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短篇

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あなたのお名前

溺愛





「よぉ、リーバル。こんなとこまでお前さんが来るなんて珍しいじゃねぇか。」



街のヤツからリトの客が来てるって聞いて出てみりゃ、リーバルだったんで驚いた。



「相変わらず暑苦しいところだな…。用が済んだらさっさと帰るよ。」



暑くて鬱陶しくてたまらないといった様子で、リーバルは自分を羽で仰ぐ。
こいつがゴロンシティにいるなんて、デスマウンテンに雪だるまが置いてあるみてぇな光景だなと思った。


リト族は暑さに弱いのか、この街では滅多に見かけねぇ。
リーバルはそんなリト族の中でもずば抜けてこの街と縁遠いヤツだと思っていたが…わざわざここまで来たのには理由があるはずだ。



「用?俺になんか用か?」



「君にじゃない。ゴロンの香辛料を買いに来たんだ。」



「香辛料?オメェ、それだけのためにここまで来たのか?」



俺の質問には答えず、店はどこだと聞かれたので案内した。
こいつのこういう態度にゃすっかり慣れた気でいたが、相変わらず何を考えてんのかさっぱりわからねぇ。


しょうがねぇから黙って店まで付いていって、ゴロンの香辛料を買わせてやった。
店主に俺の仲間なんだと紹介したら、値引きまでしてくれた。



「助かったよ。急にカレーライスが食べたいっていうもんだから。これがないと作れないからね。」



それじゃ、とだけ言ってリーバルのヤツは空へと羽ばたいて、あっという間に見えなくなった。



「ははぁーん…お嬢のためにわざわざここまで来るたあ、見せつけてくれるじゃねぇか。」





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「リーバルさん?」



「ミファー。丁度良かった、君に聞きたいことがあったんだ。」



英傑のお仲間がお見えです、とゾーラ兵から報告があったので出てきてみたら、リーバルさんだったので驚いた。


てっきり、リンクや姫様だと思ったから。彼らはよくゾーラの里へ訪れてきてくれるが、リーバルさんが一人でわざわざここへやってくることはとても珍しい。



「私に聞きたいこと、って?」



「いや、大したことじゃないんだけどね。ガンバリバチに刺された時って、特別な治療が必要かな。」



「が、ガンバリバチに?リーバルさん、刺されたの?」



「いや、僕じゃない。応急処置はしたんだ。毒を抜いて薬を塗ったけど、後遺症があっちゃいけないだろ。治癒能力のある君なら、何か知っているかと思って。」



リーバルさんでは無い人が、ガンバリバチに…私はすぐにピンときた。



「そこまで治療しているなら大丈夫だと思う。でも、心配ならこの薬を持って行ってあげて。もし、それでも治らない様なら、私が力になるから。」



私は手持ちの薬をリーバルさんに手渡す。



「ありがとう、恩に着るよ。全く世話が焼けるよね。」



それじゃ、と言い残し、彼は上空へと羽ばたいていく。
風の如く現れ、すぐに去っていった彼を見て、私はほほえましい気持ちになった。



「…過保護なんだなぁ、リーバルさん。」





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「珍しいね、アンタがここに来るなんて。」



ゲルドの門の外で、私を呼びつけているヤツがいると聞いてやってきたら、リーバルだった。



「男子禁制の街ってのは厄介だね。族長をわざわざ呼びつけないといけないなんて。」



「仕来りだから仕方ないさ。それより、用件は?」



リーバルは私に小さな巾着袋を手渡してきた。
サイズに反してずしりと重いそれの中には、ルピーが入っていた。



「おや、どうしたんだいこれ。」



「悪いんだけど、頼まれてくれないかな。この街で一番綺麗なアクセサリーを一つ。」



金額が足りないようなら言ってよ、とリーバルは澄ました顔で言う。



「アッハッハ!ゲルドの長にお使いを頼むなんて、アンタいい度胸してるねぇ。」



「仕方ないだろ。ゲルドにいる知り合いはウルボザくらいなんだから。僕がこの街に入っても問題ないのであれば、買い物くらい一人でするさ。」



「いや、構わないよ。大切なヴァ―イへの贈り物だろう?指輪じゃなくてもいいのかい?」



からかうつもりで私は言った。
しかしリーバルは、



「…指輪があれば、指輪を。」



…孤高の戦士と呼ばれるリーバルが、こうも素直にになるなんて。



「アンタのお姫様は、罪なヴァ―イだね。」



次に会う時に、とびきり素敵な指輪を用意しておくと約束して彼を帰した。





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「美味しい!」



カレーライスを一口頬張ると、ルナはキラキラと目を輝かせ叫んだ。



「それにしても、たまたま通りかかった商人がゴロンの香辛料を売ってたなんて。リーバル、ツイてるね。」



まあね、と答え、彼女の食べている姿を眺める。
幸せそうに物を食べるルナはとても可愛い。



「ガンバリバチに刺されたとか言っていたけど、もう治ったのかい?」



「うん、リーバルがくれた塗り薬を塗ったら腫れも引いてすっかり良くなったよ。あんな効果が強い薬初めて見た。あの薬って、どうしたの?」



「知り合いに貰ったんだよ。…随分前にね。ルナの間抜けも治る薬だといいけど。」



リーバルの意地悪!と頬を膨らませるルナ
意地悪なんてとんでもない、と言いたくなったが我慢した。



「意地悪な僕が好きだろ?」



うっ…と図星を突かれて狼狽えている。



「…それは、もちろん。」



彼女は差し出された愛の経路を、知る由もない。


ルナのためだったら、僕はハイラルのどこへだって飛び回るさ。


君のことを心から愛している、その気持ちだけが僕の原動力だ。



「じゃあずっと一緒に居なよ。これからも愛してあげる。」



そう言って彼女の前に差し出した箱の中身は、あの時ウルボザに頼んだ指輪だ。


喜んだ顔を、早く見せてほしい。





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