短篇
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
オーロラを求めて
「オーロラ?」
「うん。知ってる?夜空に浮かぶ七色の光!神秘的自然現象!ハイラルでも見れるんだって。へブラ地方の北部で。」
ルナは両腕を広げ、僕に向かって力説する。
「…見に行こうって言いだすんじゃないだろうね。」
現時点で彼女はリトの羽毛服に身を包み、大きなリュックサックを背負い地図を片手にしていた。
僕の答えを聞く前から準備万端の彼女に呆れる。
「リーバルにとってへブラ地方なんて庭みたいなものでしょ?オーロラが見える場所くらい知ってると思って。」
「残念でした。僕もオーロラは見たことがないし、へブラのどこで発生するか正確な場所まではわからない。」
「じゃあ、二人で探しに行こう!初めてのオーロラ体験だ!ねっ?」
差し伸べられた手をサッと払い、僕は顔を横に振った。
「僕は君と違って忙しいんだ。行くなら一人で行きなよ。」
「ええー…つれないなあ。あ、そうだ。リンクと行こうかな。」
リンク?
不意に出てきたその名を聞き流すわけにいかなかった。
何故今あの騎士の名前が出てくるのだろうか?
「ハッ、あの無愛想な騎士と?あいつがオーロラなんか見たって、いつものように顔色一つ変えないだろうけどね。」
「そんなことないでしょ。そもそも、オーロラの話を教えてくれたのはリンクだよ。図書館で見つけた文献に書いてあったんだって。」
好きにすればいいだろ、と突き放してしまいたい衝動に駆られたが、すんでのところで堪えた。
なるほど、そもそも動機の発端はあいつ だったんだ。
どういうつもりでルナにそんな話をしたんだろう。
何を考えているのか全く分からないヤツだとは常々思っていたが、…まさかルナに対して恋心を抱いている、とか?
僕の知らないところで二人が仲睦まじく会話をしている様子を想像してしまい、気分が悪くなった。
ただでさえ面白くない相手にルナまで奪われるなんて、僕のプライドが許さない。
「うわっ、リ、リーバル?!」
「大人しくしてなよ。」
胸のムカつきが治まらず、僕は強引にルナを抱きかかえ、村の物見へ移動した。
「わーっ、何?!どういうこと?!ここから振り落とすつもりじゃないよね?!」
「そうしてやりたい気持ちはやまやまだけど…。」
ルナをいったん降ろし、彼女の脇の下を抱え背負う。
「ハイリアの騎士じゃあ、へブラ北部の山へひとっ飛び…なんて到底無理だろうね!」
そうして上昇気流を発生させ、空高く舞い上がった。
リトの村が遠ざかり小さくなる。
「ひ、ひゃあああっ!高、高い!頭、くらくらする…っ!」
「ハハハ!もっともっと高くなるよ!」
急に高所へ連れてこられたルナはすっかり怯えて僕の背にしがみついている。
僕の心をかき乱しただけでなく、不快な想いまでさせたんだ。
少なからず、これくらいの仕返しがあってもいいはずだよね。
「見に行くんだろ、オーロラを。」
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽
突き刺すような寒さと静けさが広がるへブラの山頂。
降り積もった雪を踏みしめ、歩き続ける。
「この辺で見れると思うけどな。」
「もうちょっと南西の場所かも…。」
鼻と耳の先を赤くさせて、ルナは地図と空を交互に見ている。
「…どうしてそんなに見たいんだよ。」
「え?」
「オーロラ。」
あの騎士が教えてくれたからどうしても見たいって理由なら、僕はいよいよルナを一人置いて帰ろうかとも思う。
…なんてさすがに冗談。
でも本当にそうなら―胸が締め付けられる。
勝ち負けにこだわっている場合ではない。
ルナの心はひとつしかない。
「リーバルみたいだな、って思ったから。」
「…はあ?」
ルナの発言に理解が追い付かない。
僕みたいだから?オーロラが?
