キャンディーリング
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「あら一郎くん」
「あ、ちわッス!」
思ったより遅くなってしまった今日の依頼の帰り道
近くの八百屋のおばさんももう店仕舞いをしている
野菜を買うのはまた明日にしよう
「ねぇ、咲月ちゃん大丈夫なの?」
「は?咲月っすか?」
久しぶりに聞く名前に首を傾げる
まだ俺がTDDに所属していた時に、結局喧嘩別れした幼なじみの名前だ
あれ以来、彼女とは殆ど顔を合わせていない
「……連絡来ていない?」
「何かあったんっすか?」
「私もさっき聞いたんだけどね、お父さんとお母さん、交通事故で……」
亡くなられたって……。そう言いにくそうに伝えられた言葉に頭を殴られたような気持ちになる
喧嘩別れしてからも彼女のご両親には良くしてもらっていた
俺が萬屋を始めてからはよく依頼をくれたし、その日は必ず作りすぎたのだと大量のおかずを持たせてくれた
俺たち三兄弟を気遣ってくれている事は伝わってきて、食べ盛りの俺たちは本当に有難かったのを覚えている
そして最後には必ずこう言うのだ
「また咲月の事もよろしくね」と
けれど萬屋の経営が軌道に乗り始めてからは少しづつ依頼も減って、最近ではあまり顔を合わせることも無くなっていた
「俺、様子見てきます」
「ごめんなさいね……」
「いえ、今知れてよかったです」
きっと彼女は俺を頼るという選択肢すら頭にないだろう
それなら手遅れになる前に知れたのは有難かった
両親を突然失う気持ちは分からない
ただ、当たり前の日常が突然崩れる恐怖のようなものは何となくわかるのだ
それこそ、慕っていた先輩の考えについていけないと突っぱねた時も、ラップバトルに大切な弟たちを巻き込んだ時も、その前の俺からしたら当たり前の日常はあっさりと姿を変えてしまった
普通の家庭で育ってきた彼女にとって、今回の事は相当なイレギュラーで、精神的にも参っているはずだ
彼女は大学に進学したと聞いたし、俺のように働いているわけではない
そうなると金銭的にも問題が残るはず
『咲月をよろしくね』というおばさんの声が蘇る
「……おばさん、ようやく恩返しが出来そうです」
空を見て呟いた言葉はそっと風に消えた
「あ、ちわッス!」
思ったより遅くなってしまった今日の依頼の帰り道
近くの八百屋のおばさんももう店仕舞いをしている
野菜を買うのはまた明日にしよう
「ねぇ、咲月ちゃん大丈夫なの?」
「は?咲月っすか?」
久しぶりに聞く名前に首を傾げる
まだ俺がTDDに所属していた時に、結局喧嘩別れした幼なじみの名前だ
あれ以来、彼女とは殆ど顔を合わせていない
「……連絡来ていない?」
「何かあったんっすか?」
「私もさっき聞いたんだけどね、お父さんとお母さん、交通事故で……」
亡くなられたって……。そう言いにくそうに伝えられた言葉に頭を殴られたような気持ちになる
喧嘩別れしてからも彼女のご両親には良くしてもらっていた
俺が萬屋を始めてからはよく依頼をくれたし、その日は必ず作りすぎたのだと大量のおかずを持たせてくれた
俺たち三兄弟を気遣ってくれている事は伝わってきて、食べ盛りの俺たちは本当に有難かったのを覚えている
そして最後には必ずこう言うのだ
「また咲月の事もよろしくね」と
けれど萬屋の経営が軌道に乗り始めてからは少しづつ依頼も減って、最近ではあまり顔を合わせることも無くなっていた
「俺、様子見てきます」
「ごめんなさいね……」
「いえ、今知れてよかったです」
きっと彼女は俺を頼るという選択肢すら頭にないだろう
それなら手遅れになる前に知れたのは有難かった
両親を突然失う気持ちは分からない
ただ、当たり前の日常が突然崩れる恐怖のようなものは何となくわかるのだ
それこそ、慕っていた先輩の考えについていけないと突っぱねた時も、ラップバトルに大切な弟たちを巻き込んだ時も、その前の俺からしたら当たり前の日常はあっさりと姿を変えてしまった
普通の家庭で育ってきた彼女にとって、今回の事は相当なイレギュラーで、精神的にも参っているはずだ
彼女は大学に進学したと聞いたし、俺のように働いているわけではない
そうなると金銭的にも問題が残るはず
『咲月をよろしくね』というおばさんの声が蘇る
「……おばさん、ようやく恩返しが出来そうです」
空を見て呟いた言葉はそっと風に消えた