」
一世一代のプロポーズ。
初対面で、名前もまだ知らないのに。
これには流石の彼も狼狽するだろうと思っていた。
しかし彼は、私の宝物たちを一瞥すると
「君、本当に頭が悪いんだね。」
と言い放った。
「僕は自由だから綺麗なんだよ。それなのに君の所有物になってしまったら、僕の美しさが軽減されるだろ。」
…確かに、彼の言うとおり。
そもそも初対面で無茶苦茶なプロポーズをしている、ということ自体には、触れないでいてくれるんだな…とぼんやり考えていると、
「君が、僕の物になればいいんだよ。」
また、確かに彼の言うとおり…
「えっ?」
「何豆鉄砲食らったような顔してるんだよ。そういうことだろ?」
「…でも、いいんですか?そんな簡単に私のお願いを受け入れてくださって。」
「勘違いしないで欲しいんだけど、僕は君の願いを受け入れたわけじゃないよ。」
彼は私の頬に触れて言う。
「僕も、綺麗な物を手に入れる事が好きなんだ。」
綺麗な瞳の中に、私の姿が映る。
---Fin---