「リンクからオーロラの話を聞いた時、リーバルみたいだなって思ったの。濃紺の夜空に彩られるオーロラの光…私の想像では、リーバルの瞳みたいに綺麗な色をしてるんじゃないかと思うの。」
ルナは僕の目を覗き込む。
「それに、条件が揃わないとなかなか見ることが出来ないっていうのも。一筋縄ではいかないところが、リーバルみたい。」
「…余計なお世話だ。」
ふふ、と彼女は笑った。
ルナは少し歩いたかと思うと、立ち止まって深呼吸をした。
キンキンに冷えた空気を胸いっぱいに吸い込んで、何かを決心したような表情で、僕の方へ向き直った。
「私がオーロラを求めているのは、あなたのことを求めているからなの。この気持ちが抑えられないから、ここまで来て、今、あなたに…。」
雲の割れ目から月が顔を出す。
明るい夜だ。
「あ…。」
僕が空を指さすと、ルナも振り返って空を見上げた。
眼前に広がるオーロラが空を包みこんでいる。
七色の光、というよりは翠緑が目立っていた。様々な色彩が複雑に発光している。
「綺麗」
ルナの瞳は、夜空が全て収縮されているかのように煌めいていた。
その横顔に、僕はそっとキスを落とす。
「…リーバル?」
「オーロラをバックに愛の告白、なんて。君もなかなか粋なことするじゃないか。…いや、"生意気なこと"と言った方がいいかな。僕より先に想いを伝えるなんて。」
ルナの瞳が涙で潤んでいる。
勇気を振り絞って伝えてくれたことが見て分かり、彼女への愛おしさで胸がいっぱいになった。
「君と僕の気持ちは一緒だよ。不安も、愛おしく思う気持ちも、すべて同じだ。」
「本当に?」
ルナの顔が赤い。寒さのせいだけではないだろう。
「本当さ。この景色に誓ってもいい…」
僕が話している最中だというのに、ルナは勢いよく僕に抱き着いてきた。
驚いてよろけてしまったが、彼女をしっかりと抱きとめた。
抱きしめ合ったまま、二人は再び空を見上げる。
「ふふ。オーロラよりリーバルの方が綺麗だね。」
「…そういうの、普通は男が言う台詞だろ。」
「じゃあ言ってよ。」
ルナはからかったつもりなのか、ニヤニヤと上目遣いで僕を見つめる。
「いいさ。ルナ、色んな男が君の美貌に惹かれるかもしれない。だけど、へブラの空より高く、海よりも深く、ハイリア全土より広い愛情を持っているのはこの世界でたった一人、僕だけだよ。いいね?」
返り討ちにあったルナは、口をぱくぱくとさせ返事に窮している。
「おや?君がリクエストしたはずだよね?」
「いきなりそんなこと言われたら、心臓が持たないよ!」
二人の姿をオーロラが優しく照らす。
透き通る寒さの中、果てなき光が暖かく注がれて
まるでこの夜空全体で微笑んでいるかのようだった。
---fin---
「オーロラ?」
「うん。知ってる?夜空に浮かぶ七色の光!神秘的自然現象!ハイラルでも見れるんだって。へブラ地方の北部で。」
ルナは両腕を広げ、僕に向かって力説する。
「…見に行こうって言いだすんじゃないだろうね。」
現時点で彼女はリトの羽毛服に身を包み、大きなリュックサックを背負い地図を片手にしていた。
僕の答えを聞く前から準備万端の彼女に呆れる。
「リーバルにとってへブラ地方なんて庭みたいなものでしょ?オーロラが見える場所くらい知ってると思って。」
「残念でした。僕もオーロラは見たことがないし、へブラのどこで発生するか正確な場所まではわからない。」
「じゃあ、二人で探しに行こう!初めてのオーロラ体験だ!ねっ?」
差し伸べられた手をサッと払い、僕は顔を横に振った。
「僕は君と違って忙しいんだ。行くなら一人で行きなよ。」
「ええー…つれないなあ。あ、そうだ。リンクと行こうかな。」
リンク?
不意に出てきたその名を聞き流すわけにいかなかった。
何故今あの騎士の名前が出てくるのだろうか?
「ハッ、あの無愛想な騎士と?あいつがオーロラなんか見たって、いつものように顔色一つ変えないだろうけどね。」
「そんなことないでしょ。そもそも、オーロラの話を教えてくれたのはリンクだよ。図書館で見つけた文献に書いてあったんだって。」
好きにすればいいだろ、と突き放してしまいたい衝動に駆られたが、すんでのところで堪えた。
なるほど、そもそも動機の発端は
どういうつもりでルナにそんな話をしたんだろう。
何を考えているのか全く分からないヤツだとは常々思っていたが、…まさかルナに対して恋心を抱いている、とか?
