短篇
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想いも甘いお菓子になれ
「ルナ、チョコレートの湯煎出来た?」
「うん!あとはこれにお砂糖と薄力粉を入れて混ぜて…。」
甘い香りが充満した私の家の台所。
そこには楽しく、それでいて奮闘しながらも、お菓子作りに励む乙女が二人。
私は以前、ミファーにそれとなくリーバルに対する恋心を打ち明けてみた。
すると、ミファーもリンクの事が好きであることをこっそり私に教えてくれた。
それ以来、私達は“恋する乙女同盟”を組み、何かと集まっては恋バナに華を咲かせていた。
2月14日は、恋する乙女同盟決戦の日。二人で好きな人に手作りのお菓子を渡そうと、約束しあったのだ。
「もし、ミファーがお菓子を渡した時、リンクが顔を真っ赤にしちゃったらどうする?」
「ええっ?もし、そんな事になっちゃったら…恥ずかしくて、私も黙り込んじゃうかな…。」
ミファーは顔を真っ赤にして生地を泡だて器で混ぜている。
「ルナだって、もし、リーバルから逆にお菓子を貰ったらどうする?」
「えっ!リ、リーバルがそんなこと、するわけ無いけど…」
するわけない。けど、リーバルの顔を思い出すだけで、胸の鼓動が早くなり、耳まで赤くなる。
「私達、こんな調子で大丈夫かな…。」
「確かに…。相手の顔考えただけで顔真っ赤になっちゃうのに、渡すとき心臓破裂しちゃわないか心配だよ…。」
「「喜んでくれるかなぁ…。」」
焼き菓子の匂い、食器のぶつかる音、私達の溜息。
恋する乙女同盟は、悩める乙女同盟でもある。
二人とも、まだ ”片想い” なのだから。
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽
2月14日
飛行訓練所で休んでいるリーバルを見つけて、深呼吸をする。
よし、今!いけっ!!ルナ!!!いつもみたいに話しかけて、さりげなくお菓子を渡すのよ!
…ああっ!やっぱり緊張してできないっ!
こんな調子でかれこれ30分ほど経つ。
ただ、手作りのお菓子を渡すだけ。
それだけ…。
ううん、それだけ、じゃない。
私はリーバルが好きなんだから。
このお菓子に込められた気持ちの事を考えたら、ただお菓子をあげるのとは訳が違う。
だから、こんなに緊張するんだ。
だけど、このままずっとこうしているわけには…
「さっきからそこで何をぐずぐずやってるんだい。」
「ひゃあっ?!」
声をかけられ、心臓が跳ねる。
一人で悶々としていたせいで、リーバルがこちらに近づいていたことに気がつかなかったのだ。
「間抜けな声でそんなに驚いて、相変わらず変な奴だな、君は。…おや?何か持ってきたのかい?」
「あ、いや、こ、これは…。」
まずい。
私のプランでは、他愛無い話をしながらさりげなく渡して、リーバルを驚かせる予定だったのに…!
思わず、背後にお菓子が入った箱を隠す。
「何をそんな慌てて…ああ、そうか。」
完全に察されてしまっている。観念するしかないのか。いや、まだプラン変更の余地はあるかもしれない。いや、もう駄目かも。
恋する相手を前に私の思考回路は絡まり、顔もみるみる赤くなる。
「今日はバレンタインデーだったっけ。誰に渡すんだい?」
「えっ?」
予想外の返事に、目を丸くする。
リーバル、私がリーバルにお菓子を渡そうとしていることに気付いてない…?
私は咄嗟に閃いた。
「うん。実は好きな人にお菓子を渡したいんだけど、緊張しちゃって。その前に、いつもみたいにリーバルと世間話でもして、リラックスしていこうかなーと思って。」
全て口から出まかせだ。
でもこれで、リーバルに勘違いをさせておいて「じゃーん!」とお菓子を渡せば、きっと驚くはず!
「へえ。僕を利用しようとしたのか。」
「え?」
私へ向けられた冷ややかな視線。
「いい度胸じゃないか。でも生憎様。僕は君の逢引の踏み台になるつもりは無いよ。」
「リーバル、怒ってるの…?」
「悪いけど、今日は君と話したくないんだ。わかったらさっさとソイツの所に行ってやれよ。」
リーバルは私に背を向けて去ろうとした。
「ま、待って!!!」
悪気なくついた嘘のせいで、彼の気を損ねてしまった。
せっかく、ミファーと二人で頑張ろうって約束したバレンタインなのに、嫌われちゃうなんて、
そんなの…
「…なんてね。」
リーバルが再び私の方に向き直り、私の手からお菓子の入った箱を取り上げた。
「あっ!それは、」
「僕のだろ?」
いつもの得意げな顔で、リーバルは言った。
「最初から全部わかってたよ。それなのに、君が変な嘘をつくから、意地悪したくなってね。」
「えぇっ!」
「君が僕を騙そうだなんて百年早いよ。」
結局最初から私の考えなんてお見通しだったのだ。
「…ごめんなさい。」
「素直で良いね。」
ずるい、ずるすぎる。
私より一枚も二枚も上手の彼に、私はずっとドキドキしっぱなしだ。
「これ、返してあげるよ。」
リーバルは、さっき取り上げた箱を私に返した。
「今度は嘘なんかつかずに、君の手から、そいつを渡して欲しいな。」
う…。
本当に何から何まで、リーバルには敵いそうもないなぁ。
でも、今度はちゃんと伝えなきゃ。
大きく深呼吸をする。
「これ、頑張って作ったんだ。リーバルのために。受け取ってくれるよね。」
