短篇
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勉強
「素敵なヴォーイが貴方の前に現れました。どうする?はい、ルナさん。」
「はい。えーと、求婚してみます。」
「それは唐突過ぎるわ。一応、初対面という設定で考えて。」
「でも、私の求婚を断る男はいないと思うんですけど。」
「…そうかもしれないけど。」
ワーシャ先生は、ハァと大きな溜息を吐いた。
「ルナさん、ここは恋愛教室なのよ。言わば、ヴォーイ心を学ぶ所。貴方の回答は常識と掛離れてるわ。」
「ええ、そうですか?私と結婚すれば王様になれるし、お金持ちにもなれる。名誉と財産が手に入るなら、初対面でも私の求婚を断る男はそうそういないでしょ。」
私は小さな国の王の娘。
つまりお姫様だ。
いつまで経っても結婚する意志のない私を見兼ねた父が、ここゲルドの街にある恋愛教室へ通わせたのだ。
でもこんな授業、まるで役に立たないと思う。
確かに私は恋愛をよく知らないけど、結婚出来ないわけじゃない。
私はお姫様だから、庶民の男なら誰しも下克上を夢見て結婚したがるはずだもん。
「ルナさんは、ただの一度もヴォーイを好きになったことは無いの?」
「…無い、ですね。」
「本当に?」
ワーシャ先生は私の顔をじっと見つめる。
堀の深い顔に際立つ大きな目と、私の何倍も高い背丈の彼女の凄みに圧倒された私は、
「無い、わけじゃない、ですけど…」
そう白状した。語尾がどんどん尻すぼみになっていく。
「そのヴォーイとは上手くいったの?」
「上手くいってたら結婚してますって。」
「ほら御覧なさい。ルナさんがいくらお姫様だといっても、ヴォーイ心を理解していないと恋愛は成就できないのよ。さ、わかったら授業をよく聞くこと!」
ワーシャ先生は黒板に向き直り授業を再開する。
ヴォーイ心、かあ。
そういえば、リト族の彼はどんな女性が好きなんだろう。
…やっぱり、リト族のヴァーイ?
それなら、考えるだけ、
こんな授業聞くだけ、やっぱ無駄じゃん。
私は真っ白なノートにハートマークを一つ、手癖で書いてみた。
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽
ゲルドの街のゲートを抜けると、あたりはもうすっかり暗くなっていた。
昼間の暑さが嘘のように寒い。
「終わったのかい、恋愛教室。」
上空から舞い降りたのは、私が授業中に考えていた
リト族の彼、リーバル。
「うん。今日も相変わらずよくわかんなかったけどね。」
私がそう言うと、彼は少し笑った。
「君が男心を理解しようなんて、最初から無理な話だもんな。」
「…相変わらず無礼だなぁ。」
「無礼?どうして君に敬意を払う必要があるんだよ。出会った時からずっと、無礼講さ。」
今度は私が少し笑った。
だって、私はお姫様なのに。
無礼講だなんて、面白いじゃない。
出会ってから今に至るまで、私が姫であることを彼に明かしていない。
いつか打ち明けるときが来るかもしれないけど
それはきっと、この恋が終わるときだと思う。
「パパは口喧しく結婚しろ結婚しろって言うけど、私は別に結婚しなくたっていいんだけどな。」
「へぇ。年頃の娘の癖に、欲が浅いね。」
「私はこうやって、満天の夜空の下で、リーバルと砂漠の上を歩いてるだけで、充分幸せだもん。」
リーバルは歩いている足を止めた。
「君、それ、本気で言ってる?」
「え?本気って?」
「僕には今の君の言葉は、プロポーズのように聞えたけど。」
私は、彼の言っている意味がわからなかった。
私はただ、リーバルの隣を歩いているだけで幸せだと言っただけだ。
それが、プロポーズ?
「君、恋愛教室に通うのやめたらどうだい?」
「どうしてさ。」
「授業を受けても、君は何も得ていないだろ?僕の気持ちも汲み取れない様じゃあね。」
リーバルの気持ち?