僕の知らないところで二人が仲睦まじく会話をしている様子を想像してしまい、気分が悪くなった。
ただでさえ面白くない相手にルナまで奪われるなんて、僕のプライドが許さない。
「うわっ、リ、リーバル?!」
「大人しくしてなよ。」
胸のムカつきが治まらず、僕は強引にルナを抱きかかえ、村の物見へ移動した。
「わーっ、何?!どういうこと?!ここから振り落とすつもりじゃないよね?!」
「そうしてやりたい気持ちはやまやまだけど…。」
ルナをいったん降ろし、彼女の脇の下を抱え背負う。
「ハイリアの騎士じゃあ、へブラ北部の山へひとっ飛び…なんて到底無理だろうね!」
そうして上昇気流を発生させ、空高く舞い上がった。
リトの村が遠ざかり小さくなる。
「ひ、ひゃあああっ!高、高い!頭、くらくらする…っ!」
「ハハハ!もっともっと高くなるよ!」
急に高所へ連れてこられたルナはすっかり怯えて僕の背にしがみついている。
僕の心をかき乱しただけでなく、不快な想いまでさせたんだ。
少なからず、これくらいの仕返しがあってもいいはずだよね。
「見に行くんだろ、オーロラを。」
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽
突き刺すような寒さと静けさが広がるへブラの山頂。
降り積もった雪を踏みしめ、歩き続ける。
「この辺で見れると思うけどな。」
「もうちょっと南西の場所かも…。」
鼻と耳の先を赤くさせて、ルナは地図と空を交互に見ている。
「…どうしてそんなに見たいんだよ。」
「え?」
「オーロラ。」
あの騎士が教えてくれたからどうしても見たいって理由なら、僕はいよいよルナを一人置いて帰ろうかとも思う。
…なんてさすがに冗談。
でも本当にそうなら―胸が締め付けられる。
勝ち負けにこだわっている場合ではない。
ルナの心はひとつしかない。
「リーバルみたいだな、って思ったから。」
「…はあ?」
ルナの発言に理解が追い付かない。
僕みたいだから?オーロラが?
「リンクからオーロラの話を聞いた時、リーバルみたいだなって思ったの。濃紺の夜空に彩られるオーロラの光…私の想像では、リーバルの瞳みたいに綺麗な色をしてるんじゃないかと思うの。」
ルナは僕の目を覗き込む。
「それに、条件が揃わないとなかなか見ることが出来ないっていうのも。一筋縄ではいかないところが、リーバルみたい。」
「…余計なお世話だ。」
ふふ、と彼女は笑った。
ルナは少し歩いたかと思うと、立ち止まって深呼吸をした。
キンキンに冷えた空気を胸いっぱいに吸い込んで、何かを決心したような表情で、僕の方へ向き直った。
「私がオーロラを求めているのは、あなたのことを求めているからなの。この気持ちが抑えられないから、ここまで来て、今、あなたに…。」
雲の割れ目から月が顔を出す。
明るい夜だ。
「あ…。」
僕が空を指さすと、ルナも振り返って空を見上げた。
眼前に広がるオーロラが空を包みこんでいる。
七色の光、というよりは翠緑が目立っていた。様々な色彩が複雑に発光している。
「綺麗」
ルナの瞳は、夜空が全て収縮されているかのように煌めいていた。
その横顔に、僕はそっとキスを落とす。
「…リーバル?」
「オーロラをバックに愛の告白、なんて。君もなかなか粋なことするじゃないか。…いや、"生意気なこと"と言った方がいいかな。僕より先に想いを伝えるなんて。」
ルナの瞳が涙で潤んでいる。
勇気を振り絞って伝えてくれたことが見て分かり、彼女への愛おしさで胸がいっぱいになった。
「君と僕の気持ちは一緒だよ。不安も、愛おしく思う気持ちも、すべて同じだ。」
「本当に?」
ルナの顔が赤い。寒さのせいだけではないだろう。
「本当さ。この景色に誓ってもいい…」
僕が話している最中だというのに、ルナは勢いよく僕に抱き着いてきた。
驚いてよろけてしまったが、彼女をしっかりと抱きとめた。
抱きしめ合ったまま、二人は再び空を見上げる。
「ふふ。オーロラよりリーバルの方が綺麗だね。」
「…そういうの、普通は男が言う台詞だろ。」
「じゃあ言ってよ。」
ルナはからかったつもりなのか、ニヤニヤと上目遣いで僕を見つめる。
「いいさ。ルナ、色んな男が君の美貌に惹かれるかもしれない。だけど、へブラの空より高く、海よりも深く、ハイリア全土より広い愛情を持っているのはこの世界でたった一人、僕だけだよ。いいね?」
返り討ちにあったルナは、口をぱくぱくとさせ返事に窮している。
「おや?君がリクエストしたはずだよね?」
「いきなりそんなこと言われたら、心臓が持たないよ!」
二人の姿をオーロラが優しく照らす。
透き通る寒さの中、果てなき光が暖かく注がれて
まるでこの夜空全体で微笑んでいるかのようだった。
---fin---