---Fin---
「ルナ、チョコレートの湯煎出来た?」
「うん!あとはこれにお砂糖と薄力粉を入れて混ぜて…。」
甘い香りが充満した私の家の台所。
そこには楽しく、それでいて奮闘しながらも、お菓子作りに励む乙女が二人。
私は以前、ミファーにそれとなくリーバルに対する恋心を打ち明けてみた。
すると、ミファーもリンクの事が好きであることをこっそり私に教えてくれた。
それ以来、私達は“恋する乙女同盟”を組み、何かと集まっては恋バナに華を咲かせていた。
2月14日は、恋する乙女同盟決戦の日。二人で好きな人に手作りのお菓子を渡そうと、約束しあったのだ。
「もし、ミファーがお菓子を渡した時、リンクが顔を真っ赤にしちゃったらどうする?」
「ええっ?もし、そんな事になっちゃったら…恥ずかしくて、私も黙り込んじゃうかな…。」
ミファーは顔を真っ赤にして生地を泡だて器で混ぜている。
「ルナだって、もし、リーバルから逆にお菓子を貰ったらどうする?」
「えっ!リ、リーバルがそんなこと、するわけ無いけど…」
するわけない。けど、リーバルの顔を思い出すだけで、胸の鼓動が早くなり、耳まで赤くなる。
「私達、こんな調子で大丈夫かな…。」
「確かに…。相手の顔考えただけで顔真っ赤になっちゃうのに、渡すとき心臓破裂しちゃわないか心配だよ…。」
「「喜んでくれるかなぁ…。」」
焼き菓子の匂い、食器のぶつかる音、私達の溜息。
恋する乙女同盟は、悩める乙女同盟でもある。
二人とも、まだ ”片想い” なのだから。
✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽
2月14日
飛行訓練所で休んでいるリーバルを見つけて、深呼吸をする。
よし、今!いけっ!!ルナ!!!いつもみたいに話しかけて、さりげなくお菓子を渡すのよ!
…ああっ!やっぱり緊張してできないっ!
こんな調子でかれこれ30分ほど経つ。
ただ、手作りのお菓子を渡すだけ。
それだけ…。
ううん、それだけ、じゃない。
私はリーバルが好きなんだから。
このお菓子に込められた気持ちの事を考えたら、ただお菓子をあげるのとは訳が違う。
だから、こんなに緊張するんだ。
だけど、このままずっとこうしているわけには…
「さっきからそこで何をぐずぐずやってるんだい。」
「ひゃあっ?!」
声をかけられ、心臓が跳ねる。
一人で悶々としていたせいで、リーバルがこちらに近づいていたことに気がつかなかったのだ。
「間抜けな声でそんなに驚いて、相変わらず変な奴だな、君は。…おや?何か持ってきたのかい?」
「あ、いや、こ、これは…。」
まずい。
私のプランでは、他愛無い話をしながらさりげなく渡して、リーバルを驚かせる予定だったのに…!
思わず、背後にお菓子が入った箱を隠す。
「何をそんな慌てて…ああ、そうか。」
完全に察されてしまっている。観念するしかないのか。いや、まだプラン変更の余地はあるかもしれない。いや、もう駄目かも。
恋する相手を前に私の思考回路は絡まり、顔もみるみる赤くなる。
「今日はバレンタインデーだったっけ。誰に渡すんだい?」
「えっ?」
予想外の返事に、目を丸くする。
リーバル、私がリーバルにお菓子を渡そうとしていることに気付いてない…?
私は咄嗟に閃いた。
「うん。実は好きな人にお菓子を渡したいんだけど、緊張しちゃって。その前に、いつもみたいにリーバルと世間話でもして、リラックスしていこうかなーと思って。」
全て口から出まかせだ。
でもこれで、リーバルに勘違いをさせておいて「じゃーん!」とお菓子を渡せば、きっと驚くはず!
「へえ。僕を利用しようとしたのか。」
「え?」
私へ向けられた冷ややかな視線。
「いい度胸じゃないか。でも生憎様。僕は君の逢引の踏み台になるつもりは無いよ。」
「リーバル、怒ってるの…?」
「悪いけど、今日は君と話したくないんだ。わかったらさっさとソイツの所に行ってやれよ。」
リーバルは私に背を向けて去ろうとした。
「ま、待って!!!」
悪気なくついた嘘のせいで、彼の気を損ねてしまった。
せっかく、ミファーと二人で頑張ろうって約束したバレンタインなのに、嫌われちゃうなんて、
そんなの…
「…なんてね。」
リーバルが再び私の方に向き直り、私の手からお菓子の入った箱を取り上げた。
「あっ!それは、」
「僕のだろ?」
いつもの得意げな顔で、リーバルは言った。
「最初から全部わかってたよ。それなのに、君が変な嘘をつくから、意地悪したくなってね。」
「えぇっ!」
「君が僕を騙そうだなんて百年早いよ。」
結局最初から私の考えなんてお見通しだったのだ。
「…ごめんなさい。」
「素直で良いね。」
ずるい、ずるすぎる。
私より一枚も二枚も上手の彼に、私はずっとドキドキしっぱなしだ。
「これ、返してあげるよ。」
リーバルは、さっき取り上げた箱を私に返した。
「今度は嘘なんかつかずに、君の手から、そいつを渡して欲しいな。」
う…。
本当に何から何まで、リーバルには敵いそうもないなぁ。
でも、今度はちゃんと伝えなきゃ。
大きく深呼吸をする。
「これ、頑張って作ったんだ。リーバルのために。受け取ってくれるよね。」
---Fin---
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