私はますますわからなくなる。
「本当に頭が悪いお姫様だね。」
「無礼だな…って、えぇ?今、何て?」
「いつまで経っても結婚しないお姫様。王に心配されて恋愛教室に通わされるお姫様。」
私は本当にビックリして、腰を抜かしてしまった。
へたり込んだ私の周りを、砂埃が舞う。
「し、知ってたの?!」
「まぁね。」
なんでもない風に、リーバルは答える。
私が隠してきたつもりだった秘密を、彼はとっくに知っていたんだ。
「じゃ、じゃあどうしてお姫様にそんな無礼な態度を取れるのかしら?」
「君こそ、僕に姫君扱いされたかったなら、隠すことなかっただろ。」
最もなことを言われてしまい、返す言葉が無かった。
リーバルは私の目の前で手を差し伸べる。
「国王になりたいわけじゃないけど、君の隣を歩くのは割と幸せだと感じるよ。」
私はまた、彼の言っている事が理解できず、差し伸べられた手を取る事が出来なかった。
「…チッ、じれったいなぁ。」
彼は私の手を無理やり取り、起き上がらせる。
「遠まわしに結婚しようって言ってるんだよ。」
私は目を見開く。
私の返事を待つ間もなく彼は私の手を引いて走り出した。
こんなとき、どうしたらいいのか
恋愛教室で教えてもらえば
良かったな、
なんて馬鹿なことを考えながら
私はただ、彼に身を任せ走った。
---fin---
「素敵なヴォーイが貴方の前に現れました。どうする?はい、ルナさん。」
「はい。えーと、求婚してみます。」
「それは唐突過ぎるわ。一応、初対面という設定で考えて。」
「でも、私の求婚を断る男はいないと思うんですけど。」
「…そうかもしれないけど。」
ワーシャ先生は、ハァと大きな溜息を吐いた。
「ルナさん、ここは恋愛教室なのよ。言わば、ヴォーイ心を学ぶ所。貴方の回答は常識と掛離れてるわ。」
「ええ、そうですか?私と結婚すれば王様になれるし、お金持ちにもなれる。名誉と財産が手に入るなら、初対面でも私の求婚を断る男はそうそういないでしょ。」
私は小さな国の王の娘。
つまりお姫様だ。
いつまで経っても結婚する意志のない私を見兼ねた父が、ここゲルドの街にある恋愛教室へ通わせたのだ。
でもこんな授業、まるで役に立たないと思う。
確かに私は恋愛をよく知らないけど、結婚出来ないわけじゃない。
私はお姫様だから、庶民の男なら誰しも下克上を夢見て結婚したがるはずだもん。
「ルナさんは、ただの一度もヴォーイを好きになったことは無いの?」
「…無い、ですね。」
「本当に?」
ワーシャ先生は私の顔をじっと見つめる。
堀の深い顔に際立つ大きな目と、私の何倍も高い背丈の彼女の凄みに圧倒された私は、
「無い、わけじゃない、ですけど…」
そう白状した。語尾がどんどん尻すぼみになっていく。
「そのヴォーイとは上手くいったの?」
「上手くいってたら結婚してますって。」
「ほら御覧なさい。ルナさんがいくらお姫様だといっても、ヴォーイ心を理解していないと恋愛は成就できないのよ。さ、わかったら授業をよく聞くこと!」
ワーシャ先生は黒板に向き直り授業を再開する。
ヴォーイ心、かあ。
そういえば、リト族の彼はどんな女性が好きなんだろう。
…やっぱり、リト族のヴァーイ?
それなら、考えるだけ、
こんな授業聞くだけ、やっぱ無駄じゃん。
私は真っ白なノートにハートマークを一つ、手癖で書いてみた。
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽
ゲルドの街のゲートを抜けると、あたりはもうすっかり暗くなっていた。
昼間の暑さが嘘のように寒い。
「終わったのかい、恋愛教室。」
上空から舞い降りたのは、私が授業中に考えていた
リト族の彼、リーバル。
「うん。今日も相変わらずよくわかんなかったけどね。」
私がそう言うと、彼は少し笑った。
「君が男心を理解しようなんて、最初から無理な話だもんな。」
「…相変わらず無礼だなぁ。」
「無礼?どうして君に敬意を払う必要があるんだよ。出会った時からずっと、無礼講さ。」
今度は私が少し笑った。
だって、私はお姫様なのに。
無礼講だなんて、面白いじゃない。
出会ってから今に至るまで、私が姫であることを彼に明かしていない。
いつか打ち明けるときが来るかもしれないけど
それはきっと、この恋が終わるときだと思う。
「パパは口喧しく結婚しろ結婚しろって言うけど、私は別に結婚しなくたっていいんだけどな。」
「へぇ。年頃の娘の癖に、欲が浅いね。」
「私はこうやって、満天の夜空の下で、リーバルと砂漠の上を歩いてるだけで、充分幸せだもん。」
リーバルは歩いている足を止めた。
「君、それ、本気で言ってる?」
「え?本気って?」
「僕には今の君の言葉は、プロポーズのように聞えたけど。」
私は、彼の言っている意味がわからなかった。
私はただ、リーバルの隣を歩いているだけで幸せだと言っただけだ。
それが、プロポーズ?
「君、恋愛教室に通うのやめたらどうだい?」
「どうしてさ。」
「授業を受けても、君は何も得ていないだろ?僕の気持ちも汲み取れない様じゃあね。」
リーバルの気持ち?
私はますますわからなくなる。
「本当に頭が悪いお姫様だね。」
「無礼だな…って、えぇ?今、何て?」
「いつまで経っても結婚しないお姫様。王に心配されて恋愛教室に通わされるお姫様。」
私は本当にビックリして、腰を抜かしてしまった。
へたり込んだ私の周りを、砂埃が舞う。
「し、知ってたの?!」
「まぁね。」
なんでもない風に、リーバルは答える。
私が隠してきたつもりだった秘密を、彼はとっくに知っていたんだ。
「じゃ、じゃあどうしてお姫様にそんな無礼な態度を取れるのかしら?」
「君こそ、僕に姫君扱いされたかったなら、隠すことなかっただろ。」
最もなことを言われてしまい、返す言葉が無かった。
リーバルは私の目の前で手を差し伸べる。
「国王になりたいわけじゃないけど、君の隣を歩くのは割と幸せだと感じるよ。」
私はまた、彼の言っている事が理解できず、差し伸べられた手を取る事が出来なかった。
「…チッ、じれったいなぁ。」
彼は私の手を無理やり取り、起き上がらせる。
「遠まわしに結婚しようって言ってるんだよ。」
私は目を見開く。
私の返事を待つ間もなく彼は私の手を引いて走り出した。
こんなとき、どうしたらいいのか
恋愛教室で教えてもらえば
良かったな、
なんて馬鹿なことを考えながら
私はただ、彼に身を任せ走った。
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